2010年8月アーカイブ

 謀略ミステリーの名手ダニエル・シルヴァが2006年に発表した The Messenger という作品があります。
 シリーズ・キャラクターである、イスラエルの伝説のスパイで絵画修復家のガブリエル・アロンが、大規模なテロに立ちむかう物語です。

 この本が出た当時のこと。
 ケンタッキー州レキシントンに住むレス・モリス弁護士は、妻とともにアラスカへ休暇旅行に行く予定でした。
 出発直前、彼は、ちょうど当地のブルーグラス空港を訪れていたダニエル・シルヴァから、サイン入りの The Messenger を手に入れました。

 レス・モリスの息子ウィンは、ふだんの父らしくない行為だと思ったそうです。
 冒険小説を読むのは好きだったそうですが、作家に会って話をしたりするタイプではなかったとのこと。
 逆に言えば、それだけダニエル・シルヴァの作品が好きだったようです。 

 しかし、レス・モリス氏はその本を読むことはできませんでした。

 2006年8月27日のことです。
 モリス夫妻の乗った旅客機は、誤って短い滑走路に進入し、離陸に失敗して墜落。
 副操縦士だけは助かったものの、乗員乗客49名が死亡。犠牲者には日本人2名も含まれていました。

 事故から数ヵ月後、息子のウィンは驚くべきものを目にします。
 機内から発見された乗客の身の回り品のカタログのなかに The Messenger があったのです。
 事故機は大破し、爆発炎上したにもかかわらず、このサイン本は傷ひとつない状態でした。

 本を受け取ったウィンは、これを機に長年の夢を実現することにしました。

 それは、書店を開くこと。
 書店チェーンや大学出版局で働いてきたウィンは、小さいころから考えていた「自分の本屋を持つ」という目標を実行に移すことにしたのです。

「思わぬ事故で、今日が人生最後の日になるかもしれない。それなら、無駄にすごしたり、いつかこんなことがしたいな、などと言ってちゃいけない」

 こうして2008年、The Morris Book Shopが開店しました。
 店内には、あの The Messenger が飾ってあるそうです。

2010年8月31日 11:00 | | コメント(0)

 ローラ・リップマン、といえば、テス・モナハンのシリーズや単発のサスペンスなど、日本でも10作以上が邦訳されている人気作家ですが、彼女の新作がちょっとした話題になっています。

 最新作 I'd Know You Anywhere は、アメリカで8月17日に発売されたのですが、最初の5日間の売れ行きを見たところ、e-book版の部数がハードカバー版をうわまわったというのですね。

 ハードカバーが4000冊売れたのに対し、e-book版は4739。
 版元のHarperCollinsの担当者によると、最初の1週間でe-bookのほうが売れた本ははじめてだそうです。

 つまり、ほかの本はまだそこまでの事態にはなっていないということでもありますが、では、この本の場合、どうしてそんな結果になったのか。

 さきほどの担当者によると、書評のおかげではないか、とのこと。
 よい書評が出ると、e-bookの売れ行きのほうがすばやくのびるのだそうです。
 どうやら、書評を見た読者が、いますぐ読みたい、と思い、より早い手段としてデジタルを選ぶのではないか、というのですね。
 本を買おうとすると、書店へ出かけて買うか、ネットなら配送を待たなくちゃいけないわけですから。

 なるほど、これは、納得しやすい説明です。
 つまり、リップマンの今回の作品も、いい書評が出たわけですね。

 ちなみに、アメリカの大手の出版社では、現在のところe-bookのシェアは、全体の収入の8%とのこと。1年前には3~5%だったので、パーセンテージでは倍近くのびていることになります。
 2012年末には、この割合が20~25%に増加しているのではないかと見こんでいるそうです。

2010年8月30日 09:47 | | コメント(0)

