ゴアズといえば、『路上の事件』はよかったですよね。
 1950年代の青春ロード・ノヴェルの体裁を借りながら、最後にはすべての糸が1本につながって、私立探偵の誕生に着地するんですものね。

 わたしどもでは、その次の作品“Glass Tiger”の版権を取得しました。
 この作品は、大統領候補の暗殺をあつかったスリラー。
 ゴアズはハードボイルドとサスペンスを交互に書く傾向がありますね。
 こちらは、坂本憲一さんが鋭意翻訳中です。
 
 さて、昨年秋のこと、そんなゴアズの新作の情報が届きました。
 タイトルは“Spade & Archer”。
 そう、ダシール・ハメット『マルタの鷹』の前日譚だというのです!

 なにしろゴアズは『ハメット』という作品をものしたほどの専門家ですから、うってつけの企画。
 サム・スペードがコンチネンタル探偵社を辞め、マイルズ・アーチャーと事務所を構えるまでになる顛末を描いていて、有名な「フリットクラフト」の一件をふくめ、原典の裏側を総ざらいした作品です。
 それは見のがせない!
 低調と言われる昨今の翻訳ミステリー界においては、ひさしぶりに楽しい新作の企画で、こういうニュースは業界的にもうれしいじゃないですか。

 しかし、こういうものは、『マルタの鷹』をラインナップに持っている老舗が出すべきですよねえ。
 と思っていたのですが、なんと! 日本ではどこの出版社も手をあげていないとのこと。
 こんな本が日本で読めないなんてことが許されていいわけはないっ。
 というわけで、社内に諮って企画をとおし、ぶじにオファーしたのでした。

 ところがその数日後、他社からカウンター・オファーが出たと知らされました。
 あらら。
 こうなると、条件のいいほうが競り落とすことになるのですが、こちらが文庫オリジナルという条件でオファーしたのに対し、先方は最初は単行本で出版し、のちに文庫化するという条件を提示。
 というわけで、ウチは負けてしまいました。
 残念。

 けっきょく、『マルタの鷹』の版元である老舗ミステリー出版社が版権を取得した由。なあんだ、まるでウチが当て馬になったみたいなものだったんすね。
 しかし、こんな作品が読めるのは、ミステリー界の再活性化にもいいことでしょう。
 楽しみに待ちましょう!(編集部・T)

2009年3月31日 15:00

コメント(2)

Comment

  • この記事には関係ありませんが始末屋ジャックの邦訳の予定が無いというのを今日知ったので書きます
    シリーズ物を途中で投げ出すとは何事か!ふざけるな!
    早急に版権を手放せ。
    読者不在の決定をして話題性だけの駄作を出版する暇があったらシリーズ物を完了させろ
    二度と貴社の本は買わない



    |かっさん|2009年4月 8日 20:23

  • かっさんさま

     コメントをいただき、ありがとうございます。

     朗報がございます。
    〈始末屋ジャック〉シリーズの次作、“Crisscross”の邦訳権を取得いたしました(邦題未定)。
     詳細は、あらためてこのブログに載せますね。



    |編集部・T|2009年4月 9日 10:32

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