2007年12月アーカイブ

12月の新刊、最後の一点は『猫探偵カルーソー』。
猫大好き、ヴェネツィア大好きの方に贈る、愉快で茶目っ気たっぷりの動物ミステリー。

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ドイツ人女流作家(本業は音楽家)による第一作で、あらすじはこんな感じです。

ヴェネツィアに生きる猫たちはいきり立っていた。海に囲まれたこの愛する街で、またぞろ殺人事件が起きたのだ! 
カリスマ的ボス猫のカルーソーは、自らの手で事件を解決すべく、愛する雌猫カミッラや仲間たちとともに、路地から路地へ、運河から運河へと探索を始める。
やがて事件の背後に浮かび上がる、作曲家ヴィヴァルディの遺した秘宝の謎――。
愛すべき猫たちの華麗なる大冒険のゆくえとは?

とにかく、猫が凛々しいんです。猫が可愛いんです。
冒頭で、観光都市ヴェネツィアの名誉と誇りを守るため、猫たちの手で事件を解決しようと高らかに宣言するカルーソー。威厳ある彼の指示に従って、街へと散ってゆく猫たち。
でもね、猫はやっぱり猫なんですよ。
よしがんばるぞ、と駆け出した先で、きれいなメス猫に遭遇すると、もうそっちに気がいっちゃって、何が何だかわからなくなる(笑)。「あれ? オレ何やってたっけ?」
エサのいい匂いがしてくると、食欲が捜査意欲に優先しちゃう。
ネズミが飛び出してくると、ついついおっかけちゃう。
てなわけで、さんざんみんなで寄り道しながらも、捜査は続きます。
で最後は、悪党一味相手の大立ち回り。猫たち、大いにいいところを見せまくります。
わたしはむかーし見た『乱闘街』という少年探偵団映画を思い出しました。
あと、ヴェネツィアの街の描写が実に魅力的。巻頭の地図を見ながら、猫たちの動きを追ってもらうとより楽しく読めるかもしれません。

すごい謎解きとか、トリックがあるわけじゃありませんが、「101匹わんちゃん」とか「名探偵ベンジー」の猫版だと思って、ぜひ肩の力を抜いてお楽しみください。さらっと読めますしね。
素敵な猫たちとの出会いは、凍てつく冬の寒さのなか、きっとあなたの心をほっこりさせてくれるはず。クリスマスのプレゼントにもぴったりの一書です!

さらに!! 巻末の解説には杉江松恋氏による、猫ミステリーガイドがついております! リリアン・J・ブラウンから『人喰い猫』まで、猫の出てくるミステリーというミステリーをかたはしから総ざらいした、頼んだ編集者もびっくり仰天の渾身のブックガイド! この一書を片手に、猫ミステリー逍遥の旅へと書店に赴くのも一興かも。(編集Y)

2007年12月21日 21:04 | | コメント(0)

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 読者の皆さんは、‘遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき……’という言葉ではじまる城達也さんのあのナレーションを憶えていらっしゃるでしょうか。深夜、眠れないままにラジオのスイッチを入れて、聞こえてきたディスクジョッキーの声に心を惹かれ、あるいは癒され、ほどなくその番組を心待ちにするようになる――そういう経験をお持ちのかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
 本書『夜のとばりがおりて』には、深夜のFM放送から流れてくる魅惑的な声に夜ごと耳を傾ける3人の女性たちが登場します。
 まず、サヴァンナ・スミス。検事になって五年、懸命に働いてきた甲斐があって満足できる地位にまで昇進したものの、三十一歳の誕生日を前にして、自分の人生はこのままでいいのかと、悩んでいます。
 ついで、サヴァンナの双子の妹、スーザン・スミス・ガードナー。美貌に恵まれ、社交界の花でありながら、才気ある姉に対する劣等感に悩まされ、さらには離婚したこともあって、日々お酒に明け暮れる生活を送っています。
 そして、スミス姉妹の高校時代からの親友、メガン・ヴァンダメア。姉妹が裕福な家に生まれ育ったのに対して、母子家庭で育ち苦労を味わってはいるものの、名門の男性と結婚。ところが、その夫の事業が不審に陥り、ふたたびつらい生活を強いられています。

 物語は、サヴァンナが、メガンが誘拐されたという知らせを受けるところからはじまります。
 極秘裏に行われる捜査。手がかりといえるものは、誘拐現場に置かれていた、身代金を要求する手紙だけ。その不自然な文面が、地元、ロードアイランド州のプロヴィデンスにあるカントリーミュージック専門のFMラジオ局、WCICの合い言葉に似ていたのです。それはまた、あの魅惑的な声の主が放送中にしばしば使う言い回しでもありました。
 サヴァンナは手がかりを求め――そして、実際にあのディスクジョッキーに会えるという期待を胸に――WCICのスタジオを訪れます。
 そして憧れのDJ、ジャレッド・スノウと出会い、このときからサヴァンナの人生が大きく変わりはじめるのです‥‥。一方スーザンも、誘拐事件の捜査に当たるサム・クレイグという警官と知り合うことになります。
 だが、誘拐されたメガンの行方は、依然として手がかりがつかめず、サヴァンナたちは、不安と焦りをつのらせていきます。すると、誘拐犯から連絡があり、身代金が支払われ、メガンは解放されるのですが……。
 事件の動きとともに少しずつ変化する、サヴァンナとジャレッドの、そしてスーザンとサムの関係が、丁寧に描かれています。検事であるだけでなくメガンの親友でもあるため、よけいに苦悩するサヴァンナの心を癒そうとするジャレッドの姿が印象的です。また、スーザンとサムは惹かれ合いながらも衝突を繰り返しますが、終盤、思いもよらない出来事に見舞われたサムをスーザンが必死に支える場面には感動させられます。さらに、複雑な情況のなかでおたがいに相手を思いやる、メガンとその夫であるウィルの夫婦愛にも心を打たれます。
 ストーリーの展開はシンプルですが、そのなかに、姉妹のあいだの葛藤、家族間の問題、友情など、さまざまな事柄が織り込まれた、読み応えのある作品です。