ケッチャムの近況について、読者の方からコメント欄にお問い合わせを頂戴いたしましたので、遅まきながら回答させていただきます。ほんとにお返事遅れてごめんなさい。

えー、ケッチャムをごひいきにしてくださり、誠にありがとうございます。
海外のWikiなどをご覧になるとご了解いただけると思うのですが、2001年の『黒い夏』以降、あまり長いものは書いていないのが実際のところでして、日本オリジナル編集の中編集『閉店時間』内でご紹介した『川を渡って』(2004)、『雑草』(2006)も、本国では薄い“単行本”としてそれぞれ出版されています。2000年以降書かれた未訳作で一番長いのは2008年の“Old Flames”だと思いますが、これとて『地下室の箱』より短いものです。
まあ、作風からいえば、むしろ短編・中編(ノベッラ)向きの作家さんなのかもしれませんが。むしろ、“Peaceable Kingdom”“Closing Time”などの短編集にこそ、近年の成果がぎっしり詰まっているといえるかもしれません。
と思っていたら、つい先日最新作の情報が舞い込んでまいりました……。

2010年8月29日 18:34 | | コメント(0)

International Read Comics in Public Day、つまり「外でマンガを読む日」なんだって。

 公園やビーチやバスのなかや図書館の入り口の階段で、1~2時間のあいだ、堂々とマンガを読もう、というだけのコンセプト。
 なにしてるの? と他人から聞かれたら、「コミック・ブックを読んでるんだ」と答えよう(グラフィック・ノヴェルを読んでる、でも可)。
 マンガを読んでるんだ、というアピールが重要なんですね。
 それだけじゃなく、もしほかのマンガを持っていたら、その人に貸してあげよう。
 輪を広げなきゃね。

 もちろん、冗談半分ではあるわけですが、この運動をはじめたブライアン・ヒーター氏によると、彼はコミックのブログを書き、コンヴェンションに出かけるほどのファンなのにもかかわらず、いまでも「公共の場でマンガを読むのが恥ずかしい」んだそうです。
 日本が、80年代にはすでにクリアしていた段階ですねえ。

 ちなみに8月28日はジャック・カービーの誕生日でもあるそうですよ。

 ともかく、がんばれ!

2010年8月27日 10:57 | | コメント(0)

 グアンタナモ米軍基地の収容所にある図書室の蔵書について、〈タイム〉が紹介しています。

 18000点あまりの書籍、雑誌、DVDなどが所蔵されていて、言語も英語、フランス語、アラビア語から、ウルドゥー語、ペルシャ語、パシュート語まで、18種類におよぶそうです。

 人気のある作家は、ジョン・グリシャム、アガサ・クリスティー、それにハリー・ポッター・シリーズ...なんか、とってもふつう。
 それと、世界各地の風景を収録した写真集も人気だそうですよ。
 いつ出られるか、裁判があるかどうかさえわからない人たちですものねえ。

 こんなものが読みたい、とオーダーが入ると、探して手配するんですって。
「ダン・ブラウンには、まいったよ」と係の海軍士官。アラビア語訳が入手できなかった、って話です。
 大ベストセラーだし、反キリストとか言われた本だから、簡単に手に入りそうな気もしますけどね(もちろん、政治的宗教的に極端な内容や性的なものは、オーダーされてもはじかれるそうですが)。

 軍で見つけられないときは、赤十字の手を借りるそうです。
 隔離されて暮らさなければならない人たちにとって、外界のことを知るのは精神衛生上必要なことだから、本は重要なんだそうです。
 グアンタナモも変わりましたねえ。
 っていうか、それが当然ですか。
 じつは、わが社にも、日本中の矯正施設のなかから、目録を送ってほしいという手紙が毎日のように届きます。

 グアンタナモといえば、パキスタン系英国人がテロリストに仕立てられて収容されてしまう『グアンタナモ、僕達が見た真実』というきびしい映画がありました。
 その監督、マイケル・ウィンターボトムの新作が、これです。

2010年8月25日 13:11 | | コメント(0)

 1966年に録音されていたジョン・ル・カレへのBBCのインタビュウが発掘されたとのこと。
 そのなかでル・カレは、イアン・フレミングを手きびしく批判しているそうです。

 いわく、
「ボンドは嫌いだ。あれがスパイとは思えない」
「ボンドをエスピオナージュに分類するのは大きな誤りだ」
「ボンドは、いわば国際的なギャングスターだ」
「政治的なコンテクストが欠落している。アメリカやソビエトの指導者が誰であってもボンドには関係ない」

 まあ、最後の部分はわかる気がしますが、だいたいいまではル・カレ自身が「エスピオナージュに分類するのは大きな誤り」な作家になっちゃいましたよね(ええと、これはいい意味で言っています)。

