2015年8月アーカイブ

ホームズ・パスティーシュの新しい一冊、『シャーロック・ホームズとヴィクトリア朝の怪人たち1』を紹介します。


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本書は、小説家ジョージ・マンが編んだホームズ物の新作パスティーシュ・コレクションです。原著の発売は2013年。原著は一巻本ですが、邦訳では上下分冊での紹介となります。
解説はホームズ研究の第一人者、北原尚彦氏です。

内容については、編者の序文を引くことにしましょう。

十四本のシャーロック・ホームズの新しい物語を、ここに集めた。作品のなかで彼は、ロンドンの暗い横丁にひそむ不気味なパッチワークの男に出くわす。紛失した原稿を探す故サー・リチャード・フランシス・バートンにも遭遇する。義賊のA・J・ラッフルズとじかに対決する。ネクロポリス・エクスプレスの不気味な謎に挑む。異様な状況下で、作家H・G・ウェルズとも会う。密閉状態の鉄道車両のなかで起きた殺人事件にも挑む。さらに、有名なペルシア製スリッパとのきっかけなどについても語っていく。裏でこっそり手を貸している、消えることのないホームズの大きな影響を感じながらも、ワトソンやハドソン夫人が自分たちの冒険を楽しむ話もある」

お楽しみください!

・第1巻収録作品
「失われた第二十一章」マーク・ホダー
「シャーロック・ホームズと品の悪い未亡人」マグス・L・ハリデイ
「セヴン・シスターズの切り裂き魔」カヴァン・スコット
「シャーロック・ホームズ対フランケンシュタインの怪物」ニック・カイム
「クリスマス・ホテルのハドソン夫人」ポール・マグルス
「地を這う巨大生物事件」ジョージ・マン

2015年8月31日 17:20 | | コメント(0)

刊行告知の記事にて予告しながら、こんな月末ぎりぎりになってしまいましたが(これでも毎月文庫三冊つくってるので許してください・・・)、『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密』の著者シェリー・ディクスン・カーについて、簡単にご紹介しておきたいと思います。

 

本格ミステリの大巨匠ディクスン・カーの孫娘シェリー・ディクスン・カー。10歳のとき、おじいちゃんの書いた『爬虫類館の殺人』を読んで夢中になり、ミステリ作家を志したといいます。

本名はミシェル・メアリー・キャロル。キャロルは旦那さんの姓ですが、旧姓もマクニーヴン(お母さんがカーの長女ジュリア)なので、筆名においては意識的に祖父の名を継ごうとしているのがわかります。

 

彼女が原書刊行時に投稿していたブログがあるのですが、ここにおじいちゃんがらみのエピソードがいくつか書かれていて興味ぶかいので、その内容をちょっとご紹介してみましょう。

「読者に対するフェアプレイの精神」(Playing Fair with the Reader)と題する記事で、彼女は、おじいちゃんが読んでいたミステリを部屋の向こうに投げ捨てたのを見たという思い出について語っています。カーは、犯人指摘のじゅうぶんな証拠を提示せず、フェアプレイの精神を欠いたその本の内容に激怒したというのです(笑)。

そんな祖父の薫陶を得た彼女にとっても、ミステリにおけるフェアプレイは大変重要なことだと言います。どれだけミスディレクションを張り巡らせようとも、読み終わったときに「騙された」と読者に感じさせないことが大切だとシェリーは語っています。

 

このあとに書かれているエピソードは、祖父ディクスン・カーの作家性を考えるうえでとても示唆的です。

彼女は14歳のとき、おじいちゃんから「どうやって読者に気づかれないように手がかりをばらまくか」のテクニックを教授されたそうです。曰く、なにか手がかりを配したら、その直後に視覚的インパクトの強い生々しいシーン(Something Graphic)を置け、と。そうすると読者は「目」をくらまされるというわけです。この視覚的な効果を与えることで、直前の手がかりを忘れさせるテクニックの効果をディクスン・カーとドロシー・セイヤーズ(!)は信じていて、それを「白い包帯の上の血 "blood on a white bandage"」と呼んでいたそうです。

