2008年6月アーカイブ

 さて、いよいよ、今年の扶桑社ミステリー、屈指のクセ球をご紹介しましょう。

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 物語は、英語翻訳や教師で生計を立てているブラジル人が書いた書簡という体裁。
 念願だったエドガー・アラン・ポーの研究総会へ出席できることになった彼は、アルゼンチンのブエノスアイレスへやってきます。
 そこで、あのホルヘ・ルイス・ボルヘスに出会います。
 じつはボルヘスとは、むかし、ある翻訳の問題で因縁がある間柄だったのです。

 しかし、物語は急展開。
 多くの参加者に論争の種をまいていた研究者が、施錠したホテルの部屋で、死体となって発見されたのです。
 しかも遺体は、手足を折り曲げ、アルファベットを形どっていたのです。

 死体の発見者でもあった主人公は、ボルヘスに事の顛末を語り聞かせます。
 密室とダイイング・メッセージの謎をめぐり、ボルヘスの推理がはじまります……

 最晩年の目も見えなくなったボルヘスが、自宅のあの図書室の中で、殺人事件の謎を解く!
 これは、ミステリー・ファンにとっては、ある種の理想ではないでしょうか。
 ポーからラヴクラフト、カバラへと暴走するボルヘスの推理の行き着く先は?

 こんな作品をものした著者は、ブラジル人の作家・翻訳家・コラムニスト。
 作中の語り手と、職業的にも世代的にも地理的にも重なります。
 ボルヘスへのオマージュとしてはもちろん、南米独特の特質を盛りこみ、ケレン味だけではない印象的な作品に仕立てあげています。(編集部・T)

2008年6月27日 20:49 | | コメント(0)

大変、長らく、お待たせいたしました……。
〈真夜中〉シリーズで人気爆発のリサ・マリー・ライスの新刊をようやくお届けする運びとなりました。『闇を駆けぬけて』でございます。

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あらすじはこんな感じです。

私はサリーなんかじゃない。
殺人事件の重要証人として命を狙われ、名を変え、身分を偽ってアイダホの片田舎で暮らすことになり、ジュリアはわが身の不幸を嘆くばかり。
しかし、孤独に震える日々は一変した……クーパーと出会ってから。
元特殊部隊の寡黙な牧場主。でも優しさを内に秘めた男。
やがて彼女の持ち前の明るさは、クーパーを、そして寂れた田舎町を希望で照らしてゆく。
だが、殺し屋の影は着実に彼女へと迫っていた!
〈真夜中〉シリーズの著者が放つ究極のロマンティック・サスペンス!

恋愛には不器用だけど、圧倒的な男性的魅力を発散させる過保護系ヒーロー。
危機に立たされる、聡明で自立心のあるヒロイン。
手に汗にぎる怒濤のサスペンス、あふれるユーモア、そしてHOTな官能描写。
〈真夜中〉シリーズをお楽しみいただいた方なら、きっとご満足いただける作品だと思います。〈真夜中〉シリーズと較べても、小説としての完成度はさらにパワーアップ。
これまでの「男と女」の密室劇っぽい組み立てから一歩進んで、「人と街」というテーマを取り上げ、成功を収めているのは本書の大きな魅力です。人の心を溶かし、街のよどみを一掃してゆくヒロインの活躍ぶりは、「野のユリ」や「バグダッド・カフェ」(どっちも古い映画でごめんなさい)ばりの感動を与えてくれます。
ミステリーとしても、なめてかかってると結構してやられるんじゃないかなあ。
あと、なんといってもリサ・マリーの魅力はヒーローの造形。クーパーが期待にたがわず、とってもおちゃめさんです。「寡黙な男」という設定が、じつに上手に活かされていて、編集者は終盤思わず「う、うまい!」と舌を巻きました。
“レンガ社長”こと、ジョン・ハンティントンほか、〈真夜中〉シリーズのヒーローたちともども、ご愛顧たまわれば幸いに存じます。

2008年6月 9日 21:20 | | コメント(0)

ブログの更新遅くなってしまい、申し訳ありません…。
さて、5月末刊残りの2点、まずはグリン・ダニエル『ケンブリッジ大学の殺人』です。
『悪女パズル』『オックスフォード連続殺人』『切り裂かれたミンクコート事件』…細々と続けて参りました「扶桑社本格路線」本年度の結実でございます!