 フレミングもル・カレも、諜報活動を実体験として知っている作家ですが、そのアウトプットはまるでちがいます。
 それは、戦争の最中に現場のスパイをやっていた人と、外務官僚機構の内部で見ていた人との差もあるでしょうが、それ以上に作家としての資質・目指したもののちがいでしょうから、これは仕方がないのでは。

 このインタビュウが行なわれた1966年といえば、ル・カレは『寒い国から帰ってきたスパイ』につづき『鏡の国の戦争』を発表したあと。
 フレミングは64年に死去し、遺作『黄金の銃を持つ男』や短編集『ベルリン脱出』が出版されたあとです。
 なるほど、当時の読者には、フレミングからル・カレへの世代交代は鮮烈に映ったことでしょう。

 もっとも、ル・カレが言うほど、ジェイムズ・ボンドはギャングっぽくはないと思いますよ。
 なにしろ、ボンドは映画のイメージが強すぎます(このインタビュウの時期には『サンダーボール作戦』まで公開されてます)。
 しかし、フレミングが描くボンドは思ったよりも内省的ですし、暗い影すら背負います(北上次郎氏の『冒険小説論』の卓抜なボンド論をご参照ください)。
 ついでに言うと、たしかにボンドは米ソの指導者には左右されないかもしれませんが、そりゃあ英国人ですからね。

 ちなみに、そのボンド映画の新作は、まだはっきりしない状態。
 いっぽう、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の再映画化は実現しそうだそうですよ(スマイリーは、ゲイリー・オールドマン)。

2010年8月24日 17:10 | | コメント(0)

 欧米の人たちにとっては、夏休みになにを読むかは重要な問題らしく、今年の夏はどんな本がおススメかをマスコミがとりあげたりもします。
 beach readなんていう言葉もありますね(休暇中に海辺でゆっくり読む本、といったところでしょうか)。

 日本ではお盆休みも終わって、通勤電車もいつもの混雑具合にもどりましたが、オバマ大統領は、いまが夏休みの最中(8月24日現在)。
 昨年は、オバマが休暇に持っていく本がリストアップされてて、ミステリーとしてはペレケーノスがあげられたりしていましたが、今年は紹介されないなあ...と思っていたら、ニュースが届きました。

 夏休みをすごすマーサズ・ヴィニヤードに到着した翌日、オバマはポロシャツにジーンズ姿で地元の書店に登場し、紙袋をいくつか下げて出てきました。

 買った本は、Brad Leithauserの A Few Corrections と、ピューリッツァー賞の小説部門を受賞したPaul Hardingの Tinkers 。文学づきましたね。
 それに、子どもたち用に、ハーパー・リーの『アラバマ物語』とスタインベックの『赤い小馬』。手がたい。っていうか、親としては鉄壁の選択。
 とくにハーパー・リーは、発表から50周年ということで盛りあがっているし、なにしろ、人種差別に立ち向かう弁護士の父親を娘の視点から見る小説ですから、ハマりすぎかも。

 しかし、出版業界的に騒ぎになっているのは、書店側がオバマに、ジョナサン・フランゼンの新作 Freedom のリーディング・プルーフをわたしてしまったこと。

 フランゼンにとっては『コレクションズ』以来となる長編小説 Freedom
 じつはこの本、オバマに手わたされた日から10日ほどあとの、8月31日の発売が予定されています。
 しかし、出版前から大きな話題になり、いま、ちょっとしたフランゼン・ブームが起きているほど。
 出版社側は、発売当日まで世の中に出ないよう、きびしく規制をかけていたのです。

 書店がオバマにわたした“プルーフ”というのは、出版社が事前に製作し、書評やパブリシティ用として、関係者だけに配る見本のこと。
 書店が持っていてもおかしくはないのですが、売り物ではありません(だから、この書店もオバマに売ったわけではなく、プレゼントしたわけです)

 あきらかにこの書店が、出版社が設定した禁を破ってしまったということで、どうせならとここが早めに売りだしちゃうんじゃないかとか、もしかしたら出版社が発売を前倒しにしちゃうんじゃないかとか、さまざまな憶測を生んでいるらしい。
 さらに、このニュースを知った読者があちこちの書店にやって来て、お前が持ってる本を出せ、と迫る事態も起きてるそうで、思わぬ余波というところですね。

