7月に出版しましたチャールズ・ウィルフォードの『拾った女』。

もう読んでいただけましたでしょうか。

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発売して間もなくから、各処にて、評論家の皆様を中心に大変ありがたい絶賛のお言葉を多数いただいております!

担当編集としても大変うれしく思っております。

翻訳者および担当編集者の推薦の弁は、こちら

本書企画者の前任担当者の弁は、こちら

 

翻訳ミステリー大賞シンジケートのブログでは、

七福神の皆様のうち五名もの方が、本書を取り上げていただきました!

霜月蒼さん、酒井貞道さん、杉江松恋さんのご推薦は、こちら

「小説の味わいはストーリーやプロットにあるわけではないのだ、と心の底から思わせてくれる伝説の一作」(霜月さん)

「こういうミステリを待っていたんです!」(酒井さん)

「これだけ自分の好みに合った作品は今年はもう出ないと思う」(杉江さん)

千街晶之さん、吉野仁さんのご推薦こちら

「高い完成度を誇る逸品」(千街さん)

「今月のというより今年のベストに入るような傑作」(吉野さん)

おお、なんかすごくないですか??

 

他にも、同じブログで

ストラングル・成田さんが、『巧緻で異形のノワール~ウイルフォード『拾った女』他』として、

「底辺に生きる男女の絶望的な愛を描いた小説にして、ラストにトリッキーな一撃を秘めた巧緻な作品だ。結末に驚きを求めるクラシックファンもお見逃しなく」とご紹介いただいております。

★翻訳者の上條ひろみさんが、『第20回:読まないと損をする』のなかで、

「意外とあっさりしていてカロリー控えめ(読みやすい&短い)なのに、最後にガツンときて、食べ応えは満点。もう一度読みたくなったりして、かなり腹持ちもいい。そんな作品」とおっしゃってくださっております。

 

さらには、

『読売新聞』では中村計さんが「淡々とした筆致で描かれたノワールの傑作」

『週刊文春』では池上冬樹さんが「最後の最後で視野をがらりと変える作為には社会派のテーマも潜んでいて侮れない」

『神奈川新聞』では古山裕樹さんが「ストーリーはきわめて単純。しかし精緻な仕掛けによって、初読時と2回目以降とでは、全く異なる世界が見える」

といった感じで大いにおすすめくださっております(他にも見逃していたらすみません!)。

 

また、Twitterなどでも滝本誠さん中原昌也さんが大変好意的に反応してくださり、日本中のノワール愛好家、ミステリー愛好家の皆様のハートにちゃんと届いたのだなあ、と。

異常な多忙さにかまけて、編集者はなんにもやっていなかったというのに・・・(泣) いつのまにやら、勝手連の皆様でぐいっと盛り上げてくださってる感じです!

 

さらにさらに! 本日はLive Wireで、『復活・ミステリ酒場! ウィルフォード泥酔PUBへようこそ』と題しまして、杉江松恋さんと滝本誠さんのトークでウィルフォードづけのイベントが開催されます!

今回解説もお願いした杉江さんが、ノワールを語らせたら右に出るものなしの滝本さんから、どんなお話を引き出してくださるのか、否応なしに期待が高まります!

 

詳細は、こちら

 

別にこちらから仕込んだわけでもなく、呼ばれたわけでもないのですが、こんな機会もそうそうないので、扶桑社の前担当、担当、翻訳者さんも一観客として赴く予定でございます(笑)。

酒で身を持ち崩す話を、みんなでぐでんぐでんになりながら語り合う、これぞ、酔狂!・・・てなもんで。

ぜひ、たくさんの皆様にご来場いただけますように!

 

そして、さらにさらにさらに!

南東京読書会さんのほうでは、第五回読書会として、10/10日に『拾った女』の読書会を開催されるとのこと。(こちら

ネットで見つけて編集者も申し込んでしまいました!

そうですよね、読んだ人ほど語ってみたいですよね、このお話!

一般の方々の『拾った女』評、興味津津です。なるべくお邪魔にならないように参加してまいりたいと思います。

 

二度読み必至!

極北のノワール!

そもそも、これってノワールなのか?

・・・いや、あんまり煽っても、本質的にはとてもこぢんまりした小説ですので、がっかりされても困るなあ。

まあアメリカ50年代の『同棲時代』でも読むような、気楽な気持ちで手にとっていただけると嬉しく思います。そう分厚い本ではありませんし。

あと、古い映画の好きな人はとても楽しく読めると思います。作品紹介でも書きましたが、『失われた週末』『喝采』『酒とバラの日々』『ハスラー』あたりとはとても親和性がある、かわいそうな酔っぱらいのお話ですので。

あと、本格ミステリー寄りの人も食わず嫌いせずにぜひ。だって、本書に秘められた趣向って、あの有名な叙述トリック系海外作家の代表作『・・・』と一緒なんですけど、実は『・・・』より先に書かれてるんですぜ!

 

一人でも多くの方に、本書の魅力を知っていただければ、これほどの喜びはございません。

いよいよ読書シーズン到来。秋の夜長を『拾った女』をおともにお過ごしください!(編集Y)

 

 

 

 

 

2016年9月19日 01:05 | | コメント(0)

今月の新刊で扶桑社より、久しぶりにヴィンテージものの本格ミステリーを発売いたしております。

『本格ミステリ・ベスト10』で2013年に『死の扉』(創元推理文庫)で2位、

同じく2015年に『ミンコット荘に死す』(弊社)で3位を獲得した、

英国本格の驍将レオ・ブルースによる名探偵キャロラス・ディーンものの初期の佳品『ハイキャッスル屋敷の死』

もうお読みいただけたでしょうか?