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グリン・ダニエルの名前は聞いたことがない方も多いかも知れませんが、本書の翻訳者・小林晋さんが国書刊行会さんの世界探偵小説全集の月報で「知られざる巨匠たち」として紹介していた、あの人物です。
あらすじはこんな感じです。

ケンブリッジ大学が明日から長期休暇に入るという夜、フィッシャー・カレッジ内で門衛が射殺された。副学寮長のサー・リチャードは、一見単純に見える事件に複雑な背景があることに気づき独自の調査に乗り出すが、やがて帰省した学生のトランクから第二の死体が発見され……。
めくるめく推理合戦、仮説の構築と崩壊、綿密きわまる論理的検証、そして卓越したユーモア。考古学教授を本職とする著者がものした、本格ファンの魂を揺さぶる幻の40年代クラシック・パズラー、ついに本邦初訳なる!

予め言っておきますと、文体はヘビー。発端は地味。最初は、読み進めるのに苦労されるかもしれません。
でもね、中盤戦に入ってからは、ホントに素晴らしいんですよ! 地味だけど!

ノリとしては、仮説の構築、崩壊、再構築を主眼とするという点で、コリン・デクスターに近いものがあります。40年代ということでいえば、むしろクロフツあたりを意識した作風なのかも。
小出しに謎解きに必要な因子が提示されて、その都度事件の解釈が組み変えられていく流れもクロフツっぽいですが、より意識的に「毒入りチョコレート事件」「陸橋殺人事件」みたいなことをやろうとしているのがよく分かります。
クロフツ的な捜査/検証形式の本格と、バークリー的な本格批評としての仮説並列形式の折衷、止揚といった感じでしょうか。
一番感心したのは、「確定事項」「未確定事項」を峻別する、通常の本格よりきびしい姿勢です。
それぞれの「仮説」がどれくらいの「確かさ」の上に立脚しているかを、どの探偵役も、ものすごく執念ぶかく検証している。(主に名探偵の)言ったもん勝ちが主流の本格ミステリにおいて、証言の信頼性や証拠の信憑性、それらによって構築される「仮説」の妥当性にこれだけ真摯に向き合っている例は少ないと思うんですよ。このへんのこだわりには、著者が考古学者だということと関係しているのかもしれませんね。

まあ、担当者としては、容疑者一覧の検討リストと、アリバイ表を完備した本格というだけで、もう涙がちょちょぎれんばかりなんですが………ああ、なんだか熱く語っちゃいました……(汗)すいません。
とにもかくにも、玄人のクラシック本格ファンを唸らせる逸品。ぜひご賞味くださいませ!(編集Y)

2008年6月 9日 21:07 | | コメント(0)

 朝、出版ニュースをチェックしていると、

「ヴィクトリア・ゴッティ、出版社から訴えられる」

という見出しが。
 ヴィクトリア・ゴッティという人が、自伝を出版する契約をしたのに、締め切りをすぎても原稿ができないので、出版社側がアドバンス(出版契約時に支払った印税の前払金)を返せと訴訟を起こしたというのですね。

 さて、このヴィクトリア・ゴッティ。
 日本での知名度は低いと思いますが、アメリカではちょっとした有名人。
 コラムニストで作家でもあり、TV番組を持ったこともあります。
 扶桑社から、小説第2作の『おまえを見ている』が出版されていますよ。

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 しかし、この人がなぜそれほど有名なのかというと、NYのマフィア、ガンビーノ・ファミリーのドン、ジョン・ゴッティSr.の娘なのです。
 ジョン・ゴッティは、オシャレで派手好きで、"Dipper Don"とあだ名されたボス。
 血で血を洗う抗争もやれば、マスコミにもよく知られた存在で、かつてのアル・カポネのような典型的なマフィアでした。
 ところが、裏切りにあって裁判で有罪になり、終身刑。刑務所内で2002年に死去しました。
 これで、昔かたぎのマフィアの時代が終わったとも言われます。

 娘ヴィクトリア・ゴッティは、刑務所に入ってしまったあとも父を支えていたとか。
 彼女が契約したという自叙伝は、マフィアだった父の知られざる姿があきらかにされるものと期待されたのでしょうが、残念。

 ちなみに、『おまえを見ている』は、絢爛豪華な上流社会を舞台にしたロマンティック・サスペンス。
 ストーカーの恐怖を描き、驚きの真相が待っています。(編集部・T)

2008年6月 9日 14:03 | | コメント(0)

