その1 その2 その3
ながながとお付き合いいただき、すいませんです。オックスフォード最終回です。

これは極私的な意見ですが、日本の文化受容って「蒸留」に近い部分があると思っています。原産国の「どぶろく」をより精製して純化し、細分化してゆく小器用でやたら真摯な文化受容。ラーメンやカレーだってそうでしょう。本格ミステリの場合いつも思うのは、クロフツの『樽』を読んで、鮎川哲也氏が『黒いトランク』を書いちゃうのが日本なんだなあということ。たぶん、イギリス人が読んだらびっくり仰天するんじゃないでしょうか。そのあまりの「蒸留」ぶりに。
そう考えると、同じ本格ミステリの祖国イギリスを舞台に、理知とたくらみの延長上でパラレルワールドを展開した山口雅也氏と、ものすごく素のままにイギリスをパラレルワールドにしてしまったマルティネスという対比……「本格」というアングロ・サクソン的な「論理の文学」を、いかにそれぞれの民族が受容し国民性のなかで変質させたか、という議論も成立しそうです……。
なんて、やくたいもないことを「改変」問題を通じて僕は夢想したのでした。

各社のベスト10などでの評価をマルティネス氏に連絡したところ、たいへん喜んでおられました。彼の次回作は、“THE SLOW DEATH OF LUCIANA B”(ルチアナ・Bの緩慢なる死)とのこと。まだ執筆途中らしく詳細は不明ですが、なんか本格ミステリの香がぷんぷんします。いや、そうであってほしい(笑)。あと一押し、『オックスフォード』が売れてくれれば、きっと企画も通るでしょう。いや、通したい(笑)。というわけで、読者のみなさんも、ぜひ本書をご購入・ご紹介いただき、応援していただけると嬉しいです!(Y)

2007年2月25日 19:25

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