この人は、まさに生きる伝説というべき作家ではないでしょうか。
 寡作ながら、新作が出版されるたびに、その質の高さで注目され、CWAゴールド・ダガーを3度受賞、さらにグランド・マスター賞も受賞した名匠ライオネル・デヴィッドスン
 本書『大統領の遺産』は、彼が1976年に発表した作品で、当時のデイリー・テレグラフは「本年度ベストを超える作品」と評しました。

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 タイトルにある「大統領」とは、イスラエル初代大統領ハイム・ワイツマンのこと(カバーの左上に飾られている写真がご本人)。
 ちなみに原題は「The Sun Chemist=太陽の化学者」で、これも彼を指すのですが、ここからもわかるとおり、ワイツマンはもともと国際的に活躍していた化学者でした。
 そんなワイツマンが、じつは石油にかわる物質の精製を研究していたら……というアイディアから、デヴィッドスンは彼一流の虚実の皮膜を突く巧妙なミステリーを作りあげます。

 今回の語り手は、ロシアから英国への亡命者の息子で、現代史研究家のイゴー・ドゥルヤノフ(例によって、肉体的にそう強いわけではなく、女に弱い)。
 ワイツマンの書簡集の編纂にたずさわっている彼が、石油代替物質精製の謎にせまっていく過程が、物語の核となります。
 書簡や記録を読み解いていくスリルは、まさに暗号解読ミステリーさながら。
 そして後半は謀略小説的な展開を見せ、証拠書類をめぐる攻防と犯人探しへとストーリーがシフトしていきます。

 いまさら70年代の小説を出すと、「また扶桑社のアナクロ路線か」と思われるかもしれませんが、中東や石油や代替エネルギーをめぐる情勢はまさに現代的な課題であり、いま読むにふさわしいテーマではないでしょうか。
 編集側としても、ほんとうに楽しい仕事でした。
 おなじように、みなさまにも楽しんでいただけるとよいのですが。(編集部・T)

2008年12月22日 11:11

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