お待たせしました、ウィルフォードの伝説の1作のご紹介です。

 

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 思えば、『マイアミ・ポリス』シリーズは、クセ球の多い扶桑社ミステリーのなかでも、また一風変わったシリーズだったのではないかと思います。

 しかし、このシリーズが日本でまだまだ刊行されているときには、すでにチャールズ・ウィルフォードはこの世になく、死後出版された『危険なやつら』は、がらりとイメージが変わるクライム・ノヴェルで、「このミステリーがすごい!」海外編で17位という、なんとも味わい深い評価を受けました。

 こうして、ようやくウィルフォードのパルプ作家としての一面が認知されたといえるでしょう。

 

 これにつづくように、ジム・トンプスンをはじめとするノワールが注目を集めるなかで、当時の編集者が選んだウィルフォード作品が、『炎に消えた名画』でした。

 伝説の美術家をめぐる犯罪小説という、これまた飛びきりのクセ球で、アートとノワールといえばこの人をおいて他になしというべき、滝本誠氏の名解説を得て、2004年に出版されました。

 

 さすがに読者を選ぶ作品だったこともあり、編集者が次に仕込んだのが、ウィルフォード初期の注目作品(刊行は1954年)、『拾った女』だったわけです。

 しかしながら編集者は社内異動となり、それから幾星霜、訳者・浜野アキオ氏のたゆまぬ仕事ぶりの結果、今回こうして、時限爆弾のようにこの作品が刊行の運びとなった次第です。

 

 ※浜野アキオ氏による卓抜な作品紹介は、こちら

 

 作品をむりやり紹介しようとすれば、「社会の底辺に暮らす主人公がある女性を"拾った"ことからはじまる転落の物語」といったことになるでしょう。

 これでは、典型的なファム・ファタール譚ですよね(ジム・トンプスンでいえば『アフター・ダーク』とか)。

 しかし、じっさいに読まれると、相当ちがった印象を受けられると思います(ご存じのとおり、クセ球作家ですから)。

 ともかく、中味に触れずに紹介することは困難な作品なので、先入観なしに読んでいただくのがいちばん、と、これはどんな本でもそうでしょうけれど、この作品についてはこの点を強調したいと思います。

 

 刊行から相当の時間がたちましたが、さまざまな場所で、思いのほか高い評価をいただいています。

 それに接するたび、「出版できてよかった!」と思います。

 

 みなさまに支えられてきた扶桑社の海外文庫も、最近ではかつてほどの多様なナインナップをそろえることが難しくなってきています。

 そんななかで、この作品がこのような形で出版できたのは、じつにありがたいことでした(なにしろ現担当者は、社内で、なぜ昔の編集者が残したこんな古めかしい作品をいまさら出すんだ、というきびしい意見にさらされたので)。

 

 いえ、けっして同情票を集めようというようなつもりではないのですが、それでもやはり今回だけは、ほんとうに読んでみてください、と頭を下げてお願いしたい気持ちです。

 ほかではちょっと得られない読書体験を味わっていただけるのではないかと思いますので。

 そして、ふたたびこのような作品をご紹介できる機会につながればよいのですが。

 

 1950年代、ペイパーバック・スタンドで、タイトルと扇情的な表紙に惹かれて購入したアメリカ人たちは、いったいどんな気分でこの幕切れを読んだのでしょう。

(扶桑社T)

2016年9月 2日 10:18

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