2007年10月アーカイブ

 食道がんでした。

 デジタル派の三川さんらしく、インターネットでことごとく医療機関をチェックし、千葉県柏市の国立がんセンターを選択。
 今年の春先、つくばエクスプレスなるものにはじめて乗って、お見舞いにうかがいました。
 三川さんは、点滴のキャスターを片手に、スリッパで院内を走りまわり、エレベータのボタンを押してくださったり、飲み物のコップを運んできてくださったり。
 元気そうなのでほっとしたのですが、わたしが直接お会いしたのは、それが最後になりました。

 盛岡に帰られてから、再発。
 それでも、入院中であっても、メールはいつもながらのクイック・レスポンスでした。
 ただ、言葉の端々からは、自分の残り時間でなにをするか、という問題に向きあっていらっしゃるのが感じられました。
 トンプスンに関しても、訳すべき作品が見あたらず、最終的に選ばれたのは、Cropper's Cabin。
 訳すだけ訳してしまえば、あとは編集部がなんとかしてくれるだろうとまでは思ったけれど、手をつける踏ん切りがつかないとのこと。

 そこで、短編はどうかとお話ししてみました。
 ヒッチコック・マガジンに載った、ミッチ・アリスンものの改訳・新訳です。
 三川さんは大乗り気で、かかえているゲラを片づけて、すぐ取りかかるとおっしゃいました。
 これぐらいなら完成させられる、という返事。

 しかし、その後も入院・通院がつづきます。
 最後にわたしが受け取ったメールは、「月刊プレイボーイ」見た? という内容。
 書評のページで、「安物雑貨店のドストエフスキー」という言葉が、トンプスンではなくエルロイに対してつかわれていた、わかってないね、というものでした。
 月プレ読む元気があるならだいじょうぶ、とそのときは思ったのですが。

 三川さんが亡くなったのを知ったのは、出張先のフランクフルトでのことです。
 最後のメールを受け取って、4日後でした。
 かかえていたゲラの作業を終え、復刊される『英語の冒険』の手なおしをすませた直後だったとのこと。
 公私ともに、自分の死後のことをすべて手配して、あまりにもすばやく逝ってしまわれました。

 この10年あまり、翻訳という天職を得て、惚れこんだ盛岡の街に最愛の奥様と暮らし、人生を謳歌された三川さん。
 ご冥福をお祈りします、という、ありきたりなことしか言えないのが、残念でなりません。(編集部・T)

2007年10月31日 20:49 | | コメント(0)

 扶桑社のミステリーをご贔屓にしてくださる読者のみなさんには、三川さんといえば、なんと言ってもジム・トンプスンでしょう。

 もともとは「ミステリマガジン」に分載された『ポップ1280』を、扶桑社で単行本として出版したのが、2000年2月。
 この本は、今度は三川さんにとって、翻訳家になってはじめての年間ベスト1となったのです。

 じつは、翻訳家としての三川さんにとって、トンプスンは特別の作家でした。
 トンプスンを訳していると、自動書記のようになるのだそうです。
 そうやって生みだされた訳文については、いまさらご説明する必要もないでしょう。

 トンプスンは、わたしにとっても特別の存在でした(作品を読まれる読者のみなさんにとっても、そうだといいのですが)。
 編集者は、訳文と原文を相互に行き来しながらチェックしていかなければならないのですが、トンプスンの場合は訳文に飲みこまれ、読みふけってしまうのです。
 これでは、編集者としては失格です。
 まあ、トンプスンに関するかぎり、三川さんのゲラはそれはきれいなもので、校正作業はスムーズに終わってしまうのが常でしたが。

 しかし、その三川さんが、トンプスンなのにちょっと苦労した、ともらしたのが、2006年刊行の『失われた男』
 なんか調子がちがうんだよなあ、とおっしゃっていたのですが、できあがった翻訳は、いつものとおりのトンプスン/三川節、だったと思います。
 では、なぜ手こずったのか?
 三川さんと話した結果、文体が三人称であるとか、いつもとは小説の結構がちがうとか、まあ、そんなあたりが理由かな、という結論になりました。
 でも、いま思えば、もしかしたらそのころから、三川さんの体調に変化があったのかもしれません。(編集部・T)

