2019年6月アーカイブ

今月の扶桑社ミステリー新刊、『秘密結社の野望を阻止せよ!』(上・下)は、もうお読みいただけましたでしょうか?
クライブ・カッスラー&ボイド・モリソン著の〈オレゴン号〉シリーズ新刊です。
担当編集者として、これは言っていいことなのかどうかわかりませんが・・・・・・
ここ数年で担当したカッスラー作品のなかでは、ぶっちゃけ断トツの面白さであると断言していいと思います! 
近年なんとなく手にとってないや、なんて古いファンの方も、ぜひ騙されたと思って読んでいただけると幸いです。仕上がりは版元として保証いたします。


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今回のあらすじは、こんな感じです。

18カ月前にアラビア海で発生したエアバス失踪事件。
ナポリの造船所で破壊工作に見舞われた謎の貨物船コロッサス5。
さらには西インド洋で、貨物船トライトン・スター号が、遭遇した正体不明の遭難船による電光石火の作戦行動を受け乗っ取られる。
これら一見無関係に思えるすべての出来事の裏には、とある秘密結社が進行する巨大な陰謀が絡んでいた。
秘密任務の遂行中に不穏な動きを察知したオレゴン号船長ファン・カブリーヨと仲間たちは、背後に秘められた計画の全貌を探り出すため奔走する――。

本作の敵には、インドを舞台にしたいというカッスラーサイドの意図もあってか、かなりマニアックなネタが選ばれています。
その名も〈無名の九賢〉――紀元前のインドを仏法の徳をもって治めた賢王、アショーカ王に由来する秘密結社です。
英語では、〈The Nine Unknown〉。あまり日本では聞き覚えのない組織名ですが(ネット上では「九未知会」「九人覆面団」と訳されている例もあり)、英米圏では、タルボット・マンディという秘境冒険小説作家がとりあげたおかげで、意外に知名度の高い存在のようです(ちゃんとWikiもある)。

タルボット・マンディは、エドガー・ライス・バロウズやH・R・ハガードと同様、冒険小説の大家として名を残している作家さんです。インドやチベットといった南インドを舞台に、アメリカ人諜報部員が活躍するオカルト冒険活劇など、50冊近い単行本を著しています。今となってはほぼ忘れ去られた作家かもしれませんが、ジョン・フォードが映画化していたり、監督兼脚本家のフィリップ・カウフマンを通じて『インディ・ジョーンズ』シリーズに影響を与えていたりと、無視できない存在であることもたしかです。(詳しくは、小山正氏の「〈インディ・ジョーンズ秘史〉知られざる小説家タルボット・マンディーの影」、『ミステリ映画の大海の中で』所収、を参照のこと)
このマンディが1912年に『The Nine Unknown』という冒険小説を出版しています。晩年、神智学の影響を強く受けたマンディは、本書のなかでこの秘密結社を、カーリー邪神信奉者と対峙する善なる存在として登場させていると、復刻版(2019)のAmazonの紹介には書かれています。
前述のカウフマンは1983年、本書を含む三冊を原作として『Jimgrim vs. the Nine Unknown』(Jimgrim は、マンディの冒険小説におけるシリーズ・ヒーロー)という映画を企画し、実際脚本まで執筆していたのですが、本人の監督した『ライトスタッフ』の興行的失敗を受けて、結局企画はポシャってしまいました。

その後も〈無名の九賢〉は、ルイ・ポーウェルとジャック・ベルジェの怪書『神秘学大全―魔術師が未来の扉を開く』(1960年、邦訳版2002年、学研M文庫)でも、実在する秘密結社として言及されています。また、インド人作家クリストファー・C・ドイルのダン・ブラウン・テイストの冒険小説『The Mahabharata Secret(マハーバーラタの秘密)』(2013)でも登場しているそうです。このインドの秘密結社は、陰謀論や神智学的言説の定番として、フィクションの世界でいまも息づいているのです。

実際に〈無名の九賢〉がどのような経緯で発生した結社とされているのかは、本書の冒頭でアショーカ王の逸話が語られているので、そちらをお読みいただければと思いますが、とにかく本書では、この2000年の歴史を持つ秘密結社が積年の悲願を達成するために動き出し、それを嗅ぎつけたファン・カブリーヨ船長とオレゴン号メンバーが陰謀を阻止するべく対峙する、という大筋となっております。

本書の物語としてのキモは、この〈無名の九賢〉サイドも一枚岩ではなく、むしろ冒頭から組織内の二つの勢力が激しい抗争を繰り広げているという点です。
すなわちカブリーヨたちは、対立する二つの勢力の双方を相手しながら、ときにはどちらかに利する行動をとったりする必要も出てくるわけです。
いうなれば、今回カブリーヨたちは、黒澤明の『用心棒』っぽい立ち居振る舞いを要求され、物語上は、『続・夕陽のガンマン』みたいな、三つ巴のつばぜり合いが、丁々発止の勢いで続いていくんですね。

しかも、この二つの勢力は、それぞれ単純な「悪」であったり、金や権力のためであったりというよりは、自分たちの信念に従って世界を変革すれば、必ずや「正しい」新秩序と輝かしい未来が生み出せるという、強い信念に基づいて行動しています。
なので、終盤にいたるまで、物語の緊張感が途切れませんし、カブリーヨたちも、二つの勢力双方を倒さないと事件が解決できないんで、いつもの倍は頑張らないといけないことになっております(笑)。

お話は、船内での銃撃戦から、海上でのミサイル・魚雷戦、さらにはロケット打ち上げをめぐる攻防まで、どんどんスケールを広げながらヒートアップしていきます。
中盤の、ボリウッド女優になりすましてパーティに潜入するあたりのコミカルなやりとりとか、敵に拉致された仲間を助けるための飛行機上での知略に富んだ戦いとかもそうですが、とにかく無条件に楽しめるシーンが目白押し。カッスラー活劇の最良の部分が出た一書といって間違いないかと思います。

ぜひ、梅雨のじめっとした気分を、1000%エンタメの爽快パワーでどーんと吹き飛ばしてくださいね!(編集Y)


2019年6月17日 15:15 | | コメント(0)

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