1月8日(現地時間)、アメリカ・アリゾナ州トゥーソンで起きた、銃乱射事件。
 地元選出の下院議員の対話集会で、男がセミ・オートマティック銃を発砲。議員が頭部を撃たれて重態のほか、9.11当日に生まれたという少女をはじめ、6人が犠牲になりました。

 その場で逮捕されたジャレッド・リー・ロフナー容疑者は、SNSに登録したり、またYouTubeに自分の主張をアップしたりしていたため、それらが彼を知る材料として注目されています。

 このなかで、彼は自分の愛読書をあげています。
 報道されているように、『わが闘争』があげられているのですが、そればかりではありません。

 たとえば、マルクス&エンゲルス『共産党宣言』
 このため保守派は、彼は「左翼思想の持ち主」だと糾弾しているそうです。

 たとえば、アイン・ランド We, the Living
 このためリベラル派は、彼は「右翼思想の持ち主」だと糾弾しているそうです...

(アイン・ランドは、聖書の次にアメリカに影響をあたえた、とも言われる作家・思想家で、近年ようやく日本でも翻訳が出はじめました)

 というように、この手のことは、どうしても偏った見かたがされてしまうようですが、彼があげている愛読書はまだまだあるそうです。

 『不思議の国のアリス』
 『ピーター・パン』
 『マイロのふしぎな冒険』
(ノートン・ジャスター著の児童書)

 どうでしょう?
 こうならべると、凶悪な犯罪者が好む本とは思えないですよね。

 いっぽう、こんな本もあるそうです。

 ケン・キージー『カッコーの巣の上で』
 オルダス・ハックスリー『すばらしい新世界』
 ジョージ・オーウェル『動物農場』
 レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

 体制に抑圧される人間を描いたディストピア小説がならんでいますね。
 ただ、こんな小説ばかり読んで、過剰に作品に入りこみすぎると、周囲が見えなくなってしまうのでは? と心配したくもなります。

 ほかにも、プラトンの『国家』や『メノン』もあがっていたと言いますから、なにかしら本気で社会について考えてはいたのかもしれません。

 Salon.comのローラ・ミラーは、権威主義に反発する未熟な若者らしい読書傾向だと評しています。
『わが闘争』や『共産党宣言』に引かれるのも、政治的な動機よりも、それらが禁じられている本であり、あえてそれを読む自分をアピールしようとしているのではないか、というのです。
 また、ジョン・ヒンクリー(レーガン元大統領襲撃犯)やマーク・チャップマン(ジョン・レノン殺害犯)があげていた『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)』がないことが、むしろ不思議なぐらいだとしています。

 もちろん、読書だけで人間をはかることなどできませんが(そんなことをしたら、サイコ・スリラーやスプラッタ・ホラーばかり手がけている編集者など、どうなってしまうでしょう?)、いろいろ考えさせられます。

2011年1月11日 13:10

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