2007年10月31日 20:26 | | コメント(0)

お待たせいたしました。今月の扶桑社ロマンスは、大人気作家コニー・メイスンのシークもの、『愛は砂漠の夜に』でございます。

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■愛は砂漠の夜に
■コニー・メイスン 著
■中川梨江 訳
■文庫判
■定価各880円(税込)
■2007年10月30日
■ISBN978-4-594-05508-0
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昨年刊行した『誘惑のシーク』は、おかげさまで大変なご高評を賜り、すでに6刷まで来ております。ご愛顧に感謝!
今回の作品もシークものではありますが、舞台はアルジェリア、時代は19世紀。続編ではございません。あらすじはこんな感じです。

美貌の英国人令嬢クリスタは、舞踏会で、強引だが男性的魅力にあふれたアラブの王子アーメドと出逢う。英国貴族の母を持つ彼は、またの名をマークといった。
ひと目あった瞬間から恋に落ち、チュニスに向かう船上で結ばれる二人。しかし船は海賊の急襲を受け、クリスタはひとり囚われの身に。
ある夜、奴隷として移送中の彼女の寝所にひとつの影が忍びよる。彼こそは謎に包まれたシーク“砂漠の鷹”。そしてその正体は……。
『誘惑のシーク』『獅子の花嫁』の著者が贈る、愛と官能の歴史ロマンス!

とにかく、波乱万丈、息つく間もない展開に、ページを繰る手がとまりません。
上で紹介したあらすじも、まだ始まって3/1あたりまで。このあと、次々と恋人たちには試練がおとずれます。燃えるようなエメラルド・グリーンの目をもつ、神秘的で高圧的、でも一途で心優しいアーメド。銀髪、ブルーアイの純粋で気丈なヒロイン、クリスタ。彼らは、ありえないような苦難の連続のなかで、自らの運命を切り開いてゆくのです。
コニー・メイスンといえば、一筋縄ではいかないお騒がせのサブキャラが魅力的な作家ですが、本作でも、アーメドのかつての愛人で、あの手この手でちょっかいを出してくるウィローの愛ゆえの悪女ぶりが、じつに魅力的に描かれています。クリスタをかどわかす海賊の棟梁バルバロッサも、超コワモテなのに、なんかせつなくてすごくいいんですよね。
冒険と愛、策謀と復讐に彩られた一大スペクタクル。もちろん、ホットな官能描写もたっぷり。ヒストリカルの王道をゆく、コニー節炸裂の本作をぜひお楽しみください!
なお、コニーの次回作は、彼女の代表作との声も高い『Black Knight』(黒い騎士)。来年の早いうちにお届けできると思いますので、こちらもお楽しみに……。

2007年10月31日 20:12 | | コメント(3)

 三川さんにはじめてお会いした場所は、早稲田大学の研究室でした。
 翻訳の依頼にうかがったのです。

 ご本人は、なんというか、父っちゃん坊やな感じで、古英語学専攻の早稲田大学教授(当時は助教授でしたが)というイメージとはまったくちがいました。
 なにより驚いたのは、壁の本棚にならんだ大量のペイパーバック。
 ここ20年ぶんぐらいの冒険小説やミステリーが詰まっていて、どこが古英語学だよ、と突っこみを入れたくなったものです。

 そのときにお願いしたお仕事は、ジョー・ゴアズ『脅える暗殺者』(現在品切れ。すみません)。
 人類学をベースに、人間における殺人衝動の根源を見すえようという野心的なサイコ・サスペンス。
 ……ということで、知識の豊富な大学の先生がいいだろう、とか、まあ、そんなような安易な考えから、翻訳をお願いしに行ったのでした。
 実際、訳されるにあたっては、大学の他の先生たちに、いろいろと教えを乞うてまわられたとか。
(インターネットがまだまだ普及していない時代の話です)

