2007年3月アーカイブ

 お待たせしました、ジム・トンプスンの新刊です。

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 ■荒涼の町
 ■ジム・トンプスン著
 ■三川基好訳
 ■文庫判
 ■定価/840円(税込)
 ■2007年3月30日
 ■ISBN978-4-594-05342-0
 ■オンライン書店で購入する
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 今回お届けするのは、1957年の作品、 Wild Town です。

舞台はテキサスの片田舎、トンプスンをご存じのかたならおなじみとも言うべき、石油町。
 石油を掘り当てたヤマ師が、場違いなホテルを建設。
 そこの警備主任として雇われた男が今回の主人公。
 ある事件をきっかけに、ホテルの人びとの裏の顔が明かされていき、物語は予想もつかない方向へところがっていきます。
 展開の見えない緊迫感もさることながら、本作品の目玉は、ストーリーの裏で糸を引く保安官助手、ルー・フォード。
 そう、『おれの中の殺し屋』のルー・フォードが、ふたたび登場するのです。
 彼が、物語をどこへ持っていくか?
 その驚くべき幕切れを、ぜひご堪能ください。(編集部・T)

2007年3月30日 00:00 | | コメント(0)

森泉さんが亡くなられたことを知って、最初に思ったのは、なんとか『蜘蛛の迷路』(と森泉さんは『女郎ぐも』のことを呼んでいました)を出版できないか、ということでした。
おそらくなら、9割がた、いやほぼ完成した状態の訳稿があるはずなのです。
森泉さんが、最後のときを懸けて心血をそそいだ、「ピカピカの新訳」が。
大家さんに教えてもらったご遺族の方に、原稿、あるいはフロッピイでそれらしきものがあれば、ぜひ探してみて欲しいと電話でお願いし、その日は帰宅しました。

しかし、結局、原稿は発見されませんでした。業者の方が入って遺品整理が行われたようですが、よくわからなかったとのこと。今にして思えば、ワープロをそのまま譲り受ければ良かったのかも、と思ったりもします。そもそも、もっと早く連絡を取っていれば……。後悔の念がわが身をさいなみます。
その後、同窓生の方からご連絡をいただき、早稲田の一文では眉目秀麗な才女として、みんなのアイドルでいらっしゃったというお話をうかがいました。僕のほうからは、これまでの経緯をお話させていただきました。

森泉玲子さんは、たった1冊の訳本を遺して、世を去りました。
だから、この本は、森泉さんが生きた証でもあります。
今、この時代にクェンティンが読めるのは、クェンティンを愛したひとりのご婦人の尽力があったからなのです。

今、僕の手元には、森泉さんが試訳として送ってくださった『蜘蛛の迷路』の7章と8章だけが、クリアファイルに入れて保管されています。(Y)

2007年3月16日 20:57 | | コメント(0)

その後、森泉さんからは何度かご連絡をいただきました。森泉さんは、『悪女パズル』の訳了後、同じクェンティンの『女郎ぐも』の新訳にのぞまれていました。2005年の年末にいただいたお手紙には、「ピカピカの新訳に仕上げるつもりなので、どうぞご期待ください」とありました。
ところが、2006年の3月に「もうしばらくお待ちください」とのお話があって以来、ご連絡がとだえました。こちらも忙しさにかまけて、「訳が完成したら連絡があるだろう」くらいに構えていました。
7月になってふと、さすがにどうされているのかな、と思い、電話をかけてみることにしました。今となっては虫の知らせだったのでしょうか。電話口からは、「現在、この電話番号は使われておりません」とのメッセージが。いやな予感がしました。

翌朝、早速、祐天寺のマンションにあるご自宅を初めて訪ねてみました。すでに表札はなく、郵便受けにはガムテープが貼ってありました。呼び鈴を押しても応答がありません。
隣近所の方もみなお留守です。ようやく階下の方にお話を伺うことができました。森泉さんは一週間ほど前に自室で倒れられて、そのまま帰らぬ人となったとのお話でした。一人暮らしをされていたので、発見がかなり遅れたとのことでした。
あまりに悲しい、そして、あまりに辛い結末でした。(続く)  (Y)

2007年3月15日 15:22 | | コメント(0)

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悪女パズル』は、とあるひとりの翻訳者さんの熱意によって出版に至った作品です。
パトリック・クェンティンといえば、アメリカ本格の大立者ですが、近年は現役の本もほとんどなく、初期の「パズル」シリーズも読めないか、訳はあっても入手不能なものばかりでした。
翻訳者の森泉玲子さんが弊社を訪ねられたのは、僕がミステリ編集の職に就く前のことです。何社かに断られたのちに、うちに来られたようです。当時はまだ国書刊行会さんの叢書が成功する以前で、本格ものの復刊が商売になるかどうかは未知数の時代でした。森泉さんの熱意あふれる説得があってこその出版決定だったのです。

担当することになってお会いした森泉さんは、とても上品な老婦人でした。頭におしゃれなターバンを巻き、美しい日本語を話される魅力的な方でした。これまでいろいろされてきたそうですが、書籍の翻訳は実は初めてとのこと。なんでも、かなりお年を召されてから一念発起して翻訳学校に通い、時間をかけて本書の訳文を練り上げていったそうです。
タイトルに関してうちの会社の上役から横槍が入ったときには、どうしても『悪女パズル』でなければならない理由について書き綴った、何枚にもわたるお手紙を頂戴したこともありました。

