2019年4月アーカイブ

皆様、今月の新刊はふだんとはちょっと雰囲気が異なりまして、第二次世界大戦末期のイタリアを舞台とした、17歳のレジスタンスを主人公とした物語となっております。

 

タイトルは『緋(あか)い空の下で』(上・下)。

 

作者はマーク・サリヴァンという、そこそこのベテラン作家さんですが、まさかご本人もここまで売れて、これだけの評判になるとは、思ってもいなかったでしょう。 

 

実はこの小説、4月時点の本国Amazonで、なんと24841レビューもついて、星4.8という驚異的な数字を叩き出しております。

さらに本書は、2017年にAmazonで最も売れたフィクション新刊だったんですね(フィクションの総合では6位でしたが、その他の上位は、当時ドラマ化された『侍女の物語』や、あのハリー・ポッター・シリーズなどで、新刊でベスト10に入ったのは、本作と10位のダン・ブラウンだけでした)

部数はすでに本国で累計150万部を突破!

しかも、パスカルピクチャーズで、トム・ホランド主演の映画も決まっているという!

 

これだけの人に読まれ、大きな話題となり、多くの読者に感動を与えている『緋い空の下で』とは......いったいどういう本なのでしょうか?

たしかに、本書には Amazon が大々的に仕掛けて、ベストセラーにまで持っていた側面もあったりもするのですが(その「仕掛け」の面白さについては、また別の機会に)、実際にこの本を読んで、素晴らしいと感じた人がたくさんいたからこそこれだけヒットしたというのも、また確かです。

本書には、いろいろと「ドラマ」があるのです。

 

緋い空の下でブログjpg.jpg

■オンライン書店で購入する(上巻)
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

 ■オンライン書店で購入する(下巻)
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

 

 

 あらすじは、こちら。

 

1943年イタリア、ミラノ。ピノ・レッラは女の子とジャズと食べ物に夢中の17歳だ。

だが彼の運命は、第二次世界大戦の戦火が市街へと拡大するにつれ激変する。

弟と二人でアルプス山中の自然学校に疎開することになったのだ。

ピノはそこで、運営者の神父から指示を受け日夜アルプス登山に勤しむが、

それはある特殊な任務のための訓練だった。

ナチスに追われるイタリア在住のユダヤ人を、山越えでスイスへと逃がす手伝いをピノにさせようというのだ。

彼は危険を覚悟で、道案内役を引き受ける――。

 

さらに、第三部以降になると、少年ピノにまさかの運命が待ちうけています。

 

アルプス山岳ルートを用いたユダヤ人の逃亡支援を続けていたピノは、軍役に就くためミラノに呼び戻される。

1944年夏、ひょんなきっかけからナチスの高官ライヤース少将の運転手に指名されたピノは、そこで働きながらひそかにスパイとして反ナチス運動に協力することを決意する。

運命の女性との再会、垣間見るナチス・ドイツの内幕、次々と訪れる親しい人々の死......。

数奇な運命に翻弄されるピノを待ち受ける未来とは? 

 

ここで、重要なのは、本書の主人公ピノ・レッラは、実在するということです。

 

本書の著者による前書きには、こんな執筆の経緯が記されています。

「あるディナーパーティで、わたしは第二次世界大戦中の17歳のイタリア人少年を主人公とする途方もない話の断片を耳にした。終戦までの23カ月におよぶピノ・レッラの物語を聞いてわたしが真っ先に思ったのは、これが実話のはずはない、ということだった......。

(中略)つまり、読者がこれから読もうとしている物語は、小説仕立てのノンフィクションではなく、ピノ・レッラの伝記小説、1943年6月から1945年5月までのピノの経験に可能なかぎり沿った歴史小説なのである」

 

そう、本書は、著者がピノ・レッラ老人への綿密なインタビューをもとに執筆した、「実話」ベースの物語なのです。

本当にアルプスの山越えで多くのユダヤ人たちを救い、その後、ナチス高官のもとでスパイ活動に従事した17歳の少年は、実在したのです。

 

NYタイムズベストセラー作家のテス・ジェリッツェンは、

 

「アクション、冒険、愛、戦争、そして叙事詩的英雄――あらゆる要素が、歴史上最も暗かった時代を背景に対置される。マーク・サリヴァンの『緋い空の下で』には、すぐれた第二次大戦小説に読者が求めるすべてがつまっている」

