2008年12月22日 |
【新刊案内】
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ライオネル・デヴィッドスン再登場!
この人は、まさに生きる伝説というべき作家ではないでしょうか。
寡作ながら、新作が出版されるたびに、その質の高さで注目され、CWAゴールド・ダガーを3度受賞、さらにグランド・マスター賞も受賞した名匠ライオネル・デヴィッドスン。
本書『大統領の遺産』は、彼が1976年に発表した作品で、当時のデイリー・テレグラフは「本年度ベストを超える作品」と評しました。
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タイトルにある「大統領」とは、イスラエル初代大統領ハイム・ワイツマンのこと(カバーの左上に飾られている写真がご本人)。
ちなみに原題は「The Sun Chemist=太陽の化学者」で、これも彼を指すのですが、ここからもわかるとおり、ワイツマンはもともと国際的に活躍していた化学者でした。
そんなワイツマンが、じつは石油にかわる物質の精製を研究していたら……というアイディアから、デヴィッドスンは彼一流の虚実の皮膜を突く巧妙なミステリーを作りあげます。
今回の語り手は、ロシアから英国への亡命者の息子で、現代史研究家のイゴー・ドゥルヤノフ(例によって、肉体的にそう強いわけではなく、女に弱い)。
ワイツマンの書簡集の編纂にたずさわっている彼が、石油代替物質精製の謎にせまっていく過程が、物語の核となります。
書簡や記録を読み解いていくスリルは、まさに暗号解読ミステリーさながら。
そして後半は謀略小説的な展開を見せ、証拠書類をめぐる攻防と犯人探しへとストーリーがシフトしていきます。
いまさら70年代の小説を出すと、「また扶桑社のアナクロ路線か」と思われるかもしれませんが、中東や石油や代替エネルギーをめぐる情勢はまさに現代的な課題であり、いま読むにふさわしいテーマではないでしょうか。
編集側としても、ほんとうに楽しい仕事でした。
おなじように、みなさまにも楽しんでいただけるとよいのですが。(編集部・T)
投稿者mystery: 11:11
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