2021年10月アーカイブ

今月のもう一作は、ラーシュ・ケプレル『ウサギ狩り人』(上・下)
ヨーナ・リンナ・シリーズの第6弾で、弊社では『砂男』(上・下)、『つけ狙う者』(上・下)に続く紹介作品となります。

ウサギ狩り人ブログ.jpg

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あらすじはこんな感じです。

ストックホルムの高級住宅街。売春婦の目の前で客が撃ち殺された。
公安警察警部サーガが緊急出動するが、犯人はシリアのテロ集団と関わりのある男の名前を口にして、現場を立ち去ったあとだった。
唯一の目撃者を尋問すると、犯人の頬には長い髪の束のようなものが垂れ、被害者に童謡をきかせ、ゆっくりと時間をかけて止めを刺したという。
4年の刑で服役中の元国家警察警部ヨーナの元に、意外な人物が訪れる。
ヨーナは国を揺るがす凶悪犯を追跡するために、復帰する。
犯人の奇妙な行動から、犯人が十人の殺害を計画していると見破ったヨーナは、サーガとともに連続殺人犯の動機に迫る。
浮かび上がってきた被害者の共通点を見つけたヨーナは、30年前に起こった、陰惨な事件の真実を探るが――。
巧みな伏線とスピード感、ダイナミックな展開と精緻なディテールの融合からなる、シリーズ最高傑作!

編集担当は前作、前々作に引き続き上司のYなのですが、今回は趣向を変えて、搬入初日に一気読みしたという販売担当Mくんに、作品の魅力をガツッと紹介してもらおうと思います。
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私はラーシュ・ケプレルを(勝手に)「北欧のジェフリー・ディーヴァー」と呼んでいます。息をつかせぬサスペンス、巧妙に仕組まれたミスリード、落とすべきところにきちんと落とす伏線回収。こうした点が、前々作『砂男』、前作『つけ狙う者』にみられるケプレル作品の魅力ではないでしょうか。
もちろん、それは今作『ウサギ狩り人』にも健在。私はこの作品を見本段階、すなわち書店店頭に並ぶよりも一週間ほどまえの段階で手にしたのですが、会社の机で読みはじめると途端にその世界に引き込まれ、まさに「巻を措く能わず」、そのまま一両日中には読み終えてしまったほど、勢いがありました。『砂男』で出会ったシリーズですが、今作がいちばん好きな作品かもしれません。

そもそも『ウサギ狩り人』は、前作『つけ狙う者』から地続きではじまります。『つけ狙う者』は、ヨーナは有罪判決を受け刑事としての地位を追われ、収監されてしまうという衝撃のラストでした(私は判決が読みあげられるときにヨーナの仲間たちが起立するシーンが大好きです)。
今作では、そんなヨーナがいかにして捜査の第一線に戻るのか、というのが序盤の読みどころのひとつとなっています。前作をお読みになったかたは気になっていたのではないでしょうか。刑務所でたくましく生き抜くあいだに捨てたはずの「刑事」「警察官」としての本性が、捜査に協力することでだんだんと頭をもたげてくる......そのあたりのヨーナの心理描写もお楽しみください。
また今回、国家警察のヨーナだけでなく、公安警察のサーガ・バウエルにもスポットライトがあたっていることも大きな特徴で、魅力あるキャラクターへの掘りさげがまた一段階進んだ印象があるといえます。ヨーナとサーガの共同捜査は、ふたりが別々に行動し、同時進行のかたちをとっています。当然、片方がわかっていることがもう片方にはまだ伝わっていない、といったこともでてくるわけで、そこもまたサスペンスの一要素となっています。

さて、今回の敵は、プロの殺しの技術を持ち、ときに拳銃、ときに刃物で、はたまた狙撃で連続殺人をくりひろげる謎の殺人鬼・ラビットハンター。頭には切り落としたウサギの耳を垂らし、殺す相手には童謡を聴かせ、動けないようにしたあとはゆっくり時間をかけてトドメを刺すという、なんとも猟奇的な殺人者です。動機はなにか? 正体は? 
そうしたものがわかるのは、ケプレルのこれまでの作品からすると比較的早いような印象もありますが、今作はそこからが真骨頂。読者はラビットハンターの動機がわかった状態で、その企みの推移と、それを知らぬヨーナやサーガの捜査あるいは関係者の動きを俯瞰することになります。そこからは一気呵成、怒涛の展開。さまざまな要素が終着点へと収斂していきます。このたたみ方、ページターナーぶりこそが、ラーシュ・ケプレル"らしさ"といえるのかもしれません。
また、ラビットハンターがかなり戦闘能力に長けた人物ということもあり、常々語られていたヨーナの身体能力を活かしたアクションシーンも極めて読ませる描写がつづきます。たとえば終盤、ついに対峙したヨーナと殺人犯がおたがいを見極めていくというシーンがあります。指導教官の教えを回想しながら、ヨーナがひとつひとつ相手の動きを読んでいく、その静かな緊張感ただよう、気合いのはいった描写はひとつの読みどころです。

