今月の新刊で扶桑社より、久しぶりにヴィンテージものの本格ミステリーを発売いたしております。

『本格ミステリ・ベスト10』で2013年に『死の扉』(創元推理文庫)で2位、

同じく2015年に『ミンコット荘に死す』(弊社)で3位を獲得した、

英国本格の驍将レオ・ブルースによる名探偵キャロラス・ディーンものの初期の佳品『ハイキャッスル屋敷の死』

もうお読みいただけたでしょうか?

 

ハイキャッスル ブログ画像.jpg

 

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あらすじはこんなかんじです。

 

キャロラス・ディーンはゴリンジャー校長から直々に事件捜査の依頼を受ける。

校長の友人である貴族のロード・ペンジが謎の脅迫者に命を狙われているというのだ。

さらに数日後の夜、ロード・ペンジの住むハイキャッスル屋敷で、主人のオーバーを着て森を歩いていた秘書が射殺される事件が発生。不承不承、現地に赴くキャロラスだったが......

捜査の進捗につれて次第に懊悩を深める探偵がやがて指摘する事件の驚くべき真相とは? 

 

数々の傑作を世に送り出しているレオ・ブルースのこと。

もちろん今回も読んでいただければ、本格マニアの方ならきっと十分にお楽しみいただけるものと思います。

ただ・・・なんか薦め方が難しいんだよなあ(笑)。

どう話しても、ネタと直結してしまいますし・・・いや、本格ミステリーならなんでもそうじゃないのか、と言われちゃいそうですが、実際それだけじゃないんです。

たとえば同じシリーズの『死の扉』や『ミンコット荘に死す』には、読めば誰しもがあっと驚き納得する「大ネタ」「趣向」が仕込んであったわけですよね。だから、そこをお楽しみに、とお薦めするのはけっして難しくない。

でも、今回のネタは明らかに変化球も変化球。しかも表面上、ぜんぜん変化球に見えないという・・・なにこの厄介な魔球(笑)。

実際にバッターボックスに立ってもらわないと、どう変わってるかがわかりにくいんですよ。

トリックとして(あるいはロジックとして)の変化球というよりは、力点の置き方というか、本格ミステリーとしての佇まいそのものが結構珍しい作りになっているので、読めば当然面白いんだけど、未読の方にその魅力をお伝えするのが、なかなかに難しい。

ここに注目して読んでほしい、と申し上げたとたんに、著者が本書で仕掛けた恐るべき「とある趣向」がともすると台無しになってしまいかねない。

 

さらに言えば、「もしかすると、著者の真の狙いに気づかないまま読み終わっちゃう方もいらっしゃるのではないか」という危惧すら、編集者にはあります。

その場合はぜひ、真田啓介さんの素晴らしい解説にじっくり目を通していただければ。そうすればレオ・ブルースが本作でやろうとしていた仕掛けが「誰を対象としたどんなものだったのか」を、じゅうぶんご理解いただけると思います。

ある意味、レオ・ブルースほどに「装置としての名探偵」の意義と機能について深く踏み込んで批評的に考察し、それを実作へと反映させた作家はそうはいません。その意味で、レオ・ブルースは正しくアントニイ・バークリーの衣鉢を継いだ本格ミステリー作家だった。本書はまさに、そういったレオ・ブルースの思索の極限において結実した作品です。

加えてシリーズ長編第四作という、この時期にしか書き得なかった作品。そうも思います。

 

組み立て自体は、実に王道。

成り上がりの貴族と、彼に脅迫状を再三送りつけてくる謎の人物。

立派で古風ではあるが、時代的にはすでに欺瞞と虚偽に満ちた形でしか評し得ない「大邸宅での華やかな生活」(おお、なんだか本格ミステリーと名探偵自体への挑発のようではありませんか)。

そこで殺人が起き、不承不承引き出された名探偵が捜査を開始する。

でも、そこからこの物語は、いつになく不可解な様相を呈し始めるのです・・・・。

 

本格ミステリーとして、事件の真相に読者が到達すること自体は、決して難しくはないように思います。むしろ、レオ・ブルース自身が、さっさと読者に真相を見破らせようとしているくらいの感覚もあります。

たぶん、そこじゃないんですね。

犯人当てとか謎解き自体が本書の眼目ではないんです。

「なんで自分はこの真相に気づかされてしまったのか?」――むしろそっちから、本書の読み解きは始まるのではないか?

そこから、レオ・ブルースという本格ミステリー愛のかたまりのような人物が、本書を書くに際していったい何をたくらみ、何を実際に実現していったのかを追体験していく・・・そんな作業こそが、本書をひもとく醍醐味であり、至福の悦楽なんだと、編集者は思うわけであります。

 

真田さんも書かれていますが、正直なところ、純粋な出来だけでいうと、本作には文句を言いたくなる部分も若干ありますし、読後それを指摘される方もきっといらっしゃるでしょう。

でも、それを補って余りある魅力が、間違いなく本書にはあります。

ぜひお手にとっていただき、レオ・ブルースという作家が本格ミステリーの枠組みの中で繰り広げた新奇で風変わりな挑戦と冒険を、じっくりご堪能いただければ幸いです。

 

編集者なりのネタバレ解説も、本書に関してはとてもやってみたくもあるのですが、それはまた機会を見て。

まずは、レオ・ブルースというブランドを信じていただいて大丈夫かと。お楽しみに!(編集Y)

2016年9月18日 22:44

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