そして、出版。結果、作品は好評をもってミステリ・ファンに迎え入れられました。本格ミステリBEST10の2006年度版で、海外部門堂々の2位。「あの扶桑社が」と揶揄されながらも(笑)、とても嬉しい出来事でした。森泉さんも随分と喜んでおられました。(続く)  (Y)

2007年3月14日 16:58 | | コメント(0)

『ハスラー』の著者ウォルター・テヴィスは、1984年に死去しています。
 いま、テヴィスの著作権は、未亡人のエレノラ・テヴィスさんが管理されています。

 このエレノラさん、アメリカの文芸エージェント〈スーザン・シュルマン・リテラリー・エージェンシー〉で働いています。
 たとえば、扶桑社の『ちょい不幸はクセになる』は、エレノラさんをとおして版権を取得したものです。

『地球に落ちて来た男』の出版に際しては、エレノラさんに、テヴィスとの貴重な思い出話を寄稿してもらいました。
 エレノラさんには、一度お会いしたのですが、ちょっと線の細い老婦人でした。
 昨年は体調を崩され、ブックフェアへの出張も取りやめにされたとのこと。すこし心配です。

 2001年、有名なアメリカのビリヤード競技者、エディ・パーカー(69歳)が亡くなりました。
 エイトボール大会でエグジビジョンに出場する前日に倒れるという、劇的な最期でした。
 パーカーは、そのプレイのスタイルから“ファスト・エディ”と呼ばれ、『ハスラー』のモデルだと思われていたとのこと。
 しかし、エレノラさんによると、これは根も葉もないことで、テヴィスの作品が先にあったのだそうです。
 じっさい、『ハスラー』が売れ、映画化されると、「自分がファスト・エディの(あるいは、ミネソタ・ファッツの)モデルだ」と称する者が、たくさん現われたそうで。
 テヴィス自身、あるインタビューで「ミネソタ・ファッツに最初に出会われたのはいつですか?」と聞かれ、「ウォルト・ディズニーに対して、『ドナルド・ダックにはじめて会ったのはいつですか?』とは誰もたずねないだろう」とぼやいています。

 ところで、『ハスラー』の解説で、関口苑生氏が“My Life with the Hustler”という本について触れられています。
 取り寄せてみたのですが、関口氏が予想されているとおり、テヴィスの最初の妻ジェイミーさんによる回想録でした。
 貴重な写真満載ではあります。〈編集・T〉

2007年3月 2日 19:16 | | コメント(0)

『ハスラー』を読んだら、ぜひ手にとってほしいのが、『シンシナティ・キッド』

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 ■シンシナティ・キッド
 ■リチャード・ジェサップ著
 ■真崎義博訳
 ■文庫判
 ■定価/620円(税込)
 ■2001年3月30日
 ■ISBN978-4-594-03104-6
 ■オンライン書店で購入する
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『ハスラー』がビリヤード(プールゲーム)なら、『シンシナティ・キッド』はカード(ポーカー)
『ハスラー』がポール・ニューマンなら、『シンシナティ・キッド』はスティーブ・マックィーン
『ハスラー』がエドワード・G・ロビンソンなら、『シンシナティ・キッド』はジャッキー・グリーソン
『ハスラー』がウォルター・テヴィスなら、『シンシナティ・キッド』はリチャード・ジェサップ

...と、いろいろくらべたくなるこの2作。

 どちらも、競技として昇華されたギャンブルに、知力・体力・時の運をかけて挑む男たちの姿を描いた、名作中の名作であります。
 しかも、アプローチのちがいで、こんなに味わいが変わるのですなあ(ヒロインの造形の差も興味深いところ)。

 ぜひ本棚にならべてあげてください。〈編集・T〉

2007年3月 2日 18:34 | | コメント(0)

 映画ファンならずとも、ポール・ニューマンの若々しい演技が印象的な名作『ハスラー』はご存じでしょう。
 小説好きなかたは、さらにその原作がウォルター・テヴィスだということも知っていらっしゃるのでは?
 というわけで、その小説が、本邦初登場の運びとなりました。

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 ■ハスラー
 ■ウォルター・テヴィス著
 ■真崎義博訳
 ■文庫判
 ■定価/840円(税込)
 ■2007年2月28日
 ■ISBN978-4-594-05322-2
 ■オンライン書店で購入する
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 ハスラーとは、賭けビリヤードのプロのこと。
 若いけれど腕のいいハスラーのエディ(映画ではポール・ニューマン)が、国いちばんとも言われる名手ミネソタ・ファッツ(映画ではジャッキー・グリーソン)に挑み、這いあがる姿を描く小説です。

 著者テヴィスは、『地球に落ちて来た男』(えっ、品切れ!?)をはじめ、とぎすまされた独自の作風で知られる作家(1928-84年)。
 本書は彼のデビュー作ですが、白熱したゲームと、戦う男の孤独とを鮮烈に描き、テヴィスらしさが横溢した名作です。

 ビリヤードなんて知らない、というかた、古くさい小説じゃないかと疑っているかた、ともかく、お読みくださいな。〈編集・T〉

2007年3月 2日 17:41 | | コメント(0)

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