2011年5月アーカイブ

 お待たせいたしました。
 今年はじめに亡くなったジョー・ゴアズ『硝子の暗殺者』が発売になります。
 6月2日ごろには全国の書店さんにならぶ予定ですが、奥付上は6月10日発行。ゴアズの命日から、ちょうど5ヵ月めにあたります。

 主人公ソーンは、もとCIAの暗殺者。
 あることをきっかけに、いまはアフリカの大自然のなかで引退同然の生活を送っていますが、そんな彼が罠にはめられて帰国、いやおうなくFBIのミッションにかかわらざるをえなくなります。
 それは、大統領の命を狙う暗殺者、コーウィンを阻止すること。
 ソーンとコーウィンは、経歴的にもまるで合わせ鏡のようなスナイパー。したがって、コーウィンの行動を先読みできるとすれば、それはソーンしかいない。
 こうして、プロフェッショナル同士のチェイスがはじまるのですが...

 前半は、ソーンがいかにコーウィンに迫るかが焦点となり、一種の追跡ミステリーとして進んでいくのですが、中盤で物語は大きく転回し、逆にソーンが追われる立場となり、やがて驚きの結末へとなだれこんでいきます。
 説明をすると興を殺いでしまうタイプの小説なので、これ以上は触れられませんが、スナイパー・アクション小説としてはもちろん、ポリティカル・サスペンスとしても一級。
 ストーリーはもちろん、人間模様や自然描写もすばらしく、まさに円熟した巨匠の技を堪能できます。

2011年5月23日 10:51 | | コメント(0)

弊社『おれの中の殺し屋』(ジム・トンプスン著)を原作とするマイケル・ウィンターボトム監督、ケイシー・アフレック主演の映画『キラー・インサイド・ミー』。もうご覧いただけましたか?

ヒューマントラストシネマ渋谷での最終上映がいよいよ5月27日(金)に迫ってまいりました。
関東在住で、まだご覧になっていない方はぜひ、この機会に足をお運びください。

逆に、各地ではこれから公開が始まる映画館も多数ありますので、ぜひお楽しみに!

(公開情報はこちらから)

2011年5月20日 16:50 | | コメント(0) | トラックバック(1)

もう、4月末の新刊、『殺人感染』(上・下)は読んでいただけたでしょうか?
扶桑社ひさびさの赤背(ホラー・幻想系)。
著者は、新星スコット・シグラーです。

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シグラーが話題を呼んだきっかけは、彼が史上初のポッドキャスト作家だということでした。
ポッドキャストとは、ネット上に音声・動画のデータファイルをアップロードして公開する仕組みのこと。
彼は、自作の“朗読”を、自らのブログで毎週一章ずつ配信していったのです。
これを毎週聴取して、保存すれば、一冊のオーディオブックをタダで手に入れたのと同じことになります。
これがネット界で大きな話題になり、各誌がニューメディアの寵児としてとりあげ、ついに大手出版社ランダムハウスから本書で紙媒体メジャー・デビューするにいたったというわけです。

でもって、内容はといえば、もう文字通りの爆走ノンストップ・SFホラーでして。
クーンツ、キング、バーカー、あるいはクライトン、プレストン&チャイルドといったジャンルのベストセラー作家にひけをとらない、怒濤のストーリーテリングで読む者を圧倒します。
各地で頻発する無差別大量殺人。それらを結ぶ意外なミッシングリンク。
〈トライアングル〉――身体に発生する青いあざの正体とは?

とにもかくにも、徹底的な被害者の追い詰めようと、生々しいホラー描写、奇想天外なネタの暴走ぶりには、これぞB級のきわみと手を叩きたくなります。
最近あまりないタイプの「まっとう」なエンタメ・ホラーの快作ではないでしょうか。


(以下、ネタバレ気味かもしれませんのでご注意ください)

2011年5月18日 19:35 | | コメント(3)

ジャック・ケッチャムの傑作中編集、『閉店時間』と、『オフシーズン』の続編にあたる『襲撃者の夜』に重版がかかりました!
とくに、『閉店時間』は、大変に思い入れの強い本なので、喜びもひとしおです。

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収録作中、とくに「川を渡って」は、ウエスタンなのでとっつきにくいかもしれませんが、ケッチャムの作品中でも屈指の傑作ですので、ぜひご一読ください。
より一般のミステリファンには「ヒッチハイク」を猛烈にお勧めします。

訳者の金子浩さんが、ケッチャム入門と題して、翻訳ミステリー大賞シンジケートのブログで、きわめて明快にその作風と読みどころをまとめてくださっています(こちら)ので、ぜひあわせてご一読ください。


ケッチャムの提示する“つくりもの”ではない「悪」の実存と、天災のごとく降りかかる理不尽な加害のリアリズム(およびその逆説としての世界の平等性)、心の痛みすら伴う体感的な恐怖は、おそらく文学史上、唯一無二のものです。

同時に、その裏からほとばしる、立ち向かうことへの肯定的意思、被害者も加害者も報われない神なき世界でなお生きるひとびとの矜持は、意外にもみなさんの胸を打つかもしれません。

そして、そんな真摯で謹直ですらある作家性……ほんとうの痛みを知る繊細でたおやかな世界認識(そうじゃないと、9.11のあと小説が書けなくなったりはしない)を、なにかとジャンルホラー愛好とエキセントリックな過剰性でつつまずにはいられない、この人物の「含羞」と、出自を裏切らない誠実さを、編集者はこころから愛します。

ひとりでも多くの方に、ケッチャムの諸作を読んでいただけますように。(編集Y)

2011年5月17日 17:55 | | コメント(2)

 何度か取りあげてきました、アメリカの刑務所図書館の話題。

囚われの身で読む本
囚われの身で読む本 その2
囚われの身で読む本 番外編

 最近、ちょっと驚くニュースが入りましたので、ご紹介します。

 アメリカ自由人権協会(ACLU)が、ある勧告を行ないました。

 問題は、サウスカロライナ州バークリー郡刑務所。
 人権擁護センターが、この刑務所宛てに、2008年から収監者用の月報を送付しているのですが、それを受け取らずに送り返してくるというのです。
 そこでACLUは、刑務所側が雑誌を収監者に届けるようにと、連邦裁判官に訴えたのです。

 人権擁護センターの月報ですから、それを読ませるのが問題になるとは思えませんよね。

 じつは、この刑務所、そもそも図書室がないというのです。
 なぜなら、規則によって、収監者たちは読書が禁止されているから!
 450人程度の収監者に認められているのは、ペイパーバック版の聖書を読むことだけで、そのほかのいかなる雑誌も書籍も読めないのだそうです(自己啓発や法律書もですよ!)。

 くわえて刑務所側は、送られてくる月報がステイプラー(ホチキス)でとめられているため、保安上のリスクになると主張。
 これに対しACLUは、所内の売店で買えるメモ用紙もステイプラーでとめられていると指摘しています。

 どうやらこの件は法廷に持ちこまれることになりそうですが、とてもいまどきとは思えない話です。

2011年5月 9日 12:49 | | コメント(0)

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