今月発売のギジェルモ・マルティネスの新作『ルシアナ・Bの緩慢なる死』。ここでは、刊行を記念いたしまして、前作『オックスフォード連続殺人』の映画版について、ちょっとご報告しておきます。


%83I%83b%83N%83X%83t%83H%81%5B%83h%20%93%F1%96%87.JPG


すでに、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、『オックスフォード連続殺人』は、同じ言語圏のスペインで “Los Crímenes de Oxford” のタイトルで2008年に映画化されています。
監督はあの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア。
一般的には、ドツキ漫才芸人を描いたブラック・コメディ「どつかれてアンダルシア(仮)」(1999)で知られているのかなあ。
個人的には、東京国際ファンタで「獣の日 ザ・ビースト」(1995)を観たときの衝撃が忘れられません。反キリスト降臨を阻止するために、カトリック神父がヘビメタ野郎と組んで悪行三昧を繰り広げるお話(なんだそれ)。
ミステリ・ファンにとっては、「みんなのしあわせ」(2000)も必見の名画でしょう。「デリカテッセン」を超える、集合住宅ミステリ映画の傑作ですよ、あれは。

そんな彼の最新作が、この“Los Crímenes de Oxford” 。
日本では結局、残念なことにまだ公開されていないのですが、実は編集者は、業界向けの試写会を見ることができました。いわゆる役得ってやつですね。
配役は、天才数学者セルダム教授にジョン・ハート、原作の〈私〉にあたる人物にイライジャ・ウッドという濃いメンツ。
シュールなブラック・コメディの監督というイメージが強いデ・ラ・イグレシアですが、本作では実に落ち着いたサスペンス/本格ミステリ調の演出を見せ、ほぼ原作のテイストを踏襲した、知的で重みのある内容に仕上げています。
もちろん、「らしさ」も垣間見えて、原作の「七階」のくだりや、自動筆記男の描写、終盤のバス事故などを、これでもかとばかりにフリーキーに仕上げていて、なかなか見ごたえのある映画でした。

原作者のマルティネスにとっても、十分満足の行く出来だったようです。
幼少より熱狂的な映画ファンだったマルティネスは、このバスク人監督を高く評価していて、
「自分の小説を映画化してくれる力がある人がいるとするなら、それはアレックス・デ・ラ・イグレシア以外にはいないとずっと考えていました。彼は偉大な監督だと思っていましたし、彼の作品には以前から深い関心を寄せていましたから。私が見た映像には非常にインパクトがあり、彼の作る映画はきわめて魅力的だった。映画の出来栄えには大変満足しています。彼の作り上げたリズムと監督としてのストーリーの伝え方には賞賛の念を禁じえません。彼が手がけた映画には必ず独特の味があります。“Crimen ferpecto”(『完全犯罪』)は最近発表された中でも最もすばらしい映画の一つだと思います」(2007年10月2日 エル・パイス紙
とインタビューに答えて述べています。

この作品、本国ではなかなかの評判を呼んだようでして(そもそも原作も異例のヒットをスペイン語圏で飛ばした様子)、2008年度の第23回ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で、作品、監督、脚色、編集、作曲、プロデューサーの6部門にノミネート、うち、編集、作曲、プロデューサーの三部門で栄冠を勝ち取りました。
うまく日本に上陸してくれれば、ちょっとはうちの本にも恩恵があったんでしょうが……。
まあ、アレックス・デ・ラ・イグレシア作品は大半が日本でDVDにはなっていますので、いつの日が国内で皆様にご覧いただける日が来れば嬉しく思います。

なお、今回弊社より発売される『ルシアナ・Bの緩慢なる死』も、すでに同じプロダクションから打診が入っているようです。たしかに、映画には向いている気がしますね……。
というわけで、次はいよいよ『ルシアナ・Bの緩慢なる死』のご紹介です。

2009年6月29日 22:19

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