「先が読めない」というのは、サスペンス小説には絶好のほめ言葉だと思いますが、まさにこの作品を評するのにぴったりだと思います。

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 小説は、2段構えで展開します。

 まずは、第二次大戦中のギリシャ。
 比較的知られてはいませんが、当時のギリシャは、ナチス占領軍、共産ゲリラ、亡命した政府の支持者等々が覇権をめぐって集合離散を繰りかえす、戦乱状態にありました。
 そんな片田舎の教会に、ギリシャ正教の精華とも言うべき聖画(イコン)がありました。
 見る者の魂を奪う魔力を持った絵。
 町が焼き討ちされるなか、そのイコンをめぐって、はげしい争奪戦が行なわれたのです……

 そして現代。
 長年これを所持していたコレクターが死去し、ふたたびイコンが歴史の表舞台に出現します。
 これを契機に、往時イコンの魔力にとり憑かれた男たちがNYに結集。
 戦後を陰謀のプロとして生きてきた男たちが、イコンを標的に、人生最後の戦いを仕掛けていくのです……

 中心となるキャラクターは、彼らの孫の世代になりますが、主人公たちは(読者ともども)、現代における陰謀と、過去における争いの双方の謎を解いていかなければなりません。
 まさに「先が読めない」サスペンス。 
 いったい誰が何をしようとしているのか、そしてじっさいにイコンはどこにあるのか?
 謀略エスピオナージュにも似た美術ミステリーです。

 著者は、文芸エージェントとして活躍してきた人物。
 本書がデビュー作ではありますが、読者を翻弄し、楽しませる手腕は、まさに新人離れしたものがあります。

 えーと、定価が1200円とちょっとお高いのですが、単行本の値段ぶんはまちがいなく楽しめると思いますよ。(編集部・T)

2008年7月28日 12:38

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