2007年2月アーカイブ

さて、2月の扶桑社海外文庫の新刊は3点。
まずは、本邦初訳となるリサ・マリー・ライスのロマンティック・サスペンス『真夜中の男』のご紹介から。
愛する女を守るために疾駆する、SEAL(海軍特殊部隊)出身のヒーローの物語です。

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■真夜中の男
■リサ・マリー・ライス著
■文庫判
■定価/880円(税込)
■2007年2月28日
■ISBN978-4-594-05323-9
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美貌のインテリア・デザイナー、スザンヌのもとに現われた警備会社社長のジョンは、危険な香りのする男だった。それもそのはず、彼は「ミッドナイト・マン」の異名をとる元海軍特殊部隊員。
出会ったその日から、二人は強く魅かれあう。しかしスザンヌの周辺には、彼女の命を狙う謎の殺し屋たちの影が……。
愛する女を守るため、すべてをなげうって立ち上がるジョン。そして、二人きりの逃避行がはじまった!

翻訳者が原書で読んでびっくりぎょうてんしたという、掘り出し物。
読み始めたらもう、ページを繰る手を止められない、手に汗握るスリルと濃厚なラブシーンの連続! なんといっても、スーパーヒーロー・ジョンの、男としての獰猛な力強さと少年のような「うぶさ」のギャップがこたえられません……。
スーザン・ブロックマンあたりのアルファメールものがお好きな貴女には、とくに超おすすめ。
めくるめく官能に彩られた、ノンストップ・ロマンティック・サスペンスの決定版です!

2007年2月28日 19:00 | | コメント(0)

その1 その2 その3
ながながとお付き合いいただき、すいませんです。オックスフォード最終回です。

これは極私的な意見ですが、日本の文化受容って「蒸留」に近い部分があると思っています。原産国の「どぶろく」をより精製して純化し、細分化してゆく小器用でやたら真摯な文化受容。ラーメンやカレーだってそうでしょう。本格ミステリの場合いつも思うのは、クロフツの『樽』を読んで、鮎川哲也氏が『黒いトランク』を書いちゃうのが日本なんだなあということ。たぶん、イギリス人が読んだらびっくり仰天するんじゃないでしょうか。そのあまりの「蒸留」ぶりに。
そう考えると、同じ本格ミステリの祖国イギリスを舞台に、理知とたくらみの延長上でパラレルワールドを展開した山口雅也氏と、ものすごく素のままにイギリスをパラレルワールドにしてしまったマルティネスという対比……「本格」というアングロ・サクソン的な「論理の文学」を、いかにそれぞれの民族が受容し国民性のなかで変質させたか、という議論も成立しそうです……。
なんて、やくたいもないことを「改変」問題を通じて僕は夢想したのでした。

各社のベスト10などでの評価をマルティネス氏に連絡したところ、たいへん喜んでおられました。彼の次回作は、“THE SLOW DEATH OF LUCIANA B”(ルチアナ・Bの緩慢なる死)とのこと。まだ執筆途中らしく詳細は不明ですが、なんか本格ミステリの香がぷんぷんします。いや、そうであってほしい(笑)。あと一押し、『オックスフォード』が売れてくれれば、きっと企画も通るでしょう。いや、通したい(笑)。というわけで、読者のみなさんも、ぜひ本書をご購入・ご紹介いただき、応援していただけると嬉しいです!(Y)

2007年2月25日 19:25 | | コメント(0)

その1 その2
原書から英訳版への大幅な改編。問い合わせたメールへの著者からの返信は「それは知りませんでしたねえ」というあっけらかんとした(まさにラテン)返答でした。
どうやら、英訳した翻訳者が勝手に著者の「間違い」を直したもののようです。もちろん、実際には「間違い」の箇所はすべて著者が「故意に」ちりばめたものとのことでした。ちなみに、著者からのメールには、「そこまで訳文を真剣にご検討いただき、ただただ驚いています」などと書いてありました(笑)。このアバウトさ……ぜひ見習わなければ!
一件落着。結局、原典そのままでいったわけですが、なんだかラテンのミステリ観と、英米のミステリ観の相違がほのみえてとても面白かったです。