 

と賛辞を述べています。


 

なお、本書の原題も Beneath a Scarlet Sky ということで邦題はほぼ直訳ですが、あえて「スカーレット(緋色)」を意識した漢字を使ってみました。

この「緋色」は、物語前半の舞台であるアルプスの霊峰(作品内で「神の大聖堂」と呼称されます)を包む夕焼けの「緋」でもあり、

やがて主人公の故郷ミラノの空を焼き尽くす、拡大してゆく戦火の「緋」でもあります。

邦訳版の上下巻の装幀は、そんなアルプスの山並み――「神の大聖堂」と、ミラノの大聖堂――「人の大聖堂」を対比させ、それぞれの「緋」をイメージしたものとなっております。

 

まずは、ここではこれ以上の紹介は控えて、あとは皆さんにもぜひ、ご自身の目で読んでいただきたいと思います。特に連休のあいだ、お出かけの予定がない、という方は、ぜひ本書を読んで、1940年代のアルプスとミラノにトリップしてピノとともに冒険を繰り広げていただければ!

お楽しみに!(編集Y)

 

 

 

 

2019年4月28日 04:28 | | コメント(0)

 20193月末、すでに当欄でご紹介したカッスラーの新刊とあわせまして、弊社販売部の主導のもと、十数年ぶりに、とある傑作サスペンスが復刊されました。

 

スコット・スミス著『シンプル・プラン』!

シンプル・プラン帯あり小.jpg


そう、かつて『このミステリーがすごい!』1995年版第1を獲得した、扶桑社ミステリーを代表する一作です。

ある雪の日に、町外れで、墜落した小型飛行機の残骸と、パイロットの死体、それに440万ドルの現金が詰まった袋に出くわしてしまった3人がたどる、恐るべき運命とは――

デビュー作にしてすでに、圧倒的な完成度とリーダビリティを誇るその内容は、多くの読者にただ事ならぬ衝撃を与えました。さらには刊行後、サム・ライミ監督による映画化作品も公開され、これまた大きな話題を呼びました。

 

販売部が本作の復刊を考え始めたそもそものきっかけは、『このミス』2019年版でおこなわれた「30年間の1位作品からベストを選ぶ」という企画「キング・オブ・キングス」で、『シンプル・プラン』が6位に選ばれたことでした(1位は『薔薇の名前』ですが、弊社刊のジム・トンプスン著『ポップ1280』も、第5位にランクインしております!)

 

販売部から復刊の打診があって、編集者もすぐに動きました。まず翻訳者の近藤純夫さんと連絡をとり、情報更新も兼ねて、訳者あとがきを新たにご執筆いただきました。

評論家の池上冬樹さんからは、

 

犯罪小説の金字塔。一度は読むべき絶対的名作! 一歩間違えれば人はみな狂った道を転がり落ちるという恐怖をとことん味わわせてくれる。

 

という大絶賛のお言葉をいただき(この作品のためなら、もういくらでも褒めますよ、とは池上先生の言!)、現在、新帯をまいて全国の書店さんにて展開中でございます。

長らく品切れ状態となっておりましたが、こうしてまた、新たな装いのもとあの傑作を皆様にお届けできる。編集部といたしましても、たいへん嬉しい話でございます! 

 

 

 で、ようやく本題なのですが......

ここからは、販売促進部二年目のホープMくんが訊いてきてくれた、ときわ書房本店の文庫担当・宇田川拓也さんのインタビューをお届けしたいと思います!

 なんでも、Mくんから復刊を伝えると「平積み展開したいから50部ほしい」とおっしゃって、早速ご注文いただけたとのこと!(涙) さらには、こんな素晴らしい推薦コメントまで寄せてくださいました。

 

『手を汚し、罪を重ね、堕ちて堕ちて堕ち続ける。誰の内にもある人間の愚かしさと恐ろしさをこれほどシンプルな構成で深く生々しく残酷に掘り下げた、一瞬も目が離せないほど強烈な小説は他にない。』

 

作品愛に満ちた推薦の辞、本当にありがとうございます!

