2016年12月アーカイブ

『30の神品』は、古今東西のショートショートの中から、第一人者である江坂遊さんが30篇の名品を厳選したアンソロジーです。

 

当ブログでのご紹介は こちら !

 

当然ながら作品の選定と並べ順、および解説に関しては、すべて江坂さんにお願いしております。

(若干の作品で、こちらから選定作の調整をお願いしたりはしましたがご快諾をいただきました)

で、編集者のほうはといいますと、掲載が決まった作品の許可取りと、著作権者および底本出版社との諸条件の調整を行いつつ、実際の本作りの作業(および各作品の著者紹介作成)を進めることになります。

親本から各作品をデータ化して、書籍の体裁にととのえてゲラにするという作業自体は、これまでも何度もやってきた作業であり、とりたてて何も申し上げることはないわけですが......

今回はとにかく掲載作品数が30篇もあって、著作権者が山ほどいるんですね(笑)。

その許可取りを、一ヶ月の作業期間で本作りと平行して終わらせないといけない。

これが結構たいへんでした。

 

ちなみに、30篇のうち、日本人の方で著作権が切れているのは早逝された山川方夫さんだけで、あとは著者ないし訳者の方(およびそのご遺族の著作権継承者の方)全員と連絡をとって、ご許可をいただく必要がありました(もちろんお支払いも)。

海外古典作品の著者は概ね著作権が切れているか、「10年留保」と呼ばれる特別な規定(これにあてはまれば、翻訳権を取得しないですむ)に収まるケースが大半でしたが、ジャック・リッチーのみ翻訳権を獲得する必要がありました。さらには親本の版元が権利を主張するケースもあり、結局40人くらいを相手に、連絡および交渉をさせていただくことに。

これがもう、やってもやっても終わらない。30本ってマジ半端ない・・・しょうじき、ショートショートなめてました(笑)。

会社の台帳や文藝年鑑、インターネットなどでぱっと連絡先がわかる方ばかりではありません。むしろ、大半の方には、徒手空拳の状態からツテを頼って調べてゆくしかないのです。特に現役の作家さんならまだしも、亡くなられた作家さんや翻訳者さんのご遺族を探すという作業は、なかなかに大変なミッションでして......(創元のKさん、本当にお世話になりました!)。

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そんななか、中原涼さんのご逝去を知ったのは、許可取り作業も終盤のことでした。

中原さんは、「笑う宇宙」で奇想天外SF新人賞の佳作を受賞してデビューされてから、ショートショート作品を精力的に発表しながらも、のちに少女小説のジャンルで大成功を収められた作家さんです(ちなみに男性の方です)。代表作の「アリス」シリーズは、講談社X文庫ティーンズハートで35巻を数える長寿シリーズとなっています。

流行作家になられても、中原さんのショートショートへの情熱は醒めることなく、「ショートショートランド」や井上雅彦さん編集の「異形コレクション」などで、定期的に作品を発表されていました。

今回「地球嫌い」を収録するにあたり、掲載許可をいただこうと思ったのですが、江坂さんや周辺の方にうかがっても、ここ5年くらいの中原さんの動向がつかめず、講談社に連絡しても最近は郵送物が戻ってきてしまう、わかるならむしろ教えてくださいとのお話。そこで、二冊のショートショート集の単行本を出されている地人書館さんに問い合わせたところ、すでに亡くなられたとのお話と、娘さんのご連絡先を頂戴できたのでした。

娘さんいわく、長く肝臓を患っておられたとのこと。2013年5月にご逝去されたとのお話ですから、もう亡くなられて3年が経っていました。

SF・ショートショート界でもご存じだった方はいらっしゃらなかったようでしたので、娘さんのご許可をいただき、僭越ながら編集者のほうから、井上雅彦さん経由で他の作家の皆様にも情報を共有させていただきました。改めて、心からご冥福をお祈り申し上げます。

実は、中原さんのショートショート集三冊のうち、今回掲載した「地球嫌い」を収録した『笑う宇宙』(地人書館)は、今でも版が生きています。これぞショートショートというべき珠玉の作品集ですので、この機会にぜひ読んでみていただけるとうれしいです。