 もちろん、こういうときの常で、いいパブリシティになったじゃん、という皮肉な意見も。

2010年8月24日 10:42 | | コメント(0)

 2年近く前、「世界一稼ぐ作家は?」というForbes誌の記事を紹介しましたが、今年5月までの1年間の収入で見た最新データが発表されましたので、また興味本位でのぞいてみました。


1位 ジェイムズ・パタースン 7000万ドル
 アメリカで売れる小説の17冊に1冊はパタースンの作品になる計算なんですって!
 しかも本だけじゃなく、グラフィック・ノヴェルやTV化等々、プロジェクトも多彩。
 この人、いまだに原稿はすべて手書きだそうですよ。

2位 ステファニー・メイヤー 4000万ドル
 この2年で大躍進したのは、この作家ですね。
 映画化も、世界的に大成功。

3位 スティーヴン・キング 3400万ドル
 これは納得。
 ミュージカルや『コロラド・キッド』のドラマ化もあるそうですよ。

4位 ダニエル・スティール 3200万ドル
 1年間に、ハードカヴァー4冊の新刊があったんですって。
 3位のキングとはわずかな差...と言いたいところですが、円換算で億単位ちがうのですね。

5位 ケン・フォレット 2000万ドル
 ついに『大聖堂』のドラマ化が放映!

6位 ディーン・クーンツ 1800万ドル
 未読のかたは、どうか『チックタック』を読んでくださいね。傑作。

7位 ジャネット・イヴァノヴィッチ 1600万ドル
 こちらをご参照ください。

8位 ジョン・グリシャム 1500万ドル
 初のジュヴナイルを発表したり、既刊を電子書籍化したりしています。

9位 ニコラス・スパークス 1400万ドル
 小説も映画化も順調に成功をつづけているようです。

10位 J・K・ローリング 1000万ドル
 シリーズが完結して日が経っていますが、それでもさすがに。
 最後の映画もこれからですしね。

2010年8月23日 15:01 | | コメント(0)

 サリンジャーが亡くなったのは、今年のはじめ。

 長く隠遁生活を送っていたこの作家については、800ページにおよぶ伝記が出版されるとか(そんなに資料があるのか?)、 未発表の写真が発掘されるとか、話題には事欠きませんが……

ついには、サリンジャーが使っていたトイレがオークションに!

2010年8月20日 10:04 | | コメント(0)

 ペイパーバック出版の大手 Dorchester Publishing が、今後は e-book に移行するとアナウンスしました。
 彼らの発表によると...

  *9月以降、ペイパーバックの出版は取りやめる。
  *予定していたぶんは、すべてトレード・ペイパーバック(大版の並製)に切り替える。
  *e-book は予定どおりに供給する。
  *受注に応じたオンデマンド出版を開始する。

 ペイパーバックで予定していたものを、すべて活字を組みかえて(これも古い言いかたですが)、トレード・ペイパーバックに作りかえ、そのうえ営業も再考することになるので、出版まで半年以上のタイムラグができるそうです。
 そこまでしてもペイパーバックを捨てるのか、時代はそこまで来たのか、と思わされます。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、「ロマンス小説ファンは特に電子書籍への移行が素早かった」というのですから、ちょっと驚きです。端末の普及によっては、日本もこうなるのでしょうか。

 もっとも「ウォルマートなど複数の小売り大手からの受注が減ったことなどが響いた」ということですから、再販制度のある日本とは異なる事情もうかがえます。
 トレード・ペイパーバックならば、販路は書店に集中できるわけですね。
 もっとも、本が売れなくなっていることは、日米とも変わらないようですが。

 さらに記事によれば、Hard Case Crimeなどは、ペイパーバックであることに重要な意義があるので、Dorchester を離れようとしているとのこと。
 なにしろHard Case Crimeなんだから、その気持ちもわかるなあ(――と言ってる段階で、やっぱり感覚が古いことを露呈してます)。

2010年8月11日 12:49 | | コメント(0)

 英国での話です。

 2004年、出版社勤めを辞めて、2人で新たな版元を立ちあげた人たちがいました。社名は Quercus Books。ベイカー街の角に小さなオフィスを借り、当初はノンフィクションを中心に営業を開始。やがて、新人作家のフィクションの出版もはじめ、小説賞を取る作品も生みました。

