2012年07月04日
【新刊案内】

アルカード城の殺人


今月のもう一点は、ドナルド&アビー・ウェストレイク夫妻による『アルカード城の殺人』。内容は、まさかの、長編犯人当てパズルです!

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これ、もともとは〈モホンク・マウンテンハウス〉という有名ホテルで開催されている〈ミステリー・ウィークエンド〉という推理イベントがベースになってるんですね。

探偵役は、イベントに参加したホテルの泊まり客。
最初に、事件のあらましを撮ったスライドの上映をみんなで見てから、
ホテルのあちこちにいる容疑者役をまわって聞き込みをし、
最終日に真犯人を当てるというもの。
今では日本でも、新本格系の作家さんが脚本を書いたりして、
結構知られたイベント・スタイルですが、この〈ミステリー・ウィークエンド〉こそ、その原型といってよい催しなのです。

第七回以降、このイベントの主催を引き継いだのが、誰あろうウェストレイク夫妻。
そして、ウェストレイク本人が台本を書いた推理イベントを、自身で小説化したのが本書というわけです(最後のクイズの部分は、パズル作家でもあった奥さんのアビーが担当しているとのこと)。

ウェストレイクといえば、リチャード・スターク名義の〈悪党パーカー〉シリーズや、『ホット・ロック』(角川文庫)に始まる〈ドートマンダー〉シリーズでお馴染みのアメリカ推理文壇を代表する巨匠です。2008年に亡くなるまでに、エドガー賞を三度受賞し、その著作は100冊を超えるという多作、多芸の人。
そんな彼の知られざる一面を、本書は伝えてくれます。

このイベント、実は文士劇のようなものでもあります。
要するに、ウェストレイクに声をかけられたお友達が、
馳せ参じて、容疑者役を演じるんですね。
〈ミステリー・ウィークエンド〉の歴代出演者には、
マックス・アラン・コリンズ、ジョー・ゴアズ、ピーター・ラヴゼイ、
ギャヴィン・ライアル、デイヴィッド・マレル、ジャスティン・スコットなど
多士済々のメンバーが名を連ねています。

本書の回で出演していたのが、モダンホラーの巨匠、スティーヴン・キングとピーター・ストラウブ
本書には、イベント時のスナップ写真も多数掲載され、ノリノリのキングとストラウブが確認できます。
さらに、キングは本書に、長文の序文も寄せるサーヴィスぶり。
ホラーの帝王に合わせてか、ミステリー劇の内容は昔なつかしいホラー仕立てとなっております。

時は一八九×年、トランシルヴァニアの森に建つアルカード伯爵の古城。
蔵書整理のため到着したばかりの司書が殺害される。
容疑者は、夜にしか活動しない伯爵とその娘、
うろんな博士と言動のおかしい助手、
いわくありげな女占い師など怪しげな人物ばかり。
はたして真犯人は誰なのか・・・?

ウェストレイク・ファンの方、キング&ストラウブのファンの方はもちろん、
電車の行き帰りのひまつぶしにももってこいの犯人当てクイズ。
 

ちなみに、犯人当てのポイントは、「犯行に直接関すること以外、容疑者は誰もウソはついていない」ことを念頭においてもらえれば。

ぜひご一読くださり、ウェストレイクの仕掛けた謎に、ふるって挑戦いただければ幸いです。(編集Y)

(以下、万が一、お気づきにならなかった方のために、“アルカード”って何・・・みたいな、本書の固有名詞に仕掛けられた「お遊び」の部分について、若干の補足をしておきました。犯人当て自体に関するネタばれはございませんので、ご安心を)


ウェストレイクの作家性と、本書の作風の関連付けについては、翻訳を担当してくださった矢口誠さん(矢口さんは、『踊る黄金像』の編集担当者でもあります)のすばらしい解説に詳しいので、そちらをぜひご参照くださいね。

ここでは、本書のホラー映画パロディについて、若干の補足をしておきます。

本書の設定は、先にも述べたとおり、キングとストラウブが当て役だからか、ホラー仕立てになっておりまして、具体的には30年代〜40年代のユニヴァーサル・ホラーが元ネタになっております。