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和田誠さんの「おさる日記」の親本は絵本です。イラストレーター、デザイナー、映画監督など多彩な才能を発揮する和田さんですが、こういう一面もあるということは、ご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

語り口が仕掛けに直結しているうえにきれいにオチるという、完成度の高い絶妙の小噺であり、これを「ショートショート」として切り出してくる江坂さんの慧眼には恐れ入ります。

当初、当方が底本として考えていたのは偕成社さんが1994年に出されていた絵本で、村上康成さんが挿絵を描いたものでした(もともとは、1966年に『話の特集』に掲載されたのが初出で、その際のイラストは長新太さん、74年には『にっぽんほら話』という短編集にも収録されており、そのときの絵は大橋歩さんでした。その後、白石加代子さんや大竹しのぶさんの朗読劇でも取り上げられたようです)。

ところが、和田さんの事務所に連絡を取らせていただいたところ、偕成社版のあと、2009年、個展に合わせて和田さん自身の挿絵で再度、私家本として書籍化したとのお話。

なに? 私家本ですと?......私家本だと、書店経由では購入することができません。慌ててネットで検索したところ、今は表参道のHBギャラリーという画廊でのみ販売しているらしい。それなのに......該当の画面を見ると「品切れ」の表示。これにはあせりました。

結局、HBギャラリーにご連絡したら、「店頭販売のみ若干の在庫があります」とのことで、事なきを得ました。お店に行って購入して帰ってきたあと、いざ中身を偕成社版と見比べてたら、てにをはが大幅に変更してあるのに加えて、もともと「×月×日」と入っていたところに全部ちゃんと日付が入れ直してある。......これは直さないとまずい。改めて、手に入ってよかったと、ほっと胸をなでおろしたのでした。

一応、掲載時はHBギャラリー版の表記に従い、ノートふうの表記で原本のテイストをできるかぎり保持するよう心がけましたが、やはりもともとは絵本だった作品のテクストだけを掲載したもの。本来の味わいを楽しむためには、親本にあたっていただくほかありません。

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ロバート・ブロック「夫を殺してはみたけれど」は、もともと旧『奇想天外』誌上でいったん訳されたのみで、その後、どの短編集にも一度も載ったことがないという掘り出し物の一編です。雑誌のうめぐさ的な小噺が源流であるショートショートのお手本のような作品といえるでしょう。江坂さんからは、『奇想天外』のコピーがまわってきました。

この作品の場合、編集者を幻惑したのは「書誌」でした。

いつも参考にさせていただいているネット上の翻訳作品集成の書誌サイトで、本作(原題Double Tragedy)が、『殺しのグルメ』(仁賀克雄訳、徳間文庫)所収の「裏切り」(原題Double-Cross)の別訳として表記してあったんですね。

Double TragedyとDouble-Crossが同じ作品の別題だというのは、このサイトにかぎらず海外のサイトでも同じ扱いでありまして、てっきり信じ込んでいたところが......いざ『殺しのグルメ』を取り寄せてみたらまるで別の作品!

実はあの時期、「夫を殺してはみたけれど」の翻訳者、小沢瑞穂さんとなかなか連絡がとれず、いざとなったら仁賀さん訳で行こうと心に決めていたので、これにはかなりびっくりしました。結局、夜討ち朝駆けではないですが、休日の朝8時にようやく小沢さんに電話がつながりまして、いろいろと事なきを得た次第です。快く掲載許可をくださっていた仁賀先生、せっかくのご好意を無下にして、本当に申し訳ありませんでした!

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本書は銀河系ナンバーワン打線を目指したショートショートアンソロジーですので、星新一、筒井康隆、阿刀田高、都筑道夫、スレッサー、サキといった大御所の代表作や、「みずうみ」「賢者の贈りもの」「アウル・クリーク橋の一事件」「猿の手」「女か虎か」といった超有名作が目白押しで揃っております。ただ、そのなかで個人的なおすすめを一点だけあげるとするならば、ちょっと変化球気味ではありますが、岸田今日子さんの「冬休みに あった人」になるかと。

皆さん、岸田今日子さんといえばどんなことを想起されるでしょうか?