 

というわけで、弊社Mくんが宇田川さんから伺ってきた、『シンプル・プラン』と「扶桑社ミステリー」の魅力についての含蓄あるお話を、存分にお楽しみください!

 


 ――『シンプル・プラン』はどんな人におすすめですか

 

 この作品は、犯罪小説に興味を持った人にはもちろんのこと、改めて読み巧者やマニアの方々にも手にとってほしいです。手に入りにくい期間がここ数年あったわけですから、いま犯罪小説ファンでも未読の方がいてもおかしくないですよね。そうした人にはぜひ読んでいただいて、『シンプル・プラン』には犯罪小説マニア全世代必須の通過点となってほしい。

 1995年邦訳作品ではありますが、古びにくさ、そして何度でも再読に耐え、何度でも読者の心を揺さぶる底力がこの作品にはあります。

 また、もし「映画は観たことある」で終わっている人がいたら、それはもったいない! ぜひともすぐに読んでください()



――扶桑社では今回はじめて復刊企画をおこないましたが、こうした企画やフェアについてはどうお考えですか

 

それはもう、大歓迎です!

内容はいいのに時流に乗れなかったなどの理由で埋もれていった作品はたくさんあるので、そういったタイトルを現代に復活させるのは、新旧のミステリファンにも喜ばれるのではないでしょうか。

 新刊で出た際には、ファンも盛りあがってブームにもなります。でもそれが過ぎてしまうと区切りがついてしまい、いつの間にか手に入りにくくなってしまう、というもったいない作品は多くありますよね。

まさに『シンプル・プラン』もそうで、ついこのあいだまで絶版に近い状態だったというのが信じられません。でも今回の復刊を再燃のきっかけとして、ロングセラーとなってほしいですね。

 

 

――「扶桑社ミステリー文庫」についてはどのような印象をお持ちですか?

 

 単に優れた作品だけでなく、思いがけない異色作やB級テイストな作品にも理解があるラインナップ、といったものでしょうか()

 古典や本格ミステリーを出したかと思えば、『インターンズ・ハンドブック』のような変わり種も出す。その視野の広さが面白いと思いますし、老舗の早川書房さんや東京創元社さんとは異なる姿勢で作品を紹介してくださるのは非常に重要な役割だとも思います。

 


――宇田川さんにとって印象深い扶桑社ミステリーのタイトルは?

 

クレイグ・トーマスの『闇の奥へ』(註・田村源二翻訳・1989年刊)です。

 いまではクレイグ・トーマスの作品というと『ファイアフォックス』(ハヤカワ文庫NV)くらいしか手に入らなくなってしまいましたね。

この『闇の奥へ』という作品は、『ファイアフォックス』の主人公である米空軍パイロットのミッチェル・ガントと並ぶクレイグ・トーマス作品の看板キャラ、SIS(英国情報局秘密情報部)工作員のパトリック・ハイドが、長官ケネス・オーブリーのスパイ容疑の真相と黒幕を満身創痍になって追いかける謀略冒険小説の傑作です。苛烈極まりない「ミッション:インポッシブル」のようなテイストが、いまでもとても気に入っています。

また、扶桑社ミステリーでもうひとつ欠かせないものといえば、やっぱり赤い背表紙の「ホラー」でしょうか......。スティーヴン・キングやクーンツ、マキャモン。当時十代だった自分にとって特別な作家たちの作品が「赤背」にはたくさんありました。


 

――今後復刊シリーズは続いていくかもしれませんが、その第一歩となる『シンプル・プラン』にはどんな期待をされていますか

 

 先日店に届いた『シンプル・プラン』の店頭POPを見て、驚きました。「まだ25万部なのか」って。正直もっともっと売れていたような感覚がありました。

 私は100万部売れてもおかしくない内容だと思っていますので、そうなると、あと75万もの人に今後お求めいただける可能性がある(笑)。この本をこれから75万人に届けていくとして、そのうち少なくとも74.5万人には間違いなく面白いと思ってもらえるはずです。

 

展開写真.jpg


――というわけで、復刊したての『シンプル・プラン』、かつて読んだ方もまだ読んでいないという方も、ぜひお手に取ってください。一気読み必至の作品です!

