2009年6月アーカイブ

『オックスフォード連続殺人』で『2007本格ミステリ・ベスト10』(原書房)の海外部門第四位に輝き、衝撃の登場を果たしたアルゼンチン人作家ギジェルモ・マルティネスの、ミステリ第二作をお届けすることになりました! お待たせしただけのことはある作品だと自負いたしております。

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あらすじはこんな感じです。

ある日曜日、作家である「私」の元に一本の電話がかかる。
10年ぶりに聞くその声の主はルシアナ。
有能な美貌のタイピストだった彼女は、いま命の危険を訴え彼に切実に助けを求めていた。
この10年の間に彼女を襲った、近親者の相次ぐ不自然な死亡事故。しかし彼女は確信していた。一見無関係に見えるそれぞれの死の背後で、一人の偉大な作家が糸をひいていることを……。

この手の内容の本を、あえて説明もなく読者のお手元にお届けして、そのまま委ねてしまうのは、編集者にとって(もちろん著者にとっても)なかなか勇気のいることです。
なにせ、この小説は“正しく掛け違えられた”小説なのですから。

決して長い小説ではありません。前作と比べても、さくっと読み終えることができると思います。ただ読後感は人それぞれ、まちまちでしょう。正直、読者の皆様がどういう判断を下すかは予想がつきません。

個人的には、きわめて深遠なたくらみに満ちた傑作であると確信していますが、まずは皆様には先入観を持たずに手にとってお読みいただきたいなあ、と思っています。
ちなみに、解説の巽昌章さんが指摘されているように、本書で展開される問題意識には、日本の本格ミステリ作家の一部と、びっくりするくらい通底しているところがあります。表面上は、フレンチ・ミステリに近い形態のサスペンスに仕上がっていますが、むしろ「謎と解明」に心惹かれ、思惟を深めてきた本格ミステリ・ファンの皆様にこそぴったりの小説ではないかと考えております。

ここでは、オビにいただいた法月綸太郎さんの素晴らしい推薦文と、巽さんの含蓄あふれる解説の冒頭をご紹介することで、作品のご紹介に代えさせていただきたいと思います。

二人の作家の心理戦が、奇怪な連続死の背後に潜む
物語の〈魔〉をあぶり出す……。文学的な仕掛けと
逆説に満ちた、戦慄の〈反=連続殺人〉。異様なラ
ストシーンが脳裏に焼きついて離れない。
 ―― 法月綸太郎


私たちはいかにして、運命の姿かたちを知るのでしょう。あるいは、いかにして、ひとつの無残な事故が偶然の産物なのか、それとも天の裁きなのかを判別するのでしょう。
こんな問いは非現実的で愚かしい、だって運命なんてものを信じていないから――そう考える人には本書は無縁かもしれません。いや、やはり、そんな人にこそ一読を勧めるべきではあるまいかとも私は思います。これは奇妙な連続死の謎解きを通じて、運命や神の摂理などというものに対しできる限り懐疑的であろうとしてもなお、知らず知らずのうちに不可思議の顕現を呼び寄せてしまう人間の心の仕組みを描いた小説なのですから。
(巽昌章解説より冒頭部分)


(編集Y)

2009年6月30日 15:55 | | コメント(0)

今月発売のギジェルモ・マルティネスの新作『ルシアナ・Bの緩慢なる死』。ここでは、刊行を記念いたしまして、前作『オックスフォード連続殺人』の映画版について、ちょっとご報告しておきます。


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すでに、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、『オックスフォード連続殺人』は、同じ言語圏のスペインで “Los Crímenes de Oxford” のタイトルで2008年に映画化されています。
監督はあの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア。
一般的には、ドツキ漫才芸人を描いたブラック・コメディ「どつかれてアンダルシア(仮)」(1999)で知られているのかなあ。
個人的には、東京国際ファンタで「獣の日 ザ・ビースト」(1995)を観たときの衝撃が忘れられません。反キリスト降臨を阻止するために、カトリック神父がヘビメタ野郎と組んで悪行三昧を繰り広げるお話(なんだそれ)。
ミステリ・ファンにとっては、「みんなのしあわせ」(2000)も必見の名画でしょう。「デリカテッセン」を超える、集合住宅ミステリ映画の傑作ですよ、あれは。

そんな彼の最新作が、この“Los Crímenes de Oxford” 。
日本では結局、残念なことにまだ公開されていないのですが、実は編集者は、業界向けの試写会を見ることができました。いわゆる役得ってやつですね。
配役は、天才数学者セルダム教授にジョン・ハート、原作の〈私〉にあたる人物にイライジャ・ウッドという濃いメンツ。
シュールなブラック・コメディの監督というイメージが強いデ・ラ・イグレシアですが、本作では実に落ち着いたサスペンス/本格ミステリ調の演出を見せ、ほぼ原作のテイストを踏襲した、知的で重みのある内容に仕上げています。
もちろん、「らしさ」も垣間見えて、原作の「七階」のくだりや、自動筆記男の描写、終盤のバス事故などを、これでもかとばかりにフリーキーに仕上げていて、なかなか見ごたえのある映画でした。