『砂の女』や『卍』の妖艶な女優さん? 『傷だらけの天使』の綾部さん? ムーミンの声優さん?

編集者にとって、彼女の残した仕事でもっとも忘れがたいのは、傑作アニメーション『プリンセスチュチュ』(全26話)の冒頭に流れるミニ童話のナレーションです。

わが人生のオールタイム・ベスト作である『プリンセスチュチュ』がいかに優れた作品かは、いつかBDボックスが発売された折にでも5万字、10万字を費やして語りたいところですが、このアニメ、毎回最初に本編と若干連動した30秒くらいの「ちょっと怖い童話」が必ず流れるんですね。これが単品で見ても、もう言葉を絶する完成度でして。まさに映像における「ショートショート」とは、これを指すんだろうなというくらいの。で、その怖い「ショートショート」を驚くべき「声」の力で成立させていたのが、岸田今日子さんなのでした。

「声」でショートショートを成立させる魔法の使い手である岸田さんは、筆をもってもショートショートの抜群の名手でした。その素晴らしさは、読んでいただければご理解いただけるはず。

ぜひ熟読玩味していただき、もしお気に召されたならば、他の岸田今日子作品にも(古本でしか買えませんが)手を伸ばしてほしいな、と思います。

『二つの月の記憶』(講談社)と『ラストシーン』(角川文庫)、どちらもおすすめです(江坂さんの大のおすすめは『ラストシーン』所収の「セニスィエンタの家」)。それと短編集とはいえませんが子供にしてあげたお話 してあげなかったお話(大和書房、異本あり)にもいくつかショートショートが掲載されており、こちらに所収の「香港の黒豚」は、女教師の夏休みを描いたという意味では「冬休みに あった人」と対になるようなお話。やはり詩的な文体のなかに毒を秘めた傑作です。

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その他、当初は掲載を予定していながらも、著作権継承者さんが長年どの社にも許可を出されていないということで見送らざるを得なかった幻の超有名ショートショート作品の話なども面白そうですが、今はやめておきます(笑)(結局、江坂さんに代打をお願いして「かげ草」をバッターボックスに送っていただきました)。

一点、「便利な治療」マッシモ・ボンテンベルリ作、ルは小字)の翻訳者である岩崎純孝さんに関しましては、親本の版元さん(筑摩書房さん)にお願いして所在を追っていただいたのですが、結局、著作権継承者の方を探し出すことができませんでした。もしご存じの方がいらっしゃったらご一報ください。よろしくお願い申し上げます。(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

2016年12月20日 22:35 | | コメント(0)

先週末、『このミステリーがすごい!2007年版』が発売されました。

弊社の『拾った女』(チャールズ・ウィルフォード著 浜野アキオ訳)は、

海外編で4位を獲得しました!

 

祝・各社年末ベスト企画 オールベスト5入り!!

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作品紹介は こちら !

 

今年はほんとうに良い年となりました。

あとは、ひとりでも多くの方が『拾った女』に手を伸ばしてくださることを祈るばかりです。

 

それと! ブレることなく弊社の怪作『ジグソーマン』(ゴード・ロロ著 高里ひろ訳)を年間一位に推してくださった小財満さん、本当にありがとうございました!! 

ああ同好の士よ!いくら感謝しても、したりません!! 

評論家人生を懸けて(?)ご推薦いただいた蛮勇、

もとい、その熱い想い、しかと受け取りました!

 

皆様も、『拾った女』と合わせて、ぜひこの機会に世紀の傑作『ジグソーマン』をお読みください!

 

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紹介は こちら !

 

その他、女性麻薬捜査官が麻薬組織相手に大活躍する痛快作『奪還』(M.A.ロースン著 髙山祥子訳)や、アクションの巨匠が犯罪史上最大の謎に挑んだ『わたしは切り裂きジャック』(上・下)(スティーヴン・ハンター著 公手成幸訳)なども、名前をあげてくださった方がいらっしゃいました。本当にありがたい限りでございます。

他の出版社に比べると、探しにくい店の奥にひっそりと棚があることの多い版元ではございますが、ぜひこの機会に合わせてお読みいただけると嬉しく思います。

 

来年もハンターやカッスラー、ロリンズをはじめ、面白い小説、マニアックなミステリーを積極的に発刊していきたいと考えておりますので、扶桑社ミステリーに今後とも厚いご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます!(編集Y)

 

 

 

 

 

2016年12月12日 18:43 | | コメント(0)

年末ベスト10企画における『拾った女』の快進撃・・・。本当にありがたいことです。

そこに、編集者にとってまた新たな嬉しいニュースが!

