2015年12月アーカイブ

あのロリンズのデビュー作です。
〈シグマフォース〉シリーズや小社刊の『アイス・ハント』『アマゾニア』でお馴染み、いまや巨匠の風格も漂うジェームズ・ロリンズ。
その(実質的な)デビュー作が本書『地底世界 サブテラニアン』(原題:Subterranean、1999)です。

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『地底世界 サブテラニアン』(上)
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いきなり「お馴染み」だとか、「巨匠」だとか、「風格漂う」だととか、いかにも空っぽな言い草ではありますけど、実際本書もまたロリンズイズムの完璧なショーケースであることに間違いないのであって(まあ、遡って読めばそう確認できるということです)、これらの言葉がほのめかすであろう作家のオリジナリティとそのクオリティ・コントロールはデビュー作にして驚くべき水準にあります。

つまり、抜群に面白い!

南極の地底に巨大な洞窟網が発見されて、そこでありえない時代のありえない人工物が見つかる......心躍る未知の領域への冒険、背筋も凍る奇態な生物との遭遇、生物史の別解を示唆する突飛な科学的イマジネーション、ハイスピードな物語......。

じつにロリンズしてます。

そして本書の特徴のひとつは、ある民族の伝承を物語の要に組み込むその手つきです。
編集者としては、ここには「サイエンススリラー」作家として成熟した現在のロリンズにはない、「非サイエンス」的なゆるやかさ(「ゆるさ」ではなく)があって、それが逆説的に作品にスリルを与えているような気がしています。

......詳しくはもちろん読んでのお楽しみです。

〈あらすじ〉
一人息子と2人で暮らす考古学者アシュリーのもとに、ブレイクリーなる科学者が訪ねてくる。政府中枢が主導する極秘調査にリーダーとして参加してほしいという。目的を知らされぬまま、報酬に魅力を感じたアシュリーは参加を決意。同じくチームに招集された洞窟探検の専門家ベンジャミンらと調査地である南極へ向かう。途中、アシュリーらは驚くべき事実を知らされる。南極のエレバス山の地下に巨大な洞窟網が走り、その中で人類史を大きく揺るがす遺物が発見されたというのだ。それは......。

2015年12月28日 01:51 | | コメント(0)

今月のもう一冊は、ゴード・ロロ『ジグソーマン』

著者の初紹介作。そして・・・

風間賢二先生から、王道パルプ・ホラーの最先端を行く逸品!

のお言葉をいただきました!!

 

最初に言っておきます。

この本、かなりどうかしてます(褒め言葉)。

 

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前任者のT が一度検討してレジュメにもして好評価をつけつつ、

キワモノすぎると思ったのか、異動にまぎれていったんお蔵入り、

前上司のMがそれを発掘してきて「絶対これは出したい」と口走り、

私めもレジュメにめったにつけない特A評価をつけ、

今の上司のTなど、あらすじ段階では鼻でせせら笑ってたのが

自宅でゲラを読んで「これ傑作だよ!!」と会社にメールしてきたという・・・

 

歴代扶桑社ミステリー担当者総意のもと、絶対の自信をもってオススメする

ぶっとび系ノンストップ人体解体ホラー、それが『ジグソーマン』!!

 

ホラーとしては、本気で怖い小説です。そこは保証します。

グロ満載。痛いの満載。とにかくヒドいことが際限なく起こり続けます。

もしかすると怒る人もいるかもしれません。それは中身があんまりだからです。

とはいえ、わざわざ読んでいただけるような人ならきっと、著者の狙いと意図をしっかり受け止めて、おおいに笑ってくださるのではないかと。

168頁とかもうね、すごいよね。お腹痛い。

でも、そのうちにですね、泣けてくるんですよ。不思議ですね。

主人公のマイケルがせつなくて。クローネンバーグばりに哀しみ色のお話で。達成される正義がただただ尊くて。

ビビって怒って笑って泣いて・・・。

しかも、徹頭徹尾ばかばかしい(笑)。

すごい小説じゃないですか。

 

あらすじは、こんな感じです。

マイケルは交通事故で妻と息子を亡くして以来、酒におぼれ職を失い、すさんだ路上生活を送っていた。

そんな人生に幕を引くべく線路脇に佇んでいた彼の前に、白塗りのリムジンがとまる。

現れた男が持ちかけてきた話は驚くべきものだった。「右腕を200万ドルで売らないか?」

再生医療の権威マーシャル博士が縫合実験用の四肢を求めているというのだ。

巨額の誘いに目がくらみ研究所に赴いたマイケルを待ち受ける未曾有の恐怖とは。

 