 

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あらすじはこんなかんじです。

 

キャロラス・ディーンはゴリンジャー校長から直々に事件捜査の依頼を受ける。

校長の友人である貴族のロード・ペンジが謎の脅迫者に命を狙われているというのだ。

さらに数日後の夜、ロード・ペンジの住むハイキャッスル屋敷で、主人のオーバーを着て森を歩いていた秘書が射殺される事件が発生。不承不承、現地に赴くキャロラスだったが......

捜査の進捗につれて次第に懊悩を深める探偵がやがて指摘する事件の驚くべき真相とは? 

 

数々の傑作を世に送り出しているレオ・ブルースのこと。

もちろん今回も読んでいただければ、本格マニアの方ならきっと十分にお楽しみいただけるものと思います。

ただ・・・なんか薦め方が難しいんだよなあ(笑)。

どう話しても、ネタと直結してしまいますし・・・いや、本格ミステリーならなんでもそうじゃないのか、と言われちゃいそうですが、実際それだけじゃないんです。

たとえば同じシリーズの『死の扉』や『ミンコット荘に死す』には、読めば誰しもがあっと驚き納得する「大ネタ」「趣向」が仕込んであったわけですよね。だから、そこをお楽しみに、とお薦めするのはけっして難しくない。

でも、今回のネタは明らかに変化球も変化球。しかも表面上、ぜんぜん変化球に見えないという・・・なにこの厄介な魔球(笑)。

実際にバッターボックスに立ってもらわないと、どう変わってるかがわかりにくいんですよ。

トリックとして(あるいはロジックとして)の変化球というよりは、力点の置き方というか、本格ミステリーとしての佇まいそのものが結構珍しい作りになっているので、読めば当然面白いんだけど、未読の方にその魅力をお伝えするのが、なかなかに難しい。

ここに注目して読んでほしい、と申し上げたとたんに、著者が本書で仕掛けた恐るべき「とある趣向」がともすると台無しになってしまいかねない。

 

さらに言えば、「もしかすると、著者の真の狙いに気づかないまま読み終わっちゃう方もいらっしゃるのではないか」という危惧すら、編集者にはあります。

その場合はぜひ、真田啓介さんの素晴らしい解説にじっくり目を通していただければ。そうすればレオ・ブルースが本作でやろうとしていた仕掛けが「誰を対象としたどんなものだったのか」を、じゅうぶんご理解いただけると思います。

ある意味、レオ・ブルースほどに「装置としての名探偵」の意義と機能について深く踏み込んで批評的に考察し、それを実作へと反映させた作家はそうはいません。その意味で、レオ・ブルースは正しくアントニイ・バークリーの衣鉢を継いだ本格ミステリー作家だった。本書はまさに、そういったレオ・ブルースの思索の極限において結実した作品です。

加えてシリーズ長編第四作という、この時期にしか書き得なかった作品。そうも思います。

 

組み立て自体は、実に王道。

成り上がりの貴族と、彼に脅迫状を再三送りつけてくる謎の人物。

立派で古風ではあるが、時代的にはすでに欺瞞と虚偽に満ちた形でしか評し得ない「大邸宅での華やかな生活」(おお、なんだか本格ミステリーと名探偵自体への挑発のようではありませんか)。

そこで殺人が起き、不承不承引き出された名探偵が捜査を開始する。

でも、そこからこの物語は、いつになく不可解な様相を呈し始めるのです・・・・。

 

本格ミステリーとして、事件の真相に読者が到達すること自体は、決して難しくはないように思います。むしろ、レオ・ブルース自身が、さっさと読者に真相を見破らせようとしているくらいの感覚もあります。

たぶん、そこじゃないんですね。

犯人当てとか謎解き自体が本書の眼目ではないんです。

「なんで自分はこの真相に気づかされてしまったのか?」――むしろそっちから、本書の読み解きは始まるのではないか?

そこから、レオ・ブルースという本格ミステリー愛のかたまりのような人物が、本書を書くに際していったい何をたくらみ、何を実際に実現していったのかを追体験していく・・・そんな作業こそが、本書をひもとく醍醐味であり、至福の悦楽なんだと、編集者は思うわけであります。

 

真田さんも書かれていますが、正直なところ、純粋な出来だけでいうと、本作には文句を言いたくなる部分も若干ありますし、読後それを指摘される方もきっといらっしゃるでしょう。

でも、それを補って余りある魅力が、間違いなく本書にはあります。

ぜひお手にとっていただき、レオ・ブルースという作家が本格ミステリーの枠組みの中で繰り広げた新奇で風変わりな挑戦と冒険を、じっくりご堪能いただければ幸いです。

 

編集者なりのネタバレ解説も、本書に関してはとてもやってみたくもあるのですが、それはまた機会を見て。

まずは、レオ・ブルースというブランドを信じていただいて大丈夫かと。お楽しみに!(編集Y)

2016年9月18日 22:44 | | コメント(0)

はじめまして、4月から書籍編集部に移ってきました編集Kです。
新参者ですが、よろしくお願いいたします。

先々月に発売された『水中襲撃ドローン<ピラニア>を追え!』の余韻も冷めやらぬなか、
またまた巨匠クライブ・カッスラーの新作をお届けいたしましたが、いかがだったでしょうか。
今回は大人気のファーゴ夫妻シリーズより、『トルテカ神の聖宝を発見せよ!(上・下)』です。

 

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 上巻のあらすじは――
世界的に名だたるトレジャーハンター夫妻、サム・ファーゴとレミ・ファーゴ。
二人は地球温暖化の氷河への影響を調べるため、北極圏へ調査に訪れた。
作業は順調に進んでいたが、ある地点で磁気探知機が激しい反応を示した。
氷の下に、自然ではありえない巨大な人工物があるのだ。
氷の層を掘り進むうち、木造の物体が見えてくる。
やがて目の前に全貌を現したものは、中世の北欧ヴァイキングが使っていた
ロングシップと呼ばれる木造船だった。
しかも長いあいだ氷の中にあったため、船はほぼ完全な状態で保存されていた!