マルティネスにとっては、現実世界は幻想・神話と地続きのものであり、理知的な論理の世界である本格ミステリもまた、幻想が介在して是とされるポエティックで神話的な世界なのでしょう。むしろ、わざとそれをちりばめてきている。ところが一方、英米の出版社はそれを「誤植・著者の思い違い」と判断した、ということです。
ゴチック小説/幻想文学を祖形としながら、その幻想を打ち破る「理知の光」としての「推理」をつきつめてきた英米の本格。それをふたたび幻想の沃野へと引き込んだアルゼンチンのマルティネス。ひるがえって、日本で本格がどのように受容されてきたかなどと考えると大変興味深いと思いませんか?(続く)  (Y)

2007年2月24日 19:15 | | コメント(0)

その1
本書の翻訳は、スペイン語の原書を底本としてお願いしていました。ところが、英訳版には内容に大きな異同があるというのです。
チェックしてみると、たしかにかなりの改変が見られました。そして、その傾向には一定の法則があったのです。

『オックスフォード連続殺人』のモチーフには、いくつかの「うそ」が挿入されています。それは、フィクションという意味ではなく、架空のモチーフという意味の「うそ」です。
たとえば「アングスタム」という動物。どうやらオポッサムのような有袋類らしいのですが、イギリスに有袋類は棲息していません。どうやらボルヘスか何かの小説に出てくる架空の動物のようです。
あるいは、コープランド作曲の「シャイアンの春」。「アパラチアの春」ならありますけど……。そもそも、トライアングルがメインの協奏曲なんて、あるわけはないのです。

こうした、「幻想のモチーフ」が英訳版では軒並みカット、あるいは現実に即して変更され、関係する文節をまるまる書き換えるなどの処理がなされていました(アングスタムは、アナグマに変更……)。あと、オックスフォードに実際にはない路線や新聞の名前も変更されていたり……。
あせりました。なぜなら、英訳版が出たのは最近です。著者の意向で訂正されている可能性も高いのです。それなら、全面的に原稿を見直さねばなりません。
そこで、考えあぐねたすえ著者のマルティネス氏にメールで連絡をとってみました。
著者からの返信は……。(続く)  (Y)

2007年2月23日 19:09 | | コメント(0)

編集を担当した本には、それぞれにいろいろな思い出があります。
もちろん、一般文芸書と違って、翻訳書の場合は専ら翻訳者さんとのやりとりが作業の中心となるので、著者とアイディアを出し合うとか、朝まで飲み明かすなんてことはありませんが、必ず制作の過程で心に残る出来事がひとつやふたつは起こるものです。
これから何回かに分けて、担当編集者Yが経験した、書籍制作のちょっとした裏話を紹介していければいいな、と思っております。

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オックスフォード連続殺人』の訳稿を最初に読んだときには、正直ぶったまげました。
著者はアルゼンチン人なのに、バリバリの王道本格。竹本健治ばりのペダンティズム。パラレルワールドとして浮かび上がる幻想のイギリス。青春小説としての澄んだ味わい。
地球の裏側アルゼンチンに、日本の新本格派と通底する問題意識をもった作家がいるということにまず驚きましたし、ボルヘス的な神話的幻想性が明晰なロジックと分かち難く結びついていることに衝撃を受けました。
たしかに本書の大ネタには前例がある。でも、その処理も理念もまったく異なります。これはこれですばらしい。こんな傑作を担当できて本当に良かった、と思ったわけです。

再校のゲラを回している編集作業も大詰めの頃、あわてふためいた翻訳者さんから、連絡が入りました。
「最近出た英訳版を手に入れたのでざっと目を通してみたんですが、……スペイン語の原書と内容がかなり異なっているんですが……どうなってるんでしょう?」
「は……はい?」(続く)  (Y)

2007年2月22日 19:03 | | コメント(0)

「バカミス」とは、「バカ・ミステリー」の略。
 というと、なにか人をバカにしたミステリーのことのようですが、けっしてそうではない...と思います。

 くわしくはこれを参考にしていただきたいのですが、まずは「常識はずれで、読者の度肝を抜く作品」ぐらいに思っていただけるといいのでは。
 つまり、「バカ」は、この場合、ほめ言葉なのですね。

 さて、そんなバカミス愛好者のみなさんが、2006年度の「私が選ぶベストバカミス」を投票された結果、ぶっちぎりで1位に選ばれたのが、デイヴィッド・J・スカウ『狂嵐の銃弾』でした。

