しばらくご無沙汰しておりました!

 

この間、編集者が何をやっておったかと申しますと、昨年秋から今年の2月いっぱいにかけて、ヨレヨレになりながら国内400万部、全世界で2800万部の大ベストセラー、スペンサー・ジョンソン著『チーズはどこへ消えた?』の続編である、著者の遺作『迷路の外には何がある?』の編集およびパブシリティのお仕事に従事しておりました。

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こういう大型企画の担当を仰せつかりますと、ふだんの仕事ではあまり体験しないようなことが目白押しで、たいへん充実感もある一方で、社内各部署からのプレッシャーもやたら強く、なにかと胃のきりきりするようなことも多いもんでして。理不尽なことで怒られたり、なかなか外部への頼み事がうまくいかなかったり・・・(愚痴)

貴重な体験もさせていただきました!

業界紙の一面(それも全面)記事に顔出しでインタビューを受けさせていただいたり、朝日新聞の書評サイト『好書好日』に前任者Tと「出演」して、あんなことやこんなことをさせられたり・・・ああ恥ずかしい、穴があったら入りたい!・・・てか、もう入ってるよ!みたいな(笑)(→こちら

(朝日さん、インパクトのある紹介記事をご掲載くださり、本当にありがとうございました!)

 

産経新聞、「めざましTV」他、各所でご紹介いただき、お陰様で書店さまにも大変良いところに置いていただけております。売れ行きのほうも、ありがたいことに、絶好調といっていいほどしっかり動いてくれているわけですが、

ぶっちゃけ、結構売れないともとがとれませんので、

ぜひミステリー愛好者の皆様も、畑違いだなんておっしゃらず、手を伸ばして読んでみてくださいね!

いや、考えてみると、迷路の中にひとり残った小人が、「チーズが失われた世界」について考察を繰り広げ、今までの既成観念をうち捨てて新たな概念――「チーズだけが食べ物ではない、りんごも食べ物なのだ」という概念にたどり着き、さらには、大胆な発想の転換を用いて(重要なのは『チーズはどこへ消えた?』ではないんだよ、『チーズはどこから来たか?』なのだよっ!)もういちど謎現象を推理・考察し、ついには、世界観が反転するような衝撃の真実――「迷路の外にも世界がある」――にたどり着く、というのは、

バリバリに本格探偵小説っぽいのかもしれず、

まあまあ脱出・脱獄アドベンチャーっぽいのかもしれない。

うん、なんだか、じつにミステリーっぽい

いや、きっと『迷路の外には何がある?』は、ミステリーなんですよっっ!

そうに違いない。書いてるうちにそう思えてきた・・・。(朦朧)

 

でも、この本、冗談ぬきで、いろんな方にけっこう本気で読んでほしい本だったりします。

お話は寓話仕立てで、今の時代をどう生き抜くかのヒントを教えてくれるもの。

主人公は、ヘムという小人です。

彼は迷路に住んでいます。いままでは、チーズがどこからともなく潤沢に供給されていた。ところがある日を境に、チーズが出現しなくなった。そんな状況下で、ほかの仲間はもうどこかへ新しいチーズを探しにいってしまったのに、ヘムだけは、迷路に残ってチーズを探しています。

「今までのやり方を安易に変えるよりは、成功してきたやり方を踏襲したほうが絶対うまくいく」

「せっかく頑張ってきたのに、今生き方を変えたらそれはこれまでの自分を否定するようなものだ」

「うまくいかない理由はわかっている。それは自分の頑張りが足りないからだ」

でも、相変わらずチーズは見つからない。

ひもじい。どうしよう。

そこから、彼はひとつひとつ、新たに得た仲間「ホープ」とともに「気づき」を重ねて、やがて新しい世界へと旅立っていくのです。

その思考と実践の過程が、会話主体の読みやすい文章で描かれているんですね。

 

この話って、とっても身につまされるんですよ。

出版なんて職業に携わっているとなおさら。本書で扱われている「チーズのでなくなった場所」で仕事をしているのが、まさにわれわれなのですから。

そう、少なくとも、自分は間違いなく「ヘム」です。

本の後半に付されている「ディスカッション」では、ビデオレンタルショップや紙焼きのカメラ会社(コダック)の栄光と衰亡について言及されていますが、紙媒体もまた、デジタル化とSNSの大衆化のなかで、いつ消えてしまってもおかしくない業態なのかもしれません。そんななか、われわれはどうすれば時代に即応していけるのか。どう対応していくのが最適解なのか・・・。

同じ感慨は、取材してくださった新聞社の方も、共有されていましたね。

 

でも、これははたして他人事でしょうか。「あなた」はどうですか?

あなたの日常もまた、日々刻々変化しています。仕事。成績。対人関係。定年退職......。
そこで、今までは機能していたやり方が、いつの間にかうまくいかなくなっていることに気づいたとします。そのとき、
あなたは、新しい変化に向けて一歩を踏み出すことができるでしょうか?
言うのは簡単。しかし、これがなかなかに難しい。

――あなたは、「自分が変われない理由」って、なんだと思いますか?

この本の著者であるスペンサー・ジョンソンは言います。
それは、あなたの持っている「信念」のせいなのだ、と。
あなたが正しいと信じている「信念」が、あなたを縛っている、と。

でも、「信念」って、とっても大切なものじゃないでしょうか。
だって、「信念」は、「成功体験」から導かれ、補強されてきたものに他ならないから。
それがあったから、今までやってこられた。成功したやり方を踏襲することこそ、最も堅実な仕事の仕方/日々の生き方じゃないのか? ちょっとうまくいかないからって、「信念」を簡単に変えて良いものなのか?

じつは、本書は、そんなふうに考える人を切り捨てて、前向きな「変化」ばかりを能天気にゴリ押しする本では、決してありません。
むしろ、
自分の信念に誇りを持って行動してきた人が、それでも、どうしても変わらざるを得ない瞬間が来たときに、そのことにどうやって気づけるか、気づいたときにどう動くべきかを、寓話仕立てでわかりやすく示唆してくれる本なのです。

たいていの場合、こういう啓発書やビジネス書は、「いま変わらなきゃ」「なにか踏み出して状況を打開しなきゃ」と、もともと考えている方が買われるのではないかと思います。
でも、たぶん本書の本当のターゲットはその人たちじゃない。

編集者としては、ぜひ「今のやり方が正しい」「あえて変える必要はない」と考えている人にこそ、本書を読んでほしいんですね。
今までのやり方に誇りと責任をもって、できることならそれをまっとうしたいと考えている人にこそ、読んでほしい。

自分自身、「活字」を愛し、「紙媒体」を愛し、「プロ」としての本作りの価値を信じて、その「信念」となら「心中」してもいいと思って生きてきた編集者だからこそ、そんな世界中の「ヘム」たちに、この本を贈りたい。衷心より、そう思っています。


 そして考えてみてほしいんです。「ミステリー」というジャンルもまたひとつの「迷路」なのではないか? 楽しく、豊穣な、いつまでも続く楽園だと思った場所。でも、気づくと、われわれはチーズの出てこない場所で立ち止まっているのではないか、と。

 

・・・と担当編集者といたしまして、中押しのパブリシティをミステリー通信のほうでも存分にやらせていただいたうえで・・・

部数も大きく、社的な期待も大きく、やりがいも大きい仕事でありましたが、やはりミステリー編集の仕事に戻ってこられると、大いにほっといたします(笑)。うん、たぶんこっちのほうが絶対向いてる!

 

このあとのエントリーからは、3月末発売の2点について、平常運転でご紹介していきたいと思います!(編集Y)

2019年4月 2日 21:32

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