2011年1月アーカイブ

最近、物議をかもしているBBCのクイズ番組の映像を見ていたら、解答者がジョナサン・クリークだったことに衝撃を受けた編集Yです。こんばんは。

12月発売のハンターに続きまして、
2月2日(水)に、次なる新刊を発売いたします。その著者とは……

スティーヴ・マルティニ!

リーガル・サスペンスの新星として80年代末に登場して以来、アメリカではいまもベストセラー作家として絶大な人気を誇っているマルティニ。ところが、日本では、講談社さんの『弁護人』(1999年、邦訳2002年)以降、紹介が途絶えていたのですね……。

今回、メイン担当ではなかったのですが、
ゲラを読ませていただいて……いやあ、面白い。面白いですよ!
こんなふつうに面白い小説が、紹介されてないなんて、もったいない。
この掛け合い、言い回しのセンスは、
翻訳ミステリーでしか味わえない、至高の悦楽ですよ。
まさに、リーガル・サスペンスの正統。王道。

というわけで、

スティーヴ・マルティニ
『策謀の法廷』(上・下)
白石 朗 訳

定価各890円(税込)

乞うご期待! (編集Y)

2011年1月26日 18:00 | | コメント(0)

前項で、ハンターのクリティーク&シネフィル出身作家としての立ち位置をあきらかにし、『四十七人目の男』のタランティーノ的な側面と、『黄昏の狙撃手』のイーストウッド的な側面について考えてみました。
『蘇えるスナイパー』は、まさにそういった流れの中で必然的に登場した作品だといえます。

一見すると、ハンターは単純にボブ・リーを『極大射程』のころのスナイパー・アクションの世界に連れ戻しただけのようにも見えます。二作分じゅうぶん遊んだんだから、またライフルでも撃てよ、みんなそれを期待してるんだから、と。しかし、はたしてそれだけなのでしょうか。
個人的な意見をいえば、本作はスナイパー・アクションの皮をかぶったウエスタン――それも、フォードの正調ウエスタンではなく『ヴェラクルス』のテイスト、さらにいえば、イーストウッドに代表される70年代的なマカロニ・テイストを強く意識した作品です。
タランティーノでいえば、『キル・ビルVol.2』の世界観。現代ものの枠組みのなかで、ウエスタンの精神と破天荒な面白さを再現する試みです。
前二作における「チャンバラ」と「カーアクション」を経て、ある意味アメリカ人作家にとって最大の霊感源ともいえる「ウエスタン」へと、ハンターのジャンル制圧の旅はたどり着いたというわけです。

2011年1月20日 19:06 | | コメント(3)

 編集部・Yの名作紹介、お読みいただけましたか?
 そのスティーヴン・ハンター作品について、みなさまからよくいただくのが、

「『極大射程』を復刊してほしい」

というご意見です。

『極大射程』(新潮文庫)は、ご存じのように、ボブ・リー・スワガーのシリーズ第1作にあたり、日本では1998年に出版されて「このミステリーがすごい!」の海外編1位に輝き、扶桑社のどのハンター作品も足もとにおよばないほどの大ベストセラーとなった作品ですね。

 結論から申しますと、現在のところ、『極大射程』をわたしたちで復刊することはできないのです。

 権利関係を調べて驚いたのですが、新潮社さんの翻訳出版契約は、有効期間が無期限になっているというのです。

 通常、こういった契約では、5年とか7年とかの期限があります。
 したがって、ロングセラーになっている作品を重版して出しつづけるには、契約を延長するために、あらためて印税の前払いをしなければなりません。

これが、翻訳出版にはネックになるのです。
 その本が今後数年間にどれだけ売れるかを予測し、それに応じて前払いをするわけです。
 しかし、ロングセラーといっても売れ行きはすこしずつ落ちますし、しかもそういう本は、本国でも売れている場合が多いので、作家のエージェントも強気で対応してきます。
 つまり、会社としては余分な出費を避けたいし、相手はある程度の金額を要求してくるし、というところでネゴシエイトしなければならないのです。
 そのため、売れてはいるけれど、それほどではない、といった作品の場合、在庫がある程度残っているのであれば、それを売りつづけることができるので、あえて前払金を払う契約延長には消極的になってしまうのです。
 たとえば、扶桑社海外文庫で契約延長をしつづけている作家としては、ハンターのほか、コナリー、ケッチャム、ノーラ・ロバーツなど、鉄板の作家にかぎられます。
 イヴァノヴィッチなどは、1作めだけは延長しましたが、2作め以降は涙を飲んで契約打ち切りにせざるをえませんでした...