これでだいたい100頁くらいなのですが、このあと起こる展開を簡単に予測できる人はそんなにいないでしょう。まあ、次の要素がでてきたらでてきたで結果的には既視感いっぱいの内容ではあるんですが、その「接ぎ方」がかなり素っ頓狂で斜め上を行くので、読者を飽きさせない、いい感じに引きずり回すんですね。

本質的には鬼のように潔いジャンル・ホラー小説なので、いろんな作品との類似性、影響関係を考えるのも楽しかろうかと思います。ざっくり自分の既読/既見お気に入りメモリーを探索するだけでも

『SAW』『ホステル』『ドクターギグルス』『ムカデ人間』『フランケンシュタイン』『ゾンバイオ』『ドウエル教授の首』『胸像たちの晩餐』『七階』・・・あたりが中盤までの展開だと脳裡をよぎります。

あるいは、一見オーソドックスなホラー寄りのつくりなので気づきにくいかもしれませんが、「人体破壊」が本格的に始まって以降の激しくデタッチャブル(着脱可能)で即物的な身体・組織のパーツ感というのは、実のところサイバーパンクにもとても親和性がある話ではないかと。

また、施設でのひたすらオフビートで投げやりなやりとりとツッコミ待ちの展開は、むしろファレリー兄弟やらアレックス・デ・ラ・イグレシアやら辺りの、少しトンガッた変態コメディに通じるところもあります。

 

さらに、そこから先の展開に関してはネタバレになるので、あまり積極的には触れませんが、本作には、とある「ジャンル」を強く意識した後半戦が用意されています。サム・ライミの某初期作みたいな。

悪によって汚され、魔改造され、陵辱しつくされたゆえに、彼はその「権利」を得るんですね。

いやおそらくなら、それがやりたいからこその、この「ジグソーマン」ってタイトルなわけですよ、きっと。

 

もちろん、欠点がないのかと言われると、なにかと隙の多い小説(なにせパルプホラーですから)ですし、とくに終盤ゆるめな点はいなめません。

最大の問題は、もともと地をはうような生活ぶりでもうすぐ自殺しようかという人間がどんだけヒドい目に会おうと、あんまり可哀想に思えないという構造的矛盾でしょうが、ゴード・ロロのなかではそこはホームレスじゃないとこの話の理念にも即物性にもフィットしないという判断だったのでしょう。

 

結局のところ、このお話は『ジェイコブス・ラダー』や『時計じかけのオレンジ』と同じく、「地獄めぐりの物語」――地獄めぐりによって浄化され、再生することで、尊厳を取り戻す物語なのですから・・・。

 

とまあ、ここまでの紹介を読んで、これは大丈夫そうだと思うなら、是非読んでみてください。

絶対に、損はさせません。

一方で、ダメな人はたぶんホントにダメだと思うので、その場合は是非、隣に積んである『奪還』のほうをご購入ください(笑)。

 

なお、新宿紀伊國屋本店さんにおかれましては、大々的なディスプレイを展開していただき本当にありがとうございます。この場を借りて心からの感謝の意を表させていただきます。

この手の作品に理解者、同志の方がいてくださるのは心強いことです。Twitterでも絶賛の声をあげてくださっている方が結構いらっしゃって、本当に編集者冥利につきます。

 

ぜひ、この動きが『隣の家の少女』ばりの大きな流れになってくれると嬉しく思います。

ぜひよろしくお願いいたします!(編集Y)

 

2015年12月19日 18:06 | | コメント(0)

1月刊ゲラにかかりきりで、あまりにブログ更新ができないでいたら、大学時代の友人から安否確認のメールがきた編集Yです。まだゲラは読み終わっていませんが(すいません、すいません)、さすがにもう発売して半月になりますので、今月頭に発売いたしました新刊の紹介をばやりませんと。

どちらも(多少B級かもしれませんが)結構な掘り出し物だと自負しておりますし、

今年出した本のなかでも、かなり思い入れのある作品でございます。

 

まずはM・A・ロースン『女麻薬捜査官ケイ・ハミルトン 奪還』

マイク・ロースンの筆名でも知られる作家さんの初紹介作です。

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かつて翻訳ミステリー大賞シンジケートの「え、こんな作品が未訳なの?」のコーナーで高橋知子さんが紹介されていた作家さん(この記事)ですが、この時点でたしかうちはもう本作を獲得していたんですね。

 原書がまわってきた時点で、近年珍しいくらいの「まっとうな」女性主人公のエンタメ系アクション・スリラーだなあと早速オファーを決めたのですが、実際訳文があがって読んでみると、これがホントに面白い!!