 当時、三川さんは、翻訳家としては、まだまだ駆けだしという時期。
 原稿をいただいたあとで、相当手こずった、とうかがいました。
 いまから思うと、三川さんが手こずる原書があるのかという気がします。
 それぐらい達者で、しかも仕事が早い翻訳家としての仕事ぶりは、三川さんの訳書をご覧いただけばおわかりのとおり。

『脅える暗殺者』は、「このミス」の20位以内にすべりこみました。
 三川さんにとっては、翻訳家になってはじめての重版。
 電話口でとても喜ばれていたのを、昨日のことのように覚えています。(編集部・T)

2007年10月31日 18:56 | | コメント(0)

 今回『最新鋭機を狙え』を刊行したトレヴァー・スコットの日本初紹介作品が、この『究極のライフル―ハイパーショット―』です。

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「ハイパーショット」とは、作中で開発されたライフルの名称で、これはレールガンです。
 ドイツの企業がレールガンの小型化に成功。
 いっぽうで、超高性能のスコープを開発した技術者が登場します。
 両者を組みあわせれば、まさに悪魔の兵器となり、戦争の形態は一変、しかも軍需産業は莫大な利益を手にすることになります。
 こうして、究極のライフルをめぐるプロ同士の熾烈な争奪戦がはじめり、そこに謎の連続殺人がからんで、スケールも大きく展開していきます。

 理屈抜きに楽しめる、謀略アクション。
『最新鋭機を狙え』といっしょに、ぜひどうぞ。(編集部・T)

2007年10月30日 12:04 | | コメント(0)

 軍事スリラーの新鋭による新作です。

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 主人公ジェイク・アダムズは、空軍やCIAで腕利き諜報員として活躍し、いまは本国で企業アドバイザーを勤める男。
 そんな彼に、ある軍事企業から特別な依頼が舞いこみます。
 画期的な航空システム開発に携わっていた技術者がドイツで失踪、しかもシステムに謎の不調が発生しているというのです。
 もし技術者が、機密を何者かに売ろうとしているなら、大問題になります。
 ジェイクはドイツへ飛びますが、彼を待っていたのは銃弾の雨。
 いっぽう、海軍でも航空母艦を舞台に、巧妙な軍事機密の漏洩事件が発生し、さらにその空母乗組員を狙って、凄惨なテロ事件までが勃発。
 すべての裏には、ヨーロッパ統合の陰でうごめく、巨大な謀略があったのです……

 作者のトレヴァー・スコットは、自身が空軍のエキスパートで、大学院で創作の修士号を取得してデビューを果たした、期待の作家です。
 以前に刊行した『究極のライフル―ハイパーショット―』は、最新技術で産まれた銃をめぐって、ヨーロッパからアメリカの原野へと展開する謀略アクションで、日本でも好評を得ました。
 今回紹介するのは、『究極のライフル』に先駆けて発表されたデビュー作ですが、入り組んだ陰謀、先の見えない展開、緊密なアクションと、著者の特色がよく出ています。
「トム・クランシーのピンチ・ヒッターを探している読者におすすめ」と評された注目の作品です。(編集部・T)

2007年10月30日 11:25 | | コメント(0)

 MWA賞を2度受賞し、まさにアメリカを代表するミステリー作家となったT・ジェファーソン・パーカーのデビュー作が復活です。

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 以前、わたしどもの文庫から出ていたものの、著者との契約終了で品切れ状態になっていましたが、書店さんや読者のみなさまからの要望を受けて、新装版として復刊にいたりました。

 タイトルにある「ラグナ」は、カリフォルニアのリゾート地。
 主人公シェパードは、この町の小さな警察署のたった一人の殺人課刑事ですが、じつはすべてを失って大都会から故郷に帰ってきた男。
 LA市警に勤務していた彼は、黒人少年を誤射して死に至らしめたのです。
 世間の強い非難を浴び、家庭生活も崩壊、いまも精神科通いを余儀なくされている状態。
 田舎町ラグナの殺人課は、本来なら閑職のはずでしたが、突如、残虐で謎めいた事件が起こります。
 被害者は、頭部に石を打ちこまれ、さらに火をつけられて殺害されています。
 喉には高額の紙幣が詰めこまれ、現場にはメッセージを残した聖書が置かれ、しかも傷口からは、放射性物質が検出されます。
 シェパードは、刑事として、人間としての自分を取りもどすかのように、困難な捜査に立ちむかいますが、そんな彼を待っていたのは、第2の死体。
 驚くべきことに、この凶悪な連続殺人は、シェパード自身の過去を掘り起こす、予想もしない展開を見せていくのです……

