4月末搬入、5月頭発売のもう一冊は、『レオ・ブルース短編全集』
扶桑社ミステリーでは、『三人の名探偵のための事件』『ミンコット荘に死す』『ハイキャッスル屋敷の死』『ビーフ巡査部長のための事件』につづく、レオ・ブルース紹介の第5弾となります。
翻訳者はもちろん、小林晋氏です。

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英国で本格ミステリーの名作が次々と生まれていた黄金期に活躍した推理作家レオ・ブルース。本名のルーパート・クロフト‐クック名義で広範な著述を成すかたわらで、「余技」としてミステリーに手を染めた人ですが、後世に名を残したのは専ら探偵小説によってだというのは皮肉なものです。

デビュー作にあたる『三人の名探偵のための事件』が、単行本として初めて日本で紹介された際には、2000年版の『このミステリーがすごい!』で海外編第4位を獲得(のちに扶桑社から文庫化)。
以来、創元さんのほうで出された『死の扉』は『本格ミステリベスト10』2013年版海外編2位、弊社から出版した『ミンコット荘に死す』が同2015年版海外編3位、『ハイキャッスル屋敷の死』が同2017年版海外編4位を獲得するなど、彼の作品は日本国内でもきわめて高い評価を受けてまいりました(昨年出版した『ビーフ巡査部長のための事件』も、『このミス2022年版』の海外編16位にランクイン)。

シリーズ探偵として、大酒飲みで粗野だが明敏な頭脳を持つビーフ巡査部長と、名門育ちの高校教師キャロラス・ディーンを擁し、計31作の長編ミステリーを執筆したレオ・ブルース。
ただこれまで、彼の紹介はもっぱら長編が中心で、まとまった量の短編が残されていることはあまり知られていませんでした。
今回、弊社から出版された『レオ・ブルース短編全集』は、そんな巨匠が遺した「全」短編を完全網羅した、まさに「世界初」の試みなのです!

何が、どう、「世界初」なのか。
本書の土台となっているのは、アメリカで1991年に刊行された、B・A・パイク氏編のレオ・ブルース短編集『Murder in Miniature』です。
ただ、これに収録されている短編は計28編なんですね。
今回の日本語版短編集では、パイク氏編の元版短編集に、その後発見された2編を加え、さらにカーティス・エヴァンズ氏によってテキサス大学オースティン校のハリー・ランサム・センターで発掘された未発表短編10編を、なんと秘書による生のタイプ原稿を写した写真から「直接」邦訳する形で加え、現時点での短編全集としました。
翻訳権取得に時間を要したために、10編のうち1編は海外のアンソロジーに先行されてしまいましたが、残りの9編については、欧米圏ですら一度も公刊されたことのない、正真正銘の「世界初紹介」短編ということになります。
このような形で、海外作家の「全集」が、タイプ草稿をも含んだ「真の完全版」として世界に先駆けて日本で発売されるケースは、長い出版の歴史においてもそう多くあることではないのではないかと自負いたしております。
すべては、本書の翻訳者で日本レオ・ブルース・ファン・クラブ会長でもある小林晋氏の、作家に懸ける熱い想いと愛の賜物だといってよいでしょう。

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こちらの写真は、本書に収録されている短編「殺人の話」のタイプ原稿の一枚目。
よく見ると、あちこちに(おそらく著者本人による)赤字(青字?)が記入されているほか、本名のルーパート・クロフト‐クックの名前でいったんタイプされた署名が、手書きで「レオ・ブルース」に直されているのがわかります。
読んでいただいた方ならおわかりのとおり、「殺人の話」は、少し他のゴリゴリの本格短編と比べると一般小説寄りのオチをもった異色作です。逆に言えば、一般小説の短編だと考えると、いささかミステリー臭が強い。
もしかして、「表の顔」である作家クロフト‐クックとしていったん執筆しながらも、そのミステリー寄りの内容に鑑みて、後からブルース名義に書き換えたなんて可能性は考えられないでしょうか。
実に興味深い事例と言わざるを得ません。

収録作は、よりどりみどりの計40編。
パーティーの夜に起きた秘書殺しの謎をビーフ巡査部長が快刀乱麻の名推理で解決する「ビーフのクリスマス」、遺産相続をめぐる練り上げられた策謀を暴く「逆向きの殺人」など、短い紙幅に「魅力的な謎の呈示」と「合理的解決」という本格の醍醐味が凝縮された珠玉の短編ばかりです。
そのほとんどは、日刊新聞のために「読者の束の間の気晴らし」として書かれた短い作品ですが、その本格ミステリーとしての骨格は堅固で、いわゆる「5分間ミステリー」的なミニ・ミステリーの面白さを満喫できます。
計40編のうち、ビーフ巡査部長ものは14編、グリーブ巡査部長ものは11編が含まれ、他にアメリカ版短編集の編者B・A・パイク氏による「序文」と、発掘短編の発見者カーティス・エヴァンズ氏による詳細な解説、さらには訳者・小林晋氏によるあとがきと、全短編の書誌を巻末に収録。まさに「完全版」と呼ぶべき、短編全集の登場です。


「ヴィンテージもの探偵小説愛好家のための正真正銘垂涎のご馳走だ!」
――カーティス・エヴァンズ

「片々たる作品においても、作家は確かな手腕を示し、語り口は巧妙で、簡潔かつ要点を衝いている。最良の作品は鮮やか、巧妙、満足できるものであり、この作家の作品として立派に存在意義を主張できるものだ」――B・A・パイク

「本書は現時点で判明している限りのレオ・ブルース名義の短編をすべて集めて刊行する世界初の企画であると胸を張って主張したい」――小林晋(翻訳者)

ぜひお楽しみください!(編集Y)



掲載作品

手がかりはからしの中/休暇中の仕事
棚から落ちてきた死体/医師の妻
ビーフと蜘蛛/死への召喚状
鶏が先か卵が先か/犯行現場にて
鈍器/それはわたし、と雀が言った
一枚の紙片/手紙
一杯のシェリー酒/犯行現場
逆向きの殺人/タクシーの女
九時五十五分/単数あるいは複数の人物
具合の悪い時/カプセルの箱
盲目の目撃者/亡妻の妹
河畔の夜/ルーファス―と殺人犯
沼沢地の鬼火/強い酒
跡形もなく/捜査ファイルの事件
ビーフのクリスマス
インヴァネスのケープ
死後硬直/ありきたりな殺人
ガスの臭い/檻の中で
ご存じの犯人/悪魔の名前
自然死/殺人の話
われわれは愉快ではない/書斎のドア



2022年6月24日 22:02

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