もう一冊、年末に発売いたしましたミステリーが、エリオット・チェイズ『天使は黒い翼をもつ』

ジム・トンプスン『POP1280』チャールズ・ウィルフォード『拾った女』などに続く、扶桑社ノワール発掘路線の隠し玉でございます。

原題は『Black Wings Has My Angel』

あらまあ、なんて綺麗な倒置法! ちょっとウィリアム・アイリッシュっぽくもあり、いかにもノワールっぽくもある。うーむ、実に魅力的なタイトルじゃないですか。

 

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本作を「再発見」してくださったのは、翻訳者の浜野アキオさんです。

そもそもは、『拾った女』で皆様から望外のご評価をちょうだいして以降、弊社といたしましても、せっかくできたノワール紹介の流れを絶やしてなるものかと、次なるノワール作品を探していたわけです。

どこかにまだ、刊行に値する未訳の傑作ノワールは眠っていないものか。

で、浜野さんにも、いろいろ原書を読んでもらっておりました。

そうしましたらある日、浜野さんから胸がふるえるようなご連絡が舞い込んだのです。

「すごい作品にぶつかった。これぞまさに、ロスト・ジェム(失われた宝石)だ」

おおおおお!

さっそく、浜野さんから頂いたレジュメには、こんなことが書かれていました(一部抜粋)。

「主人公である男女が出会う物語の劈頭から不穏な気配が強烈に立ちこめ、読者は一気に物語のなかへと引きずり込まれる。前科者にして流れ者という主人公の設定、ファム・ファタール(宿命の女)の登場、着々と進められていく犯罪計画の準備、犯罪の決行とアクション、次第に二人の間に生じる齟齬、そして破綻と転落。そのことごとくがノワール小説のクリシェから構成されているにもかかわらず、微塵も陳腐さは感じられない。物語は一級のサスペンス小説がもつ、鋼線をはりつめたようなテンションで進められていく。けっして波乱万丈というわけではないが、巧みなストーリーテリング、鮮烈で奥深い人物造形と相俟って、結末に至るまで一切、中弛みを感じさせずに疾走するのだ」

 

どうです? すっげえ面白そうじゃないですか??

これは、ぜひともやりたい!!

たしかに日本で知られた著者じゃないし、ジャンルとしても、そこまで売れるパイはないかもしれない。でも、読み巧者で目利きの翻訳者さんに、これだけのことを言わせる作品を、出版社として受けられなかったら、それはもう「駄目」でしょう。

一応はノワールで売ってきた扶桑社。そーさ、うちで出さなきゃ、どこで出すってんだ!!

こうして、『天使は黒い翼をもつ』刊行への道は始まったのです。

 

ちなみに「幻の」とかいいつつ、エリオット・チェイズには既訳作が実は三冊もあります。

30年以上前に、キール・セント・ジェイムスという新聞記者を主人公にした、軽ミステリーのシリーズがほぼリアルタイムで刊行されているのです。

しかも、版元はなんと弊社の前身であるサンケイ出版!

大変お恥ずかしながら、編集者は本書を出そうと決めて調べはじめてから、ようやくこの事実を知りました。そういや、本書を発売してすぐ、当時を知る元編集長K氏から早速メールが来て、「なんで、エリオット・チェイズが出たの?」って聞かれたんですが、うちでやろうと思ったのは本当に偶然なんですよね。

 

そんな「えにし」で弊社から出ました『天使は黒い翼をもつ』。

本国では、名うての評論家たちがこぞって、絶賛しています。

「完全無欠の小説」――エド・ゴーマン

「私が〈ブラック・リザード叢書〉の編集者として、最も復刊したかった一冊こそが、この『天使は黒い翼をもつ』だった」――バリー・ギフォー ド

「エリオット・チェイズは、優れた散文家のスタイリストで、機知に富み、ノスタルジックで、不敬で、第一級のストーリーテラーだ」――ビル・ プロンジーニ

「一読忘れがたいのは、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』並みに強烈な、恋人たちの猫と鼠の関係だ。
......ティムとヴァージニアの本能的な結びつきと比べれば、すべての要素は最終的には些細なことに思える」――ワシントン・ポスト

「流れの速い物語、セックス、すぐれた描写による文章など、独自の良さとすべてかねそなえている」――マックス・アラン・コリンズ

 

あとがきは、日本を代表するノワール研究の権威、吉野仁さんにお願いいたしました。

編集者の思いに応える、18ページに及ぶ素晴らしい解説原稿をいただけて、心から感謝。この作品について知っておくべきことは、ほとんどすべて、そこに書かれているといって過言ではありません。

なんと言っても、興味深いのは、本書のことを吉野さんも参加した座談会において、翻訳家の故・小鷹信光さんが絶賛していたというエピソードで、「久しぶりに途中でやめられなくなって一気に終わりまで読んじゃった」と興奮気味に作品の魅力を語っていたとのこと。

日本一のペーパーバック・コレクターだった小鷹さんを虜にした幻の逸品。

ね、読んでみたくなりますよね??

 

すでに、既に読んでいただいた皆様からは、「傑作」の声を多数いただいております。

書評でも激賞してくださる方が結構いらっしゃって、本当にありがたいかぎりですが・・・長くなってまいりましたので、本書に関してはもう一回、稿を改めたうえで、サンケイ文庫旧作のご紹介なども含めて記事をアップしたいと思います。

ノワール好きのあなた。絶対損はさせませんので、ぜひご一読くださいませ!(編集Y)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年3月 3日 00:09

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