冒頭、中世のむくつけきヴァイキングたちが怒り狂う北極海と格闘するシーンから、
一転して現代のスペインの穏やかな海で調査にいそしむファーゴ夫妻へ。
ため息が出てしまうほど美しい描写で舞台は次々と移り変わり、
北極海、カリフォルニア、メキシコ、キューバへ――。
行く先々でチラリチラリと宿敵・ベネディクトの魔の手が忍び寄り、
やがて心臓に悪い銃撃戦また銃撃戦に。
とにかく最後まで息をつかせません!

ちなみに、タイトルにある「トルテカ」というのは7~12世紀のメキシコで栄えた、
マヤの前身となる文明です。
北の戦士ヴァイキングと、このトルテカ文明がどうつながっていくのか?
壮大な歴史ロマンをどうぞお楽しみください!

そして、アラサー女子としては、サムに対するレミの振る舞いも見逃せません。
旦那様にかわいく甘えたかと思えば、やきもちを妬いてみたり。
どんなときも猪突猛進型のサムを頭脳明晰さで冷静にサポートし、
ときにいなしながらも、最後には「何があってもあなたについていくわ」という芯の強さ。
「理想の嫁すぎる......これは真似できない......!」と唸らされることしきりでした。
ディナーやパーティの場でレミが身を包むセレブなファッションも見どころですよ♪

一気読み必至の面白さです。男女問わずお薦めいたします!

(編集K)

2016年9月 2日 14:06 | | コメント(0)

 お待たせしました、ウィルフォードの伝説の1作のご紹介です。

 

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 思えば、『マイアミ・ポリス』シリーズは、クセ球の多い扶桑社ミステリーのなかでも、また一風変わったシリーズだったのではないかと思います。

 しかし、このシリーズが日本でまだまだ刊行されているときには、すでにチャールズ・ウィルフォードはこの世になく、死後出版された『危険なやつら』は、がらりとイメージが変わるクライム・ノヴェルで、「このミステリーがすごい!」海外編で17位という、なんとも味わい深い評価を受けました。

 こうして、ようやくウィルフォードのパルプ作家としての一面が認知されたといえるでしょう。

 

 これにつづくように、ジム・トンプスンをはじめとするノワールが注目を集めるなかで、当時の編集者が選んだウィルフォード作品が、『炎に消えた名画』でした。

 伝説の美術家をめぐる犯罪小説という、これまた飛びきりのクセ球で、アートとノワールといえばこの人をおいて他になしというべき、滝本誠氏の名解説を得て、2004年に出版されました。

 

 さすがに読者を選ぶ作品だったこともあり、編集者が次に仕込んだのが、ウィルフォード初期の注目作品(刊行は1954年)、『拾った女』だったわけです。

 しかしながら編集者は社内異動となり、それから幾星霜、訳者・浜野アキオ氏のたゆまぬ仕事ぶりの結果、今回こうして、時限爆弾のようにこの作品が刊行の運びとなった次第です。

 

 ※浜野アキオ氏による卓抜な作品紹介は、こちら

 

 作品をむりやり紹介しようとすれば、「社会の底辺に暮らす主人公がある女性を"拾った"ことからはじまる転落の物語」といったことになるでしょう。

 これでは、典型的なファム・ファタール譚ですよね(ジム・トンプスンでいえば『アフター・ダーク』とか)。

 しかし、じっさいに読まれると、相当ちがった印象を受けられると思います(ご存じのとおり、クセ球作家ですから)。

 ともかく、中味に触れずに紹介することは困難な作品なので、先入観なしに読んでいただくのがいちばん、と、これはどんな本でもそうでしょうけれど、この作品についてはこの点を強調したいと思います。

 

 刊行から相当の時間がたちましたが、さまざまな場所で、思いのほか高い評価をいただいています。

 それに接するたび、「出版できてよかった!」と思います。

 

 みなさまに支えられてきた扶桑社の海外文庫も、最近ではかつてほどの多様なナインナップをそろえることが難しくなってきています。

 そんななかで、この作品がこのような形で出版できたのは、じつにありがたいことでした(なにしろ現担当者は、社内で、なぜ昔の編集者が残したこんな古めかしい作品をいまさら出すんだ、というきびしい意見にさらされたので)。

 

 いえ、けっして同情票を集めようというようなつもりではないのですが、それでもやはり今回だけは、ほんとうに読んでみてください、と頭を下げてお願いしたい気持ちです。

 ほかではちょっと得られない読書体験を味わっていただけるのではないかと思いますので。

 そして、ふたたびこのような作品をご紹介できる機会につながればよいのですが。

 

 1950年代、ペイパーバック・スタンドで、タイトルと扇情的な表紙に惹かれて購入したアメリカ人たちは、いったいどんな気分でこの幕切れを読んだのでしょう。

(扶桑社T)

2016年9月 2日 10:18 | | コメント(0)

