2010年12月アーカイブ

 スティーヴン・ハンターの『蘇えるスナイパー』、好評にこたえ、重版が決定しました。

 スナイパー同士の戦いを真っ向から描くという、期待どおりの内容。
 未読のかたは、ぜひ!

2010年12月27日 17:27 | | コメント(0)

 ラルフ・ローレンス・カー(1887-1950)は、1938年から43年までアメリカ・コロラド州の知事をつとめた人物。
 彼の知事在任中に、太平洋戦争が勃発します。
 日本人・日系人に対する敵意が全米で高まっていたこの時期、ラルフ・カーは人種差別に反対し、敬意を持って彼らを受け入れる姿勢を示しつづけます。
 ちょうど、ユダヤ人にとってのシンドラーのような人物として、日系移民の歴史に重要な役割を果たした人物なのです。

 このラルフ・カーと、当時の日系人強制収容所に焦点を当てたドキュメンタリー番組、

『知られざる政治家 ラルフ・カーとニッポン人』

が放送されます。

 放送日時は、12月26日27時(27日午前3時)~です。
 興味のあるかたは、ぜひご覧ください。
 
 扶桑社海外文庫には、日系人の歴史を下敷きにしたミステリー、ニーナ・ルヴォワル『ある日系人の肖像』があります。
 もちろんこちらは小説ですが、アメリカにおける日系人の歴史を浮き彫りにする名作です。

2010年12月24日 11:19 | | コメント(0)

 話は15年前にさかのぼります。

 コナリーの初期2作『ナイトホークス』と『ブラック・アイス』の映画化オプションを、パラマウントが取得しました。1995年のことです。

 しかし、この映画化は(みなさんもご存じのとおり)実現しませんでした。
 まあ、ハリウッドの映画化話がなかなか進まないのは、日常茶飯事ですね。

 作品が映画化されないだけならまだしも、この契約には、コナリーには痛恨の条件が入っていたのです。
 それは、ハリー・ボッシュというキャラクター自体の映像化権です。
 つまり、最初の2作だけではなく、ボッシュが登場する作品は、他社であっても映像化することができない条件になっていたのです。

 コナリーは、映像化に強い意欲を燃やしていました。
 なにしろ、「本の執筆より、エンターテインメント・ビジネスに関わりたい。それも映画よりもTVに」(!)と語っているぐらいなのです。
 10年前には、みずから脚本を執筆して、1時間もののドラマ『特捜チーム レベル9』をスタートさせますが、シリーズ化はできずに終了。
 その後もさまざまな脚本や企画を出したそうですが、いずれも失敗。
 数少ない成功例が、イーストウッド監督・主演の『ブラッド・ワーク』であり、2011年に公開予定の『リンカーン弁護士』の映画化なのですね(こちらはマシュー・マコノヒー主演。『評決のとき』を思いだします)。

 そんなコナリーにとっての切り札が、みずから創造したハリー・ボッシュだというわけです。
 なにしろ、ミステリー・ファンへの知名度は抜群ですから。
 ところが、そのボッシュの映像化権がパラマウントによって実質的に死蔵されてきたのです。

 状況が変わったのが、2010年。
 ついにパラマウントとの当初の契約が切れ、契約延長に1年間の猶予ができたのです。
 コナリーにとっては、この15年は長い年月だったことでしょう。
 彼は静かに逆襲を開始。けっきょく、権利を買いもどすため、パラマウントとの交渉を法廷に持ちこみました。
 その結果、公判開始直前で両者の合意が成立。秘密裡に決着したため内容は明かせないとのことですが、ともかくもコナリーはボッシュの映像化権を取りもどしたのです。

 しかしながら、これはコナリーのような大ベストセラー作家だからできたことともいえます。
 権利者がハリウッドに勝利をおさめるというのは、じつにめずらしいことのようです。

 そうはいっても、待たされたあげく、『おれの中の殺し屋』のようにきちんと映画化されることもあります。
 こんなのや、さらにはこんな無茶な企画だって実現するんですからね。
 ひたすら『マンハッタンの戦慄』の完成を待ちましょう。

2010年12月21日 12:38 | | コメント(0)

 ノワール史上の名作、ジム・トンプスン『おれの中の殺し屋』をマイケル・ウィンターボトムが映画化した

『キラー・インサイドー・ミー』

が、2011年4月16日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開が決定しました!

まずは、読むべし

2010年12月18日 00:42 | | コメント(0)

 アーヴィング・ウォーレスの話が出たついでに、ちょっとくやしい昔話を。

 話は、2008年にさかのぼります。
 アメリカ大統領選挙において、バラク・オバマの勝利が現実味を帯びてきたころ、アーヴィング・ウォーレスのある小説を思いだしました。
『ザ・マン ~アメリカ黒人大統領の誕生/裁かれるアメリカ黒人大統領』です。

 これは、1964年に発表され、大ベストセラー作家としてのウォーレスの地位を確立した超大作です(早川書房版は、2段組の単行本2分冊で、合計1000ページ)。副題にあるとおり、アメリカで黒人大統領が誕生するという設定の小説。
 これをいま復刊すればおもしろいかも、と思いついたわけです。
 扶桑社海外文庫はウォーレスとの関係が深く、『ドクターより愛をこめて』というロングセラーがあり、『イエスの古文書』の復刊は累計15万部近くを売り、『聖母マリア再臨の日』も出していましたから、会社もNoとは言うまいという計算もありました。

