ドナ・タートという作家をご存じですか?
 そう、扶桑社から『シークレット・ヒストリー』が出版されている、アメリカの作家です。

 日本では、正直なところ、それほどでもなかったのですが、この『シークレット・ヒストリー』は、世界的にはたいへんな反響を巻き起こし、大ヒットとなりました。
 それ以来、ドナ・タートという名は、「超大型新人」の代名詞のように使われるようになったのです。

 ところが、ドナ・タートの第2作は、長いあいだ出版されませんでした。
 したがって、ドナ・タートの名は、「歴史的な作品を書きながら、それっきりの作家」の仲間入りをすることになりました……マーガレット・ミッチェルとか、ラルフ・エリスンとか、ハーパー・リーとか、あるいは第2作に十数年をかけたジョーゼフ・ヘラーとか。

 そして、『シークレット・ヒストリー』からじつに10年後、ついに待望のドナ・タートの第2作が発表されました。
 それが、この『ひそやかな復讐』です。

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 2作めがなかなか出ない理由として、プレッシャーのせいではないか、デビュー作がフロックだったのはないか、などとささやかれていたようですが、英国の〈ガーディアン〉は、こう評しました。

「ドナ・タートが第2作にこれほどの時間をかけた理由は、単純だ。良い作品を書きたかったからである」

 そう、これは圧倒的な小説です。
 物語の舞台は、70年代のアメリカ深南部。
 ある少年が何者かに殺され、木の枝から吊り下げられる、という残酷な事件から9年後、その犯人探しに立ちあがる少女の物語です。
 と、ストーリーだけを抽出すると、なにやらいさましい感じがしますが、けっしてそうではありません。
 いえ、そういう部分もたしかにありますが、それはこの小説のごく一部にすぎないのです。
 主人公の一家を中心に、それを取り巻く人びとの人生や彼らが生きる風土が、多層的に描かれていきます。
 そういうと、これまた、かったるい小説に受け取られてしまうかもしれませんが、それもまたちがいます。
 欧米でも「長すぎてサスペンスが削がれる」という書評も出ましたが、けっしてそうではないと思います。
 一人ひとりのキャラクターはあざやかに浮き彫りにされ、エピソードのひとつひとつはじつに楽しく、おもしろい。
 笑えるところ、身につまされるところもいっぱいです。
 いっぽうで、そういったこまごました出来事が複雑にからみあい、複線がつぎつぎ織りあわされて、たいへんなサスペンスになだれこんでいきます。
 そして、論議を呼んだ結末。

 語りはじめると、キリがないですね。
 小説を味わうという体験をもとめるかたには、ぜひお読みいただきたい作品です。(編集部・T)

2007年5月30日 22:33

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