またも長らくサボってしまいました・・・。

まずは先月発売の一冊目、『シャナラ・クロニクルズ シャナラの妖精石(エルフストーン) 前編 選ばれし者』のご紹介です。

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本書は、弊社より10年ほど前に発売された単行本『シャナラの妖精石』(上・下)の上巻の文庫化にあたります(テリー・ブルックスによるシャナラ・シリーズは、弊社から単行本が2作品計4冊出ておりましたが、いずれも絶版になっております)。

今回の文庫化は、ワーナーさんより本作のドラマ化作品である『シャナラ・クロニクルズ ファースト・シーズン』のコンプリート・ボックスが7月に発売されたことに合わせてのものです。

なお同タイトルは全国のレンタルショップでも、絶賛レンタル中です。

 

(ドラマBD&DVDの情報は こちら )

 

実は小説におけるシリーズの第一弾は『シャナラの剣』(上・下)で、『シャナラの妖精石』は二作目なのですが、ドラマ化が『妖精石』から始まりました都合上、今回の文庫化も(あくまでドラマ原作本としての文庫化ですので)『妖精石』(上)から、ということになっております。

なお『シャナラの剣』の内容は大まかには作品中で語られますので、『妖精石』から読みだしていただいて、まったく問題ないかと。

 

あらすじはこんな感じです。

 

エルフの国ウェストランドを守護する生命の樹エルクリスが枯れはじめた。

長い戦いのあと訪れていたつかの間の平和はふたたび破られ、不穏な影が忍び寄る。

封じられていた魔物どもが、首領ダグダ・モーアの指揮の下 、"結界"を越えて世界へと侵入
を開始したのだ。

エルフの姫アンバリ―と勇者の孫であるウィルは、エルクリス再生という重大な使命を帯びて、世界の命運をかけた危険な旅へと出発する――。

 

シャナラ・シリーズは、アメリカでは累計で2600万部を突破している、国民的作品といってもよい大ベストセラー・ファンタジーです。王道中の王道といっていいストーリーなので、『指輪物語』や『ハリー・ポッター』がお好きな方は、ぜひこちらもお試しください。

 

ドラマから原作のほうに手を伸ばされた方は、ドラマのディストピア的世界観から比べると、ファンタジー色が強いなと思われるかもしれません。

これについては、メディアの違いやオリジナル要素の導入という要素以上に、本作の後に続くシャナラ・シリーズの原作において、遠未来設定(舞台は実は遠い未来の地球)が強化されていった部分が大きいかと存じます。

また実際、原作とドラマとではかなり異なるところもありますが、お話の出だしからエレトリアを出すとか、冒険要素増量とか、おおむね映像的に効果のあがる巧みな改変になっている気がいたします。

原作である小説版の方は、読み物としてじっくり腰を据えて読める内容となっています。ドラマの背景になる部分の描き込みなど(とくに主人公の出自や家族のようす)もたっぷりありますので、ドラマにはまられた方でも、あわせて十分お楽しみいただけると思います。

 

なお、文庫版後編の発売日は現在のところ未定ですが、先に電子版での刊行を予定しております。

詳細が確定いたしましたら、また情報をお出ししていきたいと考えております。(編集Y)

 

2016年8月 9日 15:49 | | コメント(1)

忙しすぎて、またもブログの更新をサボってしまいましたが、今月の新刊はもうお読みいただけましたでしょうか?
巨匠クライブ・カッスラー『水中襲撃ドローン〈ピラニア〉を追え!』(上・下)
大人気海洋冒険アクションシリーズ、〈オレゴン号〉シリーズの最新作でございます!

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上巻のあらすじはこんな感じです。

 

外見は老朽化した貨物船だが、じつはハイテク装備の秘密工作船オレゴン号。

長年の世界的な活躍が噂を呼び、その存在に疑いをいだくものが現われた。

国際的に孤立するベネズエラ海軍だ。

彼らはこの船が偽装であるのを確信し、ひそかに魔の手をのばそうとしていた。

一方、オレゴン号船長のカブリーヨは、CIAから新たな依頼を受けていた。

くだんのベネズエラ海軍が、北朝鮮へ武器を密輸しているというのだ。

その証拠をつかみ、密輸経路を断つべく、カブリーヨと乗組員は隠密裏に動きだす――。

 

前作『謀略のステルス挺を追撃せよ!』から、弊社へとうつってきました〈オレゴン号〉シリーズ。

前作『ステルス挺』は、『プリズン・ブレイク』なロシアでの奪還作戦から始まり、海洋アクションをはさんで、後半は難攻不落の敵アジト攻めと、盛りだくさんの内容でした。

 

今回から共著者はボイド・モリソン氏に変わりましたが、圧倒的な面白度では、ちっとも負けていません。

息つく間もないアクション・シーンの数々。敵と読者の裏をかく作戦の妙。

これぞ、究極のエンターテインメント。

 

冒頭で、今回の事件にきっかけとなる、自然災害と作戦事故がまず描かれ、そのあとはひねりの利いたベネズエラでの大作戦が展開していきます。

いったんベネズエラでの作戦が一段落したあとは、休暇を満喫する乗組員が、個別に敵の殺し屋に命を狙われるスリリングなシークエンスへ。仲間を危機にさらされたカブリーヨ船長は、壮大な陰謀を企てる敵を打ち倒す決意を新たにする・・・。というわけで、後半は丁々発止の戦いへ。

もうとにかく、ひたすらに面白い!

