以前、ミステリー小説の探偵たちの年齢について、ご紹介しました(その1その2)。

 長期にわたって書きつづけられる人気シリーズにおいては、主人公が年をとるという問題が出てくるわけですが、作家によってその対処法もさまざま、という事情を紹介した記事です。

 

 この名探偵の年齢問題について、マックス・アラン・コリンズが書いていたので、ちょっとご紹介。

  http://www.huffingtonpost.com/max-allan-collins/the-case-of-the-aging-sle_b_5352470.html

 

 E・S・ガードナーのペリイ・メイスン・シリーズにおいては、主人公もデラ・ストリートもポール・ドレイクもみな年をとらないのですが、さらに外の世界も変わらないとのこと。

 つまり、舞台となるロサンゼルスの街も、ほぼ歴史的な変化が描かれないのです。

 これについてコリンズは、自分の作品をいつまでも読んでほしいと思ったガードナーが、あえて時代性を排除して書いたためだと指摘します(その甲斐あって、いまでも本国ではメイスンは読まれつづけています)。

 

 かたや、レックス・スタウトのネロ・ウルフのシリーズは、主人公たちは変わらないものの、執筆時の時代背景が取りこまれています。

 スタウトが書きはじめたのは、1930年代の禁酒法が廃止された頃。その後、J・エドガー・フーヴァーの時代を経て、後期の作品ではヴェトナム戦争やウォーターゲート事件にも言及があるそうです。

 

 しかし、こうなると作品のリアリティに関わってきますね。

 もちろん、その1作1作においてはじゅうぶん完結しているわけですが、シリーズ全体として見ると、不思議なことになってきます。

 

※そういえば以前、原尞氏が、携帯電話を持った沢崎がイメージできず、そのためいま書こうとするとリアリティがたもてないと語っていたのを思いだします。

 

 コリンズとは関係浅からぬミッキー・スピレーンの場合は、やや変化球です。

 マイク・ハマーは第二次大戦の帰還兵という設定ですが、とくに年齢については言及されません。しかし、年を経るごとにハマーの弱さについて語られるようになり、これが老いのメタファーになっているといいます。

 たとえば、長いブランクのあと発表された『ガールハンター』では7年間も酒びたりだったことが明かされます。また、90年代の作品や、死後に発表された長編では、ハマーが瀕死の重傷から復帰するという形で弱さが描かれるのだそうです。

 なお、スピレーンの草稿をコリンズ自身が補綴した最新作では、ハマーとチェンバーズが引退を目前にしていて、自分たちが若い頃に出会った事件に直面することになるとのこと。

 

 では、コリンズ自身の場合はどうでしょうか。

 彼のメイン・シリーズであるネイサン・ヘラーものは、歴史ミステリーとしての側面が強いため、年齢は避けて通れません。

『シカゴ探偵物語』(本文庫)で、アル・カポネ時代のシカゴに登場したネイト・ヘラーは、27歳という設定だったそうです。

 それが、近作の通称「ケネディ3部作」では、ヘラーは60代はじめ。

 しかしながら、この作品で、ヘラーは「自分が死ぬまで、この事件の記録は出版してはならない」と語っているのだそうです。

 その原稿がこうして読めるということは、ヘラーが死んだことを意味するではないか!

 ということで、コリンズが驚くほど多くの読者が、ヘラーの死を悼んだそうです。

2014年5月20日 13:37

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