2007年9月アーカイブ

 ベテラン作家リチャード・マシスンは、2006年に本文庫から出版した『奇術師の密室』で、年間ベストに選出されるなど大きな注目を集めましたが、今回は彼のレアな初期作品をお届けします。

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 本書は、1953年に刊行された、マシスンの長編第2作で、じつに半世紀以上を経ての紹介となります。

 深夜の病室にまんじりともせずに座っているのは、将来を嘱望されたピアニストのヴィンス。
 頭のなかに聞こえてくる謎の声と戦いながら、施設からの逃亡を企てています。
 ここに閉じこめられる原因となったやつらに復讐し、愛する女性ルースを救うために。
 ちょっとここでは書きにくいような看護師の隙を突いて、ヴィンスは脱出に成功するのですが...

 マシスンといえば、なんといっても巧みな小説作法が大きな魅力ですが、初期作品の本書でも、それはじゅうぶんに味わえます。
 まず、ある日の午前1時から夜明けまでを、場面を変えながら、時系列にそって描く構成をとっています(TVドラマ『24』の感じ?)。
 また、物語の前半ではヴィンスの逃走劇がメインとなり、後半は一転して、関係者全員が集まったアパートメントをヴィンスが支配するという、緊迫した密室劇が展開します。
 その過程で、主人公ヴィンスの過去がすこしずつに読者に開示されていくのです。

 もうひとつ、本書のポイントは、かなり早い時期に書かれた、サイコ・サスペンスだということでしょう(ロバート・ブロックの『サイコ』が1959年の刊行です)。
 マシスンが、いかなるサイコ像を作りあげているか、そのあたりもぜひご確認ください。(編集部・T)

2007年9月27日 10:58 | | コメント(0)

『深夜の逃亡者』が出版できたのは、翻訳家の小鷹信光氏のおかげでもあります。

 以前、『ジム・トンプスン最強ガイド』amazon7&Y楽天ブックサービスbk1)の準備で、小鷹さんのご自宅を訪ねたときのこと。
 ご存じのように、小鷹さん宅は、長年にわたって蒐集されたアメリカのペイパーバックや雑誌が大量に保管された、第一級の図書館でもあります。
 そのときの眼目は、もちろんトンプスンで、貴重な資料を多数お借りすることができたのですが、いろいろと拝見しているなかで出会ったのが、『深夜の逃亡者』の原書“Fury on Sunday”でした(『ジム・トンプスン最強ガイド』の小鷹さんの労作でも、この本について触れられています)。
 ちょうど『奇術師の密室』の翻訳が進行中だったため、その件をお話しすると、なんと小鷹さんが、その貴重な原書を持っていきなさい、とおっしゃるではないですか!
 断われるはずもござんせん。

 というわけで、『奇術師の密室』が年間ベストに選ばれて、社内的に、次のマシスン作品を出してよし、ということになった際の編集部としての選択肢は、『奇術師』の次に書かれた“7 Steps to Midnight”か、あるいは、この“Fury on Sunday”か、ということになったのでした。

 さて、“7 Steps to Midnight”は、『奇術師』で本格ミステリー的なシチュエーションのある種の限界に挑んだマシスンが、今度は矛先を、ヒッチコック的な巻きこまれ型サスペンスに向けた、とんでもないスリラーでした。
 主人公が、どんどんどんどん追われていき、しかも敵の存在も次々ヒートアップ。
 国際的な大陰謀どころか、SF/ファンタジー的な要素までからみだし、いったいこれで物語を回収できるのか!? と思うと、椅子からずり落ちるような真相が!
 びっくりするぞ、と聞いてはいたものの、この落差というかショックには、正直頭を悩ませてしまいました。

 いっぽうの“Fury on Sunday”は……と、この説明は不要ですね。
 できあがった『深夜の逃亡者』をご覧いただけばいいわけですから。

 小鷹さんからお借りした貴重な原書の写真は、『深夜の逃亡者』の表4(裏表紙)に掲げてあります。
 マシスンといえば、小鷹さんにとっても因縁浅からぬ作家。
 ぜひ小鷹さん訳のマシスンを復刊したいものです。

2007年9月27日 10:26 | | コメント(0)