 転機は、クリストファー・マクリホースという人物を雇ったこと。
 村上春樹やヘニング・マンケルを英国に紹介した人物で、その彼が最初に買ったのが、スウェーデン作家のミステリー Men Who Hate Women(女を嫌う男)でした。

 そもそもこの作品は、現地で歴史的な大ヒットを記録していたため、英国のほかの出版社も興味を示したのですが、著者がすでに死んでいるためプロモーションがしにくいとあって、難色を示していたのです。

 さて、この作品は The Girl with the Dragon Tattoo と改題されて、2008年にハードカバーで出版。
 そう、ご存じスティーグ・ラーソンの『ドラゴン・タトゥーの女』ですね。

 ところが、8000部程度で売れ行きはパタリと止まり、つづけて投入されたペイパーバック版もまあまあだったものの、小売店からどっさり返品されてしまいます。

 ここで Quercus の人たちは、ムチャなことをはじめます。
 公園や地下鉄やタクシーや電車やバスに、本を置いてくるのです。
 拾って読んでくれる人を期待した、まさに「捨て身」の戦法。

 これが功を奏したのかどうかはわかりませんが、2作め(『火と戯れる女』)は、英国では翻訳書としてはハードカバーで初のベストセラー1位を獲得。
 スティーグ・ラーソンは、amazonのKindleで初めて100万ダウンロードを記録する作家となりました。

 小さな出版社だった Quercus ですが、2010年上半期は売上が3倍増、株価はほぼ6倍に伸びる大躍進。

 単純な儲けだけではありません。
 Quercus には、有力な作品がつぎつぎに持ちこまれるようになりました。
 そればかりか、以前は受けつけてもらえなかったスーパーマーケットなどが、彼らの本を受注してくれるようになり、販路も拡大したのです。

 創業者のひとりマーク・スミスは言います。

「誰もが、次の『ハリー・ポッター』を出すのを夢見るものだ――わたしたちはそれを成し遂げたんだ」
 そのハリー・ポッターのシリーズを出版したのも、創業10年程度の独立系出版社 Bloomsbury Publishing でした。

 まだまだ出版には夢がある……と、信じたいものですが。

2010年8月 9日 10:29 | | コメント(0)

「本は何冊あるの?」――まさに、究極のクイズですね。

 もちろん、『1Q84』が何百万部だ、とか、そういうことじゃありません。
 いったい何種類の本が存在するのか、ということです。

 こんな難問に正面から取り組んだのは、そう、Google。
 本をスキャンするプロジェクトGoogle Booksのためです。

 たとえば、さきほどの『1Q84』であれば、BOOK1、BOOK2、BOOK3の3点と数えるわけです。
 これが文庫化されたとすれば、それもそれぞれ1点とする。
 あるいは同一の著作でも、序文や解説や注釈などがちがえば、それぞれべつな本としてカウントする。

 大きな手掛かりとしては、ISBNがあります(本のうしろにバーコードといっしょに入っている番号)。
 しかし、ISBNは1960年代なかばに考案されたので、それ以前の本では追っかけられない。
 あるいは、議会図書館(日本なら国会図書館)の分類もありますが、これも書誌的なデータで、じっさいに1冊1冊に対応するわけではない。

 ...というわけで、Googleが150以上のソースから集めた1次データは、10億点近く。
 そこから同じものを消去していって、残ったのは6億点ほどだったそうです。

 これが答え?
 いやいや、まだまだ。
 たとえば、Programming Perl, 3rd Edition(パール言語プログラミング、第3版)という本が46種類のデータから96点検出されたり、ISBNがおなじでも書誌がちがったりと、まあ、さまざまな課題が残されていたとのこと。

 そこからさらに、オーディオ、ビデオ、ISBN付きのTシャツ(?)といったものを除いていって、最終的な答えは――

2010年8月 6日 14:19 | | コメント(0)

 謀略小説で知られるアメリカの作家ヴィンス・フリンが、ブライアン・ヘイグと合作で新シリーズを開始するとアナウンスされました。

 ヴィンス・フリンは、暗殺者ミッチ・ラップを主人公にした『謀略国家』『強権国家』(いずれも二見文庫)が邦訳されていますし、ブライアン・ヘイグも、陸軍法務官ショーン・ドラモンドが登場する『極秘制裁』『反米同盟』『キングメーカー』(いずれも新潮文庫。上下巻)が邦訳されています。
 なかなか豪華なタッグじゃないですか。