 

今回も、おなじみ最新鋭のハイテク武器は満載ですが、とくに「ニュートリノほにゃらら」という、ほぼSFの領域に両足つっこんだトンデモ新技術が物語の核となっており、ホントにこんな代物発明されちゃったら、世の中どうなっちゃうんだろうなあ、と(笑)。

なお、表題ともなっている新兵器ドローン〈ピラニア〉は、関係者一同から、「ビックリドッキリメカ」と呼称されておりました(笑)。表紙のイラスト案にも考えたんですが、なんか考えてみるとひたすら絵面が地味でねえ・・・。

 

というわけで、娯楽小説の最高峰ともいってもよいカッスラーの海洋冒険アクション。

ぜひ、お手にとってお楽しみいただければ幸いです。

 

なお、7月末には引き続き、〈ファーゴ〉シリーズの最新作、『The eye of Heaven』が上下巻で発売される予定です。こちらもぜひご期待ください!(編集Y)

 

2016年6月22日 21:41 | | コメント(0)

ジャック・ザ・リッパーは、私のところにいきなり入り込んできて、自分について書くよう強要してきた。彼は一年のあいだ私を人質にとった。書き上げて出て行ってもらわなかったら、奴は私の首を掻き切っていただろう。

―スティーヴン・ハンター

 

 

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5月2日に、スティーヴン・ハンター『我が名は切り裂きジャック』が発売となります。

 

あのボブ・リー・シリーズの巨匠が、硝煙渦巻くスナイプ・アクションの世界を離れ、ヴィクトリア朝ロンドンの歴史の闇へと降臨!
英国犯罪史上最大のミステリー、ジャック・ザ・リッパーの謎に迫ります!


 

あらすじはこんな感じです。

 

1888年8月31日、ロンドンのイースト・エンド、ホワイトチャペル地区。弦月の夜、男は誘い込んだ娼婦の喉を切り裂き、腹をえぐり、はらわたを切り裂いた。
事件の発生を聞きつけた夕刊紙〈スター〉の記者ジェブは、早速現地に向かい、
惨死体を目の当たりにして、他社に先んじてスクープをとる。
その後も凄惨な凶行を次々と重ねてゆく恐るべき殺人鬼。
ジェブは、とあるパーティで知り合った音声学の碩学デア教授に推理面での
協力を得ながら、犯人の正体を暴き出すべく、事件の捜査にのめりこんでゆく......

 

 

え、なんでハンターが切り裂きジャック? と皆さんも思われるかもしれません。
ぶっちゃけ編集者もそう思います。
といいますか、一番こういうとき動揺するのは版元な訳でして、うちで一番の売れ筋で一番部数の刷れる作家さんなのに、第一報を聞いたときはもう青天の霹靂で・・・・え? 先生、新ジャンルにチャレンジしちゃうんだ・・・みたいな・・・(笑)

しかもうちではシェリー・ディクスン・カーの書いた切り裂きジャックものの『ザ・リッパー』(上・下)を、その当時もう権利をとって進めておりまして、ネタがおもいっきり被ってしまったという・・・。どれだけ外人さん、切り裂きジャックのこと好きなんだ、と。

 

ところがですね・・・いざ読みだしてみたら、これがすごく面白いんですよ!

 

内容としては、直球の切り裂きジャックもの。ただし、パトリシア・コーンウェルみたいな研究書ではなく、純然たるフィクションです。

よって、コーンウェルみたいに私財を7億ドルも投じてはいないと思いますが、それでも巻末に膨大な参考文献が付されているとこからもわかるとおり、ハンター自身が長い時間をかけてジャック・ザ・リッパー研究を深めたうえで書きあげた大労作です。(本人は、研究サイトに長大な関連論文を小説とは別途に発表しています)


構成としては、1888年8月31日のホワイトチャペルでの最初の凶行から、事件を追って話が展開し、事件の顛末を描写する切り裂きジャック本人の日記と、それを追う「スター」紙の新進気鋭の記者ジェブの回想録が交互に掲載され、そこに娼婦のひとりが遺した手紙がときどき挿入される、という感じで書かれています。
当時の関係者の書簡で構成するというナラティブからして雰囲気はバツグンなわけで、この素材にぴったりのつくりになっているといえます。

 

まず読みだして感じるのは、描写が徹頭徹尾、細かい。
最初の殺人の描写からして、シェフィールド・スチールのナイフでお腹のどのへんをさしてどんだけ右に切り裂いたらどんな臓器が見えてきてどれくらい力をいれたら筋肉がぶつんと切れて、そこからどの角度でナイフを押し込んで・・・と、とにかくねちっこい。
実はこれ、ハンターがふだん書いているアクションで、銃器に関して記述しているときの書きっぷりそのまんまなんですね。


それから、歴史的事実とフィクションを混ぜる力加減が本当に絶妙です。
この本、たぶん8割がたは、実際に起きた切り裂きジャック事件の内容にそって展開するんですが、そこにハンターならではの仕掛けがあるんですね。
これって、まさにおとどし出した『第三の銃弾』で、ケネディ暗殺事件と自作の『極大射程』をつなげてみせた力技そのまんまで、やっぱりそういうのがハンターはすこぶるうまい。思えばあのあたりから、過去の歴史にのめりこむ危ない傾向が見えてきてたんですけど(笑)、その後、ソビエトの赤軍に実在した女スナイパーを追ってゆく『スナイパーの誇り』を経て、ついにハンターの興味は19世紀まで遡行してしまったというわけです。