 閑話休題。
 そんなわけで、『極大射程』の日本での翻訳出版の期限が切れない以上、他社がその権利を取得することができないというわけです。
(契約期間無期限というのは、むかしはあったと聞いてはいましたが、じっさいに90年代に存在したとはビックリしました)

2011年1月20日 09:44 | | コメント(0)

ハンターは、『黄昏の狙撃手』のアイディアを、ナスカーレースを見ながら「あと足りないのはドンパチだ!」といった感じで思いついたといいます。
前項で述べたクリティーク出身作家の陣取り理論を踏まえて、もう少しあけすけに言えば、「あとオレがやってないのは……そう、カーチェイスだ!」みたいなノリで書かれた作品かもしれません。
一方で、シネフィルとしてのハンターを考えたとき、本作はどのあたりの映画と通底する部分があるのか。
冒頭から編集者の脳裏をよぎったのは、クリント・イーストウッドの影でした。

老骨に鞭打って戦うヒーロー。車への愛着。ぼろぼろの被害女性。本作には、イーストウッド映画と共通するモチーフやエッセンスが散見されます。
とどめに上巻261ページで、「クリント・イーストウッド?」と問いかけられて、ボブが
「その男がそういう名であれば、わたしはその男ってことになるだろうね」
と答えるシーンが出てくるわけです。ああ我が意を得たり、やっぱりな、と。
その後も、真犯人の設定や中盤の水面下での対決、事件解決の端緒などは、『ダーティハリー』シリーズの某作品を容易に想起させますし、何より、本書のクライマックスは『ガントレット』の興奮そのまんまではないですか。

2011年1月19日 17:24 | | コメント(0)

『四十七人目の男』は、日本人にとって、たしかにハードルの高い作品かもしれません。
敵のヤクザが近藤勇で、そのボスが着物ポルノの大立者“ショーグン”で、美少女剣士と山ごもり特訓して突如サムライになったボブ・リーが、妖刀村正をめぐって大乱戦。辻斬りポイントが新宿花園神社横の遊歩道(確かにあそこは暗いよね)、ラストバトルの舞台は××(わかるけど微妙に地味なチョイス)! まあ、いろいろとどうかと思うわけですよ。
嫁がどんな話かって訊くから説明したら、「それ、どんな『キル・ビル』」って絶句してました。……まあそう言うよね。でも、あんた今いいこと言った。
たぶん、この作品の本当の良さは、そこから入らないといけないと思うんです。
誰が読んでも思う『キル・ビル』っぽさ。そこを潔く認めるところから。

『キル・ビルVol.1』の公開が2003年ですから、献辞に邦画関係者の名前を何人並べようが、あとがきでどう言おうが、『四十七人』の発想源の中核にタランティーノがあったことは否定できないでしょう。
というか、献辞に出てくる人々の映画だけを観てこんな話になるわけがないし、本当に日本人が何人も下読みしてくれた結果がこれだとすればなおさらです。まして、桜田さくらとか瀬戸由衣とか観て女神とか言ってる人が(このド変態さん)、こんなゆがんだAV理解のはずがない。
要するに、あからさまに『キル・ビル』みたいな小説を目指して書かれたのが『四十七人』というわけです。
ハンターは、本当の日本がこうじゃないことは重々承知のうえで、敢えてバカをやってる。
わざと、『キル・ビル』みたいな日本を求めて書いている。
そして、そもそも、ハンターはそういう作家である、というのが、本稿の趣旨です。

2011年1月19日 17:17 | | コメント(0)

『蘇えるスナイパー』、三刷決定いたしました。パチパチパチ!!!
大変売れ行き好調で、本当にありがたいかぎりです。
販売部の文庫担当者(異動して1年)も嬉し涙にくれておりました。本って売れることもあるんですねって……(泣)。うんうん。
初めてゲラ段階から関与させていただいたハンター作品でもあり、
編集者としても、とてもうれしいです。
やっぱり皆さん、こういうボブ・リーを心待ちにされていたのだなあ、と。

