2013年03月01日 |
【編集部日記】
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ケッチャムの選ぶオールタイム・ミステリーベスト10!
またまた更新が滞ってしまいました。これではいかんっ!!
というわけで、ときには扶桑社にあまり関係ないことも含めて、
気が向いたらどんどん新しい記事をアップしていきたいと考えております。
今日のお題は、ジャック・ケッチャムさんからいただいた、
ミステリーベスト10のお話。
週刊文春臨時増刊1月4日号として、
『東西ミステリーベスト100』が、四半世紀ぶりに刊行されたのは記憶に新しいかと思います。
その準備段階で、文春の凄腕編集者Nさんから、
海外の作家さんからも、できるかぎりベスト10を募集したい。
ひいては、扶桑社から出ている作家さんにも、ぜひ声をかけてほしい。
そういったご依頼をいただいたのです。
エージェンシーを通して複数の作家さんにお声がけしたのですが、
期限内にお戻しいただけたのは、ケッチャムさんだけでした。
というか、お願いした数日後には、メールが舞い込んだのです。
ほんっっとに、良い人なんですよ!
ラインナップを見て、編集者はおおいに感激しました。
作家ジャック・ケッチャムを形作ってきたであろう、
きわめてオーセンティックなノワール&サスペンスの歴史が
そこには編まれていたからです。
世の中では、鬼畜作家、変態作家と思われているかもしれません。
ジャンルとしては、ホラーの人だという認識も根強いと思います。
それでも、心ある読者は、その文学性と、ノワールの極北としての
ミステリー性を認め、ケッチャム愛を語ってやみません。
(紀伊國屋書店のケッチャム王子、森さん他、多数)
以下のリストは、まさにそんなケッチャムの
バックボーンを成すともいえる作品群なのです。
くだんの『東西ミステリーベスト100』では、残念ながら、
仕様として、投票者個人のベスト10が載っておりません。
しかし、これを埋もれさせるのは、実にもったいない。
そこで、文春のNさんにご相談したところ、
ご快諾をいただきました!
よって、ここにそのベスト10を公開したいと思います。
さて、気になるケッチャムの選んだオールタイムベスト10とは・・・・・
●『長いお別れ』(レイモンド・チャンドラー)
●『羊たちの沈黙』(トマス・ハリス)
●『ゲット・ショーティ』(エルモア・レナード)
●『ミレニアム2 火と戯れる女』(スティーグ・ラーソン)
●『TALK TALK』(T.コラゲッサン・ボイル)
●『夜の終り』(ジョン・D・マクドナルド)
●『THIEVES LIKE US 』(Edward Anderson)
●『血と暴力の国』(コーマック・マッカーシー)
●『ブラック・ダリア』(ジェイムズ・エルロイ)
●『おれの中の殺し屋』(ジム・トンプスン)
(順不同)
ね? なんて、見識の深さ! なんて、バランス感覚!!
改めて、この偉大な作家に編集者は惚れなおしました。
それぞれの作品については、あえて言及しません。
T.コラゲッサン・ボイルは、東京創元社さんの『血の雨』ほか、
いくつか短編集が出ている、ぶっとんだ味わいの作家さん。
たしか、S.キングも大好きなんですよね、T.C.ボイル。
(ちなみに、ケッチャムもまた、短編の名手でもあります。
必ず、いつかご紹介する機会を作りたいと思っています)
『TALK TALK』は、2006年の作品で、(たぶん)邦訳は出てないはず。
耳の聞こえない女性のお話だそうです(編集者は未読)。
エドワード・アンダースンという人は、
日本ではあまり知られていないパルプ作家さん(生涯で出版されたのは、2作だけ)
ですが、この作品(34年)、ニコラス・レイの初監督作『夜の人々』(49年)の原作で、
かつ、74年には、ロバート・アルトマンが『ボウイ&キーチ』の邦題
(原題はどちらも『THIEVES LIKE US』)でリメイクしています。
チャンドラーが「30年代の偉大なる忘れられた小説のひとつ」
とよぶ本作。
小鷹信光さんたちが、ミステリマガジンの企画でつくった
「米国暗黒小説全集」全10巻の劈頭を飾る作品でもありました。
原書は一応Amazonで買いましたけど、ぜひ、邦訳で読んでみたいなあ。
早川さん、ネタどまりじゃなくて、
やるならマジでやってくださいねっ!
個人的に買いますから。
もしお出しにならないのなら、うちも含めて
(全集にせよ、この作品にせよ)
ぜひほかの出版社も検討してみませんか。(編集Y)
投稿者mystery: 21:41
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