『深夜の逃亡者』の刊行にあわせ、未読のかたは、こちらもぜひ。

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 脱出マジックに失敗して以来、全身麻痺で、車椅子に座らされたままの老奇術師。
 あとを継いだ息子、その妻、妻の弟、息子のエージェント、さらには乗りこんできた保安官が、奇術道具満載の部屋の中で繰りひろげる、丁々発止、二転三転、荒唐無稽、驚天動地の騙しあい。
 それを、傍観者として見ることしかできない老奇術師が語っていくところがまた、いい味を出しています。
 ミステリー好きなみなさんなら、『探偵 スルース』や『デストラップ 死の罠』といった舞台劇を思いだされるでしょうが、そこはそれ、マシスンのこと、うれしくなるようなショック描写の連続で盛りあげてくれます。

 もちろん、読み終わられたおおかたの読者は、怒濤のどんでん返しに、「いくらなんでも、やりすぎだ!」と思われることでしょう。
 実際、最後の真相を確認しようと、編集部に電話をされてきたかたもありました。一読して理解できなかったということではなく、あんまりな展開に心配になられたようです。
 まあ、それも無理はない、と、正直わたしも思います。
 しかしですね、マシスンがこれを書いたのは、70歳目前のころのはず。
 それでもなお、これだけの仕掛けをほどこした小説を構築し、しかもあきらかに本人も楽しみながら書いているということに、なんとも幸せな気持ちになります。

 おかげさまで、本書は2006年度の年間ベストに軒並み選出されるという結果になりました。
 こういった小説を楽しめるなら、まだまだ日本もだいじょうぶ(笑)。(編集部・T)

2007年9月27日 09:27 | | コメント(0)

俺がプリンセスを守る!! ・・・すいません、ちょっと言ってみたかったんです。唐突でごめんなさい。
遅くなりましたが、8月刊の第二弾、『真夜中の誘惑』のご紹介です! 『真夜中の男』で大好評をいただきました著者の、シリーズ第二弾です。

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■真夜中の誘惑
■リサ・マリー・ライス 著
■上中 京 訳
■文庫判
■定価/880円(税込)
■2007年8月30日
■ISBN978-4-594-05323-9
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あらすじはこんな感じです。

プリンセスのようだ……。
刑事のバドは、場末のダンスクラブで出会ったクレアのあどけない美貌に眼を奪われる。一方、クレアもまた、彼の力強い男らしさに強く惹かれる。その夜、激しい情熱につき動かされて愛を交わす二人。
しかしバドは知らなかった。彼女が大富豪の令嬢であることを。
そしてクレアも知らなかった。彼がかつて命がけで自分を守ってくれたことを。
やがて迫る暗殺者の脅威。試練にさらされる二人の愛のゆくえとは。
『真夜中の男』に続く、官能のロマンティック・サスペンス第二弾!

お待たせしました! 手に汗握るサスペンスと、ホットな官能シーンで話題騒然となったリサ・マリー・ライスの続編をお届けいたします。
前作では、元海軍特殊部隊員ジョンと、インテリア・デザイナーのスザンヌの息詰まるような愛と逃避行が描かれました。
今回の主役は、前作でも重要な役回りで登場した刑事のバドとその恋人クレア。
いったん、時間軸を巻き戻し、前作の事件が起きる前の時点での、バドとクレアの出会いから本作は始まります。なかなか面白い趣向ですよね。

お互いの素性をまったく知らない状態からヒートアップする、ふたりの熱い恋。
前半の見所はなんといっても、前作をはるかに上回るホットさ。完全無欠の男らしいヒーローなのに、極度に興奮すると一文節以上しゃべれなくなるというバドが可愛すぎてツボです。そして、個人的にはロマンス史上に残るといってもよい、空前絶後の大オチ! これが愛の吟遊詩人ってやつなのか??
やがてふたりは、『真夜中の男』でも描かれた巨大な陰謀に巻き込まれていきます。
前作と同じ事件を、バド/クレアの視点から描き直していくというトリッキーな構成の妙は、さすがのひと言。ほんとに一筋縄ではいかない作家さんです。
ひたすら熱く燃えあがる、最高のロマンティック・サスペンス。ぜひ前作と合わせてご一読ください。

今年中には、『真夜中』シリーズの第三弾もお届けできるはずです。
主人公は、本作でも登場した盲目の歌姫アレグラと、ジョンの部下で超コワモテのコワルスキの「美女と野獣」コンビ。担当編集者としても、早くご紹介したくてたまりません! 鶴首してお待ちくださいませ!

2007年9月 6日 18:30 | | コメント(0)

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