2020年1月アーカイブ

更新が滞りまして、たいへん申し訳ありませんでした・・・。

いやあ、とにかくこの二ヶ月、身動きがとれないくらい忙しくて、ようやく先日SW Ep.9を観に行けたくらいでして・・・。ふだん新刊情報をここで拾われていた方、本当にごめんなさい。

ようやくひと段落したので、順番にたまっていた作品紹介をアップしていきたいかな、と。 

ともあれ、今年も扶桑社ミステリーをよろしくお願いいたします!

 

 まずは、年末年始に発売いたしました二作品のうち、ラーシュ・ケプレル『砂男』(上・下)から。

早川さんで2010年代前半に出ていたヨーナ・リンナ警部もの『催眠』『契約』、『降霊』の続編になります。

担当いたしましたのは、めっぽう北欧ミステリーが好きな私の女性上司。この作品はぜひともうちでやりたいと、自らオファーをかけて獲得し、編集もてがけたという、渾身の一作でございます。

解説は若林踏さんにお願いいたしました。シリーズの概要から、既存作の紹介、北欧ミステリーにおける本作の位置づけまで、かゆいところにまで手の届く、素晴らしい解説に仕上がっております!

 

砂男上下.jpg

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あらすじはこんな感じです。

 

ある激しい雪の夜、一人の男がストックホルム郊外の鉄道線路沿いで保護された。

それは、ベストセラー作家レイダルの13年前に行方不明になった息子ミカエルだった。

ミカエルは、自分と妹フェリシアを誘拐した人物を「砂男」と呼んだ――。

誘拐当時、国家警察のヨーナ警部は相棒サムエルと捜査にあたり、ユレックという男を逮捕していた。判決後、ユレックは不吉な言葉を吐き、閉鎖病棟に収容されていた。

ミカエルの妹の監禁場所を知るのはユレックだけであることから、彼の病棟に潜入捜査官を送り込む計画がヨーナたちのあいだで練られる。

捜査官として白羽の矢が立ったのは、公安警察のサーガ・パウエル警部だった...。

 

本作については、すでにいくつか素晴らしい書評をいただいております!

ざっとご紹介してみますと・・・(すべて一部抜粋)

 

吉野仁氏(翻訳ミステリー大賞シンジケートの『書評七福神』コーナー(2020.1.16))

「閉鎖病棟に収容された史上最狂のシリアルキラーと誘拐事件をめぐるサスペンス。なんの予備知識もなく、なんだ『羊沈』の二番煎じかと思いつつ読み進めていたら、ある場面から一気に加速した。大胆な趣向、意外な仕掛けに外連味のあるアクションと娯楽性を凝らしたつくりに圧倒された」

 

関口苑生氏(『週刊現代』2020.1/8合併号)

「全編が謎と緊張と戦慄に包まれた、一瞬たりとも気が抜けない犯罪サスペンスだ」

 

野崎六助氏(日本経済新聞夕刊2020.1.30)

「ホフマンの『砂男』のイメージ、謎めいたヒーロー刑事、獄中から事件をあやつるハンニバル系のサイコ男、潜入捜査する女公安刑事。手堅い構成に加えて、後半に現れるEUの現在が怖ろしい。北欧発の大問題のぎゅう詰めだ」

 

池上冬樹氏(『週刊文春』2020.2.6号)

「帯に『9カ国でベストセラー1位を達成』とあるが、これは警察小説+潜入捜査+連続殺人鬼という設定が劇的でアイデアとサスペンスに富み、迫力満点だからだろう。大量の行方不明事件の深層も射程が長くて複雑。関係者をみな狂わせるユレックの存在感も抜群で、刑事たちが自己喪失になるくだりもスリリング」

 

どうです? みなさん大絶賛です!

 

編集者も、本が出来てから早速読ませていただきましたが、もう出だしから常に何かしら不穏で、心を休ませない緊張感が行間にみなぎっていて、ぐぐっと来ます!

本当に怖いホラーは、出てくる怪物や殺人鬼が怖いのではなくて、出てくる「まで」の気配や脅かしが怖い。それと一緒で、何かが起こりそうな「嫌な予感」が、明快な危機の描写を経ずして、ちょっとした怪訝な所作やうろんなしぐさ、不吉なほのめかしの累積によって、どんどん増幅されていく。そこにゾクッときます。

登場人物がみな、なにがしかの「死の予感」に取り憑かれていることも、読者の不安感を増す一つの要因といっていいでしょう。

 

著者であるラーシュ・ケプレルは、夫婦で合作しているストックホルム在住の作家さんです。 本シリーズは、全世界で1千万部を超える大ベストセラーとなっています。

あまり中身をバラすと興味を削ぎかねないので、紹介は最低限にしたいと思いますが、ジャンルとしては、トマス・ハリス以降のいわゆる「サイコ・サスペンス」の定型を保っています。

ヨーナ警部の捜査パートは『チャイルド44』、サーガ警部の潜入パートは『羊たちの沈黙』の祖型を、うまく北欧的なキャラクター小説にあてはめているといえます。終盤の展開にもいくつかの前例が想起されますが、狂人なりの被害者選択の「ミッシングリンク」と、異様な犯行様態の「動機」がきちんと存在しているのは、ミステリーとしては大変好感がもてます。

 

テーマ・題材としては、昨年弊社から上梓したゾラン・ドヴェンカーの『沈黙の少女』とも共通するものを扱っていますが、例えばつい直近の日本のアニメでも、本作同様の「操り」テーマは、『バビロン』(野崎まど原作)で、また、共通の犯行方法は『ID:INVADED舞城王太郎脚本)でも見られたりしていますし、現代社会の病理を描く「今風」な題材選択だといっていいのかもしれません。


なにはともあれ、本作最大のミソは、これがヨーナ・リンナ警部「自身」の事件だ、ということにつきるでしょう。

早川さんで出ていた旧作では、比較的気配の薄いタイプの主人公だったヨーナですが、本作では、彼のかかえるおぞましい過去と、いまも現在進行形で彼を苦しめる秘密がついに明らかになります。

終盤、凍てつく冷気と全身の痛みに苛まれながら、孤独な闘いに身を投じるヨーナの姿には、鬼気迫るものがあります。一方で、敵として君臨する連続殺人犯ユレックの放つ、超自然的ともいえる恐怖感も、じつにうまく表出されています。

ヨーナとサーガは、恐るべき悪のカリスマが仕掛けた「ゲーム」に勝利し、「呪い」を打ち破ることができるのか?

読者の皆さんも、二人が体験する黒々と淀んだ狂気と悪夢の世界を、ぜひ追体験してみてください!

 

なお、本作の続編となるシリーズ第5弾『Stalker』も、すでに版権取得済です。

今年度中の発刊を目指して(たぶん上司が)鋭意進行中でございますので、こちらもぜひお楽しみに!(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年1月13日 23:09 | | コメント(0)

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