弊社の基幹作家であるスティーヴン・ハンター。
今年は残念ながら新刊はありませんでしたが、ついに初期の代表作『真夜中のデッド・リミット』(上・下)が扶桑社から復刊されることになりました!
『このミステリーがすごい」!89年版』海外編第2位(ちなみに、この年の第1位は『羊たちの沈黙』でした!)や、日本冒険小説協会大賞受賞など、数々の栄冠を得て、日本での彼の名を大いに高らしめた初期の代表作が、新刊として書店の店頭に帰ってきます。

今回、改めて翻訳者の染田屋さんと全文を確認し、かなりの箇所で訳文に手を入れました。
少し古い言い回しだった固有名詞なども含めて、今の読者の皆さんに読んでいただくにふさわしい形で、訳文をリファインすることができたのではないかと自負しております!

デッドリミット上下2.jpg


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上巻出だしのあらすじは、こんな感じです。

アメリカ・メリーランド州にある、山中深くに配された核ミサイル発射基地。
全米で唯一、単独発射が可能なこの基地が、謎の武装集団に占拠された。
最新鋭核ミサイルの発射を阻止するためには、基地に潜入するしかない。
ミサイルの発射キーは現状チタニウム合金製の保管庫に収められているが、
破られてしまうのも時間の問題だ。デッド・リミットは深夜零時。
ミサイル発射までに残された時間は十数時間しかない。
絶体絶命の状況下で、デルタ・フォースを創設した歴戦の勇士プラーに特命が下る!

とにかく、べらぼうに面白い。
人によっては、スワガー・サーガより好き、という人がいてもおかしくないでしょう。
実際、評論家の川出正樹氏は、ハンター作品のなかでは「ダントツで『真夜中のデッドリミット』が好きです」と公言されていたかと。

正体のわからないテロリストによって、唐突に占拠された核ミサイル基地。
ミサイル発射までのデッド・リミットが目前に迫ります。
限られた時間のなかで、デルタ・フォースと徴用された一般人の混成部隊は、
①外部に配された敵勢力を突破したうえで、
②難攻不落のミサイル基地内部に潜入し、
③カウントダウンをとめなければならない。
併せて、そのためには
④敵の正体を見破ることも必須となってきます。

この最高難度のミッションに、デルタ・フォース創設にかかわったプラー大佐を指揮官として、FBI捜査官や、民間人の州兵であるブラヴォー中隊の面々、基地潜入の特命を帯びたベトナム戦争の勇士(トンネル・ネズミ)といった、さまざまは人々が、一致団結して挑みます。
その他、テロリストの中核メンバーや、彼らに誘拐され協力させられる溶接工、人質にとられたその家族、うらぶれた落魄の中年ソ連人スパイなど、個性的なキャラクターがつぎつぎに登場。
一日に満たない時間経過のなかで、それぞれが文字どおり「生死を懸けた」、苛烈な戦いに身を投じます。

すなわち、スワガー・サーガが無敵のスナイパーの活躍を描く「ヒーロー譚」であるとすれば、
本作は徹底して一人ひとりの物語に注力した、典型的な「群像劇」であるといえるでしょう。

解説の古山裕樹氏は、本書の面白さを「記憶」「人物」「展開」の三つの側面から、見事に読み解いてみせます。

「そして、本書の登場人物たちはあっさりと命を落とす。たとえ重要なキャラクターでも油断はできない。これは決して一人ひとりのキャラクターを軽く扱っているということではない。むしろその反対だ。
 個々の人物がどのように生き、何を愛し、何を重んじていたかーーそれが描かれているがゆえに、一人ひとりの死が、読む者の心に鋭く突き刺さる。そっけなく語られる死は、その簡潔さゆえに、語られない多くのことを読者に刻みつける。」

結局、この物語で誰が勝利し、誰が英雄になったといえるのか。
下巻368ページから始まる、とある登場人物の長いモノローグは、血沸き肉躍るアクション・サスペンスの最後にやるせない影を落とし、深い文学的余韻を残します。
371ページに「列挙される」、いかにもハンターらしい「とあるデータの羅列」が、なぜにここまで読む者の涙腺を刺激するのか。
近年のハンター作品と比べると、レトリックはさっぱりめで、描写もねちっこさが薄め、個性という意味では若干控えめかもしれませんが、そのぶん、キャラクターたちが織り成す密度の濃いタイムリミット・サスペンスを、ストレートに堪能できるかと思います。

スティーヴン・ハンターの、というより、
20世紀のアクション小説を代表する、ベストの一作。
まだ読まれたことのない方も、かつて一度読まれた方も、ぜひ手に取ってみてください。
担当編集として、皆様に最高の読書体験となることをここにお約束いたします!!  (編集Y)



2020年10月 2日 20:52

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