海外翻訳小説ファンのみなさま、こんにちは。やや更新が遅くなりましたが、3月頭の新刊をご紹介します!

まずはこちら、本邦初紹介となる作家の第一作です。

ヨン・コーレ・ラーケ『氷原のハデス』(遠藤宏昭・訳)
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まずはあらすじをご紹介。

特殊部隊出身の元狙撃手であるアナ・アウネは負傷を原因に軍を辞したのち、父の友人で科学者のダニエル・ザカリアッセンと北極遠征に参加している。ある夜、ふと窓の外を見たアナは、空に打ちあげられた照明弾を目撃する。方角から、中国の大規模極地研究基地〈アイス・ドラゴン〉が発した救難信号だと判断したアナとザカリアッセンは、暴風雪のなか、ホバークラフトでその基地へと向かうが、人の気配はなく、キャビンに足を踏み入れた二人を迎えたのは、何者かに殺されたと思しき十数体の凍結死体だった......


本作はすでにノルウェー以外に17カ国で出版され、映画化も決定しております。多々ある絶賛レビューの中でもとくに目を引くのは「吹雪の中で繰り広げられる『ダイ・ハード』とアガサ・クリスティの猛烈なブレンド 〈ノルウェージャン・アート〉」というものですが、伊達ではありません。中国基地に残された死体からはじまる主人公の孤軍奮闘の物語は、やがて予想外の方向から大国間の謀略にも迫っていくことになります。

この作品のいちばんの魅力は、「現在:北極基地」「過去:シリアの戦場」というふたつの時間軸が頻繁に行き来していることです。漆黒の闇に包まれた極寒の北極と、太陽照りつける灼熱のシリア。このコントラストが物語のスケールを大きく広げているのです。
元兵士なのに、銃に触れそうになると吐き気を催してしまうほどのトラウマをかかえている主人公、アナ・アウネ。除隊したのち、ほとんど生きる気力を喪っていたアナは、父の薦めで老齢のザカリアッセン教授の北極調査に参加していますが、ときどき幻影にも悩まされる描写があります。いったいアナに何があったのか? 
その答えはどうやら、ノルウェー軍特殊部隊狙撃手として赴いたシリアでの一件にあるらしい......。アナは救援を待つあいだ、〈アイス・ドラゴン〉基地のどこかに息を潜めている殺人犯を追わなければならなくなりますが、その過程で兵士としての本能を呼び覚まされ、封じ込めていたはずの心の傷にも向かい合わなければならなくなります。その様子が、アナのシリアでの「過去」として、「現在」の物語に挿入される形で同時進行しながら描かれます。事件の真相が明らかとなったとき、アナ自身の〈魂の再生〉は如何になされるのか──それは本編でお楽しみいただければと思います。
そうそう、忘れてはならないのが、シベリアン・ハスキー、その名もスンジの愛らしい活躍。こちらも目が離せません!

著者ヨン・コーレ・ラーケ氏はノルウェーを代表する脚本家。1962年生まれで、広告会社でCM制作に携わったのち、2013年に映画脚本家に転身。
出世作として挙げられるのは、日本でも公開された『ザ・ウェイブ』(2016)。ガイランゲルフィヨルドを舞台に、その崩落から大津波が街を襲う様を描いた今作は、ノルウェー初のディザスター・ムービーとして第88回アカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表に選出されました。またその続編『ザ・クエイク』(2018)も世界で話題に。

(2023年3月現在、両作品は配信でも観ることができます!→  『THE WAVE』をU-NEXTで観る)

脚本家出身、それもダイナミックな災害描写が魅力の作品に携わっていたとあって、小説家デビューを飾った今作『氷原のハデス』でも、その映像的なアクション描写を楽しめます。

翻訳は遠藤宏昭さんによるものです。扶桑社ミステリーでは『アイス・ハント』のジェイムズ・ロリンズ作品群の翻訳でおなじみなのではないでしょうか。今回も、ソリッドでスピード感のある訳文でお届けいたします。

装幀はwelle design 坂野公一さん。物語の重要要素をひとつひとつ丁寧に拾いあげて作られた、まるで映画ポスターのようなカヴァーイメージで、見れば見るほどワクワクするようなものに仕上げていただきました。

極寒の北極を舞台にした完全エンターテインメント作品、ぜひお楽しみください!

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2023年3月24日 13:26

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