2010年12月21日
【業界ニュース】

マイクル・コナリーvsハリウッド


 話は15年前にさかのぼります。

 コナリーの初期2作『ナイトホークス』と『ブラック・アイス』の映画化オプションを、パラマウントが取得しました。1995年のことです。

 しかし、この映画化は(みなさんもご存じのとおり)実現しませんでした。
 まあ、ハリウッドの映画化話がなかなか進まないのは、日常茶飯事ですね。

 作品が映画化されないだけならまだしも、この契約には、コナリーには痛恨の条件が入っていたのです。
 それは、ハリー・ボッシュというキャラクター自体の映像化権です。
 つまり、最初の2作だけではなく、ボッシュが登場する作品は、他社であっても映像化することができない条件になっていたのです。

 コナリーは、映像化に強い意欲を燃やしていました。
 なにしろ、「本の執筆より、エンターテインメント・ビジネスに関わりたい。それも映画よりもTVに」(!)と語っているぐらいなのです。
 10年前には、みずから脚本を執筆して、1時間もののドラマ『特捜チーム レベル9』をスタートさせますが、シリーズ化はできずに終了。
 その後もさまざまな脚本や企画を出したそうですが、いずれも失敗。
 数少ない成功例が、イーストウッド監督・主演の『ブラッド・ワーク』であり、2011年に公開予定の『リンカーン弁護士』の映画化なのですね(こちらはマシュー・マコノヒー主演。『評決のとき』を思いだします)。

 そんなコナリーにとっての切り札が、みずから創造したハリー・ボッシュだというわけです。
 なにしろ、ミステリー・ファンへの知名度は抜群ですから。
 ところが、そのボッシュの映像化権がパラマウントによって実質的に死蔵されてきたのです。

 状況が変わったのが、2010年。
 ついにパラマウントとの当初の契約が切れ、契約延長に1年間の猶予ができたのです。
 コナリーにとっては、この15年は長い年月だったことでしょう。
 彼は静かに逆襲を開始。けっきょく、権利を買いもどすため、パラマウントとの交渉を法廷に持ちこみました。
 その結果、公判開始直前で両者の合意が成立。秘密裡に決着したため内容は明かせないとのことですが、ともかくもコナリーはボッシュの映像化権を取りもどしたのです。

 しかしながら、これはコナリーのような大ベストセラー作家だからできたことともいえます。
 権利者がハリウッドに勝利をおさめるというのは、じつにめずらしいことのようです。

 そうはいっても、待たされたあげく、『おれの中の殺し屋』のようにきちんと映画化されることもあります。
 こんなのや、さらにはこんな無茶な企画だって実現するんですからね。
 ひたすら『マンハッタンの戦慄』の完成を待ちましょう。


投稿者mystery: 12:38

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