 この2人、アメリカではベストセラー作家ながら、日本での紹介は途絶えてしまっていたので、扶桑社で新作を出版できないものかと検討したことがあります。
 ただ、時事的な背景があったり、シリーズ・キャラクターものでもあったりで、二の足を踏んでいたのですよ。
 今回の合作は、ニューヨークシティの対テロ作戦を描くものになるそうです。

 しかし、合作ってどういうふうに書くんでしょうね。

 扶桑社では、リンダ・バーロウ&ウィリアム・G・タプリー『癒しの血族』(品切)という作品がありました。
 ハードボイルド作家タプリーと、ロマンス作家バーロウ(『危険な愛のかおり』新潮文庫など)との共作って、作風がちがいすぎない? という感じでしたが、そもそものきっかけは、家がご近所どうしだったかららしいです。
 そうしてできあがった『癒しの血族』は、伝奇ロマン・サスペンスとでもいうべき作品で、それぞれの作家が単独では書かない類いの小説でしたから、おもしろい試みだったのではないでしょうか。

 その点、今回の2人は、ジャンルもおなじ。
 いい結果を期待しましょう。
 数年後に、日本語で読めるといいですね(できれば、扶桑社ミステリーで)。

 そういえば、カール・ハイアセンも当初は共作でしたね。
 扶桑社ミステリーからは、『さらばキーウエスト』(品切)が出版されていました。おなじ「マイアミ・ヘラルド」の記者同士のチームでした。
(共著者のウィリアム・モンタルバーノは、そののちLAタイムズに移り、1998年にオフィスへの出勤途中で急逝)

 合作というのとはちょっとちがうかもしれませんが、こんな組み合わせもありますよ。

2010年8月 6日 09:47 | | コメント(0)

 なんと、バーンズ&ノーブルの経営陣が、会社の売却を検討しているという発表がありました。
 この1年、株価が下落しつづけ、デジタル部門拡充のために1億4000万ドルの増資をしたにもかかわらず状況は好転しないなか、株主に対して価値を高める方策として、会社の売却も選択肢として考えている、ということのようです。

 バーンズ&ノーブルは、アメリカ最大の書店チェーン。というか、世界でも最大規模の書店ですね。
 インターネット書店としても、当初からamazonとならび立っていて、以前はout of printを探すならamazonよりB&Nのほうがいいなあ、と思ったものです(いまは横断的な古書店が増えたので、選択肢は広がりましたが)。
 最近では、amazonの電子書籍端末Kindleに対抗して、B&NはNookを投入するなど、あいかわらずがんばっていたのですが。

 株主の利益優先、という論理であって、けっして店がなくなるわけではないのですが、それでもちょっとびっくりしますね。
 肝心の株価は、前日の$12.84 から$15.90に上がったそうで、これはつまり、買収者が現われるだろうと市場は好意的に見ているのだ、とのこと。
 それでも1年前の株価は$28.78だったそうで、なるほど、思いきった改革が必要ということなのでしょうか。

 さっそく業界では「amazonが買収するべきだ」と論陣を張る人も出たり。
 なんか、ほんとうにそうなりそうで、ちょっとイヤかも。

2010年8月 5日 09:57 | | コメント(2)

昨年刊行の中篇集『閉店時間』以来の発刊となる、ジャック・ケッチャム『森の惨劇』のご紹介です。

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ベトナム戦争からの帰還兵リーは、心に深い傷を負って現実生活に適応できなくなり、人里離れた山中で愛犬とともに暮らしています。マリファナを栽培しながらの夢と現が交錯する生活。しかし、そこに人気作家ケルシーを中心とした仲間6人がキャンプにやってきて……。

山に気楽な気分で入ると、大変なことが起きる……。
なんとなく現実の事件にも当てはまる気がしてぞっとしますが、今回のお題は、
ケッチャム版「ランボー×13金」!
傑作『オフシーズン』と『隣の家の少女』のあいだに書かれた、“もっともケッチャムが危険な作家だった”最初期の問題作です。

2010年8月 2日 23:37 | | コメント(2)

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