大変長らくお待たせいたしました。ついにスティーヴン・ハンター『マスター・スナイパー』が6月2日に扶桑社より刊行されます!

 

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本書は、ハンターの小説家としてのデビュー作であり、20年ほど前に新潮社さんから出ておりました『魔弾』を、訳文を再検討し改訂を施したうえで、原題(『The Master Sniper』)に寄せたタイトルに改めて復刊したものです。

 

実は昨年末くらいから、弊社より本書を復刊するという情報が市場にけっこう出回っていたのですが(販売部経由であちこちに漏れていた)、実際は契約上の本国とのやりとりがなかなかうまく進まず(揉めたわけでは一切なく、ひたすら先方のレスポンスが遅かった)、ようやく今月の新刊として世に送り出せることとなりました。弊社までわざわざお問い合わせいただいた皆様、本当に申し訳ありませんでした。

正直、刊行までこぎつけることができて、心底ほっといたしております(笑)。


『マスター・スナイパー』は1980年に発表された、ハンターの輝けるデビュー作です。
デビュー作には作家のすべてが詰まっている、とよく言われますが、果たしてどんな小説なのでしょうか?

 

本書は第二次世界大戦末期、敗色濃厚のナチス支配下にある、森の奥の収容所を舞台に幕を開けます。他の収容所と比べて妙にのんびりした、ゆるんだ感じのするその場所で、しかしながら、ユダヤ人作家のシュムエルは不穏なひっかかりを感じていました。その恐るべき予兆は、ある月のない漆黒の夜に現実として牙をむくことになります。

 

 またひとり、倒れた。
 またひとり。
 みんな、がくっと力が抜けたみたいにくずおれた。やや身体をひねり、膝を折ってすわりこんだかと思うと、ゆっくりとまえにのめっていく。
 シュムエルは立ち上がった。
「俺たちは撃たれてるんだ」と、誰かが呆然とした口調でいった。「俺たちを――」その言葉は、弾丸によって途中で断ち切られた。
 祈りの声が、夜の静寂に響いた。ほかには物音ひとつしなかった。
 シュムエルのすぐ隣にいた男の喉に弾丸があたった。男がうしろにひっくり返る。別の男が急に前屈みになった。肺から血がどっと流れだし、ごろごろと喉を鳴らし、あえぐのが聞こえた。だが、ほとんどのものは頭か心臓を撃ち抜かれて、音もなく静かに死んでいった。
 ついにきた。夜がやってきたのだ。ナッハト、ナッハト、夜が襲いかかり、彼を連れ去ろうとしている。シュムエルはまえからずっと、夜がくるのを知っていた。いまが、そのときなのだ。目を閉じたほうがいいとわかっていたが、どうしてもできなかった。
(『マスター・スナイパー』p31より)

 

果たして収容所でおこなわれたこの虐殺こそは、ナチス親衛隊による、とある最新兵器の秘密実験だったのです。彼らは、この新兵器を用いた極秘作戦を計画中で、その実行者に選ばれたのが"狙撃の名手(マスター・スナイパー)"の異名をとるドイツ軍武装親衛隊のレップ中佐でした。

 

彼が標的としているのはいったい誰なのか?
作戦の存在に感づいたアメリカ陸軍戦略事務局のリーツ大尉は、当初聞く耳を持たなかった英国陸軍特殊作戦局のアウスウェイス少佐をも巻き込んで、作戦の全容を明らかにするべく奔走しますが......。


本書は、古き良き戦時冒険小説であり、虚実入り乱れる諜報小説であり、〈スワガー・サーガ〉の原点ともいえるスナイプ・アクションでもある、極上のエンターテインメントです。もちろん、壮絶なガン・アクションも登場します。

もはや帰趨が決した戦争末期という状況下でなお、与えられた使命に殉じ、マンハントに命を懸ける男たちの、追いつ追われつの極限の攻防が描かれる、大興奮必至の一冊です。

 

初めて読まれる方は、〈スワガー・サーガ〉であなたを鷲掴みにしたであろうこの作家の魅力が、本作の時点ですでに十二分に発揮されている点を、ぜひその目でお確かめください。
大昔に新潮版で読まれた方も、かなり訳文のほうに翻訳者の玉木さんが手を入れられましたので、この機会にご再読いただけるとたいへん嬉しく存じます。

 

現在、ハンターは最新作を準備中です(もうすぐ送るよって年明けにエージェントが言ってきてからそれきり音沙汰がないですが、まあそれはそれってことでw)。
皆様におかれましては、ハンターの「原点」をここでじっくり読み返したうえで、腰を据えて新作をお待ちいただけるとよろしいかと。

 

また本作には今回、販売部有志作成の「スティーヴン・ハンター扶桑社刊行全作紹介」の折込を封入しております。こちらの相関図&各作品紹介を見ながら、読み残していた作品にも手を伸ばしていただけると幸いです。ぜひよろしくお願いいたします!(編集Y)

 

追伸:合わせて、翻訳ミステリー大賞シンジケートさんのブログで、なんと♪akira さんが、スティーヴン・ハンターの裏ベスト(!)『四十七人目の男』を取り上げてくださっています! 

 


こちらもぜひご一読いただければ!

 

 

2018年5月29日 22:24

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