2007年12月21日 00:45 | | コメント(0)

「ブリティッシュ・ノワール史上最高の作品だ」
 ――デイヴィッド・ピース氏
(『TOKYO YEAR ZERO』著者)

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 1970年に発表された伝説のノワールが、新訳版で登場!
 古い作品かよ、とお思いになる向きもあるかもしれませんが、デイヴィッド・ピース氏の推薦文にあるとおり、英国においてはいまも読み継がれている歴史的な作品です。

 ジャック・カーターが、工業都市ドンカスターに数年ぶりに帰ってきた。
 兄が車ごと転落死し、その葬儀にやってきたのだ――ある決意を胸に秘めて。
 じつはカーターは、 大都会の裏世界で生きてきた男だ。
 みずからの目的のため、組織にも背を向けて突き進むカーター。
 彼の動きは、地元の暗黒街におおきな衝撃をあたえる……

 ストーリーと同時に、本書の読みどころは、非情な男カーターの一人称で語られる文体にあります。
 これはシビレます。

 なお、この作品は、1971年に映画化されました(邦題は『狙撃者』)。
 残念ながら、日本ではDVD化されていませんが、本国では、英国映画の歴代ベスト1に選ばれたという作品。マイケル・ケインが、小説とはひと味ちがったイメージで主人公カーターを演じています。(編集部・T)

2007年12月21日 00:11 | | コメント(0)

『切り裂かれたミンクコート事件』にまつわる小噺をひとつ。
本書の413ページに、伯爵邸の図書館内にある蔵書の描写があります。
そこに置かれているのは、アリアドネ・オリヴァーの『デビューした女性の死』、アネット・ド・ラ・トゥールの『叫ぶ骨』、リチャード・エリオット『クモに噛まれて』……。
ゲラを読んでいて、おやっと思いました。アリアドネ・オリヴァーという名前に微妙に聞き覚えがあったからです。調べてみたらすぐにクリスティの小説に出てくる推理作家の名前だということに気づきました。
本格ミステリマニアのジェームズ・アンダースンは、こんな稚気あふれるお遊びを仕掛けてきていたのです。
どうやら他の作品も同じ趣向ではないだろうか。リチャード・エリオットのほうはすぐ気づきました。マイクル・イネスの『ストップ・プレス』です。
ところが、いくら考えてもアネットなんたらの正体がわかりません。間違いなく、ミステリに登場する架空の推理作家であることは確か。でも、マニアに程遠いわたしには見当もつかず……。
というわけで、本国のアンダースンにメールで問い合わせてみました。で、返ってきたのが「エドマンド・クリスピンの『お楽しみの埋葬』に出てくる、女性の変名でミステリを書いているJuddという男性」との返答。……ううう、気づきませんでした(というか、読んでなかった)。
メールにはこんなことも書いてありました。
「このアイディアの理由は単純に、私の手になる架空の登場人物たちが、別の実在する推理作家の創造した推理作家の書いた小説を読んでいるとおもしろかろうと考えたからです。この試みは、おそらく未だかつて、誰もやってみたことがないものと自負しております。ただ、哀しいことに、これまで評論家も読者も誰ひとりとして気づいてくれた人がいなかったのです……あなたから連絡があって本当にうれしかった」
―――いや、こちらも気づけて光栄でございました(笑)。
てなわけで、アメリカに置いておくのが惜しいほどの本格オタク、ジェームズ・アンダースン! ぜひ、みんなで読もう!
きわめて細々と続けております扶桑社海外文庫「本格」シリーズ、今後ともよろしくお願いいたします。

2007年12月20日 16:41 | | コメント(0)

弊社2006年11月末刊行の、ジェームズ・アンダースン『切り裂かれたミンクコート事件』が、『2008本格ミステリ・ベスト10』(原書房刊)の海外部門で4位に入賞しました! パチパチパチ! アンケートを見ていると、本年度のベスト1に上げてくださっている方もたくさんいらっしゃって、本当に嬉しく思います。皆様、心より御礼を申し上げます。

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本書は、かつて文春文庫から出ていたものを弊社から出なおした『血染めのエッグ・コージイ事件』の続編にあたります。
前作と同じお屋敷、同じ主要キャラで、またしても殺人事件が起きるという趣向なので、『エッグ・コージイ』から読んでいただくにしくはないのですが、お話自体は独立した作品なので、単品で読んでいただいても問題ございません。
担当編集がこんなことを言うと問題かもしれませんが、個人的には、本作のほうが前作より本格ミステリとして数段パワーアップしているのでは、と思っております。30年代的というよりは、40年代的な本格の復古を目指していると体感的には思ったりもするんですが、何を言ってるのかわかりませんね、ごめんなさい。
ロジックの美しさ、ギャグの切れ、名探偵の競演と、申し分ない出来の年間ベストにふさわしい佳品でございます。この機会にぜひ書店でご購入いただき、ご一読のほどを!(編集Y)
(売れれば売れるほど、第三作の『39個のカフスボタン事件』が出しやすくなるのです!)

2007年12月20日 16:34 | | コメント(0)

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