『ザ・マン』の発表年にご注目ください。
 1964年――ということは、ケネディが暗殺された翌年です(ウォーレスは、ケネディ亡きあとのオーヴァル・オフィスを取材したそうです)。キング牧師がノーベル平和賞を受賞した年でもあり、公民権運動がようやく成果をあげはじめた時期です。
 そんなころに、ウォーレスは黒人大統領の小説を書いていたわけです。

 ストーリーは、こんな感じ。
 アメリカ大統領が、外遊先で事故死。副大統領はしばらく前に死去し、下院議長もちょうどその日に病死したため、憲法の規定によって、大統領の座は上院議長へ。
 そのとき、上院は臨時議長を置いていて、それが黒人議員のディルマンでした。彼は政治的な思惑から担ぎだされたにすぎなかったのですが、まさかの大統領に就任。これには、白人政治家たちが猛反発します。
 ディルマン大統領には、つぎつぎと問題が降りかかります。
 ブラック・パンサーを思わせる黒人過激派による判事誘拐事件。黒人救済法案の処遇。アフリカの小国をめぐるソ連との衝突。さらに、ディルマンの息子が黒人過激派組織にかかわったり、愛しあっていた女性(ディルマンは寡夫)の勤務先が東側の諜報機関だったりと、私生活にも暗雲が。ついには、ディルマンの暗殺未遂まで起こります。
 後半の物語は、野心的な政敵によるディルマン弾劾裁判が展開。ディルマンを悩ませていた個々の問題がすべてよりあわされ、大統領への徹底的な攻撃に転化していきます。
 ディルマン側の弁論によって、これらのすべてが根深い黒人差別にもとづくものだということが明らかにされていくあたりは圧巻。はたして評決は...?

 執筆時には公民権法が確立していないので、作中の黒人差別ははげしいものですが、読んでいて古さを感じさせないのは、ウォーレスのストーリーテリングの威力でしょう。
 黒人大統領ディルマンが、人間的に苦悩しながらも、アメリカン・ウェイの理想をつらぬいていく姿は感動的。膨大な脇役たちまでがすばらしいドラマを背負い、この作家の圧倒的な手腕を堪能できます。

 ということで、オバマ当選が決まり次第、権利を取得して緊急出版を、と思っていたのですが、しかし、うまくいかなかったのでした...

2010年12月17日 14:31 | | コメント(0)

 ダールが亡くなって、はや20年。
 そんななか、彼の未発表原稿がe-bayに出品され、1900ドルで落札されました。

 タイトルは、The Eyes of Mr. Croaker(クローカー氏の眼)。
 これはもともと、Do-It-Yourself Children's Storybook という企画のために書かれたものだそうです。
 著名な児童書の作家に物語の発端だけを書いてもらい、読者(子どもたち)が自由にそのあとを書きつなげるというアイディアの本でした。

 企画者は、ジェリー・ビーダーマンとトム・シルバークライトという2人組で、ダールのほかにもパメラ・トラヴァース(メリー・ポピンズ)やリチャード・アダムズ(ウォーターシップダウン)などからも参加の了承を取りつけていたそうです。

 原稿料は200ドル。
 そのときのダールが書いた300語程度の原稿が The Eyes of Mr. Croaker というわけ。1982年のことでした。
 ダールはさっそく原稿をわたし、「M・バランという人物にちょうど200ドル借りているから、原稿料はいますぐその人に支払ってほしい」と頼んだそうです。

 しかしながら、この企画はけっきょく本になりませんでした(寄稿したのもダールだけだったようです)。
 90年にダールは死去。
 94年には地震でビーダーマンの家が被害を受け、父のガレージに荷物を移した際に原稿もまぎれてしまい、忘れ去られていました。
 それがあらためて発見されたのです。

 ビーダーマンは、あらためてDo-It-Yourself Children's Storybook を実現しようと、J・K・ローリングなどにも新たに参加を呼びかけているそうですが、いっぽうでダールの作品をe-bayに出品することにしたのです。
「最初のコンセプトのとおり、ファンに書きついで完結させてほしいというダールの願いを実現するため」だそうです。
 売上は、ダールの遺族へのチャリティにするとのこと(ダールの遺族はいろいろたいへんですから)。

 さて、なぜダールの話を扶桑社ミステリーのブログでしているかというと...
 このジェリー・ビーダーマン、現在はTVプロデューサーなのですが、もともと作家で、アーヴィング・ウォーレスの甥っ子なのですね。この企画当時、ウォーレスはいろいろと助言してくれたそうですよ。

2010年12月14日 13:30 | | コメント(0)

ふだんは、仕事がらみの内容しかアップしないようにしているのですが、あまりにびっくりしたのでご容赦ください。まあ、昔『越境する本格ミステリ』という本を編集したこともありますし、次の仕事につながる可能性もあるということで……。なお、情報にとんと疎いもので、もしかすると有名な話かもしれませんが、その場合はすみません。

先日、録画してあった『ヒッチコック劇場シーズン2』(ミステリーチャンネルで放映中)をまとめ見してたわけです。1時間バージョンの第二シーズンをTV放映するのは本当に久しぶりのはずです。ありがたや、ありがたや。
で、今回ご紹介するのは第38話「落とし穴」。実はこの作品、脚本がR・レヴィンソン&W・リンク。そう、『刑事コロンボ』の生みの親として著名なプロデューサー兼脚本家コンビなのです。当然、期待も高まるというもの。

さわりだけ、あらすじを紹介することをお許しください(どうしてもネタバレがおいやな方はここまでで)。

2010年12月 3日 22:53 | | コメント(0)

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