 謎また謎のミステリーとしても魅力的ですし、地道な捜査ですこしずつ糸を解きほぐしていく警察捜査小説としても隙がなく、さらにシェパードを中心にした人間ドラマとしても超逸品。
(とくに、海の中でのラブ・シーンは印象的!)
 いま読んでも、ほんとうにいい作品です。
 刊行当時、ローレンス・ブロックやロバート・B・パーカーをはじめ、全米が絶賛したのもうなずけます。

 とびきりのミステリーを復刊することができました。
 読みのがしていたかたはもちろん、昔読んだなあ、というかたも、ぜひもう一度手に取ってください。
 あらゆるミステリー・ファンにおすすめの名作です。(編集部・T)

2007年10月30日 10:54 | | コメント(0)

9月新刊の女性向けのもう一本は、書籍では初紹介となるキャリー・カラショフとジル・カーグマンの『わたしにふさわしい場所――ニューヨークセレブ事情』(上・下)でございます。

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■わたしにふさわしい場所―ニューヨークセレブ事情(上・下)
■キャリー・カラショフ&ジル・カーグマン 著
■中尾眞樹 訳
■文庫判
■定価各740円(税込)
■2007年9月30日
■ISBN978-4-594-05484-7
 ISBN978-4-594-05485-4
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実は、本書はかつて『25ans』で抄訳のかたちで連載された「セレブの縄張り」を完訳のかたちで文庫化したものです。「あっ、記憶にある」と思われた貴女、ぜひ書店においそぎください。あらすじはこんな感じです。

メラニー・コーン、35歳、元フライトアテンダント。
一代で財を成したアーサーと恋に落ち、電撃結婚して一年。ニューヨークの社交界にデビューしたはいいものの、口さがないセレブたちからは、「センスがない」「成りあがり」と陰口を叩かれつづける毎日。
どうして、こんなにいじめられなきゃいけないの? あたし負けないわ。
理想のセレブめざして孤軍奮闘するメラニー。パーティにチャリティにと積極的に参加していくが、結果はいつも空回りばかり。それでも彼女は、明るく、がむしゃらに輝ける日を信じて努力する。
そんな折りに舞い込んだ、新聞記者からの取材の申し込み。やっと、わたしもセレブの仲間入りだわ。舞い上がるメラニーだったが……。
セレブ御用達のブランドやレストランを全編に散りばめながら、クセの強い社交界の面々の、退屈だけど刺激的な日常をユーモアたっぷりに描き出す、極上のファッショナブル・コメディ、完訳版で登場!

とにかく、愉快痛快、抱腹絶倒。
担当して、こんなに笑えた小説は久しぶりでした。
ニューヨークの社交界に巣くうセレブの面々を描き出す洒落と皮肉のきいた筆致は、まさに絶品。ヒロインの愛すべきキャラクターもさることながら、脇役陣の愉快さがまたものすごいことになっています。
とくに、本作の裏ヒロインともいうべき、おばさんセレブ二人組のジョーンとウェンディがいい味だしまくり。そねみ、ねたみ、たくらみ、毒舌を吐きつづけるピカレスクっぷりにはほんとうに頭が下がります。その他、稀代の悪情婦を囲ったせいでどんどん窮地に追い込まれてゆく会社社長のモーガン、メラニーを愛しながらも同じアパートの若セレブにおねつ(死語)をあげる夫のアーサー、メラニーにファッション道を伝授するウルトラスーパー執事のガフィーなど、きら星のごとくクセモノキャラが登場し、飽きさせることがありません。

