その1 その2
原書から英訳版への大幅な改編。問い合わせたメールへの著者からの返信は「それは知りませんでしたねえ」というあっけらかんとした(まさにラテン)返答でした。
どうやら、英訳した翻訳者が勝手に著者の「間違い」を直したもののようです。もちろん、実際には「間違い」の箇所はすべて著者が「故意に」ちりばめたものとのことでした。ちなみに、著者からのメールには、「そこまで訳文を真剣にご検討いただき、ただただ驚いています」などと書いてありました(笑)。このアバウトさ……ぜひ見習わなければ!
一件落着。結局、原典そのままでいったわけですが、なんだかラテンのミステリ観と、英米のミステリ観の相違がほのみえてとても面白かったです。

マルティネスにとっては、現実世界は幻想・神話と地続きのものであり、理知的な論理の世界である本格ミステリもまた、幻想が介在して是とされるポエティックで神話的な世界なのでしょう。むしろ、わざとそれをちりばめてきている。ところが一方、英米の出版社はそれを「誤植・著者の思い違い」と判断した、ということです。
ゴチック小説/幻想文学を祖形としながら、その幻想を打ち破る「理知の光」としての「推理」をつきつめてきた英米の本格。それをふたたび幻想の沃野へと引き込んだアルゼンチンのマルティネス。ひるがえって、日本で本格がどのように受容されてきたかなどと考えると大変興味深いと思いませんか?(続く)  (Y)

2007年2月24日 19:15

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