加えて特に強調しておきたいのは、本作が最後まで読むと、びっくりするほどちゃんと「ミステリーしてる」という点。
あまり詳しくはいえないんですが、結構明後日の方向からびしっと決まるネタが仕込んであったりして、最終章に入る前の段階で、「おお!そうきたか」って膝を打たれる方も多いのではないでしょうか。

ハンターという作家は、昔からアクション書きとはいいつつもミステリ・マインドにすぐれた人でして、一対一の銃撃戦だと思ってたら実は巴戦だったりとか、思いがけない伏せ札のネタがラストバトルにひめられてたりとか、決してただのドンパチ一辺倒の書き手ではありません。そのへんの魅力を、今回の小説では存分に味わっていただけると思います。


とにかく、「なんでハンターが切り裂きジャックを??」と思われた人にこそ、ぜひ本作を読んでいただきたい。
なぜなら、最後まで読めばこれが、ハンターにしか書けなかった、ハンターだからこそ書けた作品だということがわかっていただけるでしょうから。


本書は結局のところ、切り裂きジャックにとっての「狩りのとき」、追い詰める新聞記者にとっての「狩りのとき」を描いた小説――「屠る」ことを本能とするものどうし、「狩るもの」と「狩られるもの」の命を懸けたつばぜり合いを描いた小説なんですね。
それはまさにハンターという作家の本質。
だから、面白くないわけがない。

 

本当は、本作の構造だったり、テーマだったり、ハンターが本当にやりたかったことについては、いろいろポイントと思われる部分もたくさんあるのですが、残念ながら、どううまく書こうとしてもネタを割りかねないので、またの機会ということにさせていただきたいと思います。

一言だけ言っておくと、本作は突き詰めれば、スワガー・サーガと同根の「ヒーローとは何か」というテーマに帰着する類の物語なのだと思います。ニーチェに関する言及なども含めて、そのあたりに留意しながら読んでいただけると面白いかもしれません。

 

5月2日発売(都心部やネットでは4月29日には発売されているかと)。騙されたと思って、ぜひお手にとってお読みいただけると幸いです!!(編集Y)

(なお気の早い話ですが、本年本国で発売予定の次回作はボブ・リー・スワガーものだそうです!)

 

2016年4月28日 22:44 | | コメント(0)

今さらではございますが、上司のTにつくってもらったまま、ブログのアップを完全に失念しておりました・・・。本当に申し訳ありません・・・。

デイル・ブラウン『極秘破壊作戦 ブラック・スタリオン出動』(上・下)。ハイテク軍事サスペンスの金字塔、マクラナハン・シリーズの最新紹介作です。

 

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 『秘密攻撃部隊』に続く、闘将マクラナハン・シリーズ、最新刊!


マクラナハンは、進化をつづけるハイテク宇宙兵器と仲間とともに、ロシアの野望に立ち向ってゆく! 待望の怒濤の軍事サスペンス!

 

マクラナハン空軍中将は、いま、米軍で最大の極秘航空研究施設――宇宙兵器センターの所長として、軍事計画の指揮を執っていた。
ある日、宇宙機ブラック・スタリオンが内乱のつづくイランを偵察中にテロ兵器を発見。マクラナハンが破壊作戦を指示し、実施されると、イラン市民が巻きこまれる事態に......。さらにこの"失態"を聞きつけた露大統領が狡猾に米大統領を操りはじめ、米国の政治、イランの混乱、そして露国の思惑が一気に交錯し始める。
海軍将校出身で空母打撃群を拡充したい米大統領との確執が深まるなか、マクラナハンは、露国がイランに強力な移動式対宇宙機レーザーを持ち込んでいたことを探知する。露国の策謀を阻止すべく、攻撃指令を出すと、露大統領に誘導された米大統領から中止命令がくだされてしまう。
またもや窮地に陥ったマクラナハンだったが、軍人としての信念のもと、ブラック・スタリオンや無人爆撃機、有人ロボットCID等の最新鋭ハイテク兵器を駆使して、露国反撃への決断を下す・・・・。

 

なお、次作『Rouge Forces』も版権を獲得し、翻訳者の伏見さんに鋭意、翻訳作業を進めていただいております。

「現実がデイル・ブラウンの先見の明に追いつきつつある現在、このシリーズはよりいっそうおもしろく読めるようになった」とは伏見さんの弁。

今年中にはお届け出来るかと思いますので、お楽しみに!(編集Y)

2016年4月19日 19:49 | | コメント(0)

きのう「クリムゾン・ピーク」の初日に、さっそく自腹で身銭切って観に行ってまいりました編集Yです(パンフも買ったよ)。

映画やっぱり面白かったですね。

本作ですが、弊社より、ノベライズが先月中旬より発売中です!!

編集担当は上司のTですが、私めがかわって宣伝をば。

 

ヒロイン、イーディス役に、ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」アリス役で一躍人気者となったミア・ワシコウスカ。シャープ準男爵役に、今をときめく英国男子トム・ヒドルストン。そのお姉さんルシール役でジェシカ・チャスティンが出演しています。

ギレルモ・デル・トロ監督が自身、「本作の絵画のような美しさは、まさにこれまで私が制作した中で最もお気に入りの作品の一つとする理由である」と述べているように、圧倒的な映像美――舞台背景や衣装のビジュアル・イメージの只事ならぬ豊穣さがいちばんの売りとなる作品だというのは、確かにそうでしょう。

ただ、本作を映画館で楽しまれた方は、ぜひとも小説版(ノベライズ)の方にもお手を伸ばしていただきたく。

なにせ、本作「クリムゾン・ピーク」は、「小説」という形態と大変に相性がよろしいのです。

しかも実際に、すぐれた現役ホラー作家を著者として採用し、単独のゴシック小説として十分楽しめるくらい力の入った一冊に仕上がっているのですよ。

 