 

ケイ・ハミルトン。32歳。

仕事は超優秀。セクシーなブロンド美女。筋金入りのタフな捜査官。

だけど、とにかく人望がない(笑)。

マイアミでの潜入捜査で大きな成果を上げてサンディエゴに来たのですが、やたらと部下には厳しい、上司には食って掛かる、やりたい放題で、独断行動が多いエゴイスト。

実際、読んでいると、作家は「実はいい人だけど不器用なヒロイン」としてではなく、「ガチでちょっといやな女」として描く気まんまんです。本国のAmazon レヴューでも、「話はすごく面白かったが、ヒロインが気に食わない」という意見もちらほら。

 

でも、編集者は実に気に入りました。いや、マジで小気味良くて魅力的じゃないすか。

 

ホントに自分とこの編集長がこんなだったら毎日やけ酒ですけど、小説の主人公としては、抜群にいけてる。さくっとしてて、とにかくかっこいい。

また、彼女の自他ともに厳しい「嫌われる」性格は、マイアミでの彼女のスキャンダルまじりの「武勲」ともよく呼応しています。ああ、こういう人だから平気であんな作戦に身を投じられたんだな、と。

ケイのキャラクター造型の根本には、女性としては珍しいくらいの身体性や関係性に頓着しないドライさ――怪我をしようが身体を汚されようが対人関係がギスギスしようが、すべてどこかどうでもいいかのような「捨て鉢さ」があります(それは彼女の過去のいくつかの決断とももちろん呼応します)。

一方で彼女は、人を狩ることに悦びを得、命の危機を前に子どものように興奮を隠さない無邪気さをも備えています。そういったものが、あくまで平然と、なにげなく描写されているのがミソでして、死と隣りあわせの現場における捜査官としての彼女を輝かせるのです。

後半の思いがけない展開も、彼女をこういった「軽くひとでなし」に設定したからこそ、そのぶん生きてくるわけですね。

もう彼女を読むだけでも、十分楽しい。

でもそれに加えてストーリーも読ませます。

麻薬捜査官とカルテルの戦いといえば、皆様ドン・ウィンズロウの『犬の力』を想起される方も多いでしょうが、本書はそこまで重苦しいものではありません(結構な数の人は死にますが、そこのリアリティが売りの小説ではありません)。二転三転するプロットと、息を呑む展開の妙、虚々実々の駆け引き、次々と繰り出される奇策と007ばりの秘密兵器(笑)を楽しむ、王道のエンターテインメントであり、ヒロインの魅力を堪能するど真ん中の女捜査官物です

 

冒頭から、ヒロインである麻薬捜査官ケイ・ハミルトンが組織のボスの情婦相手に小芝居を売って、捜査協力者に仕立てあげる犯罪スレスレの捜査過程が軽やかに描かれます。

このボスのティトというのはメキシコの麻薬王の弟で、サンディエゴに居を構えてアメリカでの麻薬売買をとりしきっている人物。ケイは協力者の情報を得て、彼を捕まえる最適の場をしつらえます。彼が取引先の売人を会合の場で殺そうとしていることを知って、そこに張り込んで「偶然殺人の現場に居合わせた」体で一生牢獄に放り込んでしまおうというわけです(かなりろくでもない作戦ですねw)。

作戦は見事に成功し、彼女はティトの身柄を確保することに成功しますが、敵もだまっていません。

兄貴のシーザーの手下たちが、勾留施設から裁判所への罪状認否のための移動に合わせ、さっそく強襲をかけてきます。ダミー作戦が功を奏してティト奪還はなんとか阻止することに成功しますが、連邦保安官サイドにも大きな被害が出て・・・

このへんの息詰まるようなアクション描写は、さすが手練れのベテラン作家。ぐいぐい読ませます。

 

麻薬カルテルと麻薬局および各種組織との壮絶なかけひきはその後も続く一方で、ケイの私生活には思いがけない変化が訪れ・・・

後半、新たな登場人物が盤上にあがり、それまでのパワーバランスが崩れて、物語は新たな展開を迎えます。攻守が逆転するなか、ケイはどう判断し、なんのために戦うのか。

 

シビアな描写も交えつつ、基本は楽しく爽快な娯楽小説です。

気の早い話ですが、本作がそれなりに売れれば続編をご紹介する道も開けてまいりますので・・・

ぜひご購入のうえ、ご一読を!(編集Y)  

2015年12月19日 15:57 | | コメント(0)

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