中学校の学習指導要領では,「我が国の歴史に対する愛情を深め,国民としての自覚を育てる」ことを歴史教育の目標と
しています。総則には,「自ら学び自ら考える力の育成」を図ることも掲げられています。
  『改訂版新しい歴史教科書』は,この学習指導要領の理念を実現するとともに,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図
るべく,さまざまな編集上の工夫をこらして編さんされています。
  今回の改訂版では,旧版をリニューアルし,大幅なバージョンアップを行いました。判型をB5サイズに大判化するとともに,
多彩な図版や資料を多数収録。記述も,子どもたちの視線に立った,より簡潔で平易なものへと一新されています。
  本文の充実に加えて,「人物コラム」や「歴史の名場面」といったコラム,生徒の自主性を育てる課題学習なども満載。
「読んでおもしろく」「目に楽しい」教科書は,基礎的な知識の定着をうながし,歴史の大きな流れの理解を深めます。「心に
のこる」歴史を学ぶ喜びをもたらす,全く新しい教科書の登場です。

  構成や章立て,記述の内容が,学習指導要領の「歴史的分野」の目標と内容に基づいて編集されています。「我が国の歴史に対する愛情」が深められる教科書です。
  1時限1単元構成の82単元を見開きで展開し,学習に役立つ図版や写真,資料を豊富に掲載しました。子どもたちが授業で使うことを第一に考えた教科書です。
  子どもたちの「歴史的事象に対する関心を高める」ため,読み物としても十分にたえうる記述を心がけました。一貫した歴史の流れを楽しく学べる教科書です。
  「自ら学び自ら考える力の育成」のため,多彩な課題学習やコラム,自主的学習のヒントを盛り込みました。子どもたち自身が調査・研究を行う力を養える教科書です。
  巻頭口絵「日本の美の形」ほか,文化史を重視したページ構成にしました。日本の誇る芸術作品の数々をオールカラーで紹介。日本文化の素晴らしさを実感できる教科書です。
  常に諸外国との交流関係や,時代ごとの複雑な国際環境を念頭において,日本の歩みを描きだしています。未来を担う子どもたちの,グローバルな国際感覚を育む教科書です。
 
  日本の歴史の大きな流れをつかめるように,1mmを10年,1cmを100年とした「歴史モノサシ」を冒頭と各章の扉に掲載。歴史の流れを視覚的に認識できるよう配慮してあります。
  学習する本文の項目は,全部で82項目を見開きで構成しています。そこに1?82の通し番号をつけることで,中学生が自ら学習の進行度合いが分かるように工夫しています。
  とくに重要な語句は,ゴチック体の太字とし,知識として定着しやすいようにしています。
  子どもたちの歴史に対する想像力を視覚的に喚起するため,多数の想像イラストや復原図,絵画資料,写真などを掲載しました。もちろん,オールカラーです。
  多くの文字資料を掲載し,そこから子どもたち自身が情報を読み取れる配慮がなされています。本文の学習と組み合わせることで,知識の定着と自主的な取り組みが可能になる構成です。
  本文の記述の付加的な知識・情報として,さまざまな側注をおきました。語句説明や,その後の経過,本文をより深める記述など,充実した内容となっています。
  それぞれの単元を学んだうえで,子どもたち一人一人が自分の力で考察・調査するよう設定された課題です。教師の取捨選択で自由に展開することが可能です。
 
【序章】歴史への招待 --歴史を学ぶとは 日本の歴史の流れ
  ◆事物の起源調べ ◆歴史新聞をつくろう
 
(1)アイ
  [ポイント]
歴史を学ぶ際の考え方や,課題学習の方法を平易に説明。
【第1章】原始と古代の日本

(第1節)日本のあけぼの
  (1)日本人はどこから来たか (2)縄文文化 (3)文明の発生と中国の古代文明 (4)稲作の広まりと弥生文化

(第2節)古代国家の形成
  (5)中国の歴史書に書かれた日本 (6)大和朝廷と古墳の広まり (7)大和朝廷と東アジア

(第3節)律令国家の成立
  (8)聖徳太子の新政 (9)遣隋使と「天皇」号の始まり (10)大化の改新 (11)日本という国号の成立 (12)大宝律令と平城京 (13)奈良時代の律令国家 (14)飛鳥・天平の文化

(第4節)律令国家の展開
  (15)平安京と摂関政治 (16)武士の登場と院政 (17)平安の文化

 

(2)ア




(2)イ



(2)ウ




(2)ウエ
  [ポイント]
原始から古代に至る日本の歴史を物語性豊かに叙述。
縄文時代の人々が達した高度な文化レべルや生活を,最新の学問的成果を交えて紹介します。

国内統一から律令国家へと続く国家形成への道筋を,東アジアとの関係を考慮しながら記述します。

日本人にとって大切な,言葉と神話の問題をコラムで取り上げます。
「歴史の名場面」として大仏開眼供養を,課題学習として奈良・京都の文化を紹介します。

【第2章】中世の日本

(第1節)武士政治の始まり
  (18)平氏の繁栄と滅亡 (19)鎌倉幕府 (20)元冠 (21)鎌倉の文化

(第2節)武士の政治の動き
  (22)建武の新政と南北朝の争乱 (23)室町幕府 (24)中世の都市と農村の変化 (25)室町の文化 (26)応仁の乱と戦国大名

 

(3)ア


(3)アイ
  [ポイント]
鎌倉から宝町までの武士政治の変遷を記述。
武士が実権を握り活躍した日本中世史を,すぐれた美術や今につながる文化の紹介も交えながらバランス良く記述します。
【第3章】近世の日本

(第1節)戦国時代から天下統一へ
  (27)ヨーロッパ人の世界進出 (28)ヨーロッパ人の来航 
(29)織田信長と豊臣秀吉 (30)秀吉の政治 (31)桃山文化