カーの大きな特徴のひとつに、姑息なまでに「気配を消した」手がかりの描写があるわけですが(笑)、まさに彼が自覚的にその方式を採用していたことが伺われます。

また、カーにとっては、大仰な怪奇趣味やグランギニョル的な猟奇シーンが、まさに「白い包帯の上の血」として機能させるための「本格ミステリ的に必要なパーツ」だったことも理解できます。

まあ、実際問題としては、このカーの流儀――意地でも手がかりの気配を断って、読者との知恵比べに勝ちたい、というカーのスタンスが、作品の「弱み」につながっている部分も否めないと個人的には思うわけですが(ストーリー上どうでもいい細部にばかり配される曖昧な表現の手がかり、後ろから構築して前からきちんと通していないかのような小説としての風通しの悪さ、作中で徹底的に印象薄く描かれているがゆえに意外性の割にオーラに乏しい真犯人、結果としてのラストで「世界が反転する」衝撃性の薄さetc.)、カーが何を重要だと考えて本格ミステリを書いていたかは、短いシェリーの回想のなかからもはっきりと浮かび上がってきます。

 

シェリーがおじいちゃんの教えをどれくらい自作で活かし、どの程度おじいちゃんの影響を受けつつ作品を構築したかは、ぜひご自身の目でご確認ください。

その際、巻末にある千街晶之さんの素晴らしい解説は、これ以上ないくらい有益な道標となるはずです(個人的には公爵のしゃべり口調とかもすごくH.M.臭くて笑いましたが)。

 

シェリー・ディクスン・カーが、祖父の輝かしい業績を「継承」すべく、作品のアイディアから細部にいたるまで祖父から受けた影響をなんら隠していない点は重要だといえます。それも日本で考えられているような「不可能犯罪の巨匠」というイメージからは外れる部分――「歴史趣味」と「タイムスリップ」――を特に意識して執筆が成されているのは、実に興味深いことです。

ふたりの立ち位置の相似も見逃せないところでしょう。どちらもアメリカ生まれのアメリカ育ちながら、熱狂的なイギリス好きで、かたや英国人と結婚して渡英、孫のほうもイギリスドラマの全米放送実現を目指して奔走しています。

とくに現代よりも過去に強烈に惹かれ、ヴィクトリア朝の英国の歴史・風俗に魅了されている点でもふたりは似ています。デュマやスティーヴンスンをこよなく愛し、ドイルの評伝をものしたおじいちゃん。一方、シェリーのほうも影響を受けた作品として『ドラキュラ』、『ジキル博士とハイド氏』、「シャーロック・ホームズ」譚をあげています(それぞれ『ザ・リッパー』の作中でも登場しますね)。

 

英国本格への熱い憧憬の念をこじらせたすえ、アメリカ人でありながらヨーロッパを舞台とした作品を書き続けたディクスン・カー(カーはついに移住まで果たしてしまいますが、アメリカを舞台にしながら極めてヨーロッパ的で非アメリカ的なお屋敷ミステリを書きついでいた同時期のヴァン・ダインとエラリー・クイーンも、じつは「こじらせた憧れ人」としては同類に属します)。

アメリカン・ドラマの隆盛と飽和を経て、新たに『SHERLOCK』や『ダウントン・アビー』といった英国ドラマがもてはやされる時代に、いちはやく両作のアメリカ公開に尽力し、果ては19世紀ロンドンを舞台にした大部の物語を書き上げてしまった孫のシェリー。

 

アメリカの文化人は、大西洋をはさんで対峙する伝統と歴史の国イギリスを常に強く意識しているわけですが、歴史上とくにその憧憬の想いが深まった時期に、祖父と孫がともに「アメリカ人の描くイギリス」に取り組んだというのは、なかなかに興味深い符合だといえます。

さらにいえば、シェリーの祖父への私淑を隠さないいさぎよい作家的姿勢は、まさにそんなイギリス・ラブ、19世紀ラブだったおじいちゃんへの共感と愛慕があってのことなのでしょう。

 

ぜひ、皆さんも『ザ・リッパー』を手にとって、世代を超えたイギリス愛の結実をたしかめていただければ。

もちろん、小説としても十分に面白い作品ですので、ぜひお読みいただけると幸いです!(編集Y)

