あの、エロ・グロ・ホラー小説の旗手にして、マニアックな映画評論家として知られる、友成純一氏の長編エッセイが、シリーズとなって扶桑社から発売中です。

 電子書籍&プリント・オン・デマンドのみの発売なので、ご存じないかたも多いかもしれません。

 見逃すにはもったいない叢書なので、ここにご紹介する次第です。

『バリ島裏町日記』  紀伊國屋書店honto楽天amazon
バリ島.jpg

 友成氏は現在、日本を離れてインドネシアはバリ島に住んでいます。

 もともとはダイビングにハマり、ガイドもしていたのですが、海に潜らなくなったいまも、南の島で生活をつづけています。

 しかも、町外れと盛り場の真っ只中とを行ったり来たりの、気ままなひとり暮らし。

 地元民が作る危険な酒におぼれ、カラダひとつで家族を支える明るい売春婦たちとたわむれ、ときに頼られ、ときにカモにされ、さらにはバイク事故やスキミングに遭い...という、極楽にして地獄、平穏にして波乱万丈の日々を活写します。

 観光では絶対にわからないバリ島の裏の世界へ、ぜひどうぞ。


『猟奇作家の誕生』  紀伊國屋書店honto楽天amazon
猟奇作家.jpg

 いまでこそ、映画評論家としての活躍が目立つ友成氏ですが、本来は、そう、ご存じのとおり、すさまじい破壊力を持ったエロ・グロ小説家。

 さらにさかのぼれば、デビューは伝説的ミステリー雑誌「幻影城」のコンテストに投稿した、難解なリラダン論でした。

 そんな友成氏は、おなじ「幻影城」で世に出た霜月信二郎氏のツテでエロ本業界に入り、竹熊健太郎氏らと自販機雑誌を舞台に活躍するのですが、いつしか酒におぼれ、アルコール依存症となって狂乱の淵へと落ちてゆくことに――

「映画芸術」小川徹氏との出会い、講談社・宇山日出臣氏との野心作、子供の頃からのSFへの思い等々、作家・友成純一の原点と人生を変えた交友、そしてバブルに浮かれた当時の出版界の騒乱を描きだす、私小説的一編。

 当時のSF・ミステリーを愛するファンも必読です。


無頼旅.jpg

 もともと引きこもり的な傾向があったという友成氏ですが、人気作家となるや、先輩SF作家たちとの旅行に参加するようになります。

 そして、決定的だったのは、前著『猟奇作家の誕生』に書かれているような、生活の激変。こうして英国に移り住んだ友成氏は、さらなる旅から旅への暮らしに突入します。

 本書は、長年にわたって世界中をまわった氏の、驚きの旅行記です。

 ロンドンの変態スポット巡りにはじまり、ネス湖やヘルファイア・クラブ跡地といった英国の怪奇ポイント、ヨーロッパ各地からタイ・インド・韓国等々、世界中のファンタスティック映画祭を駆けめぐる日々。

 なかでも圧巻は、旧満州=極寒の中国東北地方奥地への取材旅行。それは、父親との関係を見つめなおし、再発見する、重要な旅となるのでした...

 もうひとつ注目すべきは、ダイビング先のインドネシアの海で出会った、漂海民・バジョ。
 海の上で暮らす人びとの生活を間近で観察した、貴重な記録になっています。


『極私的インドネシア映画』  紀伊國屋書店honto楽天amazon
インドネシア映画.jpg

 ここまででおわかりのとおり、友成氏はバリ島暮らしなわけですが、ダイビングから足を洗って街なかに居を移した友成氏を待っていたのが、あふれかえる海賊版DVD映画でした。

 こうして見はじめたインドネシア映画の豊穣な世界を、友成氏ならではの切り口で語りおろしたのが、本書です。

 まずは、友成氏の本領であるホラー映画。インドネシアでは、片腕の女看護師やら、死に装束でキョンシーよろしく跳ねまわる亡霊やら、腹が裂けた血まみれの女性やら、はては柄杓ババアに鍬ジジイやらといった奇々怪々なキャラクターたちが、手を変え品を変え、観客をおどかし、震えあがらせつづけているのです。

 国民的娯楽である映画界には、数多くの鬼才が集い、ホラーのみならず、青春ものから社会風刺、ラブ・コメディからイスラム教徒向け大河ドラマまで、多種多様な作品が作られています。

 日本では『ザ・レイド』とイコ・ウワイスばかりが有名なインドネシア映画ですが、これはその隆盛を見つづけてきた友成氏による、臨場感あふれる現場リポート。作品を見たことがなくても楽しくなる、まさに決定版のガイドです。

     *     *     *     *     *

 ヴァラエティに富んだ内容で楽しめること請け合いの《友成純一エッセイ叢書》。

 じつはまだ続刊がひかえていますので、お楽しみに!

2019年9月18日 20:59

コメント(0)

Comment

コメントする

ページの先頭へ