相対的に、『四十七人目の男』と『黄昏の狙撃手』の評判がぶっちゃけあまり芳しくないのは、やはり版元としてちょっぴり残念です。
『四十七人目の男』はバカミス? 否定しません。でもね。
いろいろ問題あるかもしれないけど、これはこれで、すごく面白いと思いますよ!?
たしかに、初読の際はわが目を疑ったものですが、今回重版用に手を入れながら真剣に読み返すと、自分の目が曇っていたことに気付かされました。
これを楽しめないってのは、やっぱり日本人であるがゆえの抵抗感が邪魔してる部分が大きい。
これ、外人さんが読んだら、ふつうにめっぽう面白いチャンバラ活劇の一大エンターテインメントじゃないのかなあ。
『黄昏の狙撃手』も、小粒かもしれませんが、良くできたアクション作品であることに変わりはありません。
そこで、これから三回に分けて、『ボブ・リー・スワガー』新シリーズを再プッシュしていきたいと思っております。超しょぼい内容の割に、やたら長くて大ひんしゅくですが、どうかお付き合いください。(編集Y)

2011年1月19日 17:15 | | コメント(0)

 待ちに待った、ジャネット・イヴァノヴィッチ『私が愛したリボルバー』の映画化がついに実現。
 現在はポスト・プロダクションに入っているようで、アメリカでは7月に公開の予定です。

 ジェニファー・ロペスだとか、リース・ウィザースプーンだとか さまざまな名まえがあがってきたステファニー役は、けっきょくキャサリン・ハイグルに(『男と女の不都合な真実』『キス&キル』)。
 このキャスティングには、一部でファンの風当たりが強いようですが、まあ、アンジェリーナ・ジョリーがケイ・スカーペッタをやるのよりは...

 モレリはジェーソン・オハラ、そしてメイザおばあちゃんには、なんとデビー・レイノルズ!
 監督は『ラスト・ソング』のジュリー・アン・ロビンソン。

 日本での予定は、まだ入ってきていません。

2011年1月14日 11:28 | | コメント(0)

 巨匠ジョー・ゴアズの訃報が届きました。
 享年79。
 残念です。

 奇しくも、亡くなった1月10日は、ダシール・ハメットの命日からちょうど50年めにあたります。

 扶桑社海外文庫では、人類学を駆使して「殺人」の根源に迫る野心作『脅える暗殺者』と、50年代を舞台にした『路上の事件』を出版し、「このミステリーがすごい!」をはじめ、各方面から高い評価を得ました。
 とくに後者の『路上の事件』は、ゴアズの自伝的側面も強い、青春ロード・クライム・ノヴェルで、彼を偲ぶには最良の作品ではないかと思います。

 わたしたちにとってはくやしいこともありましたが、その『スペード&アーチャー探偵事務所』が遺作になってしまうのでしょうか。
 まさに、ハメットが築いた道を追った作家生活だったといえますね。

 ゴアズには、DKAシリーズをはじめとする私立探偵小説のほかに、強烈なサスペンス作品群があります(『脅える暗殺者』『狙撃の理由』『裏切りの朝』『野獣の血』など)。
 扶桑社海外文庫では、その流れをくむ Glass Tiger を準備中です。
 出版はもうしばらく先になりそうですが、どうぞお待ちください。

2011年1月13日 12:27 | | コメント(0)


 マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』および『ハックルベリー・フィンの冒険』の改訂版が出版されることになり、アメリカで話題になっています。

 今回の改訂は、「N-word」すなわち黒人差別にかかわる語を書き換えようというもの。
 ちなみに、このN-wordですが、『トム』では9回、『ハック』ではじつに219回登場するそうです。
 かわりに採用される語は「slave=奴隷」だとのこと。

 以前も禁書週間の話題のときに触れましたが、古典作品に残る差別的な表現は複雑な問題です。
 とくに、児童書の場合は子どもにあたえる影響が大きいので、出版社や教育機関や図書館にとっては頭の痛いところです。
 作品の価値が高いとはいえ、時代性による差別的な表現の部分は、現代人にとって許容できないということになります。
 さらには、著者が当時のそういった差別的な考えかたに冒されている以上、作品それ自体が問題なのではないか、という議論さえあるのです。

