メリー・クリスマス!!(ちょっと遅い)

 

さて皆様、ドゥエイン・スウィアジンスキーという、いささか長ったらしい名前の作家をご存じでしょうか?

覚えていらっしゃるなら、かなりの通かもしれません。

あの"怪作"の誉れ高い『メアリー-ケイト』『解雇手当』(いずれもハヤカワ・ミステリ文庫)の著者だと申し上げれば、「ああ、あの作家か!」と思い出される方も結構多いのではないでしょうか。

 

今月、弊社文庫にてお届けする『カナリアはさえずる』(上・下、公手成幸訳)は、この著者の10年ぶりの邦訳紹介ということになります。

なんか、思い切ったな、扶桑社(笑)。

われながら、うまく企画を通したぜ!(通らない企画もいっぱいあるんですよ)

 

カナリア上下.jpg

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ミステリーとしてはスウィアジンスキーの現時点での最新作であり、初めてエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)長編賞にノミネートされた、とびっきりのすぐれもの。

まあ、騙されたと思って、まずは読んでみてください。

もう文句なしに、とにかくめっぽう面白い作品ですから!

 

上巻のあらすじはこんな感じです。

 

フィラデルフィアに住むサリーは、優等生プログラムでセント・ジュード大学に入ったばかりの17歳。

感謝祭前の学内パーティーで、先輩のDに頼まれて彼を車で街まで送ったせいで、彼女は麻薬取引に巻き込まれ、麻薬捜査課の刑事ウィルディに逮捕されてしまう。

刑事が送検しない条件として持ち出してきたのは、学内の秘密情報提供者(CI)として捜査に協力することだった。Dの正体を明かすことを頑なにこばんだサリーは、代わりとなる別の売人を見つけ出すために独自で捜査を開始することに・・・・・・。

 

ここで編集者がとくに声を大にして強調しておきたいこと、それは・・・・・・

本作はべつに(一部に期待されているような)「バカミス」ではない!ということです。

そこはくれぐれも誤解のありませんよう!

ぶっ飛んだミステリーを書いてた作家が、今も変わらずぶっ飛んだミステリーを書いているから紹介したいと思った、ということではなく、

当時の芸風を昇華して、物書きとしてさらなる高みに至っている事実に驚愕したから、ぜひ皆様にも「今の」スウィアジンスキーを読んでほしくて邦訳を出したんだ、そう考えてください。

 

『メアリー-ケイト』と『解雇手当』のあと、スウィアジンスキーがどうしていたかと申しますと、じつは、並行して行っているアメコミの執筆を精力的にこなしながらも、ミステリーのほうもきちんと書き続けていて、なんと2011年に『Expiration Date』でアンソニー賞の最優秀ペーパーバック賞、2012年には『Fun and Games』でシェイマス賞の最優秀ペーパーバック私立探偵小説賞を獲得しているんですね。さらに、本作ではエドガー賞長編賞にみごとノミネート。

そう、スウィアジンスキーは、確実に更生、もとい、成長し続けている作家なのです!

そして、『カナリアはさえずる』は、そんなニュー・スウィアジンスキーの、現時点での代表作なのであります。

 

(アメコミ作家らしい)B級トンデモミステリーの極北を爆走していたころの、設定のキャッチーさとひねりのきいたプロットは、いまもじゅうぶん健在であり、奇抜な敵キャラのキャラづけや、思いも寄らない展開の妙は、むしろ当時より磨きがかかっているともいえます。

大きく変わったのは、人物の描き方。それから、物語の語り口です。

 

本作で描かれるのは、突き詰めれば、サリーというヒロインの成長物語。

17歳の少女の、リアルな葛藤と苦悩、家族への想い、冒険の予感、そして危機のなかでたち現れる「本当の自分」との出会いが、本作ではきわめていきいきと描出されます。

スウィアジンスキーが「日記」を通じて描き出すサリーの姿は、聡明で、活気があって、けなげで、美しく、じつに尊い。

同時に、こだわりが強くて、どこか底知れない闇をかかえ、読者にもなかなかその奥底を見せてくれない、謎めいた女性でもあります。

逮捕、拘束、捜査活動、さらには生命の危機という、ふつうの17歳なら耐えきれないような非日常のクリフハンガーをつうじて、彼女は一足飛びにその能力を開花させ、本人も驚くような成長を示していきます。

 

一方で、もうひとりの主人公ともいえる巨漢の刑事ウィルディにも、抱えている想いがあり、葛藤があり、実現したい「街の正義」があります。

それから、サリーのことを心配する家族がいます。父親はドラッグ・カウンセラーであり、一年前に他界した母親にも、とある過去があります。

そして、悪徳と暴力がはびこる街には、憎めない小悪党たちと、正真正銘ろくでなしの悪漢たちが巣食っています。

冬の凍てつくフィラデルフィアを舞台に、物語はそんな人々の思惑と策謀を飲み込んで、ひたすら加速し続け、思いもかけない終結点に向けて疾駆するのです。

 

とにかく語り口がうまい。先が読めない。言い回しが洒落ている。キャラが立っている。

『少女探偵ナンシー・ドルー』や『三姉妹探偵団』のような、ジュヴナイル系の少女冒険譚に通じるワクワク感があり(女の子が、刑事や売人や殺し屋を大向こうに回して、大活躍するんですから)、

スー・グラフトンやサラ・パレツキーのような、「卑しき街をゆくタフな女騎士」を描く女性私立探偵小説の系譜にも属し(「正義と悪」「街の意志」は本作の大きなテーマのひとつといえます)、

『犬の力』や映画『プッシャー』のような、麻薬に汚染された街の生々しい描写を、日本にいながらにして体感できる、とびきりクールな犯罪小説でもあります。

 

感謝祭前日に始まり、クリスマスに終わりを迎える年の瀬の物語。

ちょうどその時期に、翻訳者さんと二人三脚で過酷な編集作業をなんとかやり遂げ、ドンピシャのタイミングで本書を世に問えたことを、心からうれしく思います。

願わくは、ひとりでも多くの方にこの快作を手にとっていただき、サリーの活躍ぶりを楽しんでいただけますように!(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年12月25日 23:33

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