その辺をぜひここで力説しておきたい(笑)。なのでしばらくお付き合いください。

 

 CRIMSON PEAK.jpg

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あらすじはこんな感じです。

 

1901年、米国バッファロー。作家を目指す24歳のイーディスは、英国紳士トーマス・シャープ卿と出会い、恋に落ちる。結婚に反対する父カーターは密かに探偵を雇ってトーマスと姉ルシールの身元を照会するが、非業の死を遂げる。晴れてトーマスと結ばれ、英国カンバーランドの彼の屋敷で新婚生活を始めるイーディス。しかし、朽ちかけた館では奇怪な現象が立て続けに起き・・・

 

ギレルモ・デル・トロという人は、突き詰めていくと、まさにファン・クリエイターの鑑のような人物なわけですね。「パシフィック・リム」の"ロボット物"や、「ヘルボーイ」の"アメコミ"、「パンズ・ラビリンス」の"ダーク・ファンタジー"など、扱う素材は違えど、いずれもジャンルへの深い造詣と限りない愛情を土台として、実に勘所と要点をとらえた、かゆいところに手のとどく「王道のジャンル作品」を生み出してきた監督といえます。

 

今回、彼が取り組んだのは「ゴシック・ロマンス」というジャンル。

 

このブログに目を通されるような小説読みの皆様には自明のことかとも思いますが、18世紀のホレス・ウォルポールの『オトランド城奇譚』(1764年)に始まり、19世紀に大流行した怪奇幻想小説のジャンルであり、荒涼館を舞台に怪奇現象含みの陰惨な事件やら恋愛やらが展開するのをひとつの定型とします。

ギレルモ・デル・トロは、インタビューで、ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』(1872年)の名前を出しつつ、霊感源としてエミリー・ブロンテ『嵐が丘』(1847年)、シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』(1847年)をあげています。

さらにギレルモ監督は俳優・女優陣に課題図書としていろいろ本を貸し出していて、ミア・ワシコウスカはメアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(1818年)(ついでに『エイジ・オブ・イノセンス』と『ねじの回転』も)を読み、トム・ヒドルストンは、アン・ラドクリフ『ユードルフォの秘密』(1794年)を読んだそうです。トムはインタビューでダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』(1938年)の書名も出しています。

 

表面上は、「スリーピー・ホロウ」や「ウーマン・イン・ブラック―亡霊の館」「アウェイクニング」といった近年のゴシック・ホラーの系譜に属する映画にも見えますが、実際はもっと「小説」寄り、しかも意図的にその「小説ジャンルの王道」を復古的に映画化することを目指すというアプローチなんですね。その辺は、ビブリオマニアでもあり、作家として『ストレイン』シリーズをも大ヒットさせているギレルモらしいスタンスであり、実際、彼はインタビューで何度も「豪勢な古典的ゴシック・ロマンスを作りたい」という意図を語っています。

ヒロインのイーディス自身、ブロンテ姉妹やメアリー・シェリーを想起させるような作家志望の女性ですし、物語の中心には常に「本」が存在しています。イーディスは全編を通じてゴシック・ロマンスの原稿を書き続けていて、それが物語全体と呼応し、かつイーディスとシャープ準男爵を結ぶ「絆」として機能しています。お屋敷には巨大な図書室が登場するのですが、義姉のルシールはここでイーディスに「小口絵」の描かれた稀覯書を見せてくれます(意外な仕掛けをお楽しみに。なお、その隠された真意は、パンフの滝本誠さんの解説をご参照のこと)。その他、序盤ではコナン・ドイルに関する言及がありますし、終盤ではとある筆記具がフィーチャーされます。さらにはエンド・クレジットの後にまで・・・そう、この映画は、なにより「ゴシック・ロマンス小説についての映画」であり、きわめて意識的な「ビブリオ・ミステリ」でもあるのです。

 

すなわち。

これは、本読みにとってはぜひとも観ておかねばならない映画。

逆に言えば、書籍の形態に「戻す」ことに、とても意味のある映画。

本作ノベライズは、「ゴシック・ロマンス小説の映画化を目指した映画の小説化」というツイストの利いた企画というわけです。

 

その作家として白羽の矢が立ったのが、ナンシー・ホルダー(ナンシー・ホールダーの表記も)。

この人、アメリカで最も権威あるホラーの年間賞であるブラム・ストーカー賞を5度も受賞していて、現在は米国ホラー作家協会の副会長を務めている大作家さんなんですね。

まず、1992年「Lady Madonna」、1993年「人魚の声が聞こえる」(祥伝社『囁く血』所収)、1994年「Cafe Endless: Spring Rain」でそれぞれ最優秀短編賞、1995年『Dead in the Water』で最優秀長編賞を受賞)。この時期に書かれた『メイキング・ラブ』と『ウィッチライト』(いずれもメラニー・テムとの共著)は東京創元社さんから邦訳も出ています。ちなみに、弊社発売の短編集『ノストラダムス秘録』の中にも「禁じられた艦隊の最期」という短編が収録されています。

その後、ナンシーは『バフィー 恋する十字架』をはじめとするドラマ・ノベライズを積極的に手掛けるようになります。2011年には『The Screaming Season』で5度めのブラム・ストーカー賞(最優秀ヤング・アダルト)を受賞。手がけている作品には他にもゴシック系の作品やロマンス小説が多数あります。