 

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『ハイキャッスル屋敷の死』(レオ・ブルース 小林晋/訳) が、今週発売されました『2017本格ミステリ・ベスト10』で見事4位を獲得しました!!

 

すげえ嬉しい! なんなら『拾った女』より嬉しい!!

小林先生、ちゃんとみんな褒めてくれましたよ!(泣)

 

『拾った女』の場合は、編集者も前任者も望外のご評価をいただいて感無量、といった感覚なのですが、一応のところレオ・ブルースは、創元さんで出された『死の扉』が本ミス1位、次に弊社で出した『ミンコット荘に死す』は本ミス3位と、連続ベスト3入りを果たしており、じつは正直けっこうびくびくしておりました(笑)。

と申しますのも、今回はいつにも増してなかなかに通好みの内容でして、表面上のお話を追うだけだと、陳腐な作品と受け取られかねない危惧もありまして・・・でも、なんとか4位にはいれて本当によかったです。

作品の真価について掘り下げ、すばらしい解説を書いてくださった真田啓介さんのおかげですね。この場を借りて、心から感謝申し上げます。

 

ご投票を賜りました皆さま、本当にありがとうございました!(五体投地)

 

当ブログでの作品紹介は「こちら」。

 

せっかくなので多少禁じ手かと思いつつも、近日中に「完全ネタバレ版」の作品紹介を別途アップしようかな、と思っております。

真田さんの解説を読めばもう十分といえば十分なのですが、人を変えて語ればまた、見え方も多少は違おうかと。

 

いよいよ、週末には「このミステリーがすごい!」が発売ですね。

『拾った女』は、全ベスト10制覇なるのか? 編集者が『拾った女』以上に気に入っている『ジグソーマン』の巻き返しはあるのか??(あるわけない) 

なんにせよ楽しみに待ちたいと思います。(編集Y) 

 

 

2016年12月 8日 14:45 | | コメント(0)

 かつて、扶桑社文庫で日本SFの名作が復刊されたことがありましてね。

 

  扶桑社ミステリー通信

  「日本SFの名作が帰ってきた!」

  「がんばれ、扶桑社SF!」

 

 残念ながら、わずか3点で打ち止めになってしまったという、思いだすだにつらいトラウマになっています。

(作家のみなさま、企画・編集の日下三蔵さん、解説の星敬さん、イラストでご協力いただいた新井苑子さんに古川タクさん、デザイナーのWONDER WORKZ。さん、ありがとうございました&申し訳ありませんでした)。

 

 そこで、この3作を電子書籍で復刊することにしました。

 ぜひみなさまのライブラリーにお加えください。

 

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2016年12月 8日 11:38 | | コメント(0)

連日、年末のベスト10企画を賑わわせています弊社の『拾った女』(チャールズ・ウィルフォード 浜野アキオ訳)でございますが、

今度は、週刊文春の「第40回ミステリーベスト10」2016の海外部門

 

第5位 を獲得しました!   実にめでたい!

 

順位的には早川さんと似たメンツでしたが、やっぱりここは『傷だらけのカミーユ』がぐっとあがってきましたね・・・(笑)。

 

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ふだんはあまり皆様の目に触れない書店の片隅に

ひっそり置かれている日陰もののレーベルではございますが

12月8日以降、重版分もあがりますので、ぜひこの機会にご購入のほどを!

書店様におかれましては、ぜひとも平台にて他社商品とともに面陳のほどを!

 

さあ、あとは残すところ「このミステリーがすごい」ですね・・・・

果たして入賞するのでしょうか?? 期待が高まります!!(と一応いってみる)

(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

2016年12月 2日 06:09 | | コメント(0)

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