(第2節)江戸幕府の政治

  (32)江戸幕府の成立 (33)江戸幕府の対外政策 (34)鎖国下の対外関係 (35)平和で安定した江戸時代の社会

(第3節)産業の発達と三都の繁栄
  (36)農業・産業・交通の発達 (37)綱吉の文治政治と元禄文化

(第4節)幕府政治の展開
  (38)享保の改革と田沼政治 (39)寛政の改革と天保の改革 
(40)欧米諸国の接近 (41)化政文化 (42)新しい学問と思想の動き
 

(4)アイ



(4)ウ



(4)エ



(4)オ
  [ポイント]
安土・桃山から江戸後期にいたる武家政権の展開を記述。
16世紀後半の日本のようすを,ヨーロッパにおける大航海時代を念頭に置きながら活写します。

海禁政策によって国内の平和を維持しつつ,積極的に海外の情報も取り入れていた江戸期の繁栄を、最新の知見に基づき記述します。

コラムでは「武士道」や「浮世絵があたえた影響」について扱い,「江戸の技術を調べてみよう」という課題学習を設けました。
【第4章】近代日本の建設

(第1節)欧米の進出と幕末の危機
  (43)産業革命と市民革命 (44)欧米列強のアジア進出 (45)ペリー来航と開国 (46)尊王攘夷運動の展開 (47)薩長同盟と幕府の滅亡

(第2節)明治維新
  (48)明治維新の始まり (49)中央集権国家への道 (50)学制・兵制・税制の改革 (51)近隣諸国との国境画定 (52)岩倉使節団と征韓論 (53)殖産興業と文明開化

(第3節)立憲国家の門出
  (54)条約改正への苦闘 (55)自由民権運動 (56)大日本帝国憲法(57)日清戦争 (58)日露戦争 (59)世界列強の仲間入りをした日本

(第4節)近代産業の発展と文化の形成
  (60)近代産業の発展 (61)明治文化の花開く
 

(5)ア



(5)イ




(5)ウ



(5)エ
  [ポイント]
幕末から明治期にかけての,近代日本の歩みを記述。
日本の近代化に向けた苦悩と努力の歴史を,欧米列強の進出や東アジアの情勢などを踏まえながら,わかりやすく叙述します。

日本の近代化に教育が果たした役割の重要性に焦点をあてます。

コラム「明治維新とは何か」では,明治維新において武士が果たした役割に言及します。また人物コラムでは伊藤博文,津田梅子などを紹介。時代の荒波の中で尽力した先人たちの生涯を生き生きと描き出します。
【第5章】世界大戦の時代と日本

(第1節)第一次世界大戦の時代
  (62)第一次世界大戦 (63)ロシア革命と大戦の終結 (64)ベルサイユ条約と大戦後の世界 (65)政党政治の展開 (66)日米関係とワシントン会議 (67)大正の文化

(第2節)第二次世界大戦の時代

  (68)共産主義とファシズムの台頭 (69)中国の排日運動と協調外交の挫折 (70)満州事変 (71)日中戦争 (72)悪化する日米関係 (73)第二次世界大戦 (74)大東亜戦争(太平洋戦争) (75)大東亜会議とアジア諸国 (76)戦時下の生活 (77)終戦外交と日本の敗戦

(第3節)日本の復興と国際社会
  (78)占領下の日本と日本国憲法 (79)占領政策の転換と独立の回復 (80)米ソ冷戦下の日本と世界

(第4節)経済大国・日本の歴史的使命

  (81)世界の奇跡・高度経済成長 (82)共産主義崩壊後の世界と日本の役割
 

(5)オ




(5)カ





(5)キ



(5)ク
  [ポイント]
20世紀初頭から現代に至る激動の歴史を記述。
二つの世界大戦の時代に日本が歩んだ歴史を,当時の国際情勢を常に念頭に置きながら,バランス良く記述します。

国家の生き残りをかけて苦闘した当時の日本人の姿を学習することで,これからの国際社会の中で,自国を愛し,同時に諸外国と共存できる力を養います。

本文では,全体を通じて,常に世界の中に日本を位置付け,その関係性において歴史の流れを物語性豊かに記述するよう努めました。また,各時代の芸術や文化の特色が,多くのカラー図版とともに紹介されているのも大きな特色です。
 
 21世紀に生きる日本の子どもたちが,健やかに成長し,日本人としての誇りと自覚を失わず,世界中の人々と交わって活躍できるようになるために編さんされた歴史教科書。それが『改訂版新しい歴史教科書』です。

世界のどの国民も,それぞれ固有の歴史をもっています。それと同じように,日本にもみずからの固有の歴史があります。日本の国土は,古くから文明をはぐくみ,独自の伝統を育てました。日本は,どの時代においても世界の先進文明に歩調を合わせ,着実に歴史を歩んできました。

 欧米列強の力が東アジアをのみこもうとした時代,日本は自国の伝統を生かして西欧文明との調和の道を探りだし,近代国家の建設とその独立の維持に努力しました。しかし,それは諸外国との摩擦と緊張をともなう,厳しい歴史でもありました。

  私たちの父母の,そして祖先の,こうしたたゆまぬ努力の上に,世界で最も安全で豊かな今日の日本があるのです。祖先から受けついだこの日本を,次の世代につないでいく仕事の中心が自国の歴史を教えることです。

  『新しい歴史教科書』は,世界史的視野の中で,日本国と日本人の自画像を,品格とバランスをもって活写しました。私たちの祖先の活躍に胸を躍らせ,失敗の歴史にも目を向け,その苦楽を追体験できる,日本人の物語す。
   著者一同,心を込めて執筆しました。教育の現場で広く活用されることをねがっております。