 また、船橋を支える本屋さん・ときわ書房本店にも足を運んでみてくださいね!(販売促進M)


~今回お話を聞いた本屋さん~

■ときわ書房本店

千葉県船橋市本町4-2-17 JR船橋駅南口より徒歩1分

営業時間:10:00~24:00(日・祝23:00) TEL:047-424-0750

2019年4月16日 12:07 | | コメント(0)

2018年の夏、かつて新潮文庫さんの看板だった〈ダーク・ピット〉シリーズの最新刊『黒海に消えた金塊を奪取せよ』(上・下)を、扶桑社ミステリーのほうからご紹介させていただいたのは、皆様のご記憶にも新しいところかと存じます。

続きまして!

ついに、もうひとつの新潮社さんが出されていたシリーズ、ダーク・ピットもののスピン・オフである〈NUMA〉ファイルシリーズも、このたびより、弊社から刊行させていただく運びとなりました!

 

そう、これからは、あの快男児カート・オースチンが扶桑社ミステリーを舞台に大暴れするのです!

 

タイトルは『粒子エネルギー兵器を破壊せよ』(上・下)。原題は『Devil's Gate』です。

 

粒子エネルギー 上下.png

 ■オンライン書店で購入する(上巻)
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

 ■オンライン書店で購入する(下巻)
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

 

他のシリーズ同様、翻訳者さん(土屋晃さん)とイラストレーターさん(岡本三紀夫さん)には新潮さん版より引き続きお願いさせていただきましたので、馴染みのファンの皆様にとっては安心仕様です。

ついでに申しますと、ソフトバンクさんから引き継いだシリーズには、タイトルの最後のところに、「!」がついていて、新潮社さんのはついていないのですが、そのへんも妙に律儀に引き継いでおります。

 

上巻のあらすじは、こんな感じです。

 

東大西洋のアゾレス諸島へ向けて航海中、NUMA(国立海中海洋機関)のカート・オースチンは黒煙を上げる貨物船を発見。

救助に向かうも、襲撃した海賊は逃走し、貨物船は沈没する。

事件の真相を探るべく海底に潜ったオースチンの目に飛び込んできたのは多数の船舶と航空機の残骸が散らばる光景だった。これはいったい......

この海域にどんな力が働いているのか? 

世界中から科学者が調査にやってくるが、オースチンとNUMAの面々は、逃走した海賊とこの船の墓場に陰謀のにおいを嗅ぎとる。

 

 改めてご紹介いたしますと、本シリーズの主人公カート・オースチンは、NUMA(国立海洋海中機関)の特別出動班を率いて難事件に立ち向かい、世界を股にかけた活躍を繰り広げます。

ダーク・ピット(現在NUMAの長官)を主人公とするメイン・シリーズの、いわゆるスピンオフという位置づけであり、ポール・ケンプレコスを共著者に迎えて、2000年本国発売の『コロンブスの呪縛を解け』を第一作としてスタートし、現時点で第14作まで出ています。

 ダーク・ピットもののほうは、第17作『オデッセイの脅威を暴け』(2005)まで、カッスラーは共著者をつけずに単独名義で出していたので、あふれる書ききれないアイディアをなんとか別シリーズの形で紹介したい、という彼の想いがあったのかもしれません。

チームの仲間は、カートの良き相棒にして潜水艦の設計を得意とするジョー・ザバーラと、学者肌のポールとガメーのトラウト夫妻。ダーク・ピット他、本編のほうの登場人物も、同じNUMAの仲間として適宜登場いたします。

 

今回ご紹介する『粒子エネルギー兵器を破壊せよ』から、共著者がグラハム・ブラウンに変わりましたが、魅力的な事件立てと派手なアクション、ハイテク兵器と潜水・サルベージのリアルな描写、小気味良いキャラクターのやりとりに、一切のゆるみはありません。

本国発表年が2011年ということで、若干古めの話ではありますが、むしろ今より少し若めのカッスラーの、活力あふれる筆致を味わえる、ということで、ファンの皆様には無条件で楽しんでいただける作品にしあがっているかと。

超王道の海洋冒険小説の登場です。ぜひお楽しみください。

 

なお、本シリーズは上述の通り、結構作品がたまっておりまして(2019年4月現在で未訳作が5作)、翻訳者さんの頑張り次第ではありますが、今後もできる限り、どんどん間をおかずにご紹介していきたいと考えております! 