というわけで、サスペンス、アクション、ミステリー三方良しの『ウサギ狩り人』そして<刑事ヨーナ・リンナ>シリーズは、扶桑社海外文庫販売担当としていまもっともオススメしたい作品群です。絶対に損はさせません。ぜひお近くの書店さんでお買い求めのうえ、お楽しみいただければと思います。
ラーシュ・ケプレルは、スウェーデンはストックホルム在住の夫婦作家。<刑事ヨーナ・リンナ>シリーズは本国で現在8作目まで刊行されており、次作第7弾の邦訳も刊行すべく準備しております。私は企画書を読んだとき、「ついに!」と嬉しくなるような展開が示されておりました。乞うご期待! 私も早く読みたい!(販売担当M)





2021年10月20日 08:57 | | コメント(0)

今月の2冊目は、フランスの新鋭女流作家アメリー・アントワーヌ『ずっとあなたを見ている』
日本初紹介の作家さんです。もとは自費出版で出したものが、フランスの大手出版社の目にとまり、商業出版物として米・仏で25万部のヒットにつながったとのこと。
評判を呼ぶのも納得の、いかにも「フランス」らしい味わいの逸品でございます。

ずっとあなたを小.png

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あらすじはこんな感じです。

銀行員のガブリエルは、最愛の妻クロエとともにパリからサン・マロに移り住み、幸せな結婚生活を送っていた。

だが彼の人生はクロエが水泳中に事故死したことで一変する。

悲嘆のなか失意の日々を送るガブリエル。

そんな彼の前にある日、報道カメラマンを目指す若いエマが現れる。

死んだ妻とは対照的な魅力をもつ彼女に、ガブリエルは徐々に惹かれていくが......。

男女が織りなす心の綾を丹念に描きだしながら、巧緻な構成と意想外の展開で読者を翻弄するフレンチ・ミステリーの傑作ここに登場。


まあ、なんていっていいのか、本作はとある「趣向」の凝らされた小説なので、これ以上はなんとも申し上げられないといいますか(笑)。
ぜひ、まずは予備知識なしで手に取っていただけると幸いです。

ジャンル・ロマンスのようなタイトルと装丁だと思われるかもしれませんが、白背で出しておりますとおり、あくまでミステリー/サスペンスのジャンルに属する物語ですので、くれぐれもお間違えなきよう(間違えて買ってしまう行為自体はもちろん、止めませんw)。
ただし、ロマンスが好きで、かつミステリーも好きな方なら、それこそドンピシャで愉しんでいただける作品ではないかと思います。日本のミステリー作家でいえば、連城三紀彦とか泡坂妻夫のような。

一人の男と、二人の女。
それぞれの愛の形。
不思議な視線の交錯。
読んでいくなかで、そっと胸に差す違和感。
その違和感はやがて芽を吹き、きちんと「ミステリー」として昇華します。

複数視点の行き来する章構成、現在形でつづられる洒落た文体など、いかにもフランス産の香りのする凝った作品です。
現代的なテイストでありながらも、カトリーヌ・アルレーやボアロー&ナルスジャック、あるいはフレッド・カサック『殺人交叉点』、ミッシェル・ルブラン『殺人四重奏』あたりの、古き良きフレンチ・ミステリーの香りをうまく引き継いでいると思うのは編集者だけでしょうか。

多少力業のところもありますが、そこを言われてしまうのは作者も想定済みなのではないかと。
むしろ、211ページで転調を迎えてから、その「あと」を100ページ以上にわたってじっくり描いているのが、本作ならではの価値なのだろうとも思います。

秋の夜長に、ベッドの友として楽しんでいただけると幸いです。(編集Y)




2021年10月 4日 17:35 | | コメント(0)

さて9月末発売(奥付10月10日)の扶桑社海外文庫は、おそらく編集3人態勢でやっていた10年前でもなかったかもしれない、4点6冊同時刊行(ロマンス含む)。
カッスラーの冒険小説あり、フランスの凝った心理サスペンスあり、スウェーデンの警察小説ありと、多種多様なラインナップとなっております。

まずは、クライブ・カッスラー&グラハム・ブラウン『失踪船の亡霊を討て』(上・下)のご紹介から。
カート・オースチンが主役を務める〈NUMAファイル〉シリーズの第12弾となります。
幽霊船上下ブログ.jpg













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あらすじはこんな感じです。

南アフリカの沖合で猛烈な嵐が発生した。

オースチンらNUMAの面々は要請を受けてIT長者ウェストゲイトの一家が乗るヨットの救難に向かう。

その妻シエナは偶然にもオースチンのかつての恋人だった。

しかし決死の救難作戦は失敗。後刻ウェストゲイトだけが漂流中に救出される。

オースチンは事件のトラウマに苦しむが、死んだはずのシエナが中東で目撃されたという情報を受けて単身ドバイへと飛ぶ。

遭難事故の背後に、シエナが開発したセキュリティシステムをめぐる陰謀が姿を見せ始める......。


今回は、カッスラー作品では珍しいくらい、主人公が追い詰められた状況で物語がスタートします。

ヨット遭難の海難救助に狩りだされたオースチンは、高波に呑まれたかつての恋人を救えなかったのみならず、自らも大きな怪我を負って、その後遺症と記憶障害に苦しめられることに。