 とくに『ハック』は、アメリカ文学史上、最重要とさえいわれる名作であるいっぽう、発売当初からきびしい批判にさらされてきた作品でもあるので、事情は複雑です。

 今回の改訂にはアメリカでも賛否両論...といいたいところですが、批判派が多いようです。
 改訂の意図は理解できるが、それをやっては作品を損なう、という意見が大半。
 そういった時代性もふくめて作品なのであり、「slave」と書き換えると時代錯誤が生じて、物語世界が崩れることになる、という考えかたです。

 そのいっぽうで、あるアフリカ系の作家などは、こんな話をしています。
 彼は最近、自分の子どもたちにじっさいにこの2作品の読み聞かせをしたそうです。その際、どうしてもN-wordについては、自分なりに読みかえてしまった、といいます。
 さらに、子どもがもっと小さかったころ、シングル・ファーザーだった彼は、おとぎ話を読んであげる場合も「悪い継母」といった言葉は言いかえていたと告白しています。
 それが作品を損なう行為だとわかってはいるが、親の心情としてはしかたないというのですね。

 今回の改変を行なうのは、トウェイン研究の専門家。
 N-wordだけの問題によって、こういったすばらしい作品が読まれなくなることだけは避けたい、という考えにもとづいているようです。

 これは、『ちびくろサンボ』騒動を経験した日本でも重要な問題でしょう。

2011年1月12日 14:07 | | コメント(0)

 1月8日(現地時間)、アメリカ・アリゾナ州トゥーソンで起きた、銃乱射事件。
 地元選出の下院議員の対話集会で、男がセミ・オートマティック銃を発砲。議員が頭部を撃たれて重態のほか、9.11当日に生まれたという少女をはじめ、6人が犠牲になりました。

 その場で逮捕されたジャレッド・リー・ロフナー容疑者は、SNSに登録したり、またYouTubeに自分の主張をアップしたりしていたため、それらが彼を知る材料として注目されています。

 このなかで、彼は自分の愛読書をあげています。
 報道されているように、『わが闘争』があげられているのですが、そればかりではありません。

 たとえば、マルクス&エンゲルス『共産党宣言』
 このため保守派は、彼は「左翼思想の持ち主」だと糾弾しているそうです。

 たとえば、アイン・ランド We, the Living
 このためリベラル派は、彼は「右翼思想の持ち主」だと糾弾しているそうです...

(アイン・ランドは、聖書の次にアメリカに影響をあたえた、とも言われる作家・思想家で、近年ようやく日本でも翻訳が出はじめました)

 というように、この手のことは、どうしても偏った見かたがされてしまうようですが、彼があげている愛読書はまだまだあるそうです。

 『不思議の国のアリス』
 『ピーター・パン』
 『マイロのふしぎな冒険』
(ノートン・ジャスター著の児童書)

 どうでしょう?
 こうならべると、凶悪な犯罪者が好む本とは思えないですよね。

 いっぽう、こんな本もあるそうです。

 ケン・キージー『カッコーの巣の上で』
 オルダス・ハックスリー『すばらしい新世界』
 ジョージ・オーウェル『動物農場』
 レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

 体制に抑圧される人間を描いたディストピア小説がならんでいますね。
 ただ、こんな小説ばかり読んで、過剰に作品に入りこみすぎると、周囲が見えなくなってしまうのでは? と心配したくもなります。

 ほかにも、プラトンの『国家』や『メノン』もあがっていたと言いますから、なにかしら本気で社会について考えてはいたのかもしれません。

 Salon.comのローラ・ミラーは、権威主義に反発する未熟な若者らしい読書傾向だと評しています。
『わが闘争』や『共産党宣言』に引かれるのも、政治的な動機よりも、それらが禁じられている本であり、あえてそれを読む自分をアピールしようとしているのではないか、というのです。
 また、ジョン・ヒンクリー(レーガン元大統領襲撃犯)やマーク・チャップマン(ジョン・レノン殺害犯)があげていた『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)』がないことが、むしろ不思議なぐらいだとしています。

 もちろん、読書だけで人間をはかることなどできませんが(そんなことをしたら、サイコ・スリラーやスプラッタ・ホラーばかり手がけている編集者など、どうなってしまうでしょう?)、いろいろ考えさせられます。

2011年1月11日 13:10 | | コメント(0)

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