原作者のマルティネスにとっても、十分満足の行く出来だったようです。
幼少より熱狂的な映画ファンだったマルティネスは、このバスク人監督を高く評価していて、
「自分の小説を映画化してくれる力がある人がいるとするなら、それはアレックス・デ・ラ・イグレシア以外にはいないとずっと考えていました。彼は偉大な監督だと思っていましたし、彼の作品には以前から深い関心を寄せていましたから。私が見た映像には非常にインパクトがあり、彼の作る映画はきわめて魅力的だった。映画の出来栄えには大変満足しています。彼の作り上げたリズムと監督としてのストーリーの伝え方には賞賛の念を禁じえません。彼が手がけた映画には必ず独特の味があります。“Crimen ferpecto”(『完全犯罪』)は最近発表された中でも最もすばらしい映画の一つだと思います」(2007年10月2日 エル・パイス紙
とインタビューに答えて述べています。

この作品、本国ではなかなかの評判を呼んだようでして(そもそも原作も異例のヒットをスペイン語圏で飛ばした様子)、2008年度の第23回ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で、作品、監督、脚色、編集、作曲、プロデューサーの6部門にノミネート、うち、編集、作曲、プロデューサーの三部門で栄冠を勝ち取りました。
うまく日本に上陸してくれれば、ちょっとはうちの本にも恩恵があったんでしょうが……。
まあ、アレックス・デ・ラ・イグレシア作品は大半が日本でDVDにはなっていますので、いつの日が国内で皆様にご覧いただける日が来れば嬉しく思います。

なお、今回弊社より発売される『ルシアナ・Bの緩慢なる死』も、すでに同じプロダクションから打診が入っているようです。たしかに、映画には向いている気がしますね……。
というわけで、次はいよいよ『ルシアナ・Bの緩慢なる死』のご紹介です。

2009年6月29日 22:19 | | コメント(0)

 業務とは関係ない話です。

 知りあいのエージェントさんから教えてもらったニュース。
 まるでミステリーみたいなので、ご紹介しようと思います。

 ロシア・サンクトペテルブルクで、専門学校の校長ケルメン・ボサンゴヴァさん(38歳・女性)が殺害されました。
 車内で何者かにナイフで刺された模様で、警察は雇われ殺し屋による犯行と発表。
 ボサンゴヴァさんには子どもが2人いるうえに、妊娠8カ月だとのこと。
 学校関係者は驚きと悲しみにつつまれました...

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「ニューヨーク・タイムズ」が伝える現地のTVニュースから
左がボサンゴヴァさん


 ところが翌日、ボサンゴヴァさんが、いつものように学校に出勤!?
 警察は、じつは事件はフェイクで、校長殺害を計画していた犯人を逮捕するために仕組んだものだったと公表したのです。

 警察によると、従来から学校内では横領や詐欺が横行していたといいます。
 ボサンゴヴァさんが、徹底的な経理の透明化に乗り出したため、不正の中心人物だった副校長のルーキン氏が、身の安全をはかるため、校内の管理人2人にボサンゴヴァさんの殺害を依頼。
 この2人が殺し屋を見つけて依頼したまではよかったのですが、じつはこの男が警察の情報屋だったことから、計画が発覚しました。

 そこで警察は、殺人劇を実行。
 ボサンゴヴァさんが、校内の駐車場で車に乗りこんだところへ、犯人役の男がやって来て、ナイフで何度も刺す真似をします。
 ボサンゴヴァさんは、用意した血糊を体にかけ、友人(この人も共演者)が彼女を病院に搬送。
 警察は、この事件で副校長ルーキン氏と管理人2人を逮捕しました。

 ――ロシアでは、警察がマスコミに干渉するのがふつうで、ウソの情報を書かせて捜査に利用する手は日常的に行なわれているのだそうです。
 犯罪者を捕まえられるんだからいいじゃないか、というのが警察側の理屈。
 この事件でも、べつにここまでやらなくても、たんに校長が殺されたという記事を出させればじゅうぶんだったのでは、という話も。
 じっさい、ボサンゴヴァさんによると、怖い思いをしてまで殺される役を演じたのに、事件の目撃者はいなかったという。

 ここまででも、かなりおもしろい話ですが、ところが事件にはもうひとひねりあります。

 逮捕された副校長のルーキン氏は、じつはこの学校の創立者で、彼の妻は最初の校長をつとめていました。
 この妻は、すべてを手配してボサンゴヴァさんに校長の座を譲ってやったのに、彼女が学校の実権を掌握するためにルーキン氏を放逐しようとして、この事件をでっちあげた、と主張しているとのこと。
 白黒逆転?

 当のボサンゴヴァさんは、明言を避けています。
 校長になってから、経理上の齟齬があることに気づき、それを正そうとしただけだと言うのですが、副校長が実際に殺害計画を進めていたかどうかについてもわからないと答え、それを決めるのは警察だとしています。(編集部・T)

2009年6月18日 11:25 | | コメント(0)

 本格ミステリー・ファンのみなさま、お待たせしました。
 あの『オックスフォード連続殺人』のギジェルモ・マルティネスの新刊をお届けします。

ギジェルモ・マルティネス 和泉圭亮/訳
『ルシアナ・Bの緩慢なる死』定価970円(税込)

 若き作家
「私」のもとにかかってきた電話。それは、かつて秘書だった魅力的な女性ルシアナからのものだった。ここ数年、彼女の近親者が次々に恐ろしい死にかたをし、その陰には偉大な犯罪小説家の邪悪な復讐計画があるというのだ。
 ほんとうに小説家が殺人者なのか、それともじっさいに超常的な力が働いているのか?
 主人公は知恵と想像力の限りをつくして謎に挑むが……
 法月綸太郎氏推薦、究極のメタミステリー!

2009年6月11日 11:03 | | コメント(0)

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