 

2015年8月29日 12:48 | | コメント(0)

一時期、Twitterなどで話題になったので、もしかしたらご存知の方も多いかもしれません。

「あのディクスン・カーの孫娘が『RIPPED』という小説を書いたらしい」

しかも、その内容が、「切り裂きジャックの正体を現代の少女探偵がタイムスリップして追う、タイムトラベル・ミステリー」と聞けば、そりゃあ、ミステリー・ファンなら読みたくもなるもの・・・。

だってそれ、おじいちゃんの『ビロードの悪魔』『火よ燃えろ!』とおんなじネタじゃん!

 

というわけで、皆様にもぜひご賞味いただきたく、弊社にて版権を取得し、準備を進めてまいりましたが、ついにさきごろ8月3日に発売となりました! 邦題は、

『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密』(上・下)

 

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著者は、シェリー・ディクスン・カー(Shelly Dikson Carr)。正真正銘の孫娘です。

(ネットで検索をかけていただくと、びっくりするくらいおじいちゃんに似ていてけっこう衝撃をうけます)

なんでも、10歳のときにあの『爬虫類館の殺人』を読んで、作家を志したらしい(笑)。

これは期待できるんじゃないか!?

 

翻訳者は、本書が扱う同時代のシャーロック・ホームズものの新訳を次々手がけられ、さらには祖父ジョン・ディクスン・カーの『皇帝のかぎ煙草入れ』や『九人と死で十人だ』の新訳をも手がけられた、まさにこの人しかない、という駒月雅子さん!

カバーには編集者の「ヴィクトリアン・テイスト × YA風味 × 少年探偵団」という無茶ぶりを完璧に視覚化してくださった鈴木康士さんのイラスト!

解説は千街晶之さんに頼みました。カーがわかって、切り裂きジャックの時代がわかって、SFも大丈夫で、海外ドラマ的な要素もわかるとなると、もう千街さんしか思い浮かびませんでした!

 

 

編集者以外は、完璧な布陣でお届けする、衝撃のデビュー作。

 

少女ケイティが、マダム・タッソー蝋人形館で経験する恐怖!

伝説の秘石ロンドン・ストーンの不可思議な力で、1888年の

ロンドンに導かれたケイティは、自らの先祖である公爵令嬢こそが

これから起きようとしている、おぞましき切り裂きジャック事件の

最後の犠牲者であることを知る。

「必ず助ける」――そう誓ったケイティは、少女探偵よろしく

現地で知り合った少年ふたりと事件の調査に乗り出す。

切り裂きジャックの正体を、ケイティはつきとめ、悪魔の凶行を

とめることができるのか?

 

詳細に描きこまれた1888年のロンドン風俗と、随所に取り入れられたコックニーの言葉遊び、

盛大にばらまかれるレッド・ヘリングと、凄惨な殺人の連鎖、少女探偵の果敢な捜査過程、

そして、彼女を助けて活躍する現地の少年トビーとの淡い恋愛模様・・・

終盤には手に汗握るアクションと衝撃の真犯人、そして意想外なSF展開まで待ち受ける・・・

 

スリルあり、謎解きあり、恋愛ありのヤングアダルト・テイストの時代ミステリーで、

随所にはおじいちゃんジョン・ディクスン・カーを思わせるネタが満載。

 

切り裂きジャック愛好家の皆様(もちろん仁賀先生にも献本しましたよ!)はもちろん、

世のカーマニア諸氏や本格ミステリーファン、ホームズやヴィクトリア朝が大好きな皆さん、

そして『トワイライト』や『トゥルーブラッド』あたりの好きなYA ファンの皆様。

皆さん、きっと楽しんでいただけると思います。

 

ぜひ、その眼で偉大なる血脈がどんな新たな作家を生み出したのかをお確かめください!

 

(ちなみに、この本については、何個か記事をあげるつもりです。次回は、シェリー・ディクスン・カーへのおじいちゃんのミステリー指南のお話をアップします!)

(編集Y)

 

 

 

 

 

2015年8月 5日 02:25 | | コメント(0)

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