まず、ストラウブが演じた「アルカード伯爵(Count Alucard)」。
これは、有名な逆読みなので、大半の方がお気づきでしょう。
すなわち、ドラキュラ(Dracula)を逆から読んだものですね。

ユニヴァーサル・ホラーでは、『魔人ドラキュラ』(1931)の続々編にあたる『夜の悪魔』(1943)(原題『Son of Dracula』)で初めて「アルカード伯爵」が登場します。演じていたのは、ロン・チャーニィJr。かなりダメダメなかんじでしたが・・・。
その後も、さまざまなパスティーシュで「アルカード」は登場。日本では、ゲーム『悪魔城ドラキュラ』でご記憶の方も多いかも。
ちなみに、編集者はJ・H・ブレナンという天才ゲームブック作家が書いた『ドラキュラ城の血闘』が「アルカード」初体験でした・・・みんな知ってるかな?

「フランケンフィールド博士」は、もちろん、フランケンシュタイン博士。
これにたぶんなら、『魔人ドラキュラ』などで登場する哀れな被害者「レンフィールド」の名前をひっかけたネーミングかと思われます。
イベントで博士役を演じたゲイアン・ウィルスンは、漫画家兼作家で、本書裏に載せてある原書カバーのイラストを描いています。このへんも、キングの序文と合わせて、遊び心ってやつですね。

「イーヨー」は、『フランケンシュタインの復活』(1939)以降、華々しい活躍ぶりをみせる博士の奇怪な助手「イゴール」から。ちなみに、映画でイゴール役を楽しそうに演じていたのは、『魔人ドラキュラ』のドラキュラ伯爵役でもあったベラ・ルゴシでした。ちなみに、壁をよじのぼるとかいうネタも、ドラキュラ映画からきています。

犠牲者である「ジョゼフ・ゴーカー」は、『ドラキュラ』でミナの婚約者としてドラキュラと対峙する「ジョナサン・ハーカー」から。なおブラム・ストーカーの原作では、まさに冒頭やってくるのはハーカーで、役名としてはぴったりなんですね。

キングが演じた「バリー・タルムード」は、『狼男』(1941)などの主役の役名「ラリー・タルボット」から。こちらの主演もロン・チャーニィJrでした。
くわえて、身体から毛が生えて生えて止まらないという珍奇な設定は、もちろんながら『クリープショー』(1982)でキングが嬉々として演じていた農夫ジョーディ・ヴェリル(あれはたしか草でしたっけ)と関係があるんでしょうね。

タルムードと恋仲になるロマの占い師、「マリア・オペンスカヤ」の名は、『狼男』と、続編の『フランケンシュタインと狼男』(1943)で、タルボットを狼男にしたベラ(ベラ・ルゴシ)の母親マレバ(同じく占い師)役を演じた女優の名前「マリア・オースペンスカヤ」からとられているとみて、間違いないでしょう。

主要キャストのなかで頭を悩ませたのが、アルカード伯爵の娘プリメヴァ(Primeva)。
かなり変わった名前なので、絶対由来があると思いつつ、記憶をたどっても何も思いつかず・・・と思ってたら、ああそうかっ! 「◯◯◯◯◯」のアナグラムなのね!

ふう、すっきりした・・・。

と、あくまで編集者が気づいた範囲での言及なので、わからないものには、いっさい触れておりません。「これが元ネタだよっ!」って気づいた人は、ぜひコメント欄にご一報ください(笑)。ご応募、どしどし待ってます!(編集Y)

投稿者mystery: 22:44

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コメント

始末屋ジャックの新刊はいつ出ますか。
コンスタントに出せばもっと売れるんじゃないかと思います。

投稿者 Noname :2012年08月17日 12:34

ご愛顧ありがとうございます。
基本的に7月6日にご返答した下記の内容から、
状況は変わっておりませんので、以下、再録しておきます。
本当にすみません・・・。


>次回作は、大瀧さんも大変おもしろいといってくださっている作品で、なんとか出したいと個人的には考えていますが、部数的には最新作が、あともう一息いかないと獲得に動きづらい感じです。ちょっとずつは売れているので、しばらく気長にお待ちいただけると幸いです。シリーズの刊行は、常に販売部とのかけひき次第ですので・・・。曖昧な回答で申し訳ありません。

投稿者 編集Y :2012年08月21日 19:28




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