お待たせいたしました。扶桑社の本格発掘路線、本年度の結実。『ミスター・ディアボロ』をご紹介いたします。

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あらすじはこんな感じです。

西洋学研究学部の裏手を通る〈悪魔の小道〉。そこはかつて、一人の学生がシルクハットにマント姿の怪人とここで遭遇した末に、首を吊ったという因縁の小道だった――。
学会の夕食会の席上、この恐るべき逸話が披露された直後、伝説の怪人“ミスター・ディアボロ”と思しき人影が中庭にたち現れる。会のメンバーは怪人を追いかけるが、〈悪魔の小道〉に飛び込んだ人影は衆人環視のもと忽然と姿を消す。さらにその夜、密室状況下で他殺体が発見され……。
カー顔負けのけれん味と、華麗なロジックを兼ね備えた、知られざる60年代本格の逸品、遂に登場!

ね、面白そうでしょ? わくわくしますよね?
著者のアントニー・レジューンは、かつて二見文庫さんでスパイ小説が一冊紹介されていますが、本格ミステリとしては本作のみ。1960年という執筆年を考えても、このたび訳者の小林晋さんが発掘されなければ、永遠に埋もれたままになっていたことでしょう。

まずは、顔のない怪人、魔術にまつわる因縁譚、旧態然たるカレッジのメンバー、衆人環視下からの天外消失、謎の密室殺人……カーやロースンを彷彿させる大向こうを張った舞台立てに、しびれまくります。

でも、著者の本領は、むしろ堅実なロジックの構成にあるというのが編集者の私見です。珍奇な仰天トリックを期待される向きもあるかと思いますが、ここはじっくりと犯人当てに挑んでみていただけると、より本作を楽しんでいただけるかと存じます。
外見は古風でも、内実は、とても整理のきいた(細かいところに気の行きとどいた)本格パズラーになっていまして、30年近い、黄金本格期の蓄積と熟成を踏まえた作品に仕上がっていると思います。カー/ロースン的なけれん味と、クイーン的なパズラーの折衷をめざした作品といっていいのかもしれません。で、結果として、同じ傾向にある「金田一少年の事件簿」と近接するわけですね。ある意味、狙いに狙ったいかにものガジェットとロジックを用いた再構成・再生産という意味でも共通しますし。
一見、黄金本格期の作品みたいな風貌ながら、60年刊行という「後だし」ならではの研ぎ澄ましたジャンル感が充溢している点では、日本の80年代新本格とも通じるものがあると思います。
なにせ、もうすぐP・D・ジェイムズやレンデルが出てこようという時期に、これ書いてるんですからね。ほんとに昔の本格物が好きだったんだと思いますよ、この人。他の冒険小説系の作品にも登場するアーサー・ブレーズを、敢えて探偵役に立てているところをみると、レジューン自身、遊びの精神で番外編っぽく楽しく書きあげたらしいことがうかがわれます。

ともあれ、近年の古典発掘・復刊の成果の中でも、かなりの上位ランクに位置する作品であることには自信があります。すべての本格ファンに捧げる掛け値なしの『幻の逸品』。ぜひ、ご堪能いただければ幸いです。(編集Y)

2009年8月26日 17:00

コメント(1)

Comment

  • このブログを読んで『ミスター・ディアボロ』を購入、読了しました。
    ブログに書かれているように、「金田一少年シリーズ」や新本格、特に二階堂黎人の「地獄の奇術師」と森博嗣の「冷たい密室と博士たち」及びにGシリーズを連想させる内容でした。黄金期の本格のツボを押さえた本格ファンによる本格ファンのための本格ミステリ(笑)。
    それでいてマニアックになりすぎず、訳文も読みやすくて、読後感は、カーの諸作のように爽快でした。
    なんだか扶桑社さんは、SFもホラーもミステリも、掘り出し物を見つけるのがうまくて、それでいて、商売下手な感じがします。
    私のような地方在住者は、近所の書店で貴社の新刊を見つけるのが、入荷されてなかったり、平台に置いてなかったりして、実はけっこう大変だったりするので、今後とも、このブログでがんがん紹介してください。
    楽しい読書経験をありがとうございました。
    また、よろしくお願いします。
      



    |わごんgame  |2009年9月 7日 01:04

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