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 第一巻『魔女と魔術師』では、現代ニューヨークに生きる若く魅力的な〈魔女〉グレンナと、十二世紀のアイルランドから時空を超えて現代ニューヨークやってきた〈魔術師〉ホイトのカップル。
 第二巻『女狩人と竜の戦士』では、男まさりのヴァンパイア・ハンター〈戦士〉ブレアと、変幻自在の変身能力を持つ〈姿を変える者〉ラーキンのカップル。
 この二組のカップルのロマンスを中心に、〈光の輪トリロジー〉の冒険物語が展開されて来ました。

 そして三部作の最終巻である本作『王女と闇の王子』では、かつてヴァンパイアに母親を殺された過去を持つガイアルの王女で新女王になるモアラと、ホイトの弟でやはりヴァンパイアの女王リリスによりヴァンパイアにされてしまったキアンのカップル。
 この2人のおよそ不可能としか思えないロマンスを中心に、お話は進行して行きます。
 物語は、女王リリスやデイヴィーの過去などがあきらかにされながら、〈沈黙の谷〉での最終決戦に向けてクライマックスに突入します。

〈光の輪トリロジー〉の大団円です。(編集部・N)

2008年6月 4日 18:00 | | コメント(0)

 ニュースでも報じられましたが、英国で先日、007=ジェイムズ・ボンドの新作小説が発売になりました。

 今回の筆を執ったのは、あのセバスティアン・フォークス

 原作者イアン・フレミングの死後、ジョン・ガードナー、レイモンド・ベンスンと書きつがれたボンド・シリーズ。
 じつは、日本での紹介が途切れていた時期、なんとか扶桑社で出したいと思い、『赤い刺青の男』をオファーしたことがあるのです。
 結果的には、伝統あるポケミスに持っていかれてしまったわけですが。

 正直いって、日本ではあまり話題にならないボンド小説ですが、海外ではいまでも売れ線の商品です。
 とくに今回の新作は、フレミング生誕100周年を記念する大きな企画で、名匠フォークスが起用されたのも、力が入っている現われでしょう。
 はじめてこの話を聞いたときには、感激しましたね。
(海外の出版ビジネスにおいては、発売のずいぶん前からプロモーションがはじまるのがふつうで、わたしがこの話を聞いたのも、昨年の夏前ぐらいだったと思います)
 あのフォークスがボンドを書く!
 しかも、フレミングの遺作となった『黄金の銃を持つ男』の次の作品をフレミング自身が書いた、という趣向で、60年代当時の冷戦下でのボンドの活躍を描くという、卓抜なアイディアでした。
 さっそく会社に企画をとおしたのですが...

 そう、日本でのボンド小説の売れ行きは、キビしいものなのです。
 そのため、先方へオファーする際も、あまりいい金額は提示できませんでした。
 じっさい、オファーした日本の出版社はウチだけだったのですが、先方の返事は「この企画は大きなものなので、その程度の金額では受け入れることはできない」というものでした。
 こちらは、日本でのセールス状況を説明し、売れ行きがよければ印税を払えるのだから、と主張したのですが、先方が求めている金額との差は大きく、とても埋めあわせることはできませんでした。
 無力さを感じるのは、こういうときですね。

 これが、昨年の夏から秋にかけての話です。
 今回、日本でも報じられたように、本国では大きなプロモーションをかけて発売されました。
 それを受けて、再度、日本の出版社に強いセールスがかけられています。
 いったい、どうなる?
 胸の騒ぐことではあります。(編集部・T)

2008年6月 3日 15:51 | | コメント(0)

 まず、話題の映画のノベライゼーション。

 ウォシャウスキー兄弟他『スピード・レーサー』矢口誠/訳(6月18日発売予定)

 ご存じ、タツノコプロの名作アニメ『マッハGoGoGo』を、『マトリックス』3部作のウォシャウスキー兄弟が実写映画化した、この夏の話題作です。
 原作への愛にあふれたストーリーを、ひと足先にノベライゼーションでお楽しみください。

 つづいて、通常の6月30日発売は、以下の3点です。

●扶桑社ミステリー

 スティーヴン・ハンター『四十七人目の男』(上・下)公手成幸/訳
(今年の目玉、ハンター最新作登場! あのボブ・リー・スワガーが、日本で大活躍)

 ルイス・フェルナンド・ヴェリッシモ『ボルヘスと不死のオランウータン』栗原百代/訳
(ボルヘスが密室殺人&ダイイング・メッセージに挑む!? 南米発の文芸ミステリー)

●扶桑社ロマンス

 カレン・ホーキンス『海から来た伯爵』戸田早紀/訳
(人気作家、日本初紹介のヒストリカル・ロマンス。続編も出版の予定です)

2008年6月 2日 18:21 | | コメント(0)

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