筆力とジャンル理解、そしてノベライゼーション能力と、小説版『クリムゾン・ピーク』の書き手として、まさに三拍子そろった作家さんなのです。

 

実際、読んでみていただければ、すぐわかります。

これは、そんじょそこらの映画ノベライズなんかじゃない。

ちゃんとした、どこに出しても恥ずかしくない立派な「ゴシック・ロマンス小説」です。

なにせ、本気度が全然違いますから。

映画とセットで生み出された、もうひとつの『クリムゾン・ピーク』と言ってもいい。

内容的にも、情報量が映画の倍増しくらいにはなっており、各シーンでのキャラクターの心情が事細かに描きこまれていて、映画だけ観ていてもわからない部分がしっかり拾えるようになっています。

特にヒロインの心情に関しては、前半戦のシャープに惹かれていく過程や、後半の揺れる心など、驚くほど丹念に描写されています。

また、シャープ姉弟の幼少期に関しては、かなりの追加記述があり、ギレルモ監督からじっくり裏設定などを取材したうえで、入念な資料の読み込みのもと執筆されていることが伺われます。

細部では、小説版ならではの変更箇所も多々あるのですが、いずれも小説家らしいリファインになっていて、得心が行くものばかりです。謎の視点から描かれるパラグラフが挿入される仕掛けもなかなかに面白い。何より、文章が達者で小説としての密度が高い。

映画の面白さを100%味わうためにも、ぜひあわせてご一読いただきたい一冊です。

(それと、怖い映画がからきしダメな人も、小説でなら「クリムゾン・ピーク」の世界を楽しめますよ!)

 

あと、実際に映画館で観ての感想としては・・・アルジェント者なら、この映画は観ないとね

全体としては、たとえばヒッチコックの「レベッカ」だったり、フリッツ・ラングの「扉の蔭の秘密」みたいな往年のゴシック・スリラーを意識したカメラワークや音楽選択が支配的なんですが、怖がらせる要所要所の色彩設定や小道具、ショック演出の嗜好・傾向が実にダリオ・アルジェントくさい(笑)。黒手袋とかオートマタとかエレベータとかシンメトリカルな廊下とか壁の子どもの絵とか昆虫とか・・・最初に起きる殺人シーンなんて、きっとアルジェント・フリークが観たら大歓喜だと思うなあ。

もともと初期作においては、アルジェント的な美学を継承するホラーの撮り手だったギレルモ・デル・トロ。そんな彼が、久しぶりにホームグラウンドに帰って、愛するゴシック・ロマンスの世界を映像化する過程で、「好きなホラー」のテイストをも、今まで以上に衒いなく注ぎ込んできたってことなんでしょう。

当のアルジェントがさすがに昔日の輝きを喪ってしまった今日、こういう趣味性の強いアート・ホラーの極みみたいな映画を楽しげに出されると、もうこちとらこたえられませんね・・・ご飯何杯でもいけちゃいます。

 

というわけで、公開が始まりました「クリムゾン・ピーク」。

まずは映画を観て、

それから弊社ノベライズでじっくり細部と裏設定を復習して、

あわせてアートブック『ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス(他社さんですが、これがもう、ものすごい出来の本でして! あ、そういやアルジェント研究本のタイトルも『ART OF DARKNESS』だったなw)も買って、鬼才ギレルモ・デル・トロの世界を存分にご堪能いただければ幸いです。(編集Y)

 

 

 

 

2016年1月 8日 23:31 | | コメント(1)

あのロリンズのデビュー作です。
〈シグマフォース〉シリーズや小社刊の『アイス・ハント』『アマゾニア』でお馴染み、いまや巨匠の風格も漂うジェームズ・ロリンズ。
その(実質的な)デビュー作が本書『地底世界 サブテラニアン』(原題:Subterranean、1999)です。

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いきなり「お馴染み」だとか、「巨匠」だとか、「風格漂う」だととか、いかにも空っぽな言い草ではありますけど、実際本書もまたロリンズイズムの完璧なショーケースであることに間違いないのであって(まあ、遡って読めばそう確認できるということです)、これらの言葉がほのめかすであろう作家のオリジナリティとそのクオリティ・コントロールはデビュー作にして驚くべき水準にあります。

つまり、抜群に面白い!

南極の地底に巨大な洞窟網が発見されて、そこでありえない時代のありえない人工物が見つかる......心躍る未知の領域への冒険、背筋も凍る奇態な生物との遭遇、生物史の別解を示唆する突飛な科学的イマジネーション、ハイスピードな物語......。

じつにロリンズしてます。

そして本書の特徴のひとつは、ある民族の伝承を物語の要に組み込むその手つきです。
編集者としては、ここには「サイエンススリラー」作家として成熟した現在のロリンズにはない、「非サイエンス」的なゆるやかさ(「ゆるさ」ではなく)があって、それが逆説的に作品にスリルを与えているような気がしています。

......詳しくはもちろん読んでのお楽しみです。

〈あらすじ〉
一人息子と2人で暮らす考古学者アシュリーのもとに、ブレイクリーなる科学者が訪ねてくる。政府中枢が主導する極秘調査にリーダーとして参加してほしいという。目的を知らされぬまま、報酬に魅力を感じたアシュリーは参加を決意。同じくチームに招集された洞窟探検の専門家ベンジャミンらと調査地である南極へ向かう。途中、アシュリーらは驚くべき事実を知らされる。南極のエレバス山の地下に巨大な洞窟網が走り、その中で人類史を大きく揺るがす遺物が発見されたというのだ。それは......。

2015年12月28日 01:51 | | コメント(0)

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