お待たせいたしました。
 今年はじめに亡くなったジョー・ゴアズ『硝子の暗殺者』が発売になります。
 6月2日ごろには全国の書店さんにならぶ予定ですが、奥付上は6月10日発行。ゴアズの命日から、ちょうど5ヵ月めにあたります。

 主人公ソーンは、もとCIAの暗殺者。
 あることをきっかけに、いまはアフリカの大自然のなかで引退同然の生活を送っていますが、そんな彼が罠にはめられて帰国、いやおうなくFBIのミッションにかかわらざるをえなくなります。
 それは、大統領の命を狙う暗殺者、コーウィンを阻止すること。
 ソーンとコーウィンは、経歴的にもまるで合わせ鏡のようなスナイパー。したがって、コーウィンの行動を先読みできるとすれば、それはソーンしかいない。
 こうして、プロフェッショナル同士のチェイスがはじまるのですが...

 前半は、ソーンがいかにコーウィンに迫るかが焦点となり、一種の追跡ミステリーとして進んでいくのですが、中盤で物語は大きく転回し、逆にソーンが追われる立場となり、やがて驚きの結末へとなだれこんでいきます。
 説明をすると興を殺いでしまうタイプの小説なので、これ以上は触れられませんが、スナイパー・アクション小説としてはもちろん、ポリティカル・サスペンスとしても一級。
 ストーリーはもちろん、人間模様や自然描写もすばらしく、まさに円熟した巨匠の技を堪能できます。

【つづき】


 さて、惜しくも亡くなったゴアズですが、本作は、『マルタの鷹』の前日譚として注目された『スペード&アーチャー探偵事務所』(早川書房)に先だって発表された作品です。そういう意味では、オリジナル長編としては最後の作品といえるでしょう。
 刊行順が逆になってしまい、ほんとうにすみません。

 ゴアズといえば、私立探偵小説のスペシャリストとして知られていますが、いっぽうでサスペンス色の強い作品群があり、とくに長編ではPIものとサスペンスものとを交互に発表しているような印象です。
 本作品もサスペンス小説の流れにあるのですが、狙撃手や北部の森林地帯といった道具立ては旧作『狙撃の理由』(新潮文庫)と共鳴しあうところがあります。
 原題も、あちらが Wolf Time に対し、こちらが Glass Tiger。狼と虎というわけですね。

2011年5月23日 10:51

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