遅まきながらあけましておめでとうございます!

本年も扶桑社ミステリーを、よろしくお願いいたします。

 

さて、新年早々嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。

翻訳ミステリー大賞シンジケートの情報によれば、せんだい読書会さんと福島読書会さんで連動して、レオ・ブルースの二作品をとりあげていただけるとのこと!!

本当にありがとうございます!!

 

なんでも、東北読書会ツアーが組めるように、わざわざ作家を揃えられたとのこと。すごい!

 

せんだい読書会

開催日:2018年2月17日(土曜)

課題書: 『ミンコット荘に死す』(レオ・ブルース:著 小林晋:訳)

詳細・応募は こちら

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当ブログによる紹介文は こちら

 

★福島読書会

開催日:2018年2月18日(日曜)

課題書:『三人の名探偵のための事件』(レオ・ブルース:著 小林晋:訳)

詳細・応募は こちら

三人の名探偵のための事件がJpegブログ画像.jpg

 

当ブログの紹介文は こちら

 

レオ・ブルースは、イギリスの本格ミステリー黄金期を支えた巨匠のひとりといっていいでしょう。

 

まず、レオ・ブルースの作品には、練り上げられたトリックと、プロット全体におよぶパズラーらしい凝った趣向、そしてロジカルなフーダニットという、「王道」の本格ミステリーとしての重要な要素がすべて備わっています。

この点で、彼はクイーンやクロフツ、カー、クリスティといった大作家にも、けっして引けを取っていない、と編集者は思っています。

 

一方で、レオ・ブルースからは、そんな本格ミステリーというジャンルや登場人物のありようを、徹底的に茶化し、分析し、メタ化していくような部分も、色濃く感じ取れます。

ただそれは、本格ジャンルを否定的にとらえて批判しているわけではなく、あくまで本格を愛するがゆえに、斜に構えて面白がっているのですね。

これは、彼がミステリーライターであると同時に、イギリスにおいて伝統的なユーモア小説/諷刺小説の系譜に属してもいるからであり、その点で彼は、正しくアントニー・バークリーの作風を継承する本格ミステリー作家であるといってよいかと思います。

『三人の名探偵のための事件』解説で、真田啓介さんはレオ・ブルースを「英国余裕派」のひとりとして分類しています。真田さんが唱える「英国余裕派」とは、E・C・ベントリー、A・A・ミルン、ロナルド・ノックス、アントニー・バークリー、シリル・ヘアー、エドマンド・クリスピンといった作家に代表される「遊び心が旺盛で、ゆとりと落ち着き、現実との適度の距離といったものをその作品に感じさせる作家の一群」とのこと。それぞれの作品を読んだ方には、当然ピンとくるところがあると思います。

編集者はこの解説原稿があがってきたとき、まさにそれだよね!と思わず膝を打ちました。

 

そして、ここからは個人的な意見であり、同時に大変重要なポイントと思うのですが、英国における本格ミステリーの発展史は、「名探偵が活躍する王道のトリッキーな本格と、本格をゆとりをもって諷刺するような余裕派の本格が、同時期に創作されることで、ジャンルの両輪として高めあって」形成されてきたのです。

皆さん、なんとなく思い込んでいないでしょうか? 「先に」王道の本格があって、「後から」それをパロディ風に扱うタイプの作品が書かれだしたかのように?

実際には、ベントリーの『トレント最後の事件』は1913年、ミルンの『赤い館の秘密』は1922年の発表ですし、ノックスやバークリーの活躍期はクリスティの創作活動の最初期とかぶり、クイーンやカーの登場には若干先行すらしているわけです。

要するに、英国本格史において、本格ミステリー独特のお約束や虚構性、「名探偵」の機能といったものに自覚的に言及し、あるいは茶化し、あるいは逆手に取ってネタにするような作風は、ジャンルのごく初期から存在し、本格ミステリーという異形の文学を、常に内から「再規定」し続けてきたのでした。

加えて、それ(英国本格)に「外から」憧れ、恋焦がれて、さらなるジャンルの「純化」を図った、アメリカのスクール(ヴァン・ダイン、クイーン、カーなど)の存在(日本の新本格を見ても分かるとおり、「外」からジャンルに横恋慕した愛好者は、本国のどぶろくを蒸留酒に変えてしまうのです)。三者がお互いに刺激し合うことで、20世紀前半の本格ミステリーは急速な発展を遂げた、ということができるのではないでしょうか。

 

レオ・ブルースは、そんな「余裕派」の作風を正しく継承し、本格ミステリーという枠組みそのものを、茶目っ気たっぷりに外から「揺るがす」ことで(同時に枠組みの「中」もちゃんと設えられているからこそ、それが生きるわけですが)、新たなミステリーの沃野を切り開いていった作家でした。

ビーフ巡査部長を探偵役とする初期の作品群(長編は8作)は、とりわけ実験性に富み、型を破ろうとするチャレンジ精神が一作ごとに強くうかがわれます。その第一作、ブルースのミステリー作家としてのデビュー作が、今回福島読書会で課題となる『三人の名探偵のための事件』です。

その後、レオ・ブルースは、1955年刊行の『死の扉』(創元推理文庫)で、よりオーソドックスな「素人探偵」キャロラス・ディーンを主人公として初めて登場させ、作風にも一定の変化をみせます。以降、23作にわたってレオ・ブルースはキャロラスを探偵役とする長編を書き続けることになりますが、今回せんだい読書会で取り上げてくださる『ミンコット荘に死す』は、その第三作となります。

 

まあ、精読すると、いろいろ細かいアラにも気づいてしまうかもしれませんが(笑)・・・そんなの愛さえあればきっとへっちゃらですよね?

未読の方はこの際ぜひ、既訳作に手を伸ばしていただき、レオ・ブルースの滾る本格愛をぜひ体感していただくとともに、その小説を書くことで彼が「なにを狙っていたのか」をじっくり考えてみていただければと思います。

両日、編集者は残念ながら東京で私用があって参加できませんが、楽しい会になることを心よりお祈り申し上げます! そしてみなさま、ふるってご参加を!(編集Y)

2018年1月11日 14:18

コメント(1)

Comment

  • 今回ホストとなる本読書会を取り上げていただきありがとうございました!
    皆さんと自分自身が楽しめるよう,つとめたいと思います。
    既読者向けコメントがいただけそうと,服部さんからきいていましたので,是非,お願いできればと思います。「なにを狙っていたのか?」を是非教えていただければ幸甚であります。



    |せんだい探偵小説お茶会世話人 高橋順|2018年1月12日 16:52

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