この「記憶障害」が実はクセモノなのですが、不屈の男オースチンは、死んだはずの元恋人が生きて目撃されたという情報を頼りに、ドバイへと飛びます。誰もがオースチンを信じないなか、NUMA長官ダーク・ピットだけは全面的な支援を表明、盟友ザバーラもオースチンと行動を共にします。

個人的な闘いかと思われた今回の事件も、やがて背後に隠された世界規模の陰謀が明るみに出て、オースチンは、韓国、そしてマダガスカルと場所を移しながら、巨悪の野望を打ち破るべく大活躍を見せることになります。

ちょっと『カサブランカ』を思わせるようなシエナとの関係性が切ない、オースチン「自身」の事件。

個人的には、悪女カリスタの魅力的なツンデレぶりにも、大いに萌えました。

ぜひお楽しみください。


なお、以前から予告しておりましたとおり、今年はNUMAシリーズは2点刊行を目指しております。

次回は来年3月末刊行で、第13弾『The Pharaoh's Secret 』のご紹介を予定しています。

こちらもお楽しみに!(編集Y)



2021年10月 3日 11:41 | | コメント(0)

先月の既刊を今ごろアップしてすみません! 
もうレヴィンソン&リンク『皮肉な終幕』は読んでいただけたでしょうか。
編集部に復帰した編集Tが長年温めてきた好企画。
海外短編好きには、こたえられない一作だと思います。
ぜひ「買って」応援していただければ!

同月刊で、トム・クランシー&スティーヴ・ピチェニック〈トム・クランシーのオプ・センター〉シリーズ新章第4弾『暗黒地帯(ダーク・ゾーン)』(上・下)も発刊いたしました。
こちらも合わせてお楽しみください。

ダークゾーン上下ブログ.png

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あらすじはこんな感じです。

ニューヨークでウクライナの女性諜報員がロシアの暗殺者の手にかかって殺された。
直前に彼女と会っていた元駐ウクライナ米大使ダグラス・フラナリーも命の危険を感じて、オプ・センター作戦部長ブライアン・ドーソンに助けを求める。
どうやらウクライナ軍の離叛分子が、国境近くのロシア基地への侵攻作戦を計画しているらしい。
いまロシアとウクライナの間に火が付くと、世界大戦の引き金になりかねない。
オプ・センター長官チェイス・ウィリアムズはフラナリーの保護と事態への介入を決断する。

今回の舞台はウクライナ
中東(イラン&サウジ)、北朝鮮、中東(ISIS)と続いてきた本シリーズで、若干縁遠い地帯かもしれませんが、ロシアによる侵攻作戦以降、もっともホットな戦略地域だといっていいでしょう。

本作のタイトル「暗黒地帯(ダーク・ゾーン)」は、作中に登場するプーチン大統領その人が部下に語る内容から取られています。

「抵抗を受けずにウクライナに侵入したい」プーチンはつづけた。「スッジャのわれわれの部隊のプレゼンスがきわめて優勢に見られれば、戦う必要がなくなるだろう。ああ、たしかにわれわれには、突入できるような戦車と兵員と砲兵がある。だが、未来の戦争は心理戦だ。巧みな配置、二十四時間態勢の活動、兵士の士気がきわめて高いのを見せつけることで、スッジャが濃い影を落とすようにする。完全な暗黒地帯(ダーク・ゾーン)を創りあげ、だれであろうとわれわれに挑むのを怖れるよう仕向ける。そうしておいてから、なんの支障もなく進撃する。......」(上巻p116より)

要するに、対外的に「得体の知れない怖い国」という印象を強めていくことで、核や実際の軍事行動に頼らずに勝利していきたい、というロシア側のイメージ戦略を表してる語ですね。
北方領土問題を抱える日本にとって、ロシアは決して友好一本槍の国ではありません。
そういったロシアの国としてのあり方も考えながら読んでいただけば、「身近な」謀略小説として楽しんでいただけるのではないでしょうか。

これまでの新〈オプ・センター〉シリーズは、あくまで戦略&アクションがメインで、登場人物は若干コマのような扱いで組み立てられていた感がありますが、今回はかなりブライアン・ドーソンや各メンバーの心理描写に力が入れられています。
また、「発生してしまった大きな事件に対応する流れ」から「大きな事件が起きないように事前に対処する流れ」にプロットが変更されているのも、本来のオプ・センターのあり方に近いかもしれません(その分、話が地味になった懸念もありますが)。
このあたり、ライター陣にジョージ・ガルドリシに加えて、旧〈オプ・センター〉シリーズのジェフ・ロヴィンが戻ってきたことも影響しているのかもしれませんね。

次の〈オプ・センター〉シリーズは、新章第5弾『For Honor』を、来年春くらいに出せればと考えております。ロシアとイランが結託したミサイルの脅威に、オプ・センターの面々が立ち向かいます。こちらもお楽しみに。(編集Y)










2021年10月 2日 23:46 | | コメント(0)

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