まずは、華やかなセレブワールドに関心のある貴女。絶対読んで損はさせません。
あふれかえるブランド品と、ニューヨーカー御用達の名店の数々への言及は、ファッション小説としての魅力に色を添えています。メラニーとともに、ヒルトン姉妹やドナテッロと同じ空間を闊歩する悦楽を、ぜひご堪能ください。
同時に、こんなこといっちゃなんですが、たぶんみなさん、若い女性しか読まないと思ってスルーしがちなタイトルだと思うんですよ。
でもね、嘘は申しません。マジで面白いから。オジサンもオバサンも、こぞって読んでほしい1冊(ああ、2冊か)。
謎のチャリティパーティとフェイスリフトに血道をあげるNYセレブの非日常な日常。そんななか、背伸びすることが美徳と思い定めた面々がおりなす、おかしくも哀しいハイテンション・コメディ。それが本作なのです。
ぜひ騙されたと思って手にとってくださいね!

2007年10月 6日 17:22 | | コメント(0)

またまた遅くなりましたが、9月刊の女性向け作品の紹介をば。
まずは、弊社の大看板の一人でもあるバーバラ・デリンスキーの新刊『過ぎし日の絆』です。

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■過ぎし日の絆(上・下)
■バーバラ・デリンスキー 著
■佐藤知津子 訳
■文庫判
■定価各840円(税込)
■2007年9月30日
■ISBN978-4-594-05481-6
 ISBN978-4-594-05482-3
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あらすじはこんな感じです。

ダナは34歳のインテリアデザイナー。潮騒の聞こえる海辺の瀟洒な邸宅に、弁護士の夫ヒュー・クラークとふたりで暮らしている。早くに母親を海の事故で亡くし、父親の顔も知らず、祖母に育てられたダナだったが、愛する夫と結ばれた幸せをかみしめていた。
ところが、そんな彼女を奈落の底につきおとすことが起きる。生まれてきた赤ちゃんの肌の色が浅黒かったのだ。
白人の両親をもつ子に、どうしてアフリカ系の血が? ヒューの親族はダナの不倫を疑う一方で、彼女の父方の家系にアフリカ系アメリカ人がいたのではないかとせまる。プレッシャーのなか揺れ動き、DNA鑑定を提案してくる夫への不信。そして、いまだ写真でしか知らない父への複雑な想い……。
やむなく自らの家族の来歴と出生の秘密に向きあうことになったダナが知る、衝撃の真実とは?
巨匠デリンスキーが壮大なスケールで描きだす、家族の危機と再生の感動ドラマ!

デリンスキーという作家さんは、もはやカテゴリーロマンスの枠内には収まらない女性小説の大家です。
本書では、ヒロインは冒頭のシーンですでに臨月。通常のロマンス小説でいえば、「愛するヒューの子を身に宿したダナ。こうして、二人のめくるめく愛の世界は永遠に続くのでした。めでたしめでたし」と締めくくられるはずのラストシーンから、本作はスタートするわけです。
しかし運命は二人に思いがけない試練を与えます。白人夫婦に黒人の赤ん坊。もちろん浮気など身に覚えのないダナからすれば、原因は過去に求めるよりほかありません。
自分の先祖の誰かに、アフリカ系アメリカ人がいたはず。彼女は、これまであえて接触しようとしてこなかった、まだ見ぬ父の行方をさがして、自らのルーツに分け入って行くことになるのです。

日本人には馴染みが薄いかもしれない人種問題に、正面から挑む本作。それでも、夫との愛と不信、義理の両親との関係、そして近隣住人との交流など、描かれている内容自体は等身大の女性が抱えるテーマばかりです。過去の人物関係がしだいに明かされてゆく後半の謎解きも、なかなかに読みごたえがあります。
ぜひ手にとって、豊饒なデリンスキーワールドをお楽しみください!

なお本作では、登場人物が車に乗り込むやいなや携帯電話で話しはじめるというシーンが頻出します。気になる方もいらっしゃるかもしれませんが(少なくとも編集者は結構気になった)、お国の交通事情の違いということでご理解くださいませ。みなさんは安全運転を心がけてくださいねっ!(笑)

2007年10月 6日 17:10 | | コメント(0)

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