また、これでカッスラーの既存全シリーズが弊社に集まってきたわけですが(!)、次回は6月頭に出す新刊で、オレゴン・ファイル・シリーズの最新刊『Shadow Tyrants』をお届けする予定で、こちらも現在、鋭意編集作業中でございます。

 

今後とも、扶桑社カッスラー文庫(ええもう、そう呼んでいただいてもいいでしょうとも!!)の怒濤の快進撃に、ぜひご期待ください!(編集Y)

 

 

 

 

 

 

2019年4月 2日 23:43 | | コメント(0)

しばらくご無沙汰しておりました!

 

この間、編集者が何をやっておったかと申しますと、昨年秋から今年の2月いっぱいにかけて、ヨレヨレになりながら国内400万部、全世界で2800万部の大ベストセラー、スペンサー・ジョンソン著『チーズはどこへ消えた?』の続編である、著者の遺作『迷路の外には何がある?』の編集およびパブシリティのお仕事に従事しておりました。

Maze Cover small2.jpg

 ■オンライン書店で購入する
amazonセブンネットショッピング楽天ブックサービスhonto

  

こういう大型企画の担当を仰せつかりますと、ふだんの仕事ではあまり体験しないようなことが目白押しで、たいへん充実感もある一方で、社内各部署からのプレッシャーもやたら強く、なにかと胃のきりきりするようなことも多いもんでして。理不尽なことで怒られたり、なかなか外部への頼み事がうまくいかなかったり・・・(愚痴)

貴重な体験もさせていただきました!

業界紙の一面(それも全面)記事に顔出しでインタビューを受けさせていただいたり、朝日新聞の書評サイト『好書好日』に前任者Tと「出演」して、あんなことやこんなことをさせられたり・・・ああ恥ずかしい、穴があったら入りたい!・・・てか、もう入ってるよ!みたいな(笑)(→こちら

(朝日さん、インパクトのある紹介記事をご掲載くださり、本当にありがとうございました!)

 

産経新聞、「めざましTV」他、各所でご紹介いただき、お陰様で書店さまにも大変良いところに置いていただけております。売れ行きのほうも、ありがたいことに、絶好調といっていいほどしっかり動いてくれているわけですが、

ぶっちゃけ、結構売れないともとがとれませんので、

ぜひミステリー愛好者の皆様も、畑違いだなんておっしゃらず、手を伸ばして読んでみてくださいね!

いや、考えてみると、迷路の中にひとり残った小人が、「チーズが失われた世界」について考察を繰り広げ、今までの既成観念をうち捨てて新たな概念――「チーズだけが食べ物ではない、りんごも食べ物なのだ」という概念にたどり着き、さらには、大胆な発想の転換を用いて(重要なのは『チーズはどこへ消えた?』ではないんだよ、『チーズはどこから来たか?』なのだよっ!)もういちど謎現象を推理・考察し、ついには、世界観が反転するような衝撃の真実――「迷路の外にも世界がある」――にたどり着く、というのは、

バリバリに本格探偵小説っぽいのかもしれず、

まあまあ脱出・脱獄アドベンチャーっぽいのかもしれない。

うん、なんだか、じつにミステリーっぽい

いや、きっと『迷路の外には何がある?』は、ミステリーなんですよっっ!

そうに違いない。書いてるうちにそう思えてきた・・・。(朦朧)

 

でも、この本、冗談ぬきで、いろんな方にけっこう本気で読んでほしい本だったりします。

お話は寓話仕立てで、今の時代をどう生き抜くかのヒントを教えてくれるもの。

主人公は、ヘムという小人です。

彼は迷路に住んでいます。いままでは、チーズがどこからともなく潤沢に供給されていた。ところがある日を境に、チーズが出現しなくなった。そんな状況下で、ほかの仲間はもうどこかへ新しいチーズを探しにいってしまったのに、ヘムだけは、迷路に残ってチーズを探しています。

