今月のもう一冊は、ゴード・ロロ『ジグソーマン』

著者の初紹介作。そして・・・

風間賢二先生から、王道パルプ・ホラーの最先端を行く逸品!

のお言葉をいただきました!!

 

最初に言っておきます。

この本、かなりどうかしてます(褒め言葉)。

 

ジグソーマンblog.jpg

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前任者のT が一度検討してレジュメにもして好評価をつけつつ、

キワモノすぎると思ったのか、異動にまぎれていったんお蔵入り、

前上司のMがそれを発掘してきて「絶対これは出したい」と口走り、

私めもレジュメにめったにつけない特A評価をつけ、

今の上司のTなど、あらすじ段階では鼻でせせら笑ってたのが

自宅でゲラを読んで「これ傑作だよ!!」と会社にメールしてきたという・・・

 

歴代扶桑社ミステリー担当者総意のもと、絶対の自信をもってオススメする

ぶっとび系ノンストップ人体解体ホラー、それが『ジグソーマン』!!

 

ホラーとしては、本気で怖い小説です。そこは保証します。

グロ満載。痛いの満載。とにかくヒドいことが際限なく起こり続けます。

もしかすると怒る人もいるかもしれません。それは中身があんまりだからです。

とはいえ、わざわざ読んでいただけるような人ならきっと、著者の狙いと意図をしっかり受け止めて、おおいに笑ってくださるのではないかと。

168頁とかもうね、すごいよね。お腹痛い。

でも、そのうちにですね、泣けてくるんですよ。不思議ですね。

主人公のマイケルがせつなくて。クローネンバーグばりに哀しみ色のお話で。達成される正義がただただ尊くて。

ビビって怒って笑って泣いて・・・。

しかも、徹頭徹尾ばかばかしい(笑)。

すごい小説じゃないですか。

 

あらすじは、こんな感じです。

マイケルは交通事故で妻と息子を亡くして以来、酒におぼれ職を失い、すさんだ路上生活を送っていた。

そんな人生に幕を引くべく線路脇に佇んでいた彼の前に、白塗りのリムジンがとまる。

現れた男が持ちかけてきた話は驚くべきものだった。「右腕を200万ドルで売らないか?」

再生医療の権威マーシャル博士が縫合実験用の四肢を求めているというのだ。

巨額の誘いに目がくらみ研究所に赴いたマイケルを待ち受ける未曾有の恐怖とは。

 

これでだいたい100頁くらいなのですが、このあと起こる展開を簡単に予測できる人はそんなにいないでしょう。まあ、次の要素がでてきたらでてきたで結果的には既視感いっぱいの内容ではあるんですが、その「接ぎ方」がかなり素っ頓狂で斜め上を行くので、読者を飽きさせない、いい感じに引きずり回すんですね。

本質的には鬼のように潔いジャンル・ホラー小説なので、いろんな作品との類似性、影響関係を考えるのも楽しかろうかと思います。ざっくり自分の既読/既見お気に入りメモリーを探索するだけでも

『SAW』『ホステル』『ドクターギグルス』『ムカデ人間』『フランケンシュタイン』『ゾンバイオ』『ドウエル教授の首』『胸像たちの晩餐』『七階』・・・あたりが中盤までの展開だと脳裡をよぎります。

あるいは、一見オーソドックスなホラー寄りのつくりなので気づきにくいかもしれませんが、「人体破壊」が本格的に始まって以降の激しくデタッチャブル(着脱可能)で即物的な身体・組織のパーツ感というのは、実のところサイバーパンクにもとても親和性がある話ではないかと。

また、施設でのひたすらオフビートで投げやりなやりとりとツッコミ待ちの展開は、むしろファレリー兄弟やらアレックス・デ・ラ・イグレシアやら辺りの、少しトンガッた変態コメディに通じるところもあります。

 

さらに、そこから先の展開に関してはネタバレになるので、あまり積極的には触れませんが、本作には、とある「ジャンル」を強く意識した後半戦が用意されています。サム・ライミの某初期作みたいな。

悪によって汚され、魔改造され、陵辱しつくされたゆえに、彼はその「権利」を得るんですね。

いやおそらくなら、それがやりたいからこその、この「ジグソーマン」ってタイトルなわけですよ、きっと。

 

もちろん、欠点がないのかと言われると、なにかと隙の多い小説(なにせパルプホラーですから)ですし、とくに終盤ゆるめな点はいなめません。

最大の問題は、もともと地をはうような生活ぶりでもうすぐ自殺しようかという人間がどんだけヒドい目に会おうと、あんまり可哀想に思えないという構造的矛盾でしょうが、ゴード・ロロのなかではそこはホームレスじゃないとこの話の理念にも即物性にもフィットしないという判断だったのでしょう。

 

結局のところ、このお話は『ジェイコブス・ラダー』や『時計じかけのオレンジ』と同じく、「地獄めぐりの物語」――地獄めぐりによって浄化され、再生することで、尊厳を取り戻す物語なのですから・・・。

 

とまあ、ここまでの紹介を読んで、これは大丈夫そうだと思うなら、是非読んでみてください。

絶対に、損はさせません。

一方で、ダメな人はたぶんホントにダメだと思うので、その場合は是非、隣に積んである『奪還』のほうをご購入ください(笑)。

 

なお、新宿紀伊國屋本店さんにおかれましては、大々的なディスプレイを展開していただき本当にありがとうございます。この場を借りて心からの感謝の意を表させていただきます。

この手の作品に理解者、同志の方がいてくださるのは心強いことです。Twitterでも絶賛の声をあげてくださっている方が結構いらっしゃって、本当に編集者冥利につきます。

 

ぜひ、この動きが『隣の家の少女』ばりの大きな流れになってくれると嬉しく思います。

ぜひよろしくお願いいたします!(編集Y)

 

2015年12月19日 18:06

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