もう、4月末の新刊、『殺人感染』(上・下)は読んでいただけたでしょうか?
扶桑社ひさびさの赤背(ホラー・幻想系)。
著者は、新星スコット・シグラーです。

sigler%8F%E3%89%BA.JPG


■オンライン書店で購入する
amazon7&Y楽天ブックサービスbk1


■オンライン書店で購入する
amazon7&Y楽天ブックサービスbk1


シグラーが話題を呼んだきっかけは、彼が史上初のポッドキャスト作家だということでした。
ポッドキャストとは、ネット上に音声・動画のデータファイルをアップロードして公開する仕組みのこと。
彼は、自作の“朗読”を、自らのブログで毎週一章ずつ配信していったのです。
これを毎週聴取して、保存すれば、一冊のオーディオブックをタダで手に入れたのと同じことになります。
これがネット界で大きな話題になり、各誌がニューメディアの寵児としてとりあげ、ついに大手出版社ランダムハウスから本書で紙媒体メジャー・デビューするにいたったというわけです。

でもって、内容はといえば、もう文字通りの爆走ノンストップ・SFホラーでして。
クーンツ、キング、バーカー、あるいはクライトン、プレストン&チャイルドといったジャンルのベストセラー作家にひけをとらない、怒濤のストーリーテリングで読む者を圧倒します。
各地で頻発する無差別大量殺人。それらを結ぶ意外なミッシングリンク。
〈トライアングル〉――身体に発生する青いあざの正体とは?

とにもかくにも、徹底的な被害者の追い詰めようと、生々しいホラー描写、奇想天外なネタの暴走ぶりには、これぞB級のきわみと手を叩きたくなります。
最近あまりないタイプの「まっとう」なエンタメ・ホラーの快作ではないでしょうか。


(以下、ネタバレ気味かもしれませんのでご注意ください)


いろいろと、展開上差しさわりがあるので、ストーリーはこれ以上明かしませんが、読んでいただければ、30代以下のジャンル愛好家の人は、アレを思い出さざるを得ないでしょうね、アレを……。
そう、空前の大ブームとなった、同人ゲームからマンガ、アニメ、小説とマルチメディア展開を果たすに至ったアレです。

制作時期でいうと、シグラーの本書ポッドキャスト版発表が2006年で、明らかに日本の某ゲーム(2002年~2006年)が先行しますが、当然言葉の壁があるので、影響関係はつまびらかではありません。
個人的には、同時多発的な現象ではないかと思っているわけですが、内容の類似性以上に、同人ソフトとしての発表形態のシンクロぶりに大変興味をひかれます。
個人による制作、ネット上での無料頒布(某ゲームはそこから火がついた)、「ノベル」を敢えて活字メディア以外の「サウンド枠」で発表する試み、分割発表によって期待をあおる手法、大手既存メディアによる囲い込みと商業化……。
ジャンルの選択やテーマの設定なども含め、2000年代における、才能ある若手の登場の仕方として、洋の東西を超えた両者の類似性は、じつに象徴的です。

内容に関していえば、似通ったネタからスタートしながらも、その扱いとその後の筋運びには明快な相違があり、このあたり、日本とアメリカそれぞれのホラージャンルの傾向を如実に表していて、大変面白いのではないでしょうか。

「ギャップ」を駆使して、心理的恐怖の醸成に全力で挑む、日本の某ゲーム。
力押しで、人体破壊と即物的なメタモルフォーズの描写に突き進むシグラー。

考えてみれば、クローネンバーグにせよ、バーカーにせよ、心理的な変容、異物による精神支配は、必ずや「肉体の変容」「身体の破損」と表裏一体の恐怖として描かれるわけです。
『殺人感染』の世界観においても、精神世界における戦いの経緯は、そのまま身体的な痛みと破壊/変容へと直結します。
なんていうか、肉が主食のひとびとにしか書けないノリなんですよね・・・・・・。

多少、終わり方が気になるかもしれませんが、
お察しの通り、本作には続編があります。
そして、それがご紹介できるかどうかは、ひとえに本作の売れ行きにかかっているのです。

読んで面白かった方は、ぜひ同好の皆様にもすすめてあげてくださいね。
(編集Y)

2011年5月18日 19:35

コメント(3)

Comment

  • 続編はでますか?
    似て非なるものですが、止まっている、マイケル・スレイドを出してもらえないでしょうか?



    |匿名|2011年12月23日 19:23

  •  お答えが遅れ、すみません。

     続編については、正直、本書の売れ行き次第なのですが、内実を打ち明けますと、現状ではきびしそうです。
     ここから爆発的に部数が伸びれば、またそれもアリなのですが...
     まことに申し訳ありません。

     マイケル・スレイド、ぜひ読みたいですね。
     ただ、東京創元社さん~文藝春秋さんで出されていた作家なので、ここから扶桑社でつづきを出すのはいろいろとハードルがあり、現在のところは予定はありません。



    |Fusosha|2012年1月 5日 16:50

  • 丁寧な回答、ありがとうございます。
    好きだし、面白いと思うのですが、どちらも
    万人に薦めにくいんですよね。
    続きでるとよいのですが。



    |匿名|2012年1月 5日 18:48

  • コメントする

    ページの先頭へ