『深夜の逃亡者』が出版できたのは、翻訳家の小鷹信光氏のおかげでもあります。

 以前、『ジム・トンプスン最強ガイド』amazon7&Y楽天ブックサービスbk1)の準備で、小鷹さんのご自宅を訪ねたときのこと。
 ご存じのように、小鷹さん宅は、長年にわたって蒐集されたアメリカのペイパーバックや雑誌が大量に保管された、第一級の図書館でもあります。
 そのときの眼目は、もちろんトンプスンで、貴重な資料を多数お借りすることができたのですが、いろいろと拝見しているなかで出会ったのが、『深夜の逃亡者』の原書“Fury on Sunday”でした(『ジム・トンプスン最強ガイド』の小鷹さんの労作でも、この本について触れられています)。
 ちょうど『奇術師の密室』の翻訳が進行中だったため、その件をお話しすると、なんと小鷹さんが、その貴重な原書を持っていきなさい、とおっしゃるではないですか!
 断われるはずもござんせん。

 というわけで、『奇術師の密室』が年間ベストに選ばれて、社内的に、次のマシスン作品を出してよし、ということになった際の編集部としての選択肢は、『奇術師』の次に書かれた“7 Steps to Midnight”か、あるいは、この“Fury on Sunday”か、ということになったのでした。

 さて、“7 Steps to Midnight”は、『奇術師』で本格ミステリー的なシチュエーションのある種の限界に挑んだマシスンが、今度は矛先を、ヒッチコック的な巻きこまれ型サスペンスに向けた、とんでもないスリラーでした。
 主人公が、どんどんどんどん追われていき、しかも敵の存在も次々ヒートアップ。
 国際的な大陰謀どころか、SF/ファンタジー的な要素までからみだし、いったいこれで物語を回収できるのか!? と思うと、椅子からずり落ちるような真相が!
 びっくりするぞ、と聞いてはいたものの、この落差というかショックには、正直頭を悩ませてしまいました。

 いっぽうの“Fury on Sunday”は……と、この説明は不要ですね。
 できあがった『深夜の逃亡者』をご覧いただけばいいわけですから。

 小鷹さんからお借りした貴重な原書の写真は、『深夜の逃亡者』の表4(裏表紙)に掲げてあります。
 マシスンといえば、小鷹さんにとっても因縁浅からぬ作家。
 ぜひ小鷹さん訳のマシスンを復刊したいものです。

2007年9月27日 10:26

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