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 ■狂嵐の銃弾
 ■デイヴィッド・J・スカウ著
 ■文庫判
 ■定価/920円(税込)
 ■2006年9月30日
 ■ISBN978-4594052249
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 著者スカウは、映画『クロウ/飛翔伝説』の脚本家として有名ですが、もともとホラーの専門家。
 その彼が、満を持して発表したサスペンス小説が、この作品。
 スーパーナチュラルな要素はまったくなし(と言っていいのだろうか)。

 主人公は、ひと気のない海岸に住む建築家。日々、射撃訓練を欠かさない、マッチョなやつです。
 そこへ、古い友人が訪ねてくるのですが、そこからじょじょに、主人公の世界は変容をきたしていきます。
 ハリケーンが迫るなか、予想外の闖入者に導かれて、主人公が近所の屋敷におもむくと、そこでは狂乱のパーティが繰りひろげられていて...

 後半に展開するすさまじい銃撃戦と、だれもが息を呑む驚きのどんでん返しは、これはもう、じっさいに体験していただくよりほか、説明のしようがないのです。

 しかし、これはただ、読者を驚かせることだけを狙って書かれた作品ではないのです。
 多数の書評家さんが指摘されているように、主人公の世界が揺らぎ、異様なサスペンスを物語に吹きこんでいく著者の筆力は、すさまじいものがあります。

 この衝撃は、読んだ人しか味わえません。
 ぜひ、どうぞ。〈編集・T〉

2007年2月21日 11:22 | | コメント(0)

1月の新刊紹介第2弾は、V・C・アンドリュースの『夢からさめて』。
弊社では5年半ぶりのアンドリュースの新刊です。
『屋根裏部屋の花たち』で一世を風靡した作家のエッセンスが凝縮された、養女となった孤児と、継母の葛藤の物語です。

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■夢からさめて
■V・C・アンドリュース著
■文庫判
■定価/720円(税込)
■2007年1月30日
■ISBN978-4-594-05303-1
■オンライン書店で購入する
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施設で暮らす孤児ブルックのもとに、ピーターとパメラのトンプソン夫妻がやってきます。思いがけない、里親としての申し出。
豪奢な家庭にもらわれて、ブルックを取り巻く環境は激変します。何一つ不足のない生活。学校でもブルックはソフトボールで大活躍し、評判を高めてゆきます。
しかしパメラは、そんな彼女を美少女コンテストに出場させようと尽力するのでした。・・・あの人が愛しているのは、本当のわたしなの? 

けなげで凛としたスポーツ万能のヒロイン、ブルックの魅力もさることながら、一見明るい令夫人といった継母のパメラがしだいに垣間見せる執着と妄念が、幸せな日常を侵蝕してゆくスリルは、さすがアンドリュースというしかありません。
ジャンルとしてはヤングアダルト路線ですが、大人の方ももちろんぐいぐい引き込まれます。昔からのアンドリュース・ファンの方も、若い読者の方も、毛色の変わった「おしん」ものとして、ぜひお楽しみくださいませ。

2007年2月13日 19:50 | | コメント(0)

「名作紹介」のコーナーで、絶対にはずせない作品が、個人的にはこれ。

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 ■よみがえる鳥の歌(上・下)
 ■セバスティアン・フォークス著
 ■文庫判
 ■定価/各890円(税込)
 ■2002年6月30日
 ■ISBN 4-594-03616-3
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 おそらく、本文庫を代表する文芸大作でありながら、残念ながら、埋もれてしまいました。
 英国では「戦後書かれた最高の小説」と激賞され、著者フォークスは、現代を代表する作家として高い評価を受けています。
 扶桑社で出したのが悪かったのか!?

 物語は、20世紀初頭、ある英国人青年のはげしい恋愛を描いていくのですが、舞台は一転、第1次大戦の悪夢のような塹壕のなかに移ります。
 いったい青年に何があったのか?
 小説はさらに、現代からこの青年の真相を探ろうとする女性の姿をからめ、多層的に展開していきます。

 圧倒的な筆致とドラマは、まさに第一級。
 恋愛、戦争、勇気、裏切り、ミステリー、人生...そう、あらゆる要素を飲みこんだ小説であり、ぜひとも読んでいただきたいのです。
 けっして失望はさせません。
 これほどの作品が、なぜ売れないんだ!

 セバスティアン・フォークスは、このあと、映画化もされた『シャーロット・グレイ』を発表します。
 第2次大戦を舞台にした小説で、こちらのほうを好まれる読者も多いでしょう。
 ぜひ読みくらべてください。〈編集・T〉

2007年2月 8日 16:18 | | コメント(0)

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