その1
本書の翻訳は、スペイン語の原書を底本としてお願いしていました。ところが、英訳版には内容に大きな異同があるというのです。
チェックしてみると、たしかにかなりの改変が見られました。そして、その傾向には一定の法則があったのです。

『オックスフォード連続殺人』のモチーフには、いくつかの「うそ」が挿入されています。それは、フィクションという意味ではなく、架空のモチーフという意味の「うそ」です。
たとえば「アングスタム」という動物。どうやらオポッサムのような有袋類らしいのですが、イギリスに有袋類は棲息していません。どうやらボルヘスか何かの小説に出てくる架空の動物のようです。
あるいは、コープランド作曲の「シャイアンの春」。「アパラチアの春」ならありますけど……。そもそも、トライアングルがメインの協奏曲なんて、あるわけはないのです。

こうした、「幻想のモチーフ」が英訳版では軒並みカット、あるいは現実に即して変更され、関係する文節をまるまる書き換えるなどの処理がなされていました(アングスタムは、アナグマに変更……)。あと、オックスフォードに実際にはない路線や新聞の名前も変更されていたり……。
あせりました。なぜなら、英訳版が出たのは最近です。著者の意向で訂正されている可能性も高いのです。それなら、全面的に原稿を見直さねばなりません。
そこで、考えあぐねたすえ著者のマルティネス氏にメールで連絡をとってみました。
著者からの返信は……。(続く)  (Y)

2007年2月23日 19:09

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