「今までのやり方を安易に変えるよりは、成功してきたやり方を踏襲したほうが絶対うまくいく」

「せっかく頑張ってきたのに、今生き方を変えたらそれはこれまでの自分を否定するようなものだ」

「うまくいかない理由はわかっている。それは自分の頑張りが足りないからだ」

でも、相変わらずチーズは見つからない。

ひもじい。どうしよう。

そこから、彼はひとつひとつ、新たに得た仲間「ホープ」とともに「気づき」を重ねて、やがて新しい世界へと旅立っていくのです。

その思考と実践の過程が、会話主体の読みやすい文章で描かれているんですね。

 

この話って、とっても身につまされるんですよ。

出版なんて職業に携わっているとなおさら。本書で扱われている「チーズのでなくなった場所」で仕事をしているのが、まさにわれわれなのですから。

そう、少なくとも、自分は間違いなく「ヘム」です。

本の後半に付されている「ディスカッション」では、ビデオレンタルショップや紙焼きのカメラ会社(コダック)の栄光と衰亡について言及されていますが、紙媒体もまた、デジタル化とSNSの大衆化のなかで、いつ消えてしまってもおかしくない業態なのかもしれません。そんななか、われわれはどうすれば時代に即応していけるのか。どう対応していくのが最適解なのか・・・。

同じ感慨は、取材してくださった新聞社の方も、共有されていましたね。

 

でも、これははたして他人事でしょうか。「あなた」はどうですか?

あなたの日常もまた、日々刻々変化しています。仕事。成績。対人関係。定年退職......。
そこで、今までは機能していたやり方が、いつの間にかうまくいかなくなっていることに気づいたとします。そのとき、
あなたは、新しい変化に向けて一歩を踏み出すことができるでしょうか?
言うのは簡単。しかし、これがなかなかに難しい。

――あなたは、「自分が変われない理由」って、なんだと思いますか?

この本の著者であるスペンサー・ジョンソンは言います。
それは、あなたの持っている「信念」のせいなのだ、と。
あなたが正しいと信じている「信念」が、あなたを縛っている、と。

でも、「信念」って、とっても大切なものじゃないでしょうか。
だって、「信念」は、「成功体験」から導かれ、補強されてきたものに他ならないから。
それがあったから、今までやってこられた。成功したやり方を踏襲することこそ、最も堅実な仕事の仕方/日々の生き方じゃないのか? ちょっとうまくいかないからって、「信念」を簡単に変えて良いものなのか?

じつは、本書は、そんなふうに考える人を切り捨てて、前向きな「変化」ばかりを能天気にゴリ押しする本では、決してありません。
むしろ、
自分の信念に誇りを持って行動してきた人が、それでも、どうしても変わらざるを得ない瞬間が来たときに、そのことにどうやって気づけるか、気づいたときにどう動くべきかを、寓話仕立てでわかりやすく示唆してくれる本なのです。

たいていの場合、こういう啓発書やビジネス書は、「いま変わらなきゃ」「なにか踏み出して状況を打開しなきゃ」と、もともと考えている方が買われるのではないかと思います。
でも、たぶん本書の本当のターゲットはその人たちじゃない。

編集者としては、ぜひ「今のやり方が正しい」「あえて変える必要はない」と考えている人にこそ、本書を読んでほしいんですね。
今までのやり方に誇りと責任をもって、できることならそれをまっとうしたいと考えている人にこそ、読んでほしい。

自分自身、「活字」を愛し、「紙媒体」を愛し、「プロ」としての本作りの価値を信じて、その「信念」となら「心中」してもいいと思って生きてきた編集者だからこそ、そんな世界中の「ヘム」たちに、この本を贈りたい。衷心より、そう思っています。


 そして考えてみてほしいんです。「ミステリー」というジャンルもまたひとつの「迷路」なのではないか? 楽しく、豊穣な、いつまでも続く楽園だと思った場所。でも、気づくと、われわれはチーズの出てこない場所で立ち止まっているのではないか、と。

 

・・・と担当編集者といたしまして、中押しのパブリシティをミステリー通信のほうでも存分にやらせていただいたうえで・・・

部数も大きく、社的な期待も大きく、やりがいも大きい仕事でありましたが、やはりミステリー編集の仕事に戻ってこられると、大いにほっといたします(笑)。うん、たぶんこっちのほうが絶対向いてる!

 

このあとのエントリーからは、3月末発売の2点について、平常運転でご紹介していきたいと思います!(編集Y)

2019年4月 2日 21:32 | | コメント(0)

ページの先頭へ